オリックスの「ロボットレンタル」が変える、日本人の働き方

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[publisher] ORIX Group | NewsPicks Brand Design

少子高齢化による労働力の減少や、働き方改革、技術革新による競争激化。喫緊の課題に対する解決策として、幅広い産業でロボットの効果的な活用を検討する動きが加速している。しかし、はじめてロボットの導入を検討する企業にとって、高額な初期費用や知識不足は高いハードルとなる。

こうした企業の課題から事業機会を見出し、「ロボットレンタル事業」に参入したのがオリックス・レンテックだ。そこには、さまざまな事業を展開し、部門やグループ会社の壁を超えた協業の精神を備えるオリックスグループだからこそできる事業拡大のセオリーがあった──。

ロボット専門のショールームは大盛況

1976年、電子計測器のレンタルサービスを日本で初めて開始したオリックス・レンテックは、2016年4月にロボットレンタル事業に参入。

2017年1月には、東京・町田市にある技術センター内に、さまざまなメーカーの協働ロボットやコミュニケーションロボットを展示するショールーム「Tokyo Robot Lab.」を誕生させた。

「ショールームは大盛況です。オープンからの1年半で、エレクトロニクスや自動車関連など約530社にお越しいただきました。来場者は企業の上層部の方が大部分を占めています。

高齢化により労働人口が減少し、省人化が企業にとって重要な課題となる中で、ロボットに対する企業の大きな期待を感じます」

そう語るのは、新規事業開発部副部長でロボット企画チームリーダーの堀籠史絵氏だ。

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従来の産業用ロボットは、特別な教育を受けた専門の技術者でなければ操作することができず、周りで作業する人間の安全を確保するためにロボットを柵で囲う必要があった。

一方、オリックス・レンテックが主に取り扱う協働ロボットは安全柵で隔てることなく、人が接触すれば止まるように設計されている。

そのため、従来はロボットを設置できなかったスペースでも使用することができ、生産ラインにおける人間の作業補助などの領域で力を発揮することが期待されている。

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「YuMi®」は、世界初の双腕型の協働ロボット。柔軟性の高いハンド、部品供給システム、カメラによる位置決め、優れたロボット制御機能により、小型部品の組み立てなどの細かい作業を効率的に行う。

しかし、協働ロボットは今まさに進歩している領域であり、「次々と発表される新製品の中から自社の業務に最適なロボットを選ぶのは難しい」という声も多い。さらに、通常の展示会では人が多く集まるため、ロボットに触ったり質問したりすることが難しいケースもある。

「実際に操作をじっくり体験できる場をつくれば、お客さまに協働ロボットの良さをもっとわかっていただける。そう考えて、『Tokyo Robot Lab.』を開設しました。

さまざまなロボットを実際に操作しながら比較し、お客さまにぴったりのロボットを選んでいただくことができると好評です」(堀籠氏)

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「Tokyo Robot Lab.」にはさまざまなメーカーの協働ロボットやコミュニケーションロボットが展示されている

ロボットはメーカーごとに販売代理店が異なるのが一般的だ。一方で、オリックス・レンテックが取り扱うロボットは、現在18社、30種類。なぜ、メーカーの垣根を越えた多種多様なロボットの取り扱いに成功したのだろうか。

「『協働ロボットを早く世の中に普及させたい』というメーカーの方々の思いに応えられる取り組みであることをご説明し、丁寧にコミュニケーションを重ねることで、さまざまなメーカーのロボットをラインアップすることをご理解いただきました。

また、オリックス・レンテックは、設立当時から取り扱ってきた計測器やIT関連機器でも、メーカーの垣根を越えた3万2000種を取り揃えています。こうした実績も、メーカーの方々からの信頼につながっていると思います」(堀籠氏)

自社エンジニアによる技術サポートで、ロボット導入のハードルを下げる

ロボットの導入を検討する企業は増加している一方で、高額な初期費用や専門知識をもつ人材の不足を理由に、二の足を踏む企業も多い。こうした企業の課題を受けて、オリックス・レンテックが提案しているのが「6カ月お試しレンタル」だ。

一般的な目安として、ロボットの基礎操作の習得に2カ月間、工場のラインでの検証に2カ月間、ハンドなどの周辺機器のカスタマイズに2カ月間。合計6カ月間にわたりロボットが本当に現場で使えるのかをじっくりと試すことができる。

さらに、エンジニアによる技術サポートも提供する。サポートを統括する技術本部 技術三部長の吉澤克彦氏は次のように話す。

「レンタル会社としては初めて、自社にロボットエンジニアを擁しています。

基本操作の講習のほか、現場の業務にロボットを組み込むための検証など、技術面でのサポートを行い、初めてロボットを導入されるお客さまでも戸惑われることがないようにしています」(吉澤氏)

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メーカーや機種が異なれば、操作方法がまったく異なることも多いロボット。難易度が高く、専門性が求められるが、畑違いの分野から異動してきた社員も多いという。

「ロボットレンタル事業を開始した当初、ロボットの専門知識を持つ社員はいませんでしたが、社内の他部署から異動してきた社員や中途採用した社員をロボットエンジニアとして育成しました。

計測器やIT関連機器のメンテナンス業務を担当する社員の中には、電気分野やプログラミングの知識を習得してきた社員が多くいます。そうした専門知識を応用することで、ロボットを取り扱うことができているのです」(吉澤氏)

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オリックス・レンテックは、レンタル会社としては初めて、自社にロボットエンジニアを擁している

既存事業から得た知見やノウハウを生かしながら、隣へ隣へと事業領域を拡大していくことで、オリックスグループは新たな分野へと挑戦を続けてきた。それは、ロボットレンタル事業についても例外ではない。

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隣の事業、さらにその隣の事業へと領域を拡大するのは、オリックスの特徴的な手法だ

「計測器やIT関連機器でも、ラインアップに新たな機器が加わったときには、メンテナンスや校正、動作確認の手順をマニュアル化して運用してきました。

レンタル期間が終了した機器は、また別のお客さまに貸し出したり、中古品として販売したりしますが、お客さまからは『まるで新品のようだ』とその品質を評価いただいています。

このノウハウを生かし、『6カ月お試しレンタル』終了後に返却されたロボットについても、新品と比べても遜色がない状態にメンテナンスをしてから、次のお客さまのもとに送り出しているのです」(吉澤氏)

オリックスが祖業のリースを手掛ける中で培った「モノ」を取り扱う専門性の一環として、オリックス・レンテックの技術センターを拠点に蓄積してきたノウハウ。これらを応用することで、メーカーの垣根を越えた多種多様なロボットを取り扱えているのだ。

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一方で、「ロボットだからこそ」の新たな苦労もある。たとえば、ロボットが単体でできるのは単純作業だけだ。工場のラインの中で十分な働きをさせるためには、カメラを取り付けたり、コンベアーと連携させたりと、カスタマイズが必要だ。

こうしたニーズにも柔軟に対応するために、外部のシステムインテグレーターとの連携を強化しているという。

「システムインテグレーターの中でも、たとえばハンドのカスタマイズが得意な会社や、カメラとの接続に強みがある会社など、さまざまな特色があります。

案件に応じて最適なシステムインテグレーターと連携できるよう、現在ネットワークを拡大しているところです」(堀籠氏)

物流施設や空港など、グループ横断的な事業連携

「ロボットレンタル事業を開始して2年半、顧客数は順調に増加しています。

現在のお客さまは大企業が中心ですが、将来的にロボットの価格が少しずつ安くなれば、中小企業での導入も増えていくでしょう。レンタルや技術サポートを通して、そうした動きを後押しできればと考えています」(堀籠氏)

幅広い分野で事業を展開するオリックスグループの強みを生かし、新たなチャレンジも開始している。

たとえば2018年5月には、オリックスの物流事業部が開発した物流施設に入居するテナント企業を対象に、物流ロボットを6カ月間無料でレンタルするサービスを開始した。

「『Tokyo Robot Lab.』にお越しいただいた物流業界の方々とお話しする中で、電子商取引の発展などを背景に、新規の物流施設の開発が増加し、人手不足が深刻な問題になっていることを実感しました。

オリックスの物流事業部と連携し、物流施設にロボットという付加価値をつけて提案すれば、テナント企業の課題解決に貢献できると考えました」(堀籠氏)

オリックスがコンセッション事業として運営に参画している関西国際空港でも、2018年3月に次世代ロボットの体験型展示会を開催し、空港施設内でスーツケースの運搬に活用できる自動搬送ロボットや多言語対応が可能なコミュニケーションロボットを披露した。

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次世代ロボットの実用化に向けた体験型展示会「KIX Robot mini Expo」では、多くの空港利用者が足を止め、計15メーカー18機種のロボットの動作や操作性を体感した。

また、関西国際空港の広大な施設を活用し、障害物を避けながら自動で行き来する清掃ロボットの実証実験を実施。2018年10月より、本格導入を開始した。

「オリックスグループでは、ほかにもホテルや旅館などの宿泊施設の運営や商業施設の開発も手掛けています。グループの関連施設と連携することで、サービス分野でのロボット活用の先駆けとなるような事例をつくっていきたいと考えています」(堀籠氏)

ロボットは私たちの働き方を変えるか

単純作業なようで、少しずつ違った動きが要求される繊細な作業、たとえば生魚をさばくような動きは、ロボットにはまだ不可能だ。

一方で、海外では養鶏場に自動搬送ロボットを走らせて、鶏の生育を管理することに成功した養鶏家もある。

これまで「人にしかできない」とされていたことがどんどん機械化されていくのは間違いない。

「協働ロボットを利用されているお客さまを見ていると、『未来への投資』としてロボットを捉えているようです。ロボットに載せるソフトウェアが改良されたり、よりよい新機種が出てきたりしたときに、ロボットをどう使うべきか、人はどのような仕事をするべきか。

オリックス・レンテックもお客さまとともに試行錯誤を繰り返しながら、人とロボットがともに働く未来に貢献していきたいと思います」(堀籠氏)

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置き換えられる仕事はロボットに任せ、そこから解放された人は、さらに自分の能力を生かせる創造的な仕事に就く。ロボットレンタルが、そんな未来をより身近なものにしてくれるかもしれない。

「十数年前には、オリックスのグループ各社が連携しながら、パソコンのレンタルを日本中の企業に提案しました。レンタルを通してパソコンの普及を後押ししたことで、人々の働き方の効率化に貢献できたと考えています。

それができたのは、オリックスに部門やグループ各社の壁を超えた協業の精神があるからです。同じように今度はロボットの効果的な活用を提案していく。オリックスにならできると私たちは信じています」(吉澤氏)

(執筆:唐仁原俊博 編集:大高志帆 撮影:露木聡子 デザイン:星野美緒)

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