移動する銀行? 移動するオフィス? 「移動」「サービス」という異なる二つを掛け合わせるオリックス的発想術

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[Publisher] ORIX Group

「数十年に一度の…」と表現されるような大雨などの自然災害が、近年、毎年のように日本各地を襲うようになっている。また2020年には新型コロナウイルスの感染拡大が世界中で深刻化するなど、さまざまな「不測の事態」に直面することが、当たり前の世の中になった。

今、そのような不測の事態にも柔軟に対応しながら、生活に欠かせないサービスを提供し続けることが、企業に求められている。

例えば、生活インフラとしてなくてはならない金融機関では、災害時でも生活を支えるために移動型の店舗を導入し、本・支店以外での金融業務を可能にするケースが増えている。

このサービスの実現をサポートしたのがオリックス自動車の「移動金融車」。各金融機関の要望に合わせてトラックをカスタマイズし、移動型の店舗として提供しているのだ。

「被災された方の生活資金を素早く提供したい」という思いを実現

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吉備信用金庫の移動金融車『スマイル相談車』

2018年、西日本豪雨(平成30年7月豪雨)に見舞われた岡山県総社市。ここで活躍するのが、吉備信用金庫の移動金融車『スマイル相談車』だ。ATMや金融業務が行える窓口を備え、年金の受け取りや住宅ローンの相談など、市の出張所でお客さまに金融サービスを提供している。

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移動金融車内。手前にATM、奥に有人の窓口を備える

『スマイル相談車』導入のきっかけを、吉備信用金庫 神崎良幸常務理事は次のように語る。

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吉備信用金庫 神崎良幸常務理事

「『移動金融車』の存在は以前から知っていました。2020年に70周年を迎えるため、その記念事業として導入し、支店でカバーしきれていない地域での活用を考えていたんです。
そのような中、2018年の西日本豪雨で岡山県吉備町の2支店が被災し、浸水で建て替えが必要となりました。

建て替えには、早くても半年から一年かかります。近隣の支店からは距離があるため、その間、店舗の代わりが必要でした。仮設店舗の建設も検討しましたが、その建設にも4カ月ほどかかり、解体も必要なので費用がかさみます。そんなときに、『移動金融車』の存在を思い出したのです。

とにかくスピード優先でした。一日も早く、被災された方の生活資金をその場で提供したいと考えていたからです。

実は、『スマイル相談車』が完成するまでの間、信金中央金庫さんを通じて、和歌山県の新宮信用金庫さんよりバス型の店舗車をお借りすることができました。被災後のあわただしい中、本当に助けとなりました。しかし、いつまでもお借りするわけにもいきません。

他社からは発注から納車までに一年以上かかるといわれていたのですが、オリックス自動車さんは『数カ月でなんとかします』と、一番スピード感を持って対応してくれました。
仮店舗としての活用後は、ATM機能よりも『いろんな相談にのれる場』として活用したいと考え、それを見据えた仕様をオーダーしました」。

過疎化・高齢化などの地域課題にも柔軟に対応

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『スマイル相談車』は2018年10月に完成。被災2支店の仮店舗として活躍し、地元のお客さまに愛される存在になった。例えば、ATMを置いているスーパーの近くで営業した際も、あえて『スマイル相談車』を利用する人が多かったという。

「常に職員がいるので、お客さまが話しに来てくださるんです。お客さま同士の交流の場にもなり、単にお金を下ろす機能だけではなく、地域のコミュニティー形成の一部になっています。私たちも椅子をご用意したり、飲み物を配ったりなどし、お客さまに喜んでいただきました」。

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窓口では、お客さまのさまざまな相談に応える
※撮影時のみ、マスクを外しております

建て替え店舗が完成し、仮店舗としての役目を終えた後は、住宅展示会の会場で住宅ローンの相談を行う場として活躍。また2020年現在は、コロナ禍における「密」を避けるため、年金受給日など本・支店の混みやすい日に、お年寄りの多い地域の市の出張所などで定期的に営業している。

「今後は高齢化が進み、交通手段を持てない方が増えてくるでしょう。そうした地域でのさまざまなサービス提供が求められると思います。最近は終活として、相続や遺言などのご相談も増えており、高齢者の方の相談にお応えする場が必要です。
一方で、金融機関の店舗戦略も大きく動く時代です。場合によっては統廃合などが行われる可能性もあります。そうした中で、『スマイル相談車』の活躍の場が増えるのではないかと考えています」。

東日本大震災をきっかけに、グループの力を結集して開発

「移動金融車」という新たなソリューションは、どのように生み出されたのか。オリックス自動車 リース営業本部ロジスティクス営業部 市川大輝氏によると、それは2011年の東日本大震災にさかのぼる。

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「東北地方の金融機関さまから『津波の被害を受けた店舗の代わりとなる移動式の店舗ができないか』というご相談をいただいたのが、開発のきっかけです。被災した店舗を早急に再建する必要があったものの、都市計画によって建設の許可がすぐには下りませんでした。そこで、日ごろお付き合いのあった、オリックスにお声がけをいただいたのです」。

支店で伺った課題を本部に上げ、グループの総合力を組み合わせたら、お客さまに役立つ事業が生まれるのではと検討。その結果、移動を担うクルマの専門会社であるオリックス自動車が中心となって、『移動金融車』の開発を手掛けることに。オリックス自動車としては、初めての挑戦でもあり、スピード感を持って開発することが求められる中、さまざまな壁があったという。

「一番の壁は、車両を調達することでした。被災して車両が不足していた上に物流におけるニーズもあり、新車があまり流通していなかったのです」。

その課題には、オリックス自動車のトラックレンタル事業が大きく貢献。トラックレンタルで所有していた車両を転用することにより、本来なら調達にかかる2~3カ月を一気に短縮することができた。

また車体の荷台部分に搭載するボディ(架装)を金融機関の店舗用に開発することは、初めての試みだった。
「まずはボディを店舗用に製作できる架装メーカーを探すところからのスタートでした。アルミバンや冷凍車など物流車両のボディを製作する架装メーカーは多くありますが、店舗用を手掛ける架装メーカーはほとんどありませんでした。また、物流車両と大きく異なるのは、お取引先のお客さまがどう感じられるかを考えながら開発する必要があること。例えば家具の配置であったり、金融端末の配置であったり、明るさ、雰囲気といったものですね」。

それには、信頼のおける架装メーカーと協働で、開発を進めることができたという。

「グループ内で情報を集め、全国の架装メーカーにご相談しながら、この開発に適したメーカーにご協力いただけました。車両も架装も、メンバーの力、グループの知恵が結集したことで開発を実現できたと考えています」。

働き方改革を支える、移動事務所車(オフィスカー)

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オリックス自動車が生み出した「移動」×「サービス」のソリューションとそのノウハウは、時代のニーズに応え、展開を広げている。

その一つが「移動事務所車(オフィスカー)」。営業用の車両を改造し、事務所機能を備えた特殊車両だ。遠方での業務などで事務所までの移動に多くの時間を割かれる場合を想定し、業務の効率化を支援するサービスとして、2016年にレンタルを開始した。

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広い車内。エンジンを止めているときも使用できる空調や、電源も備えている。

利用企業の一社、空調設備の設計・施工・メンテナンスなどを手掛けるダイキンエアテクノ株式会社。東京支店 第2工事部の宮崎晃一氏(埼玉営業所駐在)が所属する部署は、北関東エリアを広くカバーしており、車で片道2時間程度かかる現場を担当することもあるという。

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ダイキンエアテクノ株式会社 東京支店第2工事部 宮崎晃一氏

「従来は現場での施工管理後、事務所に戻って資料作成などをしていました。やはり移動に多くの時間が割かれるため、その分帰りが遅くなっていました。移動事務所車を活用することで、自宅から直行で現場に向かって車内で事務作業を行い、現場から直帰できるようになりました。日に2時間くらい短縮できたと感じています」。

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「従来は運転席や助手席など、無理な姿勢でパソコンを扱うこともありましたが、移動事務所車の広い作業スペースによって、大きな図面も広げられ、集中して業務に取り組むことができます。ソーラーパネルや専用バッテリーを搭載していて、パソコンを充電できる別電源もあるので安心です」。

同社の安全品質管理本部の菊池雅史氏は、移動事務所車の導入経緯について、次のように語る。

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ダイキンエアテクノ株式会社 安全品質管理本部 菊池雅史氏

「働き方改革プロジェクトに参画する若手からの声を受け、移動距離が長い現場での活用を目的に導入を決めました。移動時間の短縮はもちろんですが、現場によっては事務所の設置が求められる場合でも設置できないケースもありますので、そのようなときにも移動事務所車は活躍すると思います。
これまでに埼玉をはじめ、京都や新潟などさまざまな場所で使用していますが、オリックスさんは全国に拠点があるため、支店・地域を問わずスムーズにサポートいただけます。
また、現場によって工期や立地もさまざまですので、必要なときだけレンタルで借りられる点もいいですね」。

働き方改革を支える存在として、移動事務所車の活用範囲はますます広がっていくだろう。

移動CT・MRI搭載車、移動破壊車…「移動」×「サービス」のさらなる展開

「移動」×「サービス」が生み出す価値は無限大だ。

CT・MRI装置などを搭載したクルマをレンタルで提供する、「メディカルモバイルサービス」。これらの機器を保有しない医療機関や機器のメンテナンスや増設する場合の代替えとして、また、企業向けの巡回検診など、 “必要な場所・期間・時間”に応じてサービスを提供する。

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ほかにも、パソコンを処分する際、データを安全に消去するために、お客さまのもとでHDDやSSDなどのROMを破砕する「移動破砕車」など。これらもオリックスが提供するソリューションだ。

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移動破砕車の内部で作業する様子

「これまでは、『どうすればお客さまが来てくれるか』が論点となっていました。しかし、高齢化などの社会変化もあり、待っていてもお客さまに来ていただくことが難しい状況になっているのではないでしょうか。『こちらから出向くことによって満足度と利用率を向上させる』。このような考え方が広まってきていると思います」(オリックス自動車 市川)。

『移動』×『サービス』は、まだまだ新しいイノベーションの可能性を秘めている。オリックスはお客さまの課題に向き合い、グループの力を結集し、新たな価値を創造し続ける。

事業を通じた社会課題への貢献

サステナビリティ

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