創業200年以上スペインでオリーブを作り続ける農家が日本で唯一認めるDHC。こだわりを継承し、発展させる第二創業最前線とは

人々の健やかな暮らしを支え、心にも働きかける化粧品。肌に毎日触れるものだからこそ、安心して使え、かつ効果を感じられる高品質な商品を求める声は多い。そんな化粧品市場において、創業以来「高品質・適正価格」に徹底してこだわり続ける企業がある。2022年に創業50周年を迎えた株式会社ディーエイチシー(以下DHC)だ。代表的な「DHCオリーブバージンオイル」をはじめ、肌へのやさしさと機能性を兼ね備えた商品は、多くの人に支持されている。

同社は、2022年にオリックスによる出資を受けて事業承継を行い、第二創業を迎えた。そのかじ取りを行う、代表取締役社長 COOの宮﨑 緑氏、オリックスから出向し代表取締役副社長をつとめる小髙 弘行氏、マーケティング統括ユニット ユニットマネージャーの中尾 羽似氏に、同社の強みをいかに生かしていくのか話を聞いた(以下、敬称略)。

始まりはオリーブオイルから。創業当時から受け継がれる品質の追求

――はじめに、DHCの化粧品事業の沿革について教えてください。

宮﨑:当社の創業は1972年、創業者が大学の研究室を対象とした洋書の翻訳受託業を立ち上げたことに始まります。しかし、収益性が低い翻訳事業を支えるための収益源が必要で、さまざまなビジネスにチャレンジするなか、ある研究者からオリーブオイルの美肌効果について教えてもらう機会があったのです。そのパワーに魅了された創業者は、理想の良質なオリーブオイルを求めて世界中を探し回り、世界最大のオリーブ生産国であるスペインにたどりつきました。農家を何十件も訪ね歩き、ようやく、こだわりの製法を守り抜くオリーブ農家と出会い、交渉を重ねて輸入までこぎつけることができました。このオリーブオイルを使って1980年に誕生したのが「DHCオリーブバージンオイル」、この商品からDHCの化粧品事業はスタートしました。

株式会社ディーエイチシー 代表取締役社長・COO 宮﨑 緑氏

――「DHCオリーブバージンオイル」 はDHCを代表する商品ですが、どのようなこだわりがあるのでしょうか?

中尾:使用しているオリーブオイルを生産するのは、創業200年以上の歴史と実績のあるスペインのオリーブ農家です。「有機栽培」「オリーブの実が傷つき酸化しないように職人が全て手摘みで収穫」「採油工程は24時間以内に行うことが理想と言われるなか、わずか2時間以内にスタート」「オリーブは一切絞ることなく、実を砕いた際わずかに滴り落ちる貴重なしずくのみを使用」など、効率よりも品質を重視する伝統製法を続けています。

スペインのアンダルシア地方に広がる、有機栽培オリーブ農園。世界一のオリーブ生産国のスペインにおいても有機認定を受けるオイルを採取する農家はスペイン全体生産量のわずか2%ほど。

この農家のオリーブオイルを取り扱えるのは、日本ではDHCだけ。最高品質を求める私たちの思いに共感くださり、DHCだけに提供するという約束を40年以上たった今も守り続けてくれています。

宮﨑:この「DHCオリーブバージンオイル」を起点に、ディープクレンジングオイル、マイルドソープ、マイルドローション、など、スキンケアに必要な商品を徐々に増やしてきました。これらがお客さまから評価されたことで、さらに商品ラインアップを拡充。いまではベースメイクから、ボディケア、ヘアケアなどを含め、800近い商品がそろいます。通販の会員数は1500万人を超え、幅広い年齢層のお客さまにご利用いただいています。

DHCの化粧品事業の原点である「DHCオリーブバージンオイル」

――手に届きやすい価格も、多くのお客さまに支持される理由の一つですね。

宮﨑:「本当にいいものを適正価格で提供する」という精神を、創業以来受け継いでいます。なるべく広告費用をかけず、パッケージはシンプルに。製造費以外のコストを極力抑え、ギリギリ採算がとれる価格設定にする。「品質に見合う価格であれば、お客さまはおのずと継続使用してくれる。華美なイメージで売ってはいけない」の精神でご提供させていただいております。

中尾:社員もこの精神を誇りに思い、商品開発をしています。本当に効果が期待できる成分含有量や処方でなければ、商品化しないなど。「成分を減らして安く売ろう」という文化は、DHCにはないですね。

株式会社ディーエイチシー マーケティング統括ユニット ユニットマネージャー 中尾 羽似氏

宮﨑:スキンケアも健康食品も継続することで効果を発揮します。「この価格なら続けて使いたい」と思っていただける価格を、お客さまと一緒に探り当ててきました。原料に妥協せず、まず徹底的に品質を追求する。その結果、他社製品よりも多少割高になってしまったとしても、お客さまが納得してくだされば、それは「適正価格」です。品質と価格のバランスを支持いただいてきたからこそ、今まで成長を続けられたのだと思います。

中尾:品質も価格も、すべての根底には「お客さまの視点を大切にする」という思いがありますね。

宮﨑:顧客起点の発想を大切にした結果、従来の化粧品業界の常識では考えられないことにも挑戦してきました。今では当たり前になりましたが、専用の化粧品やサプリメントを開発し、コンビニエンスストアでの化粧品販売を始めたのはDHCが最初です。サプリメントのパッケージに成分を大きく目立たせて表記するのもDHCが始めました。

ともすれば「DHCは歴史の長い、保守的な会社」と思われがちですが、実は革新的なことに挑戦を続けている会社です。それもすべては「こんな商品やサービスがあったら、お客さまに喜んでいただけるな」「手に取っていただきやすいな」という顧客起点の発想から。結果、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどのほか、直営店、ECなど、さまざまな販売チャネルを有するようになりました。

高品質、適正価格、そして多岐にわたる販売チャネル。これら3つの強みをすべて実現する会社は、業界でも稀有だと思います。

事業承継を第二創業と位置づけ、全社一丸で“会社を磨きあげる”

――2022年11月に、オリックスへの株式譲渡により事業承継を行うことが発表されました。その経緯について教えてください。

小髙:オリックスはヘルスケア分野でM&Aによる事業承継の実績を持っていますが、高齢化の進行で注目される「未病・予防」領域において、DHCの健康食品やサプリメントの事業は魅力的に映りました。また、化粧品においてもロングセラー商品を軸にリブランディングすることで再成長は可能と確信し、オリックスからお声がけをしておりました。

株式会社ディーエイチシー 代表取締役副社長 小髙 弘行氏

宮﨑:オリックスが株主になることは、私は正直不安でした。経営者が変わることによって会社の良さが失われてしまうのではと思ったからです。でも、経営層や各部門とオリックスの間で話し合いが行われるなかで、そうした先入観は違うと感じるようになりました。オリックスの方からは「事業を共に育てる」という意識が伝わってきましたし、今後DHCブランドを成長させ、顧客を守っていくためには、オリックスの盤石な経営基盤のサポートを受けるのが最適な道ではと考えたのです。

小髙: DHCは創業者の強いリーダーシップのもと、部門縦割り型の組織体制で成長を続けてきました。しかし、これだけ先の読めない時代には、従来の組織運営では変化に対応し続けることが難しくなっています。一方で、ボトムアップ型の組織運営は一人の意見によらず従業員の経験と知恵を結集させることで、変化に対応したアクションがとれますし、従業員のコミットメントも醸成できます。事業承継が実現したこのタイミングを第二創業期と位置付け、ガバナンスの強化やルールの整備、生産管理の見直し、事業戦略の再設定などを全社一丸となって取り組み、“会社を磨き上げる”ことが必要と考えました。そこで2023年2月に、全社横断型の企業改革プロジェクト「Project Bright」を立ち上げたのです。

宮﨑:「Project Bright」では「ガバナンス分科会」、「開発プロセス分科会」など常時10前後の分科会が動いています。課題が生じたら会を立ち上げ、解決したら終了するというルールで、一つの分科会のメンバーは多いもので20~30名ほど。当初は経営層でメンバーを指名しましたが、最近では「自分も参加したい」と手を上げる社員が増えてきました。自律型の組織に変わりつつあるのを感じます。

中尾:例えば「コミュニケーション分科会」では、「ブライトタイムス」という社内報を立ち上げましたね。これまで社内報はなかったので、これも変化の一つでした。プロジェクトの進捗(しんちょく)や、各分科会の参加メンバーを紹介するなど、社内に情報を共有することで、参加メンバー以外の意識改革も進んでいると感じます。

宮﨑:「透明性の高い、開かれた会社にする」のは、共有する目標の一つですね。その点では、経営層と社員が直接対話するタウンホールミーティングの開催も新たな試みです。全社員が一度に集まって対話することは難しいので、1回につき40名前後の参加に絞られますが、全社員が3名の代表取締役と対話できるよう回を重ねています

小髙:「Project Bright」を進めてきて、DHCの企業としての足腰はだいぶ強くなってきたと思います。これまで多くの会社の事業承継に携わってきましたが、中に入って社員の方々と一緒に汗をかくということを徹底してきました。オリックスから常駐している他のメンバーも同じ思いです。

お客さまの日常に当たり前にある存在として、美と健康を支え続けたい

――第二創業から10カ月を迎え、それぞれ、今後どのようなことを目指していますか。

中尾:私はマーケティング担当として、もっと多くの人に深く商品の良さを伝えていきたいです。「DHCオリーブバージンオイル」をはじめ、商品一つひとつが抜群の品質だと自負しています。ただ、品質に注力するためパッケージや広告などへのコストを抑えてきた結果、商品への徹底したこだわりや思いをお伝えしきれていないという、もどかしさも感じています。

より多くの方に品質の良さを知っていただき、手に取っていただくため、2023年11月から大型プロモーションを実施します。「たった一滴で、世界は変わる」というキャッチコピーのもと、「DHCオリーブバージンオイル」の魅力を伝えるTVCMを中心とした広告やポップアップイベントなどを展開予定です。これからもお客さまとのより深いコミュニケーション方法を考えていきたいと思います。

小髙:私はやはり、第二創業でDHCの成長を一気に加速させたい。社員とのコミュケーションを通じて、皆がやりたいことを実現するためのサポートをしていくつもりです。

現在、国内ではオリックスからDHCに7名が常駐しています。その他、上海や台湾のDHC支社にも常駐メンバーが4名、各拠点で計11名が連携してバリューアップに向けた活動をしています。DHC社内の視点だけでは難しい、次のステップへのアクセルを踏むことが私たちの役割。それをしっかり果たすために、グローバル視点の成長戦略を実行していきたいと思います。

宮﨑:オリックスグループになって、これまで以上に挑戦できることが増えました。グローバルを含めDHCブランドを大きく育み、攻めの商品開発やサービス提供にチャレンジしていきたいと思います。美も健康も、日々の習慣の積み重ね。DHCはお客さまの日常のなかに当たり前にある存在でいたい。お客さまに寄り添い、美と健康を支え続けることが目標です。

これまでブレることなく培ってきた品質や社員、そしてお客さまとの信頼関係に加え、組織力の強化と部門の垣根を越えた連動ができたら、最強の会社になれるのではないかと思っています(笑)。ぜひこれからのDHCにご期待いただきたいです。

小髙:オリックスからDHCに常駐し、タウンホールミーティングや分科会などで、社員と話す機会をたくさん得ました。オリーブバージンオイルをはじめ、あらゆる商品づくりにおいて、高品質へのこだわり、顧客起点の考え方がより根付いて浸透していることを強く感じています。常駐する私たちも、さらに良い商品・サービスをお客さまにお届けできるよう、体制づくりを全社一丸となって進めていきたいと思います。

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