[取材先]オリックス 事業承継ソリューション部 部⻑ ⼭本 朋広
中小企業の後継者不足が、年々深刻化する昨今。事業承継を目的に、中堅・中小企業を中心としたM&A成立件数も右肩上がりに増え続けています(※)。国も2020年に「中小M&Aガイドライン」を策定するなど、第三者承継を後押しする一方で、悪質なM&A仲介業者によるトラブルも少なからず存在しています。
このような状況の中、オリックスは全国約60拠点(2025年時点)の営業ネットワークと、多角的な事業展開で蓄積された知見を生かし、幅広い事業承継ソリューションを提供。企業オーナーの意向を最大限に尊重しながら、「M&Aを有力な選択肢のひとつ」として、次世代へのバトンタッチを支援しています。現在のM&A仲介の実態、そしてオリックスの事業承継支援ソリューションの特徴と強みなどについて、事業承継ソリューション部 部長 山本 朋広が語りました。
- 中小企業庁の資料(p12)によれば、2022年度に「民間M&A支援機関を通じて実施された中小企業のM&A件数」は4036件。これは2014年度(260件)の約16倍に相当する。
目次
国の施策により中小企業のM&Aが急増。知見の乏しい新規参入の仲介業者も多い。
──はじめに、国内における中堅・中小企業のM&A動向について教えてください。
山本:近年のM&A件数急増の背景には、国の後押しがあります。実は国は、年々深刻化する「中小企業の後継者不在問題」の解決策として、以前からM&Aによる第三者承継に注目していました。
2015年には、国が主導してM&Aの手続きの要点や注意点などをまとめた「事業引継ぎガイドライン」を策定し、2020年には、同ガイドラインを全面改定した「中小M&Aガイドライン」も公表しました。
一方で、事業承継税制の整備や「事業承継・引継ぎ補助金」の創設にも取り組み、2021年には、「M&A支援機関登録制度」もスタートしました。この制度で登録された支援機関が「事業承継・引継ぎ補助金」の対象となるわけです。
もちろん、支援機関の登録申請には「中小M&Aガイドライン」順守の宣言や料金表の提出などが求められます。このように、中小企業が安心してM&Aに取り組める基盤構築を国が主導してきたのが近年の動向だと言えます。
──結果的に支援機関の数も増えているのでしょうか。
山本:そうですね。ある調査では、現在M&A仲介業者や金融機関、税理士など、約2900社(者)の登録(2025年時点)があり、「M&A支援業務専従者が10人以下」かつ、「2010年以降の設立」の機関が大半を占めると言われています。
──なるほど。比較的歴史の浅い機関が多いということですね。
山本:ノウハウや経験値の少なさも関係しているのか、最近ではM&A仲介におけるトラブルも増加傾向です。中には、思わぬ大事件に発展したケースもありますね。
──そうした事件が起こる原因は、どこにあるのでしょうか?
山本:残念ながら悪質な買い手企業も存在するのですが、仲介業者の責任も大きいと思います。通常、M&A仲介では、売り手側と買い手側の双方に弁護士や公認会計士など専門のアドバイザリーを立て、仲介業者はあくまでも双方の利益が最大になるよう中立の立場で調整していくのが原則です。しかし、なかにはそういったアドバイザリーの必要性を企業オーナーに詳しく説明しない仲介業者もあります。
また「顧問税理士や知り合いの弁護士に相談すれば十分」という企業オーナーがまだまだいらっしゃることも課題ですね。やはりM&Aに関しては、きちんと実績があり、得意とする専門家への相談が必須と言えるのではないでしょうか。
全国約60拠点の営業ネットワークを生かし、経営者目線の事業承継支援を提供
──それでは、オリックスの事業承継サービスの特徴と強みとは何でしょう。
山本:オリックスでは、私たち事業承継ソリューション部が、全国約60拠点の営業担当と連携しているため、全国の中小企業の事業承継ニーズを細かくすくい上げることが可能です。また、ワンストップでさまざまなご要望にお応えできることが特徴だと言えますね。
通常、税理士や金融機関は、M&Aによる第三者承継の支援は行ってくれません。一方、M&A仲介の専門業者は、親族や従業員への承継を積極的には勧めません。しかし、私たちは親族内事業承継における相続関連コンサルティングから、親族外事業承継のM&A仲介まですべて提供可能です。
そもそも私たちが事業承継サービスに取り組んでいるのは、少しでも多くの中小企業に事業を継続し、発展していただきたいという想いからです。オリックスは金融やリースをはじめ、生命保険や企業年金、再生可能エネルギーなど、多様なサービスの提供により成長してきました。そして近年は、日ごろお付き合いのある中小企業のオーナーから、後継者問題についてご相談を受けることが増えています。
私たちとしては、大切なお客さまが、後継者不在を理由に廃業を余儀なくされることを避けたい。ですから「事業が承継されること」そのものが重要であり、承継の方法は大きな問題ではありません。そのため、会社にとって何がベストか、オーナーと一緒にさまざまな可能性を検討できると言えます。
──税理士や金融機関、第三者承継サポートなどとは立ち位置が異なるわけですね。
山本:その通りです。実際、これまで事業承継の支援を行ってきた案件のうち、約7割は親族内承継です。2割が従業員承継で、M&Aによる第三者承継は残りの1割程度です。
やはり、大半の中小企業のオーナーは、お子さんをはじめとした親族に会社を継いでもらいたいという意向をお持ちです。正直、事業承継のご相談に乗るなかで、「親族ではなく、第三者へ承継したほうが成長できるのではないか」という会社も少なくありません。しかし、オーナーが親族内承継を強く希望されるのであれば、私たちはその条件のもとで全力を尽くします。また、息子さんが承継したものの、その息子さんご自身が「やはりM&Aで第三者へ任せたい」といって、再び私たちの元へ相談にいらっしゃるケースなども珍しくなく、お客さまのニーズに長期間にわたって伴走し続けて行きます。
──M&A承継の売却先となる企業の基準はどのようなものでしょうか。
山本:全国約60拠点の営業ネットワークを生かして、原則、オリックスと金融やリースなどの商品を通じてお付き合いがあり、財務的な部分でも信頼度が高い企業を選定しています。近年は特に事業拡大のための有力手段として、M&Aを前向きに検討される企業が増えています。
──実際に、過去M&Aで第三者承継をサポートしたお客さまからはどういったフィードバックを受けていますか。
山本:M&Aを最終合意に導くうえで、日々揺れ動く売り手企業のオーナー経営者の心情と買い手企業のご意向にしっかりと寄り添うことが重要です。M&Aになれてらっしゃる企業はごく一部です。不慣れな企業にとっても大切な決断を後悔なくしていただくことが大前提になります。
その点、オリックスでは双方の企業に営業担当がいるので、お客さまのご意向の変化や小さな心配事にもタイムリーで手厚いケアを提供することができると考えています。「オリックスの営業担当のケアがなかったらM&Aを途中で諦めていたと思う」とおっしゃっていただいたこともあります。
「中小企業の事業承継といえばオリックス」を目指して
──最後に、今後の展望について教えてください。
山本:おかげさまで足もとでは、全国からのM&A相談件数が前期から大幅に増加しています。それに合わせてわれわれも人員を増強し、さらに手厚く、スピーディーに事業承継のお悩みにお応えできる体制を整えているところです。
事業を継続したいという企業の思いにお応えできるワンストップ型のサービスをご提供し続け、「中小企業の事業承継支援といえばオリックス」と言われるような、そんな存在を目指して参ります。ぜひお気軽にご相談いただければ幸いです。