歯科業界の常識を変えてきたホワイトニング業界のフロントランナー。オリックスと挑む国内外での市場拡大戦略とは

生活者の健康・美容志向の高まりからニーズが拡大している、ホワイトニングや歯列矯正などの自由診療。そのけん引役を担っているのが、2003年創業のホワイトエッセンス株式会社(以下、ホワイトエッセンス)だ。同社は「笑顔創造産業」を企業理念に掲げる、ホワイトニング業界のトップランナー。「歯が痛くなったら治療に行く場所」という従来の歯科医院のイメージを一新し、生活者を笑顔にするためのサービスをフランチャイズ(FC)によって全国に広めている。そんな同社は、2023年6月にオリックスと資本提携を結び、協業をスタート。ホワイトエッセンス 代表取締役の坂本 佳昭氏と、同社に常駐し経営支援を行うオリックス 事業投資本部の堀池 涼平に、現在の歯科医療、今後のビジョンについて伺った。

時代に先駆けてホワイトニングの潜在ニーズを発掘し、フランチャイズの仕組みを構築

ホワイトエッセンス株式会社代表取締役 坂本 佳昭氏

――はじめに、ホワイトエッセンスの事業概要について教えてください。

坂本氏:歯のクリーニングやホワイトニングを中心とした歯科医院のフランチャイズ(FC)事業を展開しています。2001年に東京・渋谷に1号店をオープンし、全国290店舗まで拡大(2024年9月現在)。うち約8割の加盟院は既存の歯科医院で、新たにホワイトエッセンスの施術専用スペースを設けていただき、従来の歯科治療を行いながらホワイトエッセンスのホワイトニングやクリーニングなどデンタルエステサービスを提供いただいています。残りの2割の加盟院は、歯科医師の新規開業から私たちがサポートして立ち上げています。ホワイトニング材の提供だけではなく、店舗開発・接客教育・集客・顧客リピート化までトータルで歯科医院を支援していることも事業の大きな特徴ですね。

ホワイトエッセンスのフランチャイズの仕組みと役割

――そもそもどうしてホワイトエッセンスを立ち上げたのでしょうか?

坂本氏:私はもともと歯科医療機器メーカーに勤めていて、日常的に多くの歯科医院とお付き合いがありました。歯科医院の増加による競争の激化や診療報酬が低下するなかで、診療報酬に依存しない自由診療のニーズが高まると考え、「自由診療の拡大を支援するFC事業が必要なのではないか」と社長に提案。その案が受け入れられて、設立された子会社がホワイトエッセンスの原点です。

その子会社の社長として、前述の1号店を立ち上げて事業を進めていくなかで、“予防医療”や“審美歯科”のニーズの高まりを受け、さらなる事業拡大にチャレンジするために、独立してホワイトエッセンスを設立しました。「服やアクセサリーといった“ファッション”よりも“美容”にお金をかけたい」という方は、男女問わず年々増えています。今後もセルフケアの一環としてホワイトニングのニーズもさらに高まっていくと予想され、こうした潜在需要を掘り起こしながら加盟院を増やしていく計画です。

自社開発の医療機器・薬剤による“本物のホワイトニング”を提供

――ホワイトエッセンスの強みはどこにあるとお考えでしょうか?

坂本氏:大きく二つあります。一つは、短時間の施術で高いホワイトニング効果が得られるホワイトニング材や照射機を自社開発していることです。歯科医院で行うホワイトニングは、歯にホワイトニング剤を塗布し、そこに照射機で特殊な光を当てることでホワイトニング効果を促進させて、歯を白くします。このホワイトニング剤と照射機の相性によってホワイトニング効果が決まるのですが、ホワイトエッセンスはどちらも自社開発し、ホワイトニング効果を最大限高めています。しかも、施術時間は他社と比べておよそ3分の1で済みます。

ホワイトニング剤は、国から高度管理医療機器の薬事認可(クラスⅢ)を受けています。例えば、過酸化水素を配合した「ホワイトエッセンスホワイトニング プロ」は、当社が大学などと共同で8年かけて開発した独自の製品で、新しい成分のホワイトニング方法として特許を取得しています。

また、3年の歳月をかけて開発したホワイトニング専用照射器についても、国内で唯一、管理医療機器・特定保守管理医療機器(クラスⅡ)の認証を受けています。実は、安価なホワイトニングサービスには、国から薬事認可を受けていないホワイトニング材を使用していることがとても多いのです。そういったことがまかり通る歯科業界を変えたいという思いもあり、高い安全性とホワイトニング効果の両立を目指し、長年の歳月をかけて開発、認可を取得しました。

そして、二つ目の強みは、FC加盟医院の歯科衛生士への教育研修制度です。ホワイトニングやクリーニングの施術は、歯科衛生士が担当していますが、国家資格を取ってすぐ施術ができるので技術格差が大きいのが実情です。ホワイトエッセンスではFC加盟医院の歯科衛生士に技術トレーニングやカウンセリングの研修を行い、独自の試験制度の合格者が施術できる仕組みをとっています。短くても2~3カ月、長い場合だと2年かけて合格する方もおり、こうした厳格な認定試験や各種研修制度を設けることで、お客さまが全国どの店舗でもクオリティーの高い施術を受けられるようにしています。

通常の歯科治療では、歯科衛生士が歯科医師の助手として施術を行いますが、ホワイトニングの施術は、歯科衛生士が主役として売り上げを上げることができます。そのため、経営面のメリットも大きく、ホワイトエッセンスに加盟いただいた医院の多くは、年間の利益が倍増しています。いま日本には、約7万件の歯科医院があり、売り上げ1億円を超えているのは上位10%です。人口が減少し、また診療報酬が低下するなかで売り上げを伸ばすのは難しいですが、ホワイトニング事業によって利益率の高い自由診療を拡充すれば、上位10%の歯科医院と同等の利益水準も期待できます。

「中長期的な成長のパートナー」として選んだオリックスの存在

――順調な経営が続いているなか、なぜオリックスと資本提携を結んだのでしょうか?

坂本氏:もともとIPO(株式上場)も考えたのですが、株主の短期的利益確保など制約があるなかで事業拡大の投資を続けられるのか?それが本当に会社や従業員のためになるのか?と疑問を抱き、IPOせず一緒に事業を成長させてくれるパートナーを探すことにしました。
また、ファンドからM&Aの打診も数多くあったのですが、本当にホワイトエッセンスの長期的な成長を考えてくれているのか、懐疑的に感じていました。その点、オリックスはDHCを始め、ヘルスケア領域で資本提携の実績が多くありましたし、企業としての知名度、信頼性も申し分ない。何より、堀池さんとお会いして一緒に中長期的な成長を目指すにあたって、信用できる方だと思いました。

堀池:オリックスは出資時に自己資金を用いることで、外部の投資家に左右されず、短期的な利益ではなく中長期的な視点で協業先のポテンシャルを引き出すことができます。私も坂本社長と初めてお会いしたときに、「笑顔創造産業」という経営理念や「通いたくなる予防歯科をつくりたい」とビジョンを伺い、一緒に長期的な成長を考えていきたいと強く感じました。

近年、オリックスではヘルスケア領域でも特に「予防・未病」分野に着目しています。そのようななか、政府の重要課題をまとめた2024年の「骨太の方針」でも「口腔(こうくう)衛生」が取り上げられました。歯科業界においても虫歯予防・歯周病予防など「予防・未病」分野の社会的な意義が高まりつつあり、ホワイトニングにおけるFCという珍しいビジネスモデルを確立していることから、資本提携を提案いたしました。

オリックス株式会社 事業投資本部 ディレクター/ホワイトエッセンス株式会社 取締役 堀池 涼平

――具体的に協業の話が進んでいくなかで、印象に残っているエピソードはありますか?

坂本氏:堀池さんから「常駐して社員の皆さんと一緒に汗をかきます」と言っていただいたことです。いまやホワイトエッセンスの事業は、FC事業、薬剤および医療機器の製造、歯科医院の経営支援など多岐にわたり、社員には高度な能力が求められます。しかし、創業初期からいる社員も私自身も、ひたすら目の前の目標に向かって突っ走ってきた猪突(ちょとつ)猛進タイプです(笑)。協業によって、大企業が有する経営インフラ、人材マネジメントやコーポレートガバナンス(企業統治)体制等のノウハウを補完できることはまさに渡りに舟でした。

堀池:ホワイトエッセンスはBtoCビジネスが根幹でありながら、メーカーであってコンサルティングでもあって、社員の方々は日々、「多業種格闘技戦」を戦い抜かれている方ばかりです。私を含めて3名がオリックスから常駐し、ハンズオンで経営支援を行っていますが、私たちとしても勉強の毎日です。坂本社長や社員の方々と意見交換しながら知見を共有し、企業文化や業界の慣習を理解しながらオリックスの持っている機能やネットワークをご提供しています。

海外でのFC事業拡大を進める。自社単独では実現できない販路拡大とは

――オリックスとの協業開始から1年がたちますが、両社のシナジーを実感することはありますか?

坂本氏:一番の手応えは、中途採用で優秀な人材が獲得できるようになったことです。ただ、採用プロセスは協業前からそれほど変えていません。オリックスと採用したい人材の解像度を上げ、ジョブディスクリプションを明確化したことで、より当社にフィットする人材が集まるようになったのだと思います。

堀池:この1年は経営体制の整備に注力してきました。人材面ではオリックスの人事制度や採用方法を取り入れ、オリックスのコネクションを生かして、外部の専門家の登用も進めています。また、さらなる成長の土台作りとして、営業プロジェクト管理や会議の進行方法も仕組み化しました。

――今後、取り組んでいきたい課題がありましたら、お聞かせください。

坂本氏:この数年間で、ホワイトニングサービスを提供する競合企業がとても増えています。当社のサービスに自信があるからこそ、技術力だけではなく、施術空間のデザインなどにおいてもホワイトエッセンスならではの魅力をアピールするなどブランディングに取り組み、よりユーザーの認知度を向上していきたいと考えています。

また、近年は円安が続いていますから、輸入している商材は内製化を進め、自社開発の医療機器・薬剤の輸出にも力を入れていきたいです。

堀池:海外輸出は今期から開始したばかりですが、オリックスの海外事業や中華圏グループに販売代理店紹介や現地市場調査の協力もしてもらいながら、まずは東南アジア、続いて中国と展開を予定しています。ベトナム、タイ、インドネシアではすでに現地の販売代理店と締結し、マレーシア・シンガポール・香港の販売代理店とも交渉を進めています。現在はホワイトニング材・照射機の輸出から始めていますが、ホワイトエッセンスのサービスは確かなものなので、海外でのフランチャイズ化にも挑戦していきたいですね。

――最後に今後の目標について教えてください。

堀池:オリックスの強みである金融や不動産の知見、国内外に3万人以上の社員を擁し多様な事業を展開するネットワークを活用して、ホワイトエッセンスの事業拡大を支援していきます。そのための手法として、他社とのアライアンスやM&Aも前向きに検討していきたいですね。ホワイトエッセンス単独では実現できない成長をもたらすことがわれわれの存在意義ですので、常駐メンバーを中心に頑張っていきます。

坂本氏:ホワイトニングは、日本ではそれほど浸透していませんが、予防医療の一つです。高クオリティーなホワイトニングとクリーニングサービスを全国に届けることで、本来の効果を感じてもらい、顧客と歯科業界に従事する方々の笑顔につなげていきたいですね。「歯を輝かせ、人を輝かせ、一生を輝かせる。」これからも本物のホワイトニングとクリーニングを通じて、このミッションを体現していきます。
また、グローバルに美容や美貌に対する意識はますます高まっていきます。歯列矯正や審美補綴(ほてつ)など、ホワイトニングにシナジーがある事業への多角化やさらなる海外展開をもくろんでおり、オリックスの力を借りて、各事業のシナジーを高めながら成長を目指していきます。

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