加速する少子化。逆風のマーケットで、「学校制服」業界最大手のトンボが打ち出す成長戦略

【岡山県・株式会社トンボ】

小学校から高校まで、全国約1万5千校に年間150万着の学校制服を提供する株式会社トンボ。繊維業のメッカである岡山県に本社を置き、制服の企画から製造、販売に至るまで業界随一の規模で事業展開を行っています。歴史の長い製品を扱う業界において、トンボの特徴と言えるのは、伝統に固執することのない自由闊達(かったつ)な企業風土にあります。

丸洗い対応の学校制服の開発や、学校制服・体育着の有名ブランドやデザイナーとのコラボレーション、近年ではLGBTQに配慮した学校制服の生産など、時代の潮流に応える先進的な感覚を持って数々の製品を世に送り出し、業界のリーディングカンパニーとしての地位を確固たるものにしてきました。その強みの源泉はどこにあるのでしょうか。オリックス 岡山支店の小川 糧司が藤原 竜也社長と社員の方々にお話を伺いました。

トンボの成り立ちと学校制服企画に求められる時代を読む力

――御社は1876年に足袋の製造から始まり、1930年に学校制服の製造を開始したと伺っています。その経緯について、まずは教えてください。

2022年に代表取締役社長に就任した藤原 竜也氏。トンボの子会社である瀧本株式会社で代表取締役などを歴任されてきた。

藤原氏:そもそもトンボの発祥の地である岡山県の児島・玉野地区は、江戸時代から始まった干拓事業によってつくられた土地です。当時の岡山藩は稲作を計画していたそうですが、塩害がひどく、稲がうまく育たない。そこで塩害に強い綿花が一帯で育てられるようなりました。これが岡山で繊維業が盛んになった理由でもあります。そしてその豊富な資源を生かして、創業者が足袋の製造を始めたのです。

しかし、時代の流れと共に洋装化が進むにつれて、足袋の需要は減少していきました。そこで足袋製造で培ってきた丈夫で長持ちする縫製技術を生かして、1930年に学校制服の製造を開始したというのが、当社の現在までに至る事業のスタートです。

――なるほど、トンボの学校制服の耐久性は、足袋の製造技術がなせる業だったのですね。長い歴史のなかで、ターニングポイントとなった出来事があれば教えてください。

藤原氏:1970年中頃、いわゆる“ツッパリブーム”に乗って、「長ラン」「ロングスカート」といった変形学生服が日本中に広まったことです。この変形学生服の氾濫を防ぐために、制服メーカー各社は学校の先生方と協議しながら、「標準型学生服」を認定するシステムを制定し、基準をクリアした詰襟を販売していくことになりました。

そのようななか、トンボが提唱したのが、現在に至るまで続く「スクールアイデンティティ(S.I)」です。これは、各学校の特徴やニーズをしっかりとくみ取りながら、それに応じた学校制服を作るべき、という考え方です。制服のデザインにそれぞれの学校の校風や校訓を反映させるなどして、制服を通じて学校の存在感を出すことを提案しています。

――以前は詰襟やセーラー服が学校制服の定番でしたが、ブレザーやスーツなどを採用する学校も増えている印象です。近年の制服には、どのようなニーズがあるのでしょうか。

藤原氏:LGBTQへの配慮という観点から男女の区別なく着られる「ジェンダーレス制服」へのモデルチェンジも急速に進んでいます。文部科学省も2015年に性同一性障害などに対する社会的関心の高まりを受け、全国の教育委員会にきめ細やかな配慮を求めるよう通達を出しています。

そのため、性別でアイテムを絞らず、生徒さんの選択肢を増やすことや、デザインそのものから性差を感じさせないものにすることなど、これまで以上に求められることは増えてます。トンボでは、生徒はもちろん保護者や先生方のLGBTQに関する理解増進を目的に、トンボのLGBTQアドバイザーによる講演会なども実施しております。

ジェンダーレス制服では、性の多様性に対応しつつ、全ての生徒様にとって着心地と心地(気持ち)が良い学校制服を企画。男女差の少ないブレザーやスーツスタイルを中心に提案

校風や校訓といった要素だけではなく、こうした社会的な潮流を分析して、そこに合った製品を生み出していくことが私たちメーカーの役割であると言えますし、学校制服業界全体が大きな転換期に来ていると感じますね。

学校のアイデンティティを呼び覚ます「企画提案力」×注文に対応する「小ロット・多品種生産体制」

――では、競合他社にはない御社の強みはなんでしょうか?

藤原氏:二つあります。一つは「営業力と企画力」です。スクールアイデンティティを提唱してきた歴史があるなかで、学校とのコミュニケーションを何より大切にしています。「1校が1社と契約して、企画製造から納品までを依頼する」スタイルが主流になりつつあるので、トンボは学校側のニーズを徹底的に掘り起こし、求めているもの以上の答えを導き出すことを信条としています。

――そういったトンボの姿勢がわかるエピソードなどはありますか?

藤原氏:かつて、スポーツ強豪のある男子校が共学に切り替わるモデルチェンジのタイミングで、制服のリニューアルを当社が担当しました。質実剛健の校風を表しつつ、女子生徒にも受け入れられやすい、かわいらしさも取り入れたデザインを提案したところ、大変喜ばれました。制服の企画は、学校の特色や方針を深く理解しなければできません。それは、学校のアイデンティティを再定義することにもつながります。

――制服の企画を通じて、学校のリブランディングにも貢献されているわけですね。では、もうひとつの強みとは?

藤原氏:「納期管理力」です。業界でいち早く生産管理システムを取り入れ、徹底した納期管理を実現する土台をつくりあげてきました。いまはブレザー化が進んだことで、詰襟の標準型学生服の製造は年間70万着とピーク時の半分まで減少しており、その分、「少ロット・多品種」の製造が求められています。

国内の工場でさまざまな種類の生地や付属品をコード別に管理。また生産管理システムで生産計画から出荷・納品までをコントロールし、少ロット・多品種の製造を実現

学校制服の販売は、入学が決定(=合格発表)してから採寸を行って注文を受け付け、入学式までに人数分を納品するという流れです。2月末から3月下旬に合格発表が行われるので、納品まで10日~2週間程度しかないこともあります。そういった短納期の学校も含め、お取引のある全国1万5千校に対して納期遅延を起こさない会社としてトンボは信頼をいただけています。

――なるほど。今後はどのように事業の拡大や成長を図っていこうとお考えでしょうか。

藤原氏:厚生労働省の人口動態統計によると2023年1月~12月の日本の出生数は約72.6万人、前年比5.8%減少と過去最少を更新する見通しという衝撃的なデータもあります。人口が減少していくなかで、既存の制服事業だけで現在の規模を維持するのは困難であり、新たなチャレンジに向けて積極的に動き出そうとしています。

スポーツウエアや介護ウエアなど、すでに事業として新たな柱となりつつある分野もあります。他にも、10年前に高齢犬用のドッグウェアの新規事業を立ち上げましたが、コロナ禍の影響を受けて休止していたので、その事業も再開したいですね。紳士服事業なども可能性としては大いにあると思っています。いずれにしても、制服事業で培ってきた生産技術や設備、人材などを生かすこと。そして創業から続く創意工夫の精神を持って、新規事業を開拓していきたいですね。

――ありがとうございます。最後にあらためて「制服」の魅力とはなんでしょうか。

藤原氏:サッカーやラグビーの日本代表ユニフォームに代表されるように、同じ制服を着ることで集団の一員であるという自覚が芽生えると感じます。団結力や帰属意識、集団の士気が高まる効果がありますよね。

自らのアイデンティティを再認識し、責任感によって、誇りを持てたり、普段の実力以上の力を出せたりするようになる。それが制服の力ではないでしょうか。伝統を大切にしながらも、次世代にこういった制服の魅力やパワーを伝え続けていきたいですね。

“地域らしさ“にもつながる制服の魅力

トンボの強み、そして取り巻く業界の状況についてお伺いできたところで、社員の方々はどんな思いを持って働かれているのでしょうか。企画担当の志水 衣吹氏と、営業担当の岡村 基威氏のお二人に話を聞きました。

(左)企画提案本部 企画提案課でデザイナーを務める志水 衣吹氏。(右)営業部 販売課で入社2年目の岡村 基威氏。

――はじめに、おふたりのお仕事内容を教えてください。

岡村氏:私は岡山営業所で営業を担当しています。小学校から高校まで県北エリアの学校、約20校の制服に対するご要望やお困りごとを聞いてまわっています。ここ数年、ジェンダーレス制服にモデルチェンジしたいという学校は多いですね。

志水氏:私の担当エリアは中四国全域で、主に制服のモデルチェンジのご相談を受けたときに担当営業と同行し、学校のご要望をヒアリングして新しい制服をご提案しています。大体はコンペ形式となるので、製造部門をはじめ、社内各部門と連携しながら、ご提案内容を固めていきます。地域で有名な花や伝統文化などの要素をデザインに取り入れるなど、トレンドと伝統の両立を心がけています。

――どんなときにやりがいを感じますか?

岡村氏:やはり自分たちが提案して形にした制服が採用され、生徒さんが笑顔で着ている姿を見たときでしょうか。頑張って良かった、苦労したかいがあったという気持ちになります。

また、生徒さんたちが制服を購入される際、採寸のイベントでお手伝いをさせていただくことがあります。ご本人だけでなく、親御さんや、おじいちゃんおばあちゃん、皆が生徒さんの制服姿を見て、本当にうれしそうにしてくださっていて、直接皆さんからお声がけいただけることも励みになりますね。

志水氏:私の場合は学校側に提案する立場ですから、学校の方たちに喜んでいただけるとうれしいですね。

一度、140年以上もの歴史がある母校に制服を提案し、採用されたこともあります。特徴的なセーラー服が有名な高校でしたが、歴史的なモデルチェンジに自分が携われたことは、すごくいい思い出として残っています。

いまはまさに、学校制服のあり方が大きく変わろうとしている転換期ですから、その最前線で携わることに、大きなやりがいを感じています。

――最後に、お二人にとって「制服」とはどのようなものか教えてください。

岡村氏:制服は、学生時代の思い出として記憶や写真に残るものですよね。大人になったとき、学生時代の思い出の一部として心に刻まれるような制服を提案していきたいと思います。より多くの学校からご指名いただけるようこれからも頑張ります。

志水氏:制服を着て歩く生徒さんの姿は、その町の風景を彩っていると感じます。生徒ご本人や学校はもちろん、地域の皆さまにも喜んでもらえる制服を提供していきたいと思います。制服を着ることで、学校への誇りや地域への愛着が芽生えてくれたらうれしいですね。

<取材を終えて>
オリックス株式会社 岡山支店 第二チーム チーム長 小川 糧司

今回の取材を通し、トンボさまの歴史やルーツ、チャレンジ精神を深く知ることができました。LGBTQ対応の制服やアンダーアーマーのような有名ブランドとコラボした体育着の企画など、伝統を守りながら進化を続けるトンボさまのフロンティアスピリッツの源泉を知ることができました。また、全国の学生が当たり前に着ている制服には歴史や思いがたくさん詰まっていることを感じました。時代の潮流に応え、一丸となって新しいことに挑戦する企業風土はオリックスとも近しいものがあるのではと思う部分もあり、今後タイアップできることがないか模索していきたいと思います。オリックスグループとして、今後も多方面から事業支援してまいります。

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