環境配慮を経営に組み込む。脱炭素化を加速するコマニー、ホクショーの取り組みとは

地球温暖化、気候変動問題の解決に向け、化石燃料から再生可能エネルギー(以下、再エネ)への移行が世界的に加速している。業種・企業規模を問わずに企業に対する脱炭素化への期待が高まるなか、先進的な対策を推進する企業は、どのような方針のもと取り組んでいるのか。オリックスが提供するPPAモデル(第三者所有モデル※1)で、自社工場に太陽光発電システムを設置した石川県の2社を訪ねた。

※1:PPAはPower Purchase Agreementの略称。第三者(この場合オリックス)が電力需要家の敷地や屋根などを借り受けて太陽光発電システムを設置し、発電した電力を需要家に供給する事業モデル

【コマニー株式会社】経営理念、方針、戦略を一致させ、具体的な活動を通してSDGs実現に貢献。全社で脱炭素化に取り組む

石川県小松市に本社を置くコマニー株式会社は、パーティション(間仕切り)の専業メーカー。業界のリーディングカンパニーとして、全国のオフィスや工場、学校、公共施設などの幅広い取引先に、快適で機能的な空間を提案・提供している。

コマニーの商品一例。さまざまなパーティションやワークブースによって、人がより豊かな人生を送るための「間づくり」に貢献する。

同社は、2018年に「コマニーSDGs宣言」を表明。早期からSDGsの理念に基づくサステナブルな経営を目指してきた。品質環境推進本部本部長の坂本豊伸氏は、その理由を次のように話す。

コマニー株式会社 品質環境推進本部本部長 坂本豊伸氏

「肌で感じる近年の自然災害や地球環境の変化が、1番の理由でした。このままでは美しい地球を後世に残せないのではと懸念していたところ、2015年9月の国連サミットでSDGsが採択されました。『企業は世の中の幸福に貢献するために存在すべきである』という弊社の理念と通じるものを感じ、SDGsに積極的に参加することを決意。SDGsが掲げる目標と、私たちの経営理念、方針、戦略を一致させ、具体的な活動を通してSDGs実現に貢献していくことを社内外に表明するため、『コマニーSDGs宣言』に至りました」(坂本氏)

2030年までに創出する社会的インパクトの一つとして、「環境負荷50%削減」を掲げ、脱炭素化に力を注ぐ。

2020年には温室効果ガス排出削減目標の国際基準であるSBT認定(※2)を取得。それに伴い、温室効果ガスの排出量を算定・報告する際の国際基準、Scope1(燃料の燃焼など、事業者自らによる温室効果ガスの直接排出)およびScope2(他社から供給された電気、熱、蒸気の使用にともなう間接排出)について、2030年までに50%削減(2018年比)することを宣言。
Scope3(製造、輸送、通勤など、サプライチェーン全体での間接排出)に関しては、「購入した商品やサービスを対象とした排出量の80%に相当するサプライヤーに2024年までにSBT目標を設定していただく」という目標を設定している。

また、再エネ導入も積極的に進めている。事業に使う電力を100%再エネで賄うことを目指した「再エネ100宣言 RE Action」(※3)に参加しており、2030年までに50%、2040年までに100%再エネ導入達成を目標として掲げている。その実現のため、既に売電事業用に自社工場に設置していた太陽光発電を将来的には自家消費型に切り替えるだけでなく、2021年8月にはオリックスが提供するPPAモデルによる設備容量約600kW規模の太陽光発電システムを新規に導入した。

※2:SBTはScience Based Targetsの略称。パリ協定(世界の気温上昇を産業革命前より2℃を十分に下回る水準に抑える、また1.5℃に抑えることを目指すもの)が求める水準と整合した、5年~15年先を目標年として企業が設定する、温室効果ガス排出削減目標のこと。
(参考)環境省 https://www.env.go.jp/earth/ondanka/supply_chain/gvc/intr_trends.html
※3:再エネ100宣言 RE Actionとは、企業、自治体、教育機関、医療機関等の団体が使用電力を100%再生可能エネルギーに転換する意思と行動を示し、再エネ100%利用を促進する新たな枠組み。
(参考)再エネ100宣言 RE Action協議会 https://saiene.jp/

「見える化」により、「経営への実装」を推進

コマニー本社工場に設置された、PPAモデルの太陽光発電システム

新たにPPAモデルで太陽光発電システムを導入した理由を、坂本氏は次のように説明する。
「単純に再エネ率を高めるだけなら、電力会社からグリーン電力を購入すれば事足ります。しかし、せっかくの広大な敷地を太陽光発電に活用しない手はないと思いました。自社所有だと相応の導入コストがかかるため、導入コストを抑えつつ、再エネ率を高められるPPAモデルを選択しました」(坂本氏)

「導入後の成果に満足している」と話すのは、品質環境推進本部 環境推進担当部長の山田良隆氏だ。

コマニー株式会社 品質環境推進本部 環境推進担当部長 山田良隆氏

「稼働状況は上々で、特に晴天の続いた今年(2022年)の6月はわれわれの予想を大きく上回る発電量でした。今回導入した発電システムで各営業所を含む全施設の電気使用量の約5%を賄っており、工場に限定すればその数字は12~3%まで上がります。毎年、夏場が電力消費のピークで、電力会社と契約している電力に使用電力量が迫るたびに緊張を強いられていたのですが、今年の夏は、自家発電量が増えたおかげで余裕が生まれました」(山田氏)

(左)オフィスの入り口では、各ラインの生産・空調に使用している電気量を随時表示。
(右)工場内では、CO2削減目標や、太陽光発電システムによる発電量が明示されている。(※4)

同社では再エネの導入効果を従業員と共有できるように、使用電力量の“見える化”にも取り組んでいる。工場敷地内の目立つ場所に太陽光パネルの発電量を随時表示するほか、工場の生産ラインごとに使用電力量のデータを測定・収集。より効率的な省エネ推進と再エネ利用に向けた方法を分析している。

「脱炭素をはじめ環境に対する目標値は、各部署がKPIとして定めており、『経営に実装』しています。厳しい目標ではありますが、この目標は達成しなければならないものであるという、強い気持ちを持って全社で臨んでいます」(坂本氏)

※4:オリックスのPPAモデルに発電量を表示するサービスは含まれていません。

【ホクショー株式会社】製品の「高品質」はいまや当たり前。差別化のポイント「環境貢献」を、製品、自社取り組みの両輪で推進

続いて訪れたのは、石川県金沢市に本社を構えるホクショー株式会社。物流システムメーカーとして、サプライチェーンの自動化・効率化に貢献している。中でも、主に物流倉庫内で使用される「垂直搬送システム」では業界トップシェアを誇る。

垂直搬送システム「垂直往復搬送機オートレーター」。倉庫内の限られたスペースで、早く正確に商品を移動・搬送する。

同社は省エネ製品の開発や、昨今の自然災害の増加を受け停電リスク回避に力を注いでおり、近年では『〈BCP対応〉省エネ制御装置 起動電力アシストシステム[E-VEAS]』を開発した。

大型の垂直搬送システムは起動時に大きな電力を必要とする。しかし[E-VEAS]を垂直搬送システムに組み込めば、蓄電デバイスがアシストし、最大需要電力を低く抑えることができる。また運転中に発生するエネルギーを電力に変換して蓄電デバイスに取り込み、アシスト電力として再利用することも可能だ。消費電力量は従来と比較し最大50%削減できるほか、最大需要電力の低減によって配線など電材の使用量も最小限に抑えられる。

さらに、システム全体の電力を蓄電デバイスから供給できる自立起動モードも搭載。停電時でも下降運転が可能となるため、自然災害などにより突発的に発生する停電に際し、非常用発電設備がなくても出庫業務が継続できる。
このように環境に配慮し、BCPにも対応する物流システムは、他にはない価値を創出する製品として注目を集めている。

また、製品による環境貢献のみならず、自社の脱炭素化も推進。2020年には本社と、同県白山市にある白山工場おいて、使用電力の30%を再エネに切り替えるという目標を打ち出した。その狙いについて、取締役兼総務部部長の宮下弘司氏はこう説明する。

ホクショー株式会社 取締役兼総務部部長 宮下弘司氏

「現代のものづくりでは、『高品質』はもはや当たり前。加えて、『安全性』や『環境配慮』が求められていると考えます。特に環境配慮については、ここ数年で取引先から『御社のCO2排出量はどのくらいか?』『どんな削減目標を掲げているのか?』という問い合わせが増えており、脱炭素化に取り組まないことは経営リスクにつながります。弊社は早くからSDGsの精神を経営方針に取り込み、脱炭素化は重点項目の一つとして優先的に取り組んでいます」(宮下氏)

PPAモデルによる太陽光発電システム導入などの取り組みで、自社工場のCO2排出量を22%削減

ホクショー 白山第1・第3工場に設置された、PPAモデルによる太陽光発電システム

その中で、脱炭素化を加速する一手として、2021年7月にオリックスの提供するPPAモデルによる太陽光発電システムを導入した。
今回導入した太陽光パネルは2888枚、設備容量にして800kW相当になる。導入によって白山工場全体の原油換算のエネルギー使用量は1100klまで下がり、トータルで2021年のCO2排出量は、22%削減された(2020年比)。

ホクショー株式会社 安全環境品質管理部部長 中川徹氏

「私たちにとって初の太陽光発電システム導入でしたので、パネルの耐久性など最初は不安もありましたが、オリックスのサポートもあり稼働状況はおおむね良好です。初期費用を抑え、メンテナンスも一任できる再エネ発電設備を導入できたことは良かったと考えています」

こう話すのは、安全環境品質管理部部長の中川徹氏だ。中川氏は「これからが大事」と続ける。

「CO2排出量22%削減を実現しましたが、ここからどう下げていくかが非常に難しく、重要だと考えています。太陽光発電システムも導入から1年が経過して、いくつか改善したい点も見えてきました。例えば、冬場の発電や、工場が稼働していない土日の発電量をどう生かすかなど。より効果的な運用を模索していきたいと考えています」(中川氏)

温暖化や環境破壊は、誰か一人がやればいいというものではなく、地球上で暮らす全員が取り組まなければ解決できない、と中川氏。脱炭素化に貢献できる製品を開発するとともに、自社のCO2排出量削減も着実に進めていきたいと話す。

「われわれが事業活動に打ち込めるのも、恵まれた地球環境があればこそ。長く地球環境を維持できるよう、一メーカーとして、できることを続けていきたいと思います」(中川氏)


環境配慮を経営に組み込み、PPAモデルを活用した太陽光発電システムの導入をはじめ自社目標の達成に向けてさらなる改善・取り組みを進める2社。地球環境への危機感が強まる今、こうした企業姿勢がますます問われるとともに、企業競争力向上に欠かせないものであることを再認識する取材となった。

※演出の都合上、マスクを外しています

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