もっと人の気持ちに寄り添うロボットに

[Publisher] ORIX Group | 株主通信「Alive」No.59より転載

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①病院を訪れる人に対して、2台のロボットが連携して予約を確認します。

ロボットは、ものづくり、サービス、介護・医療など、さまざまな分野で活躍しています。病院の受付などで、ロボットに対応してもらったことがある方も多いのではないでしょうか。腕の形をしたロボットが飲食店の店頭でコーヒーを入れたり、そばをゆでたりするなど、身近な場面で見かけることが増えてきました。

しかし、ロボットをさらに普及させるためには、「コミュニケーションする力」が必要だと、慶應義塾大学 環境情報学部の高汐一紀教授は指摘します。高汐教授の願いは、ロボットをもっと身近な存在にすること。そのためには、ロボットが人の気持ちや様子を認識する必要があるといいます。

「現在は、人とロボットが一緒に働くとき、人の方がロボットにペースを合わせて作業することが多いようです。ロボットが人の気持ちや様子を認識できるようになれば、ロボットの方から人に合わせることができるようになります。例えば、製造業の生産ラインで働くロボットが『今日は一緒に働く人の動きがちょっと遅いな』と感じ取れるようになれば、人の動きに合わせて作業のペースを遅くすることができるでしょう。警備ロボットも、出会った人の表情を見て『ちょっと驚いているな』と認識できれば、少し距離をとって接するようになるかもしれません。ロボットが人々の暮らしに溶け込むためには、もっと気配りができて、『空気』を読める存在にならないといけないと考えています。今あるお掃除ロボットも『これから掃除を始めていいですか?』と一声かけてくれれば、もっとかいがいしく感じるようになるかもしれません」

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(左)②案内された人は自動運転車で目的地へ(右)③目的地はあらかじめロボットから伝達されており、自動運転車との会話も可能です。

高汐教授がつくりたいのは、1台で圧倒的な敵を倒すガンダムではなく、それぞれが得意技をもって、会話しながら問題を解決していくスターウォーズのR2-D2とC-3POのようなロボットだといいます。高汐教授が所属している慶應義塾大学では、さまざまな研究成果をつないで、人と複数のロボットが連携する社会のあり方のデモンストレーションを行いました。(上の写真①~③)

「女性が自分の話し相手や秘書として一緒に暮らすロボットに、病院の予約を確認するように頼みます。そうするとそのロボットは、病院のロボットと会話して予約を確かめ、女性に予約の内容を教えます。同時に女性のロボットは自動運転の車に連絡し、女性の自宅まで迎えを手配します。この自動運転の車も実はロボットなので、女性と会話しながら病院に移動します。さらに、女性の外出を遠方の家族が上空のドローンから見守っているのです」

クラウドネットワークで人、ロボット、情報がいつでもどこでもつながる社会は、近い将来に実現されるだろうと話す高汐教授。そのような社会では、人とロボットはそれぞれ独立した別のものという考え方も薄れていくのではないかと予想しています。

「ロボットが人のことをもっと理解できるようになれば、もう『人がロボットを使っている』という感覚ではなく、『ロボットは自分の一部』だと感じるようになるかもしれません。遠くにいる人の代わりに、分身のように動いてくれるアバターと呼ばれるロボットも開発されています。例えば『入院していて働くことができない人の代わりに、アバターロボットがカフェを運営している』という時代ももうすぐです。ロボットが人の仕事を奪うのではないかと心配する声もありますが、ロボットは人ができないことを補ってくれる存在であり、人の可能性はますます広がっていくと思います」

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ロボット同士が会話して人を支援する社会へ

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(取材協力)慶應義塾大学 環境情報学部 高汐一紀 教授 工学博士(慶應義塾大学1995年)。専門分野はクラウドネットワークロボティクス、ソーシャルロボティクス、ヒューマンロボットインタラクション、ユビキタスコンピューティング。湘南藤沢キャンパスにてSFCSociable Robots Lab.を主宰。

事業を通じた社会課題への貢献

サステナビリティ

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