メーカーとしての強い自覚が、率先した環境配慮を生む。2050年カーボンニュートラル実現を目指す、オカムラの「GREEN WAVE(環境配慮の波)」とは

あらゆる業界において脱炭素化への期待が高まっているなか、ひときわ先駆的に環境対策に取り組み、2050年カーボンニュートラル実現に向けて歩みを進める企業がある。オフィス家具、ストア什器などで知られる株式会社オカムラ(以下、オカムラ)だ。

GREEN(環境配慮)のWAVE(波)を自ら起こし、その波に乗る――「GREEN WAVE」という考えのもと、すべての事業活動で経営資源(人・設備・材料・技術)を活用した環境負荷低減活動を実践。外部イニシアチブ(※1)への参加やISO(国際標準化機構)に代表される各種認証の取得も積極的だ。

同社の進める環境への取り組みと、その背景について、同社 サステナビリティ推進部 部長 関口 政宏氏に話を聞いた。

(※1)外部イニシアチブ:環境・社会・経済における世界的な課題解決に向け、国連や国際認証機関などが提唱する取り組みのこと。

環境配慮は、コストではなく「投資」。メーカーとしての自覚を持ち、率先して「GREEN WAVE」を起こす

オカムラの歴史は、戦後の1945年に航空エンジニアが横浜市磯子区岡村町に集い、資金、技術、労働力を提供し合って事業を起こしたことに始まる。創業初期は、日常生活用品を製造していたが、米軍クラブに家具を納入する仕事を受けたことで、スチール製家具の製造が主力事業へと成長。航空機製造で培った技術を生かして飛行機や自動車の製造も行っていたが、鉄板加工、板金、塗装などの高い技術を生かしたスチール製の丈夫な家具がオフィス市場で広く支持されるに至った。

同時にストア什器の製造や物流システム機器の製造を始め、人が活きる「場」の価値創造を行う企業として、人の活動や交流の拠点を形づくるオフィス環境や商環境づくりの事業を展開。物流システム事業では、ロボット開発なども手掛けている。掲げるミッションは、「豊かな発想と確かな品質で、人が活きる環境づくりを通して、社会に貢献する。」だ。

「モノづくりに対する高い志を持つメーカーとして、オフィスから商業施設、病院、学校、物流施設まで、人が活き活きと働き暮らせる多様な場づくりへと事業を展開してきました」と、関口氏は語る。

株式会社オカムラ サステナビリティ推進部 部長 関口 政宏氏

オカムラは、1990年代より「GREEN(環境配慮)のWAVE(波)を自ら起こし、その波に乗る」という「GREEN WAVE」の考え方を事業指針の一つとしている。そのいち早い取り組みの背景には、メーカーとしての自覚があった。

「メーカーは、ともすれば環境負荷の高い存在となります。例えば工場では、製造に多くの資源や水、そして電力を使います。また塗装の際には、環境に影響を及ぼす物質を排出することもあります。だからこそ、メーカーである自分たちが率先して環境負荷低減の取り組みを行う必要があると考えたのです」(関口氏)

時代によって環境配慮に求められる要素が変遷するため、オカムラは環境長期ビジョンである「GREEN WAVE」を10年ごとにアップデートしている。現在は2021年にスタートした「GREEN WAVE 2030」を推進中だ。「省資源」「長寿命」「省エネ」をはじめ七つの製品判定基準を設け、サーキュラーデザイン(※2)思考で製品を開発するほか、気候変動への対応や、水資源使用量の削減、生産プロセスにおける生産廃棄物の排出原単位削減などについて定量目標を設定している。

オカムラが製品づくりのベースとする、サーキュラーデザイン思考

※2 サーキュラーデザイン思考:「サーキュラーエコノミー(循環経済)」の概念に基づき、「製品企画・設計」から「調達」「製造」「販売」「メンテナンス」「再使用」「リサイクル」に至るまでの製品ライフサイクルの中で、限りある資源をより長く有効に使用し、廃棄物の発生を最小化するものづくりを目指すこと

「中でも最も大きいアップデートは、CO2の削減目標を設定したことです。2030年度のCO2排出量削減目標を、2020年度比50%に。そして2050年までにカーボンニュートラル実現を目指します」(関口氏)

それは現場ほか社内の協力関係があって、初めて成功への道筋をつけられる取り組みだ。「GREEN WAVE 2030」が発表された前年の2020年5月に、ESGへの積極的な取り組みを明記した当時の中期経営計画が発表され、その計画を担う部門としてサステナビリティ推進部が創設された。「環境への取り組みは、コストでなく投資として判断する」という経営トップのメッセージが社内に浸透し始めており、営業部門や工場との協力体制は速やかに整えることができたという。

製造現場は、事業所単位で環境負荷削減目標を設定し、その達成に向けて個別に取り組む。またサステナビリティ推進部は、それらの取り組みの推進機関として、現場の環境負荷削減目標の達成に向けた取り組みの提案も行う。例えば、生産事業所での再生可能エネルギー由来の電力の調達や、自家消費型太陽光発電設備の設置推進などだ。最新の事例では、2023年2月に生産拠点である御殿場事業所(静岡県御殿場市)にオンサイトPPA(第三者所有モデル )の太陽光発電設備を導入した。

脱炭素に向けて、オンサイトPPA(第三者所有モデル)の活用へ

静岡県御殿場市に位置する御殿場事業所。1,152枚の太陽光パネルからなる、オンサイトPPA(第三者所有モデル)による太陽光発電設備を導入した。

実は太陽光発電設備の導入は、かねてより検討を重ねていたが、いくつかの条件があった。太陽光発電設備は主に工場の屋根に設置するため、建物がその重量を支えられること、パネルを十分に並べる面積があることが求められる。また、できる限り発電量を上げつつも、自家消費量とのバランスを取るため、休日も電力を使用する施設であることが望ましかった。

「これらの条件をクリアしたのが御殿場事業所でした。御殿場事業所では、店舗向けの冷凍冷蔵ショーケースを製造しており、休日も製品テストを行っているため一定量の電力が必要です。建屋は比較的新しく、屋根に太陽光パネルを並べる面積も十分にありました。約520kWの太陽光発電設備を導入することにより、工場稼働日の約10%の電力をまかない、休日でもほぼ余剰電力を出すことなく運用することができると試算できました」(関口氏)

また、御殿場事業所で再生可能エネルギー由来の電力が未導入であったことも、導入を後押しした遠因の一つだった。同社は一部の生産事業所でトラッキング付きの再生可能エネルギーを導入しており、本社のある神奈川県内の生産事業所では、県内水力発電由来の電力を使用している。地元での環境活動に還元する取り組みでもあるため、積極的に導入を進めたが、これは県内の事業者のみが契約可能であるため、県外にある御殿場事業所では利用できなかった。

太陽光発電設備の導入にあたって採用したのは、オリックスの提案したオンサイトPPA(第三者所有モデル)だった。太陽光発電事業者としての豊富な実績を評価するとともに、既に契約していた倉庫のなかにオリックスの太陽光発電を利用している施設があったため安心感があったという。こうして2023年2月に稼働を開始した。

「年間発電量は約570MWh。これにより年間で約250トンのCO2削減を達成できる見込みです。オンサイトPPA(第三者所有モデル)は、クリーンな電力を使用できているということが実感しやすいため、現場のカーボンニュートラルに向けた意識がより高まっていると感じます」と関口氏は語る。

折しも電力価格の高騰している最中の稼働開始であったため、電力価格を抑えてクリーンな電力を利用できるようになったことも、副次的かつ大きなメリットになったという。

環境配慮に取り組むためには、日々変化する技術や基準などの「情報」が不可欠

昨今は顧客の環境意識も高まり、製造過程におけるCO2排出量の削減など、環境に配慮した製品を求める声も増えた。こうした要望を受け、オカムラはサーキュラーデザインの考え方の策定と同時期の2022年11月より「カーボンオフセットプログラム」をスタートしている。オフィス製品の原材料調達から製造、輸送、廃棄までの製品ライフサイクルを通じて、CO2の排出量を正しく計算し、カーボンオフセットを行う製品を顧客に提供。顧客は対象製品を購入することで、温室効果ガス削減活動に寄与することができるという取り組みだ。

「原材料や部品のトレーサビリティをひとつひとつ確認するなど、とても難しい取り組みではあります。しかし、『サステナブルな提案をしてほしい』というお客さまの声に応えていきたい」と関口氏は語る。

顧客からの要望で、サステナビリティ推進部が営業担当者に同行し、自社の環境に対する取り組みについて話す機会も多いという。より良い提案ができるよう、営業担当者向けに研修も実施した。

「環境配慮にしっかりと取り組み、地道に伝えていくことは、自社製品の付加価値につながっています。」(関口氏)

同社の2050年カーボンニュートラル実現に向けた取り組みは、現在のところ順調に進んでいる。2022年には、2020年を基準値としてCO2排出量24%削減を達成した。2023年に御殿場事務所の太陽光発電設備が稼働したことにより、CO2排出量はさらに削減できることが予想される。しかし「山はここから」と関口氏は語る。

「1年目に一気に進めたために数字は下がっていますが、昨年(2022年)は対前年比では排出量が増えてしまいました。電力会社から提供されるCO2排出係数のブレも大きく、どれだけ取り組んでも外部要因で数字は上下してしまうのが実情です」(関口氏)

事業が成長すれば、工場の稼働や物流が活発になるため、CO2排出がおのずと増えるというジレンマもある。

「とはいえ、取り組みは進めなければなりません。省エネ設備の導入など、できるところから段階的に対応していきます。また、サステナビリティ推進部の取り組みだけではなく、生産事業所の課題は生産事業所内で対応することも大切だと考えています。例えば、電力は再生可能エネルギーを導入することで脱炭素を図れますが、生産事業所で使用している燃料から排出されるCO2削減の画期的な解決方法はまだありません。燃料を電気に切り替えるなど新たな取り組みも必要です」(関口氏)

サステナビリティ推進部では、国内外のすべての環境負荷要素を集計し、グループ連結で管理している。サプライチェーン上のCO2についても、把握する段階に到達した。今後は、このスキームをさらに高め、2050年のカーボンニュートラルへと進めていく予定だ。

「環境分野は、技術進歩や基準の見直しなど、さまざまなことが急に進行することも多く、最新の情報を収集することが大切になります。オリックスさんはこの分野にも強いため、今後も密な情報共有をお願いしたいですね」(関口氏)

脱炭素の取り組みは、「これを導入すればOK」という一律の正解があるわけではない。

例えば、オンサイトPPA(第三者所有モデル)の導入一つをとっても、生産する製品や稼働時間によって工場の電力の使い方は変わるため、予測・判断して最適な導入方法を選択する必要がある。また、自社の敷地外に設置された太陽光発電設備から電力を買い取るオフサイトPPAなど、他の調達手段の方が、適する場合もある。技術や制度などの最新状況も検討しながら、最適な取り組みを進めていくことが重要だ。
オリックスは、再生可能エネルギー導入に関する豊富な経験と知識を有するパートナーとして、企業の脱炭素推進をトータルに支えていく。

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