デジタルマーケティングで販路を開いた計測器レンタルの老舗。オリックスと共に進める第2創業に迫る

創業46年の株式会社レックス(以下、レックス)は、兵庫県西宮市を拠点に測定器や測量機、検査機器など、主に建設工事で使われる計測機器のレンタル事業を展開している。他社にさきがけ、商品のセレクトから見積もり、注文までをオンラインで完結するレンタルシステムを確立し、全国の顧客に約2000種・2.7万台以上という豊富なラインアップの機器を提供。計測器レンタルのリーディングカンパニーとしての地位を築き上げた。

そんな同社は、2022年にオリックスから出資を受け、同じくレンタル事業を手掛けるオリックス・レンテックと共に協業を推進。現在を「第2創業期」と位置づけるレックスは、さらなる飛躍をめざしている。オリックス・レンテックから出向し代表取締役社長を務める加藤 信幸、オリックスから出向し取締役兼執行役員を務める松本 卓也、レックスの執行役員 北林 広大氏、営業本部マーケティング部兼インサイド営業部 部長の深澤 智子氏に、協業に至った経緯、両社のシナジーによる事業の発展性、今後の展望まで話を伺った。

Amazonにヒントを得て2000年に自社ホームページを開設。デジタルマーケティングを軸に業界で最大規模に

――はじめに、レックスの沿革と事業の強みについて教えてください。

北林:当社は1978年に兵庫県西宮市で創業以降、主に建築土木の現場で使われる測量機器や計測器、測定器、検査機器などのレンタル事業を展開してきました。大きな転機となったのは2000年。当時の代表取締役が日本に上陸したばかりのAmazonにヒントを得て、業界ではまだ珍しかったホームページを立ち上げました。これにより商圏に縛られることなく、全国のお客さまから注文をいただくようになりました。

現在、2000機種、2万7000台以上の機器全てをオンラインでレンタルできます。また、カスタマーセンター機能も有しており、専門のコンサルティングスタッフが電話での問い合わせに即時対応することで、迅速なサービス提供を実現しています。特に建築業界では、スピーディーに不足している機材を届けてほしいというニーズが強くあります。こうした利便性を多くのお客さまから評価いただいて、リピーターも多数獲得しており、ここ数年、注文件数は右肩上がりで増えています。いまでは年商30億円を超え、業界で最大規模の会社になりました。

西宮市のカスタマーセンターから全国の問い合わせに対応している

レックスが保有する機器の数々(素材提供:レックス)

――順調な成長を続けていながら、なぜ2022年にオリックスから出資を受け、業務提携を始めたのでしょうか?

北林:たしかに好調な業績が続いていましたが、レックスが時代の変化に合わせて成長し続ける組織であるためには、第三者の経営ノウハウや組織マネジメントの手法を取り入れることが最善だと考えて、2020年頃からパートナー企業を探し始めました。そのなかからオリックスを選んだのは、当社と同様に計測機器類のレンタル事業を展開するオリックス・レンテック(以下、レンテック)がグループ内にあったからです。レンテックと協業できれば、大きなシナジーが生みだせるのではないかと期待しました。

株式会社レックス 執行役員 北林 広大氏

松本:レンテックとしても、レックスとの協業が事業に与えるメリットは大きいと思っていました。ともに「計測器レンタル事業」を展開する両社ですが、メインターゲットや営業戦略には違いがあります。レンテックは主に製造業や電機メーカー、通信キャリアといったハイテク業界に向けに高価格帯の機器を提供しているため、建築分野には、ほとんど手がついてない状態でした。レックスとの業務提携は、こうした未開拓マーケットに進出する足掛かりになると考えたのです。

また、前述のようにレックスには、オンラインを軸に業績を伸ばしてきたという実績があり、デジタルマーケティングに強い人材もそろっている。一方のレンテックは、オリックスグループの営業ネットワークを基盤としたアナログの対面営業で事業を拡大してきました。オリックスの営業力にレックスのデジタルマーケティングのノウハウを掛け合わせれば、より効率的な営業体制や受注システムの構築ができるという期待を感じていました。

オリックス株式会社 国内事業推進部エクイティソリューション第一チーム マネジャー/株式会社レックス 取締役兼執行役員 松本 卓也

北林:協業の話し合いを進めていくなかで、最終的な決め手となったのは、「相手企業の文化を尊重し、社名を変えることなく事業を維持、発展させていく」というオリックスの事業承継スタイルです。そこに信頼感を持てたからこそ、当時の経営トップはオリックスにすべてお任せして、自らは経営から身を引く決心がついたのだと思います。実際、協業後にオリックスが最初に行ったのが、全従業員との面談でした。数字には表れない従業員の思いを直接聞くことで、解決すべき課題の優先順位をつけてくれたのです。いまはレンテックからは加藤さん、オリックスからは松本さんに出向いただいて、レックスの企業文化を理解いただきながら、私たちと一緒に汗をかいて経営改善に取り組んでいます。

約50年間のレンタル事業で培ったレンテックのノウハウとラインアップを、事業成長に直結させる

――両社の協業から2年がたった今、具体的にどのように経営を推進しているのでしょうか?

加藤:レックスは非常に歴史の長い企業ですが、レンテックも1976年に「日本初の計測器レンタル会社」として創業以降、測定器やPC、サーバー、3Dプリンターや医療機器など約4万種のラインアップを取り扱ってきた実績があります。私自身長年レンテックの経営に携わってきましたから、その中で培ったレンタル事業で利益を最大化するためのノウハウを共有しています。

例えば、協業前までレックスは、壊れるまで機器を保有することをポリシーとしていました。それによって商品ラインアップの充実が図られていたという側面もありますが、あまりにも稼働率の低い機器を保有し続けることは、無駄なコストがかさみ、収益性の低下を招いてしまいます。

そこで、「稼働率が何%以下になったら、中古販売する」というレンテックの事業で培ったセオリーを取り入れ、これまでレックスがやってこなかった資産の販売を新たに始めました。中古販売の潜在的なニーズを感じていましたし、実際にお客さまからも好評を得ています。他にも、データに基づいた資産管理方法やレンタル料の見直し、オリックスのネットワークを生かした調達などにも取り組み、利益の最大化をめざしています。

オリックス・レンテック株式会社 執行役員/株式会社レックス 代表取締役社長 加藤 信幸

北林:当時のレックスであれば、おそらく「売る」という発想自体生まれなかったと思います。おっしゃる通り資産の保有にこだわっていた部分もあったので、これ以上資産が増えた場合、新しい倉庫の設立という選択肢を取っていたかもしれません。

深澤:レンテックの既存商品約5000機種をレックスのホームページに掲載し、オンラインでの提供を始めたことも大きな変化です。それらの商品に対しては、毎月400~500件ほどの問い合わせがすでに入っています。レックスとしては新たな商談の機会、レンテックにとっては商品提供の新たなチャンネルができたということで、双方に大きなメリットをもたらしています。単純に、商品ラインアップがさらに拡充したことで、計測機器レンタルのプラットフォーマーとしての位置をより確固たるものにしたと言えるのではないでしょうか。

保有2,000機種、2万7000台以上の機器を有するレックスの機材センター(素材提供:レックス)

――社内体制についてはいかがでしょうか?

深澤:「働きがい」という点では、コールセンターのコンシェルジュスタッフの離職率の高さも以前から問題でした。そこで協業後、オリックスグループのバックオフィス業務を請け負っている「オリックス・ビジネスセンター沖縄」と情報交換を目的としたミーティングの機会を設けてもらいました。そこで伺った話が契機となり固定電話を廃止し、CTI(Computer Telephony Integration)を導入しました。これにより、電話応対業務そのものの効率化が図れただけでなく、稼働状況の全体把握や入電の優先順位をコントロールできるようになり、コンシェルジュスタッフの業務負担の平準化が推進されました。働きやすい職場環境の改善にも、オリックスの知見が大いに生かされています。

株式会社レックス 営業本部マーケティング部兼インサイド営業部 部長 深澤 智子氏

自走できる組織体制で、業界開拓・商品開発などレックスらしい挑戦を

――最後に皆さんの今後の目標と意気込みをお聞かせください。

北林:レックスがここに至るまで成長できたのは、ホームぺージを軸としたデジタルマーケティングにいち早く取り組んだことが大きいと思います。今後、この強みにさらに磨きをかけていきます。現行のホームページは商品紹介がメインですが、計測器に関する最新情報やお客さまの課題解決に資する機能などを盛り込んで、「計測機器のことならレックスのホームページを見ればすべて解決する」というレベルにまで進化させたいですね。デジタル上で最高の顧客体験を提供していきたいと思います。

深澤:ホームページを中心として、メールマガジンなど情報発信の方法をもっと工夫して、「レックスだから借りたい」と言ってくれるファンを増やしていくことが大切です。そのためにも、失敗を恐れずに、お客さまを驚かせるような新たな挑戦をどんどんしていく必要があります。デジタルネイティブの若い社員が、積極的にチャレンジできるような社内カルチャーを、オリックスの力を借りながらつくっていきたいと思います。

松本:今後、事業を伸ばしていくためには、やはり“人”がカギになると思っています。ここ1年半ほどで、就業規則や人事評価制度など、働きやすい職場環境のベースはある程度整えることができました。これからは“新しい挑戦をおもしろがるレックスらしさ“がさらに際立つような組織風土、カルチャーづくりにも取り組んでいきたいと思います。従業員の皆さんが生き生きと働いて、自走できる組織体制を整えていきます。

加藤:ここ数年は順調に売り上げが伸びていますが、やはりこれだけニーズが複雑化、多様化した時代にあって、単に既製品を貸し出すだけのビジネスモデルでは、いずれ頭打ちになると予想されます。

新たな価値提供をするためには、既製品の情報を知り尽くしているレックスのオリジナル商材を作っていくことが大事だと思います。これまでも、営業が拾い上げたお客さまの声から、オリジナル商材を生み出してきました。例えば、打設したコンクリートの表面状態をセンサーで把握し、急速な乾燥を防ぎ、自動で散水する装置は、展示会でも話題になりましたし、多くのお客さまからご好評をいただきました。

こうした事例を増やしながら、レンテックとレックスの双方の強みを生かして、互いの事業をさらに拡大していきたいと思います。計測器レンタルの日本一の会社をめざすので、どうぞご期待ください。

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