企業経営の根幹を担うのはなにより「健康」。オリックスが予防医療にかける思いとは

中小企業庁の調査によれば、経営者の年齢は「60歳~74歳」と分散しているものの、高齢化が進んでおり(※1)、健康寿命(健康上の問題がなく、自身で自立して日常生活を送れる期間)に差し迫っているという。企業の休廃業、解散件数増加の背景には経営者の高齢化が一因にあると考えられており、経営者の健康寿命の延伸は、企業の存続上、避けては通れない重要な課題となっている。

(※1)中小企業庁 2022年「小規模企業白書」第7節 経営資源の有効活用

そんな健康寿命の延伸のために、近年、医療業界でも注目を集めるのが、病気を未然に防ぐ「予防医療」である。オリックスの連結子会社で医療機関向け経営支援サービスを手がける株式会社CMCでは、経営者の健康をサポートする新たな拠点として、2023年3月に会員制医療サービス「セントラルメディカルクラブ世田谷」をオープンした。株式会社CMCでセントラルメディカルクラブ世田谷の運営責任者をつとめる佐藤 史学と営業担当者である佐宗 麻理子の2人に、予防医療にかける思い、サービスの魅力から利用者の声まで聞いた。

オリックスと予防医療の関係とは

(右):株式会社CMC セントラルメディカルクラブ世田谷 運営責任者 佐藤 史学(左):営業担当者 佐宗 麻理子

――セントラルメディカルクラブ世田谷では、経営者の健康を支えるために、会員制医療サービスを提供しています。なぜ、オリックス及び株式会社CMCは予防医療に関するサービスを充実しようと事業を展開しているのでしょうか。

佐藤:オリックスは、全国の法人営業拠点を通じて、さまざまな業界の中小企業に事業承継に関するソリューションを提供しています。

私自身これまで事業継承の支援を行うなかで、経営者の高齢化・健康の問題を理由に廃業を余儀なくされる中小企業を多く見てきました。経営者の高齢化は一つの社会課題でもあると考えています。企業がこれまで培ってきた独自の技術やネットワークがなくなってしまうことは、その企業だけでなく、地域経済ひいては国内経済の衰退を招きかねません。

そうした状況を踏まえて、オリックスでは主要顧客である中小企業の経営を金融面だけではなく、“健康面”からもサポートしたく、予防医療に関するサービスの充実を近年進めています。

――そのような狙いの一つである、セントラルメディカルクラブ世田谷の概要について教えてください。

佐藤:「経営者の健康サポート」をテーマに掲げる会員制の医療サービスです。検査は、健診施設である「セントラルクリニック世田谷」と提携しており、主に三大疾病(がん・心疾患・脳血管疾患)を対象とした人間ドックでは、約90におよぶ検査項目で全身をくまなくチェックし、健康データの管理や日常の健康相談サービスなど、会員制だからこそできる、自身の健康に向き合える環境とサービスを提供しています。

提携先のセントラルクリニック世田谷では、高精度の最新検査機器を多数備えています。がんや認知症をはじめとする病気を“ステージ0”、つまり症状が出ないうちに早期発見するためには、体内の状態を視覚化して詳細にチェックできる画像診断が欠かせません。セントラルクリニック世田谷では、1cm以下の小さながんも発見できる「PET-CT」や、磁場と電波を用いて深部の組織や病巣を画像化する「MRI」など高精度の画像診断機器を完備しています。

加えて、従来の2Dマンモグラフィよりも高精度に乳がんを発見できる「トモシンセシス」、乳房全体を均一にスキャンできるため精度や再現性が高く、乳がんの早期発見が期待される「ABUS」など、女性特有の病気にも対応できる最新設備もそろえています。

佐宗:日本人女性がかかるがんの中で最も多いのは乳がんですし、その早期発見に貢献したいという思いは、女性として強くあります。セントラルメディカルクラブ世田谷は1契約で3名までご登録いただけるので、経営者の方だけでなく、奥さまをはじめとするご家族の方や従業員の方も会員登録いただくケースが多いです。どうしても経営者の方一人だけでは健康への意識を強く持ち続けることが難しいですが、ご家族や従業員の方の健康を考えることで自身の健康も見つめなおすことができます。また、奥さまと娘さまに少しでも恩返しがしたい、という思いからご家族全員で会員登録される経営者の方もいらっしゃいました。

――検査も1人で行くより、ご家族と行く方が不安も払拭(ふっしょく)されますしね。不安を感じないという意味では、周囲にも緑が多く、リゾート感も漂う施設ですが、なにかこだわりがあるのでしょうか?

佐藤:やはり、「医療施設」と聞くと身構えてしまう方も多くいらっしゃると思います。だからこそ、いらっしゃる方がリラックスできる空間の整備は、本サービスの構想当初から重視していたことです。ここ世田谷区上野毛は、江戸時代には有数の景勝地として知られ、明治時代以降は別荘地として人気を集めました。いまでも緑が多く残り、歴史的な建物もある。この恵まれた立地の魅力と景観を生かし、体だけでなく心も整う空間を実現するべく、多くの高級ホテルや旅館を手がけてきた設計会社に内装のデザインをお願いしました。

(上段)会員専用ラウンジや個室もあり、多忙な経営者が体と健康にじっくり向き合える空間に。都会の喧騒を離れてリラックスできるよう、外にはテラスも設置されている。(下段)高精度なPET-CT、MRIなどの検査機器がそろう。専属のコンシェルジュが案内し、質の高い検査と診断を提供。

――「経営者の健康サポート」がテーマということですが、検査後のサポートもあるのでしょうか?

佐藤:本サービスは検査をして終わりではなく、万が一病気が見つかった場合には、セントラルクリニック世田谷が診療科ごとに提携している先生をご紹介しています。一般的に検査機関は病院単位で紹介状を書くと思いますが、セントラルクリニック世田谷は各分野のスペシャリストの先生を直接ご紹介しており、この点も大きな特長かと思います。

また、過去の検査で蓄積したさまざまな種類の検査結果データをまとめて提携先の先生に共有できる点も、本サービスの大きな強みの一つです。通常の人間ドックでは、検査項目に応じて、複数の検査機関で検査することが多く、検査結果データをまとめて蓄積できないこともあります。しかし、本サービスでは、各検査結果のデータをまとめて、提携している先生に共有できますので、より正確な診断が期待できます。

予防医療の重要性を実感した、お客さまの声

――実際にどういう方が会員になられているのでしょうか?

佐宗:年齢は40代~60代が中心で、経営者を含めこれから会社で重責を担うと思われる40代の方が特に多いですね。また、税理士や弁護士といった士業の方も多く、なかには医師の先生もいらっしゃいます。

事業承継の提案をする際に、雑談も兼ねて健康管理状況をお伺いすると、「これまでまったく健康を気にしていなかった」という経営者の方も多く、そういう方ほど本サービスに興味を持っていただけますね。ある2代目の経営者の方は、先代から会社を引き継ぎ、経営を軌道に乗せるまで苦労されたからこそ、「家族に資産を残すまでは会社を成長させたいので健康を維持したい」と入会いただきました。

私自身も医療・健康について知れば知るほど、予防医療の重要性を多くの方にお伝えしたいという思いが強くなりました。日本人の死因の第1位であるがんは、早期発見ができれば9割以上治る時代になっています。まずは予防医療について興味・関心をもっていただくこと。それが何より大切だと考えて、日々提案活動をしています。

――利用者の方も、実際の検査を通して気づくことも多いのでしょうか?

佐宗:セントラルメディカルクラブ世田谷と同じく、株式会社CMCが運営するがん治療に特化した宇都宮で展開するセントラルメディカルクラブで、検査した際にがんや冠動脈瘤(かんどうみゃくりゅう)が見つかった方がいらっしゃったそうです。その方から「命を救ってもらった。提案がなかったら、今頃どうなっていたか…」と感謝の言葉をいただけてうれしかった、とある営業担当者から話を聞きました。オリックスでは、中小企業の成長を支援するためにこれまでも多様な事業を手がけていますが、この事業は人の命を救うことができる、本当にやりがいのある仕事だと感じています。

事業の継続と成長を「企業全体の健康」という観点で支えたい

――そもそも体が健康でなければ、安定した経営も難しいですからね。

佐宗:本当にその通りだと思います。会員さまからお聞きした話ですが、次期社長と期待されていた40代の若手のリーダーが、脳の血管障害で突然倒れ、言葉が話せなくなってしまったそうです。その方は新規事業の立ち上げの責任者で、営業先、発注先、プロジェクトの進捗(しんちょく)などのあらゆる情報を一人で管理していたこともあって、誰も新プロジェクトを引き継げず、結局、立ち上げを諦めざるを得なくなったそうです。

こうなってしまうと、会社の経営の根幹を揺るがすことにもつながります。「健康の大切さは病気になってからわかる」とよく言いますが、本サービスを通して、ぜひ健康なうちからできる予防医療を実践いただきたいですね。

――最後に今後の意気込みについて教えてください。

佐宗:経験豊富な経営者が病気や健康の問題に悩まされることなく、長く経営に携わるということは、企業にとってやはり大きなプラスになると思います。これからも営業として、経営者の方々、ひいては企業全体の健康をサポートし、経営のパートナーとして末長く伴走していきたいです。

佐藤:昔は結核(感染症)などの外的要因による病気が一番の死因でしたが、いまは日本人の三大死因であるがん・脳血管疾患・心疾患はもちろん、糖尿病・高血圧症など、食べ過ぎや運動不足、ストレス等内的要因が引き金となる病気で亡くなられる方も多くいらっしゃいます。自身の健康と向き合い、毎日の生活習慣をきちんとコントロールできれば、健康寿命を延ばすことができる時代でもあります。予防医療の考えを広め、経営者だけでなく、ご家族・従業員の方々の健康をサポートし、企業全体の健康維持・管理に貢献していきたいですね。

日々の仕事に追われて、なかなか健康のことを考える時間を持てない…という方もいらっしゃると思いますが、ぜひこのセントラルメディカルクラブ世田谷で、ゆっくり自身の心と体に向き合っていただきたいですね。「明日から、また頑張るぞ!」という活力を生むような充実したサービスをこれからも提供いたします。

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