企業文化を尊重しながら事業を共に育てる。「事業」も「投資」も行うオリックスだからこそ可能な、カーブアウトへの対応力とは

近年、国内M&Aの件数は増加傾向にある。「後継者不足などによる事業承継」、「事業の選択と集中」など、さまざまな事情を抱える企業にとって、M&Aは有効な経営判断として認識されてきた。一方、シナジーを最大化できる売り手と買い手とのマッチングや、最適なスキーム(手法)が求められるため、M&Aには知識と手腕を要する。

多角的に事業展開するオリックスは、M&Aによって事業領域を広げてきた。そのM&Aで培ったノウハウを活用し、これまでにもIT・情報サービス企業のほか、物流、ヘルスケア、酪農などの産業に携わる企業へ投資している。さらに、これまで力を入れてきた事業承継支援に加え、大企業の最適な経営を支える一手となるカーブアウト(※1)などの大型案件にも応えられる体制を盤石にするため、2022年6月、事業投資の推進を担う井田 明一が入社。対応力を強化する事業投資戦略について、井田に話を聞いた。

※1 企業の事業の一部を切り出し、別組織として独立させること

「事業も投資も行う会社」という点に魅力を感じ、オリックスに入社

――まず、オリックス入社前のキャリアについて教えてください。

井田 大学卒業後、新卒で入ったのが国内のITサービス企業でした。その後、MBAを取得して、投資銀行業界へ。これまで外資2社、日系1社でM&Aのアドバイザー業務を担ってきました。主にテクノロジーセクターが担当で、日本企業による海外企業買収、いわゆるクロスボーダー案件なども積極的に手掛けてきました。

――オリックスに入社することになったきっかけは?

井田 これまでアドバイザーという立場でさまざまな案件に携わらせていただきましたが、アドバイザーとしてできることは、新たなオーナーシップへの移行をサポートすることです。そのあと、その企業がどう成長していくのかは外から見守ることしかできません。そのため、投資する側に立ってみたいという思いをもっていました。昨今、大企業の事業ポートフォリオの見直し、事業の選択と集中、事業部門の価値創出といった経営課題に対する有効な手段としてカーブアウトのニーズが高まっています。このようなニーズにも積極的に対応していくというオリックスの戦略に共感し、ぜひ中に入ってやっていきたいと思いました。

――投資銀行に勤めていた経験を踏まえ、外から見たオリックスをどのように感じていましたか。

井田 オリックスは、リース、銀行、自動車など10の事業セグメントを持っており、そのセグメントの一つとして、オリックスの自己資金を投資して投資先の企業価値を高めるプライベートエクイティ(PE)投資(※2)事業を行っています。日本の事業会社で、こうしたことを行っている企業は少なく、稀有な存在です。ここ10年で、30件近くの投資案件を積み上げており、優れた投資をする会社だと認識していました。

※2 非上場企業・事業や上場企業の非公開化に投資すること

大規模案件にも対応できる体制で、企業の価値を守り、さらなる成長を支援する

―― これまで、オリックスは中小企業への投資案件をメインに手掛けてきました。今後は大型のカーブアウト案件にも投資していくのですか。

井田 これまでオリックスの手がけてきた事業投資は、多くの場合、非公開企業であり、「プライベートマーケット」と言われるものです。例えば、オーナー企業の会社に出資する事業承継のケースです。こうしたケースはご相談も多く、今後も継続して対応していきます。

一方で、今後はカーブアウト案件にも応えていきます。元々カーブアウトは「切り出す」という意味のある単語ですが、複数の事業を持っている大企業が、一部の事業部門、あるいは子会社を第三者に譲渡することです。そのような大企業の多くは上場しており、「パブリックマーケット」になります。

上場企業を見渡してみると、昨今、企業全体を非公開化するケースも増えてきています。非公開化することで思い切った構造改革が可能となり、企業価値を大きくすることも可能となります。日本は諸外国に比べて上場企業の数は多いと言われており、今後非公開化の流れは本格的になると考えていますので、そのような案件にもぜひ取り組みたいと思っています。

こうした大企業、上場企業案件をオリックスが手がけるということは、マーケットの関係者を含めてこれまであまり認知されていませんでしたが、今後はこれまでのプライベートマーケットに加えて、パブリックマーケット案件にも積極的に対応していきたいと考えています。

―― 投資対象を大型のカーブアウト案件にも広げる理由はどこにあるのでしょうか。

企業にもよりますが、大企業になるとすべての事業を最適に経営することが難しくなるケースがあります。優先順位もありますから、「自分たちの事業はもっと可能性があるのに、本社から資本を投下してもらえない」、「他社と組んだら、もっとバリューを出せるのに、◯◯グループの一員だからできない」などの課題が生じ、事業の成長を阻むことがあるのです。

そうなれば、オーナーシップを変えたほうが、もっといい事業になる可能性は高くなります。カーブアウトというと、不振事業、不採算事業を売却するという捉え方をされることが多いですが、むしろポートフォリオの中でのミスマッチを解決するという役割が大きいと捉えています。

これまでオリックスが培ってきた事業投資のノウハウは、案件の規模に関わらず生かすことができます。企業の価値を守りつつ、新たな価値を創出してさらなる成長が図れるよう、あらゆるニーズに対応していきたいと考えています。

「共に育てる」という選択肢を持つ、オリックスならではの強み

――多くの投資会社がある中で、オリックスにはどのような独自性があるのでしょうか。

井田 オリックスの強みは、フレキシブルな投資戦略が取れることです。一般的に投資期間の制限から数年で転売せざるをえないファンドに対し、オリックスは自己資金で投資しているため、⻑期間保有することができます。後継者問題を抱えている場合には、その間に次の後継者を立てて事業承継することができます。

また、10の事業セグメントをもつオリックスの既存ビジネスとのシナジーを生み出し、一緒に成長するというスタンスで投資先の価値を向上させることもできます。例えば、オリックスがユーザーになってサービスを磨いたり、投資先企業の製品を全国の営業担当者が売ったりするなど。この強みは投資案件の規模に関わらず、一貫して言えることです。

事業価値を高める手段とはいえ、オリックスの投資により会社の経営者が変わることは、これまで属していたグループの一員ではなくなる、組織や制度などが変わるなど、少なからず社員の方が不安を覚える要素も存在します。ですから、これまでの企業文化を尊重し、かつ同じ事業会社として知見を持ちより、「共に事業を育てる」パートナーとして取り組むことができるオリックスの独自性は、より良いM&Aを進める上で欠かせない強みだと考えています。

――最後に、今後の仕事に対する思いをお聞かせください。

外部環境の変化によって企業は大きな変革を迫られる場合があります。しかし、特に大企業の一部門や継続開示が求められる上場企業では、リスクを伴う大きな構造改革を思い切って行うことが困難な場合もあります。そのような中で、オリックスの投資によって成長路線に乗っていただくことができれば、日本産業の発展にも貢献できるものと考えています。

また、M&Aを行うということは、オーナーシップが変わり、会社の流動性を高めることでもあります。日本はさまざまな点でグローバルよりも流動性が低いのが課題だと考えます。そこを変えることで、これまで以上に価値が出しやすくなりますし、固定化した習慣・評価なども、ためらいなく改めていくことができるのではないでしょうか。私がM&Aという仕事に関わっているのも、そうした思いが根底にあります。オリックスでも、一つ一つの案件に真摯に向き合い、企業の価値創出に貢献していきたいと思っています。

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