私たちの生活を支える社会インフラとして、欠かせない存在である物流。EC市場の成長により宅配便のニーズが高まる一方、慢性的な人手不足への対応、脱炭素、省スペース化など、業界の課題は近年、高度・複雑化を増しており、それらの解決に頭を悩ます企業も多い。
そんな物流ソリューションの「今」がわかる大規模イベント「第3回関西物流展」が、2022年6月22~24日の3日間にわたり開催された。オリックスグループからも、「オリックス・レンテック」「ワコーパレット(※)」「オリックス不動産」の3社が合同出展。「自動化・省人化」「搬送・保管機器」「不動産投資・開発」というグループのシナジーを生かしたワンストップの物流ソリューションを紹介し、多くの来場者の注目を集めた。どのような展示が行われたのか、リポートする。
※ワコーパレット:オリックス株式会社の連結子会社
自動化・省人化を実現するロボット導入をレンタルで支援―オリックス・レンテック
オリックスグループのブースで、まず目を引くのが最新のAGF(無人フォークリフト)によるデモンストレーションだ。倉庫内を再現した一角で、パレットの積み上げ・積み下ろしを自動で正確に実現している。
「こちらは、VisionNav Robotics社のAGFです。トラックなどからの荷下ろし、運搬、収納や積み込みなど、倉庫内での荷物の運搬にはフォークリフトの活用が欠かせません。しかし、その操作には訓練が必要です。近年の慢性的な人手不足もあり、熟練の作業員を充分に確保することが困難である今、倉庫内運搬作業を人手に頼らず少人数で効率的に実現できるAGFへの期待が高まっています。オリックス・レンテックでは、従来取り扱っていた物流倉庫内を平面的に移動する自律走行型搬送ロボット(AMR)に加え、AGFの取り扱いを進めています」。
こう説明してくれたのは、オリックス・レンテック 事業開発部ロボット・ドローン事業推進チームの舟山輝だ。
「このメーカーは高度な画像処理技術を有しており、AGFにとって重要な高い位置精度やセンシング精度を実現しています。二次元コードを使用して位置把握を行うため導入もスムーズです。私たちはマルチベンダーとして、さまざまなメーカーからお客さまのニーズにあったロボットをご提案できる強みがあります」(舟山)
今回の展示では、AGFの他にEffiBOT Effidence社製(フランス)の最新AMRも紹介した。棚から指定の製品を取り出す「ピッキング」作業負荷を軽減するロボットだ。
「このAMRは、ピッキング作業者の後ろを自動的に追尾してくれるので、作業者はカートを押す必要がありません。さらに自動走行機能も搭載しているので、製品ピックアップ後は自動で梱包作業場所へと運搬してくれます。また、一般的なAMRの最大積載量が100㎏程度なのに対し、このAMRは500㎏まで運搬が可能。物流倉庫のみならず、重量のある製品をつくる工場でも活躍が期待できます」(舟山)
こうしたロボットによる物流現場の自動化・省人化は年々ニーズが高まっているが、コスト面や技術面のハードルが高く、なかなか導入に踏み出せない企業も多い。オリックス・レンテックのレンタル形式による導入支援は、その課題を解決する大きな味方となる。
「購入形式の導入ではコスト負荷も高く、その機器が自社に適さなかった場合のリスクもあります。レンタルであれば、まず小さい規模で導入し、効果を実感した後で本格導入するというステップを踏んでいただくことができます」(舟山)
また、導入の際には技術サポートも行う。本格導入となった際は、オリックス・レンテックのパートナーであるロボットインテグレーターが、顧客の在庫管理システムとロボットのシステムを繋ぎこみ、システム連携まで対応。機器だけではなく、システムを組みソリューションとして提供できるのが、オリックス・レンテックの特徴だと言う。
多様な搬送・保管機器で省スペース化・効率化に貢献―ワコーパレット
では、ロボットを活用する上でも重要なアイテムとなる搬送・保管機器は、どのようなソリューションが提案されているのか。ワコーパレットのコーナーへ向かう。同社は、カゴ台車やパレット(※)など、物流機器を専門に取り扱う国内大手企業であり、物流の省スペース化・効率化に貢献してきた企業だ。2019年9月よりオリックス株式会社の連結子会社となった。
話をしてくれたのは、同社 西日本営業本部 第一グループ・西尾英隼と、第二グループ長・栗田厚志だ。
※パレット:荷物の運搬・入出庫・保管などに使う台のこと。荷物を載せる面のサイドにあるポケットにフォークリフトの爪を差し込み動かすことで、積荷の上げ下ろしや移動などが効率的に行える。
「やはり省スペース化のニーズは非常に高く、空間を垂直に生かす保管機器のご提案を求められることが増えています。近年、取扱数が爆発的に増え、限られた物流施設のスペースを有効に活用したいと考えるお客さまが増えているからです。この『スピードロック』は、中間棚一体型のネスティングボックスで、中間棚を簡単に設置が出来、保管する物流商品のサイズに合わせた自由な使い方が可能です。
また、現場によって異なるニーズも発生するため、さまざまなご要望に応える多彩な機器をご用意しています。今回は、搬送効率化のために一般的な機器よりも高さを出し積載効率をUPさせたカゴ台車や、大切な荷物を盗難・紛失の事故から守るセキュリティカーゴなど、個々の現場の声に応える商品をご紹介しています」(西尾)
他にも、働きやすい環境づくりに貢献する気化式冷風機や、物流商品の多様化に応える冷凍・冷蔵コンテナなど、その取り扱い製品は実に多彩だ。
「弊社の強みは、お客さまの現場のお悩みを聞いたうえで、それを解決する最適なソリューションをご提案していること。製品だけではなく、その導入方法もお客さまのニーズにあった形をご用意しています。もともとは販売形式が中心でしたが、最近ではレンタルでのご提供が半分を占めるようになりました。需要と供給が流動的な物流業界にあって、短期的に倉庫を借りる荷主さまも増えており、よりフレキシブルな対応が求められています」(栗田)
近年の自動化や省人化、また働きやすい職場環境へのニーズから、オリックス・レンテックやオリックス不動産と連携した課題解決も多いという。
「単に商品をご提供するのではなく、どのようにスペースを活用するか、どのように効率化を図るかなど、さまざまな面からお客さまの検討をお手伝いしています。グループの連携を生かし、物流倉庫全体の視点から見た最適解を柔軟にご提案していきたいと考えています」(栗田)
環境価値をテナント企業へ還元する物流施設の開発――オリックス不動産
では、グループシナジーが生かされる物流倉庫は、どのような開発が行われているのだろうか。オリックス不動産のコーナーでは、まず今回の展示を企画した物流事業部 事業推進課 稲冨大我に話を聞いた。
「関西地区のイベントは初めての出展になります。オリックス不動産は、2022年3月に竣工した『箕面ロジスティクスセンター』(大阪府箕面市)をはじめ、近年は関西エリアでも物流施設開発を強化しています。今回の展示は、幅広い方に開発事例を知っていただきたく企画しました」(稲富)
特に2022年3月に竣工した「箕面ロジスティクスセンター」は、大阪市内から約25㎞、新名神高速道路の「箕面とどろみIC」から約2kmに立地し、延べ床面積は約1万9500坪。東西物流の拠点として注目されている。開発を担当した物流事業部 第三課 森本広平は次のように語る。
「箕面ロジスティクスセンターの最大の特長は、環境配慮型物流施設であることです。屋根一面にソーラーパネルが設置されており、原則、施設内で使用される電気はすべて太陽光発電でまかなえます。夜間や悪天候が続く場合でも、オリックスグループの発電事業者から供給される再生可能エネルギー由来の電気を利用でき、CO2排出量ゼロという環境価値を創出できます」(森本)
EV(電気自動車)の充電ポートも完備しており、迫られるサプライチェーン全体での脱炭素化に向けたテナント企業の取り組みを支援する。
「地球環境への配慮はもちろん、働く環境についても、ご相談を受けることが増えています。やはり現在、多くの物流企業が人手不足に悩まされており、人材確保のためには物流施設の職場環境も改善が求められているのです。オリックス不動産では、埼玉県の松伏ロジスティクスセンターなどにおいて、『ここで働きたい』と感じていただけるような魅力を持った物流施設の開発に取り組んできました。箕面ロジスティクスセンターでも、これまでのノウハウを生かし、4階倉庫部分に空調を設置したり、カフェテリアやテラスなどの設備を充実したりなど、快適に働ける環境を目指しています。また住宅建設が進むなど人口増加傾向のエリアにあり、雇用確保にも適した立地です」(森本)
日々、顧客のニーズを聞くリーシング担当の平山真理も、次のように語る。
「物流業界やサプライチェーン全体において、脱炭素化、SDGsへの取り組みは避けては通れないものとなっており、テナント企業の意識も高まっています。私たちは、これまでの豊富な不動産の知見を生かし、交通利便性や機能性が高いことはもちろんのこと、地球環境と働く人に配慮した物流施設の開発を進め、お客さまの価値創出のお手伝いをしていきたいと考えています。
複雑な課題解決には、オリックスグループのシナジーを生かすことが不可欠です。今回、合同出展した2社をはじめグループの連携を強め、お客さまのニーズに応えるさまざまなご提案をしていきたいと思います」(平山)
「第3回関西物流展」の来場者は3日間で2万2355名にのぼり、業界内外における物流ソリューションへの関心の高さを改めて示す形となりました。人手不足・脱炭素・省スペース化など業界が抱えるさまざまな課題に対し、グループ各社の連携によって解決を支援するオリックスグループ。今回出展した各社の詳細は以下からご覧いただけます。