業界を超えたコラボレーション施策事例と成功の鍵

[Publisher] TechBullion

この記事はTechBullionのHillaryが執筆し、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

コラボレーション型のビジネスモデルはそうでないビジネスモデルと比べ、多くの利点をもたらします。コラボレーションとは、共通の目標に向かって他者や組織と協力することです。コラボレーション型のビジネスモデルには、ジョイントベンチャー(複数の企業が互いに出資し新しい会社を立ち上げて事業を行うこと)から、戦略的提携や外部委託のほか共創(co-creation)まで、さまざまな形があります。コラボレーション型ビジネスモデルの主な目的は、相互利益のため互いの強みやリソースを活用することです。

コラボレーション型ビジネスモデルのメリット

コラボレーション戦略を取り入れるメリットは以下のとおりです。

  1. 新規市場へのアクセス:これまで参入できなかった新しい市場にアクセスできます。その結果、顧客基盤を拡大し収益を増やすことができます。
  2. リソースの共有:技術や専門知識のほか回線やインフラなどのリソースを共有できます。その結果、製品やサービスの質を維持しながらコストを削減できます。
  3. イノベーションの促進:コラボレーションは多くの場合、アイデアの交換や知識の共有を通じてイノベーションを促し新しい視点を生み出します。これが製品やサービスの開発・改良につながり両者が利益を得られる可能性があります。
  4. リスクの軽減:企業はパートナーとリスクを共有しリスクを軽減することができます。これは特に中小企業の助けになります。中小企業のリソースでは潜在的なリスクに対応できない可能性があるためです。
  5. 競争力の強化:互いの強みとリソースを活用することで、企業は市場における競争優位性を獲得できます。これにより、より良い製品やサービスを低コストで提供できるようになり最終的には、市場シェアの拡大につながります。

コラボレーション戦略の種類

  1. ジョイントベンチャー:特定のプロジェクトやビジネス機会に向けて、複数の企業が提携することです。共通の目的を達成するため、各企業が専門知識やリソースのほか資本を提供します。ジョイントベンチャーは、新規市場への参入、リスクやコストの共有、新技術へのアクセス、製品やサービスの拡充を目指す企業にとって有益です。
  2. 戦略的提携:ジョイントベンチャーと同様に複数の企業が特定の目的のために協力することです。ただし、ジョイントベンチャーは特定の期間やプロジェクトのために結成されますが、戦略的提携は共通目標の達成に焦点を当てた長期的なパートナーシップを指します。戦略的提携には、知識や専門知識の共有のほか製品やサービスの相互販売、共同ブランディングの取り組み、さらには、一部事業の統合が含まれます。
  3. 共創:顧客や利害関係者と協力し彼らのニーズや好みに合う製品やサービスを創造することです。この戦略により、ターゲット市場から貴重な洞察を得ることができます。また、開発プロセスに顧客が積極的に参加することを通じて顧客ロイヤルティーを育むことができます。クラウドソーシング、フォーカスグループ、カスタマーアドバイザリーボード(CAB:顧客企業が参加する諮問委員会)など、共創にはさまざまな形があります。
  4. オープンイノベーション:企業が研究機関、スタートアップや他企業などの外部組織と連携し新しいアイデアや技術を取り込むコラボレーション型の製品開発です。外部リソースを活用することで、より幅広い情報や専門知識にアクセスでき、迅速かつ効果的に革新的な製品やサービスを開発できます。
  5. ライセンス契約とフランチャイズ:自社の知的財産(特許や商標など)を、手数料や使用許諾料と引き換えに他社が使用できるようにすることです。新たな市場や事業に多額を投資することなくビジネスの範囲を拡大し、さらなる収益を生み出すことができます。フランチャイズはライセンス契約に似ていますが、ブランディングやプロセスのほかサポートシステムなどの自社のビジネスモデルを利用する権利を他社に与えるものです。
  6. 業界コンソーシアム:共通の課題や機会に取り組むために集まった同業者のパートナーシップです。多くの場合、ベストプラクティスの共有や共同研究プロジェクトのほか全メンバーに利益をもたらす共通基準の設定などが含まれます。
  7. サプライチェーンのコラボレーション:サプライチェーンに参加するサプライヤーやパートナーと緊密に連携し効率性の向上やコストの削減を目指すことです。情報やリソースの共有を伴うこともあります。

1. アップル社とナイキ社:イノベーションのための戦略的パートナーシップ

アップル社とナイキ社は、2006年にiPod用ランニングシステムNike+を発表して以来、戦略的パートナーの関係にあります。Apple Watch Nike+、Nike Training Clubアプリ、Apple MusicとNike Run Clubの統合など、複数のプロジェクトで協力しパートナーシップを発展させてきました。

このコラボレーションの成功要因は、テクノロジーを活用しスポーツとフィットネスにおける顧客体験を向上させるという共通のビジョンにあります。ハードウエアとソフトウエアの専門知識を融合させることで、両社は顧客のニーズに応える革新的な製品を生み出してきました。さらにこのパートナーシップにより両社は互いの顧客基盤を活用し世界的にリーチを拡大してきました。

2. ウーバー社とスポティファイ社:シームレスな顧客体験のための連携

ライドシェア大手のウーバー社は2014年、乗車中の顧客に向けて統合されたエンターテインメント体験を提供するため音楽ストリーミングサービスのスポティファイ社と手を組みました。このコラボレーションにより乗客はスポティファイとウーバーのアプリでアカウントを連携でき、乗車中の音楽をコントロールできるようになりました。

このパートナーシップは顧客体験を向上させただけでなくブランド認知度や顧客獲得のほか顧客維持の面で両社に利益をもたらしています。また、一見無関係な異なる業界同士がどのように協力し、顧客にシームレスでユニークなサービスを提供できるかを示す事例となっています。

3. レゴ社とエアビーアンドビー社:創造的なマーケティングパートナーシップ

おもちゃメーカーのレゴ社は2016年、民泊プラットフォームのエアビーアンドビー社と手を組み、レゴでできた実物大の家に1泊できるという唯一無二の体験を提供しました。このコラボレーションは、レゴ社の新製品「LEGO House」を宣伝し創造性と想像力というレゴ社のブランド価値を紹介するためのマーケティング戦略の一環でした。

このパートナーシップは、注目を集めただけでなく両社が互いの顧客基盤を開拓する機会になりました。また、創造的なコラボレーションによって企業が新たなオーディエンスにリーチしブランド認知度を高められるかを実証しました。

4. スターバックス社とスポティファイ社:ロイヤルティープログラムの提携

スターバックス社とスポティファイ社は2015年、顧客に無料音楽ダウンロードの特典を与えるロイヤルティープログラムを開始し、それ以来コラボレーションを続けています。このパートナーシップは、年を追うごとに進化しています。両社がアプリを統合することで、顧客はスターバックス店舗で流れている曲をスポティファイのアカウントに直接保存できるようになりました。

コーヒーの小売りと音楽ストリーミングという互いの強みを生かすことで両社の顧客ロイヤルティーとエンゲージメントが高まるという効果が出ています。また、顧客にとっての価値を創造する異業種間パートナーシップの力も証明しています。

5. ユニリーバ社とアリババ社:デジタルトランスフォーメーション(DX)のパートナーシップ

多国籍消費財企業のユニリーバ社は、事業運営を変革し成長中の中国市場に参入するため、中国の大手eコマース・プラットフォームであるアリババ社と手を組みました。アリババ社のデータ分析とデジタルマーケティングの能力を活用することで、ユニリーバ社はサプライチェーンを効率化し中国の顧客にリーチしました。

このパートナーシップにより、ユニリーバ社は中国で大きな成長を遂げアリババ社のトップサプライヤーの仲間入りを果たしました。また、テック企業とのコラボレーションによって、伝統のある企業がデジタル時代に適応し、市場での競争力を維持できることも実証しました。

コラボレーション型ビジネスモデルを成功させるための鍵

単に協力し合うだけでは不十分です。パートナーシップをすべての関係者にとって実りあるものにするためには、明確で効果的なコラボレーション型のビジネスモデルを構築することが重要です。

1. 明確な目的と目標

実りあるコラボレーション型ビジネスモデルを構築するための第一歩は、明確な目的と目標を設定することです。例えば、市場シェアの拡大や新規市場への参入のほかコストの削減など、コラボレーションを通じて何を実現したいかを明確にする必要があります。こうした目標について共通の理解を形成することが、パートナーシップにおける意思決定の指針となります。

2. 役割と責任の明確化

コラボレーションには、パートナー間のしっかりした相互信頼が必要ですが、その実現には、役割と責任が最初から明確に定義されていることが重要です。それぞれの任務や成果物を具体的に定義すること、特定の意思決定の責任者を明確にしておくことなどが含まれます。役割を明確化することで重複作業を防ぎ、すべての参加者がパートナーシップにおける自らの責任を理解できるようになります。

3. 効果的なコミュニケーション

効果的なコミュニケーションは、どのような関係でも極めて重要ですが、複数の当事者が関わるコラボレーション型ビジネスモデルではさらに重要です。進捗(しんちょく)や課題のほかパートナーシップの変更などについて、すべてのパートナーが状況を把握できる定期的なコミュニケーションの手段を用意すべきです。これには、週次ミーティングや月次報告書のほか気軽にコミュニケーションを取れるオンラインプラットフォームなどが含まれます。

4. 相互の信頼と尊敬

信頼と尊敬は、コラボレーション型ビジネスモデルの成功に不可欠な要素です。すべてのパートナーが互いの能力や誠実さのほかコミットメントを信頼することが重要です。信頼と尊敬がなければ協力関係はたちまち崩壊し、対立を招き、最終的にはパートナーシップの成功を妨げることになります。

5. リソースの共有

コラボレーションは多くの場合、情報や専門知識のほか技術、さらには物理的な資産といったリソースの共有を伴います。これは、パートナー企業がより効率的に目標を達成するのに役立つだけでなく、パートナーシップ内における平等意識にもつながります。コラボレーションを成功に導くため、すべての関係者が公平かつ公正な方法でリソースを提供する意志を持つべきです。

まとめ

今日の変化の激しい環境で成功を収めるには、コラボレーション型のビジネス戦略が何よりも重要です。コラボレーションは、機会を解き放ち、イノベーションを促し、市場を拡大します。さまざまなコラボレーション型のビジネスモデルや成功事例を見れば、協力関係を結ぶことのメリットは明らかです。パートナーシップを効果的にするためには、明確な目的や役割の定義のほかオープンなコミュニケーション、信頼そしてリソースの共有、柔軟性、意思決定のプロセス、さらに定期的な評価が不可欠です。コラボレーションは単なる選択肢の一つではなく競争力を維持し長期的な成功を実現するうえで不可欠です。このアプローチを取り入れることこそが、相互につながる世界でビジネスの可能性を最大限に引き出すための鍵となります。

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