太陽光発電所はつくっておしまい?再生可能エネルギーをもっとサステナブルに!

 

[Publisher] ORIX Group

SDGs(※1)に代表されるように、持続可能な社会の実現は、今や地球規模で早急に取り組まなければならない課題です。その流れに呼応するように、太陽光、地熱、風力、バイオマスなどの再生可能エネルギーによる発電事業はますます注目を集めています。

オリックスでは再生可能エネルギーの普及を先取りし、2012年から太陽光発電事業を開始。現在では、日本全国110カ所で遊休地を活用した大規模太陽光発電所(メガソーラー※2)を運営・計画しています(2020年3月31日現在、屋根設置型太陽光発電所を除く)。

これから私たちの生活を支えるエネルギーとして期待される太陽光発電ですが、実はいくつかの課題を抱えています。

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新潟県内で最大規模のメガソーラー(※3)「新潟県四ツ郷屋発電所」

太陽光発電の発電量は、天候や季節による日射量の変化に影響を受けます。日々の変動を効率よくコントロールしていくことが必要なのです。また、太陽光発電パネルは屋外に設置されているため、発電所の敷地内で伸びすぎた雑草の影や、大気中のほこりや花粉などの汚れの蓄積、上空からの鳥糞などによって太陽光が妨げられ、発電効率が下がるということも起こり得ます。

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太陽光発電所では除草などの定期的なメンテナンスが欠かせない

こうした不安定な要素を軽減する運営管理(オペレーション&メンテナンス)と、部材の在庫管理、発電所状況に応じた長期修繕予算の策定を始めとする資産管理(アセットマネジメント)を行うのが『オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント』です。

「太陽光発電パネルは1枚に異常が生じると直並列につながっているパネルの出力に影響を与えます。1枚のパネル不具合は、直列でつながっているグループ(通常22枚)全体のパフォーマンスを全て引き下げます。これは、システム構成にもよりますが、数百枚のパネルの出力パフォーマンスに影響を与えることを意味します。太陽光発電パネルは、多い発電所だと20万枚あるので、壊れたらすぐに替えないといけないのです」

こう話すのは、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントの百合田和久さん。太陽光発電事業における現場の課題に注目し、オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントの設立を働きかけた人物です。

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オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント 戦略責任者 百合田和久さん

「弊社ではパネルに破損や汚れのない“理想的な状態”でどれだけ電気を生み出せるか、20年分のキャッシュフローを計算し、事業を組み立てています。太陽光発電所は“つくってしまえば終わり”ではありません。この“理想的な状態”をキープするために、きめ細やかなオペレーションやメンテナンスが必須なのです」

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太陽光パネルの損傷や、周囲の雑草・鳥糞による発電効率の低下などを、最新のデジタル技術で迅速に察知。オリックスがこれまでに培った太陽光発電所の運営管理の知見に加え、デジタル技術を導入することで、発電所の運営業務の効率化を促進し、結果的にオペレーションコストの低減と生産性向上を達成します。

「人」と「設備」の活躍を支援するデジタル化

オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントが業界に先んじて導入したのが、発電事業のオペレーションとメンテナンスのデジタル化です。発電所の点検や状態の分析のためにドローンの空撮を導入することで、これまで人間が膨大な時間をかけて行っていた点検作業の時間を大幅に短縮することが可能となります。撮影したデータは人工知能(AI)を搭載したソフトウエアで解析・分析することで、異常の原因とその対処法を人が判断する手助けができるのです。その結果、従来の太陽光発電所のオペレーション&メンテナンスコストを下げながら、売電収益の改善につながります。

このようなデジタル化は、働く”現場”に大きな影響を与えると百合田さんは言います。

「データ解析、分析などの単純な反復作業については、できうる限り業務はデジタル化しようという発想です。そうすることで、ヒューマンエラーのリスクを低減し、人間が本来やるべきことにリソースを当て、生産性を上げていく。省人化によって人間が人間らしく働くことができるようになるのです」

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赤外線カメラで空撮した写真の分析結果画面

発電量をモニタリングするソフトウエアやドローンを使った点検など、テクノロジーの力で検査効率を上げ、発電所現地では人の力でパネル交換や洗浄、設備点検をしながら現状を確実に把握し、壊れる前に交換する。このようにテクノロジーと人間の融合で、発電所を“理想的な状態”に保つことができるのです。

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予防保全業務を担当しているエンジニアの加藤 大さんに業務の変化について尋ねると、ドローンの導入によって、効率化とともに点検品質が安定化したと言います。そして同時に「最終的にはやはり人間が必要だと実感している」とも。

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オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント 本社エンジニア 加藤 大さん

「人工知能(AI)を使った技術は異常箇所を教えてくれますが、実際に異常があるかどうかやどのような対策を講じるべきかなどの判断は人の役割になります。また、ドローンにより検出された異常は、対応要否を問わず記録するようにしています。そうすることで次年度以降の対応要否判断が容易になり、故障が顕在化する前に異常箇所への適切な対応ができるようになるのです」

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オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント 本社エンジニア ソレル・フアン・カルロスさん

一方、東京のオフィスでデータ解析をしているソレル・フアン・カルロスさんは、データを活用した予防保全のプロセスを作り上げた一人です。

「私は、エンジニアとしてフィールドで測定作業などを担う一方で、問題分析や統計なども担当しています。2018年の弊社の立ち上げから参画し、2年後の今では人工知能(AI)システムを活用したソフトウエアの開発にも携わっています。参画した当初は思いもよらないスピードで事業と技術が成長しています。

これまでのデータは全て蓄積しており、多くの情報を得ることで人工知能(AI)は学習していくのです。そうすることで、私たち人間にも知識が蓄積され、さらなる業務改善が可能になります」

発電量を最大化し、実質オペレーション&メンテナンス費ゼロを目指す

ドローン、人工知能(AI)導入などのデジタル化について、百合田さんは次のように話します。

「今後は、デジタル化によって点検・保守効率を改善するだけでなく、理論的には発電量の年間予測も立てられるようになるはずです。先端技術を取り入れ使いこなしながら発電量を最大化し、オペレーション&メンテナンスにかかる費用以上の売電収益を出すことを目指しています」

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2018年にオリックス・リニューアブルエナジー・マネジメントが設立されてから2年。手がける発電所は日本全国86カ所(2020年8月現在)。2019年度には、発電所全体の発電効率を示すPR値(※4)が4%向上するまでに至り、発電収益が改善されています。

太陽光発電所を「つくって終わり」にせず、文字通り“サステナブル”にすることを目指す、太陽光発電のオペレーション&メンテナンス事業。今後も人とテクノロジーの力を合わせて、太陽光発電事業をより発電ロスの少ない効率的なものにしていきます。

※1)Sustainable Development Goalsの略称。国連加盟193カ国が2016年~2030年の15年間で達成するために掲げた持続可能な開発目標。
※2)設備容量1MW(メガワット)以上の大規模な太陽光発電所
※3)2018年7月2日現在。当社調べ
※4)Performance Ratioの略称。日射、系統抑制などの外的要因を除いた、発電所の生産性を数値化する産業標準指数を指す。「太陽電池の公称最大出力値(Pmax)に対して、実際にどの程度の発電量が得られたのかを示す値。PR値が高いほど、事業効率がよく、オペレーションコストが低い状態であると言える。

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