ネットワーク技術にこそ“人と人とのつながり”を。顧客と直接つながるエンジニア集団がDX時代のITインフラ改革を支える

社会の各所でデジタル化、DXの必要性が語られ、多くの企業や組織が取り組みを進めている。働き方改革からサプライチェーンマネジメント、組織横断での情報交換、公的手続きの簡略化など、企業や行政、教育、医療機関まで、さまざまな分野で変革が進んでいる。

社会の変化へ対応するべくITソリューションへの投資に関心が集まる今、改めて考えたい視点がある。そうしたソリューションを実現する、情報通信技術のインフラを構築・保守する「人」の存在だ。

社会のニーズが高度化、多様化する中で、アプリケーションの高機能化も日々進んでいるが、そうした柔軟な変化に対応するには、その土台となるITインフラ領域における高度な知見や技術を持つ人材が欠かせない。

そうしたエンジニアを200人以上抱え(2022年3月時点)、企業にとって欠かせないビジネス基盤となるITインフラを支えるのがエイチ・シー・ネットワークス株式会社(以下、HCNET)だ。この規模感は業界でも屈指であり、非常にユニークな企業となっている。

オリックスは2020年11月にネットワーク(※1)機器の開発・製造会社APRESIA Systems株式会社(以下、アプレシア)への出資を発表。その完全子会社であるHCNETと経営体制の強化、新サービスの開発に取り組んでいる。

本稿では、HCNETとのパートナーシップについて、きっかけや実際の取り組み、今後の展望まで、同社の代表取締役社長 大江愼一氏とオリックス担当者の安久津好雅のお二人に話を伺った。

(※1)ここでの「ネットワーク」とはIT領域におけるものを指し、ケーブルや通信経路により複数のコンピューターをつなげる技術やその状態そのものを指す。本記事で登場する「ネットワーク」はこちらの内容で使われている。

(アプレシアとの提携についてはこちらをご覧ください)

“ネットワークのスペシャリスト集団”として、人の力で社会や企業の課題解決を支える

インタビューカット

エイチ・シー・ネットワークス株式会社 代表取締役社長 大江 愼一氏

――はじめにHCNETの事業や強みについて教えてください。

大江 HCNETはネットワーク提案・設計・構築・機器調達・運用・保守までを、ワンストップで提供するネットワークインテグレーション企業です。長年にわたり、企業や教育機関、病院といったさまざまな業種を支えてまいりました。

大手小売企業や鉄道会社の社内ネットワークの整備や、大学の遠隔講義システムの構築、病院では電子カルテに対応した院内の基盤システムの環境刷新など、あらゆる領域のニーズに対応しています。

HCNET 事業領域イメージ

HCNETが携わる多様な事業領域。一般的なビジネス領域に限らず、教育や医療、自治体におけるネットワークにも深い知見を持つ

そもそも当社と親会社のアプレシアは、電線・材料の製造を行っていた日立電線株式会社(2013年、日立金属株式会社に吸収合併)の情報通信事業部の一部門でした。アプレシアの前身はネットワークの通信に必要な機器類を開発していたプロダクト部門。われわれはインテグレーション部門として、ネットワークの設計・構築を行っていました。日立グループ時代から、特に高い品質と信頼が求められる行政、交通、医療などの分野に携わらせていただき、現在でも続いています。

一般的にインテグレーターは下請けになるケースが多いのですが、当社は直接お客さまとやり取りしながら、要求されるレベルの高い案件に数多く対応してきました。それによって、インフラの土台であるネットワークにおいて高度な技術が蓄積され、豊富な知見を持つ技術者がそろう会社へと成長しました。

“ネットワークのスペシャリスト集団”と掲げていますが、200名以上のネットワークエンジニアが日々直接お客さまと向き合い、提案・設計・構築・機器調達・運用・保守をセットにした課題解決にあたる体制を整えている点が、当社の強みでユニークなところかと思います。

オリックスグループの企業群は“宝の山”

インタビューカット

――順調な経営を続けられてきたように感じますが、なぜ2020年にオリックスの傘下に入ることを決断されたのでしょうか?

大江 もともとアプレシアと当社は、2016年にファンドの傘下に入って独立しました。それから3年が経って独立企業としての基盤が整備され、さらに事業を拡大するためのパートナーを探し始めたところ、オリックスからお声がけいただいたという次第です。

譲渡先の候補はいくつかあったのですが、私はオリックスを強く推しました。オリックスは事業会社としてグループに多様な業態の企業群を抱えており、それらにわれわれの技術やサービスを提供すれば互いに大きく成長できる。そう考えました。

安久津 出資当初、大江さんが「オリックスは宝の山だ」と言ったのを覚えています(笑)。

オリックスは、これまでもIT分野に着目し、情報処理サービス事業や地図情報システムサービスを手掛ける企業などに出資をしてきました。オリックスグループには幅広い事業領域に数多の企業群がありますが、まだITを十分に活用し切れておらず、IT分野における投資先と事業シナジーを発揮できる土壌があります。特にインフラ領域のスペシャリスト集団であるHCNETが、オリックスグループにおいて活躍できる領域が大きいと考えて出資を提案いたしました。

またオリックスには、グループのシステム開発・運用会社の中核を担うオリックス・システムがあります。同社からも見ても、200人規模のエンジニア人材がおり、ネットワークインテグレート技術や情報機器に深い知見を持つHCNETは、願ってもない事業連携先でした。

オリックス・システムが、グループのインフラ構築をする際にインハウスの立場から技術と知見を得られることは大きな意味があることですし、グループ会社外へのコスト流出を抑えられることはメリットがあります。そしてHCNETにとっても、グループ規模の最新のネットワーク構築プロジェクトを経験することは、知見・実績の積み上げとなりますし、更にグループとの事業連携で得た技術経験をグループ外に展開していくことで円滑なビジネスサイクルが創出できると考え期待が膨らみました。

オリックスと連携した新サービスの開発や社内環境の見直しにとどまらず、人事制度改革まで、あらゆる領域での二人三脚

インタビューカット

オリックス株式会社 事業投資本部事業投資グループ シニアヴァイスプレジデント / エイチ・シー・ネットワークス株式会社 取締役 安久津 好雅

――では、オリックスの出資後、これまでどのような取り組みがあったのでしょうか。

安久津 計測器や分析器、ICT機器のレンタルサービスを行うオリックス・レンテックとは特に高いシナジーを発揮して、すでに2021年に共同リリースを行ってサービス展開をしています。

具体的には、HCNETがお客さまのご要望に応じた最適な IT インフラの機器を選定し、設計・構築から稼働後の保守運用までを一括して月額で提供する「SERVICE ORCHESTRA」(サービスオーケストラ)です。

「SERVICE ORCHESTRA」(サービスオーケストラ)のイメージ図

オリックス・レンテックが機器をレンタルで提供することで、初期投資や管理など、お客さまの負担を抑えることができます。オリックス・レンテック側から見れば、これまで機器の提供だけだったところ、ネットワークの設計から管理・運用までをワンストップでご提供できるようになりました。

また、オリックス不動産の100%子会社で、ホテル・旅館運営事業を展開するオリックスホテル・マネジメントと連携して、全国に保有する各施設の安定したネットワークとセキュリティ仕様の高度化に取り組んでいます。

インタビューカット

安久津 オリックスグループのネットワークインフラ整備についても、オリックス・システムと多数のプロジェクトを実施いただいています。グループ全体が使用する次世代基盤改革プログラムにも参画し、ITリソースの有効活用のため、ニーズが高まるサーバーの仮想化構築などを担っていただきました。HCNETにこのプロジェクトに参画してもらえていることに心強さを感じています。

――人事面ではどのような取り組みをされているのでしょうか。

大江 当業界に限らずですが、IT企業の成長にとっても最も大切なのは人材の採用です。ただ、IT人材市場は超売り手市場となっており、若手人材の採用は年々難しくなっています。オリックスからの助言もあって、以前から踏襲していた旧来の人事制度の見直しを行い、業界大手にも遜色ない評価制度や給与制度への変更と、昇格に必要な役割やスキルの明確化を進めました。

また、社員が効率的に業務しながら、交流を活性化できるようなオフィス環境の構築にも着手していますし、社員に会社を好きになってもらえるよう同好会を立ち上げるといった工夫もしています。

また、先ほども申し上げたように、HCNETの強みは顧客とのつながりと人材です。顧客と直接やり取りをするため、提案から設計、提供、保守に一貫して携われ、さまざまな現場を経験できます。なので、仮に未経験で入社したとしても2、3年もすればプロフェッショナルとしての知見を獲得できます。

人が育つ土壌が十分にあるので、以前は即戦力としてスキルや経験を持った方の採用を基本としていましたが、現在では新卒や第二新卒など未経験者の採用も積極的に行いながら、自社での人材育成に注力しています。HCNETには、顧客を通し、人材が成長し、その人材が顧客により良いサービスを提供することで、人材開発と顧客価値の創造が相互に作用する環境があります。

今後はセキュリティ事業に注力

インタビューカット

――最後に、今後の展望について教えてください。

大江 セキュリティ分野の事業拡大です。コロナ禍におけるリモートワークの増加や海外からのサイバー攻撃の激化などにより、近年、セキュリティ関連サービスのニーズが高まってきています。しかし一方でセキュリティに配慮したネットワークを構築するノウハウ・人材は社会的に不足しています。

そうした状況に対応するべく「統合ITインフラベンダー」を掲げるHCNETとして、セキュリティサービス体制の構築、保守メンテナンス等の運用事業やIT情報資産管理などの事業の強化を進めているところです。

安久津 「統合ITインフラベンダー」に向けた必要な機能の強化としては、HCNETでM&Aを推進しました。2022年9月に、設計構築に加えて保守メンテナンス事業に安定した顧客基盤・人的リソースをもつ「グローバルコムサービス株式会社」、2023年1月にはIT情報資産に関する管理状態の分析・把握から管理体制の改善提案・構築支援までワンストップで提供している「株式会社クロスビート」の2社に出資しました。この2社との提携によって、セキュリティ事業を加速して拡大したいと思います。

大江 こうした大胆なM&Aも、オリックス傘下でなければできませんでした。今後もグループの事業や出資先へのDX支援など、両社の成長のため、オリックスとの連携を深めたいと思います。

また、日本全体のDXが進む中、基幹システムは高度化していますが、その土台であるネットワーク技術もさらなる進化が求められています。HCNETは、人材の力を武器に、提案から保守運用まで一貫して対応できる「統合インフラITベンダー」として、より高品質・高信頼なサービスを提供していきたいですね。

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