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この記事はInc.のAnis Uzzamanが執筆し、Industry Diveの DiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。
AI、バイオテクノロジーなど、新技術はどこへ向かうのか
2024年の主要な技術およびビジネストレンドがどういうものになるかを考察することは、極めて有意義です。起業家や企業幹部、投資家であれば、ビジネスの決断に影響を与えうるトレンドを知っておくべきでしょう。本記事では、起業家であり企業の幹部でもある筆者の経験に基づき、2024年に注目すべき10の最新トレンドを紹介します。
トレンド1:生成AI
筆者の予想では、生成AIは2024年の最も興味深い技術的イノベーションになるでしょう。ガートナー社によれば、AIは2025年までにすべてのデータの10%を生み出すようになると予測されており、2024年は飛躍の年になると考えられます。
この分野の最近の動きとして、まずはオープンAI社が2022年末にChatGPTを公開したことが挙げられます。エヌビディア社の大幅な増収により、生成AIに対する投資家の注目は一気に高まり、同社の株価も急騰しました。生成AIに特化したテック企業は2023年、市場の全体平均を大きく上回る業績を上げました。
この分野をけん引する代表的な上場企業としては、マイクロソフト社、エヌビディア社、IBM社、AMD社、グーグル社、メタ社、アマゾン社、アリババ社、百度(バイドゥ)社、サービスナウ社、インテュイット社、アドビ社、セールスフォース社などが挙げられます。スタートアップに関しては、オープンAI社、ハギングフェイス社、アンスロピック社、コヒア社、アルファセンス社、ゴング社、ジャスパー社、C3 AI社、ディープマインド社、データブリックス社、シンセシスAI社、スタビリティーAI社、ライトリックス社、グリーン社、インフレクション社などが分野を主導しています。
2024年は、生成AIに注目することをおすすめします。技術的な躍進により経済に劇的な変化がもたらされる可能性があります。実際、ゴールドマン・サックス社の報告書によれば、生成AIは今後10年以内に世界のGDPを7%成長させる可能性があり、ビジネスと社会に多大な影響を及ぼすでしょう。
トレンド2:サステナブル・テクノロジー
2024年の別のトレンドとして、サステナブル・テクノロジーの更なる進化が挙げられます。ここには、クリーンテック、グリーンテック、気候テックなどが含まれます。サステナブル・テクノロジーは、ガートナー社が発表した2024年の戦略的テクノロジートレンドの上位の一つであり、環境・社会・ガバナンス(ESG)目標達成を推進するデジタルソリューションと位置づけられています。
このトレンドを見逃さないことは重要です。ガートナー社の予測では、2027年までに最高情報責任者(CIO)の報酬の25%がサステナブル・テクノロジーの影響を受けるとされています。ハーバード・ビジネス・レビューによると、環境破壊から地球を救うことは、12兆ドル(約1775兆円)規模のビジネス機会でもあります。しかもこの推定は、60の領域目標のうちたった四つ(食料・農業、都市、エネルギー・素材、健康・ウェルビーイング)を達成するという仮定に基づくものでしかないのです。
SDGsに焦点を当てる際、2024年の最前線に位置すると筆者が考える分野は、廃棄物のリサイクルおよびアップサイクル、電気自動車、持続可能な住宅およびビル建設、グリーンエネルギーとクリーンエネルギー、グリーン農業テック、炭素回収です。
グーグル社、アップル社、メタ社、アマゾン社はいずれも、企業としてサステナビリティに貢献する取り組みを立ち上げました。ネスレ社やユニリーバ社などの企業は、サステナビリティに向けた取り組みで広く評価されています。積極的なカーボンニュートラル方針で知られるユニリーバ社は、過去10年間で時価総額を約3倍に伸ばしました。パタゴニア社、シスコ社、マイクロソフト社、アディダス社、オートデスク社、シュナイダーエレクトリック社、テスラ社、ダッソーシステムズ社、IBM社、H&M社、シーメンス社などの上場企業も取り組みを推進し、SDGフレンドリーな企業と認識されています。
サステナブル分野の主要なスタートアップには、アンプ・ロボティクス社、オーロラ・ソーラー社、オックスフォードPV社、ヴァーディグリス社、グロウ・ア・ウィッシュ社、カーボンクリーン・ソリューションズ社、ブルー・プラネット社、ヘリオジェン社、グローブ・コレクティブ社、アグリクール社、TIPA社、ジェネシス社、ソース社などがあります。
トレンド3:サイバーセキュリティー
研究によれば、二社に一社の企業は、過去3年以内にサイバー攻撃の被害に遭っています。サイバーセキュリティー・ベンチャーズ社によれば、サイバー犯罪の被害額は2025年までに10兆5000億ドル(約1554兆円)に達すると予測されており、企業にとって深刻な脅威であることがわかります。
急速に増大する脅威に対し、セキュリティーを強化し対抗手段をもたらすよう設計された技術的なソリューションは、すべての組織にとって不可欠なものです。サイバー犯罪の手口はますます高度化しているため、AIなどの革新的技術を利用した新たなソリューションを商品化する競争も激化しています。
筆者の予想では、サイバー攻撃はますます複雑化し、AIを駆使して従来の防御戦略を迂回(うかい)するようなものになるでしょう。本質的な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えたコネクテッドデバイスの普及により、セキュリティー上の懸念は増大するとみられます。このように刻々と変化する環境において専門家は生成AIが鍵を握ると考えています。
2024年は、世界中でサイバーセキュリティーの強化が進むでしょう。政府や主要機関の関与がますます強まるなか、企業は、複雑に入り組んだルールを順守したうえで、防御メカニズムをより強固にすることになるでしょう。2024年は、サイバーセキュリティーにおける技術革新が、規制や人間だけでなくAIの側面と緊密にからみ合う年になると筆者は予想します。
2024年のサイバーセキュリティーの技術革新に関しては、リスク管理の自動化、クラウドセキュリティー、ゼロトラスト・アーキテクチャー、認証管理、行動分析、サイバーガバナンス、エンドポイント・プロテクション、サービスとしてのサイバーセキュリティー、ブロックチェーンセキュリティー、サイバーセキュリティーメッシュといったトピックが要注目です。
この分野の主要上場企業には、クラウドストライク社、ゼットスケーラー社、オクタ社、センティネルワン社、パロアルト・ネットワークス社、フォーティネット社、スプランク社、アカマイ社、マカフィー社などがあります。また、サイウェア社、レイスワーク社、ディープインスティンクト社、オルカセキュリティー社、ギットガーディアン社、スニーク社、アブノーマル・セキュリティー社、エクレティックIQ社、タニウム社、ノゾミ・ネットワークス社、クラロティ社といったスタートアップは、2024年も引き続きサイバーセキュリティーのイノベーションをけん引するでしょう。
トレンド4:量子コンピューター
2024年に量子コンピューターが大規模演算の主役になることは間違いないでしょう。高度な演算能力を必要とする、AI、クラウドコンピューティング、暗号技術、創薬、ゲノム解析、気象学、材料科学、複雑系の最適化、金融モデリングなどの計算量の多い分野で応用が期待されます。
量子コンピューターは長いあいだ、SFの世界にとどまっていましたが、2024年には現実になるはずです。この新興技術は、これまでの演算能力に革命をもたらし、想像もできなかったようなスピードと規模で複雑な問題を解決するでしょう。フォーチュン・ビジネス・インサイツによれば、量子コンピューティングの市場規模は、2023年には9億2880万ドル(約1374億円)でしたが、2030年には65億ドル(約9619億円)となる見込みであり、この期間の年平均成長率は32.1%と予測されています。
IBM社は「IBM Quantum Summit 2022」で、433量子ビットを搭載した強力な量子プロセッサー「Osprey(オスプレイ)」を発表しました。同社は、1121量子ビットのプロセッサー「Condor(コンドル)」を間もなくリリースする予定で、史上初めて1000量子ビットを突破するプロセッサーとなる見込みです。
量子コンピューティング業界の代表的な上場企業には、上述したIBM社のほか、マイクロソフト社、Dウェーブシステムズ社、IonQ社、リゲッティ社、インテル社、ハネウェル社、アルファベット社(グーグル社の親会社)、アリババグループ、エヌビディア社、百度(バイドゥ)社などがあります。この分野のスタートアップをけん引するのは、Q-CTRL社、パスカル社、QCウェア社、ザパタ・コンピューティング社、1Qbit社、コールドクオンタ社、アトム・コンピューティング社、サイ・クオンタム社などです。
トレンド5:オートメーション(自動化)
産業オートメーションは2024年、ますます成長し、イノベーションを重ねるでしょう。その原動力となるのは、IOT、エッジコンピューティング、AI、機械学習、5G・6Gといった諸技術の融合です。中でも2024年に発展が期待されるのは、予測的メンテナンス、リアルタイムモニタリング、店舗システムとの相互接続、在庫管理の自動化、物流最適化のためのリアルタイムデータ分析、AIアルゴリズムを用いた需要予測などです。AI、ロボティクス、物流最適化、交通の効率化、ワークフローオートメーションにより、納期短縮とコスト削減が実現するでしょう。サプライチェーン管理技術におけるイノベーション(配送書類のペーパーレス化など)により、商品流通が円滑化されコストは低下します。
製造企業は産業オートメーション技術により、グローバル市場における業績、効率性、競争力を高めるでしょう。サプライチェーン管理は2024年に、ハイパーオートメーション革命を迎えると筆者は予測します。
ABB社、デンソー社、シーメンス社、エマーソン・プロセス・マネジメント、ロックウェル・オートメーション社、ハネウェル・プロセスソリューションズ、シュナイダーエレクトリック社、マイクロソフト・サプライチェーン・プラットフォーム、安川電機社、AWSサプライチェーン、オムロン・オートメーションなどが、2024年のイノベーションを先導するサプライチェーンオートメーション企業となるでしょう。
さらにオートメーションは2024年、職場環境を一変させると予想されます。職場のオートメーションは、非効率性や重複を排除しリモートワークやハイブリッドワークへの転換を促します。オートメーションは、反復的な事務仕事や、複雑な意思決定プロセスといった業務を合理化し、効率性を改善するための要です。ハイパーオートメーションの導入により各社は、2024年のうちに操業コストを30%削減できる、とガートナー社は予測しています。
職場とビジネスのオートメーションを支えてきた主要企業には、UiPath社、セールスフォース社、サービスナウ社、コグニザント社、ドキュサイン社、SAP社などがあります。これらの企業の躍進は2024年も続くでしょう。
トレンド6:Web3.0とメタバース
Web3.0は2024年にさらに勢いを増し、新たな技術の扉を開くでしょう。とりわけゲーム、交流、ビジネスのためのメタバースやその他の仮想世界の発展が期待されます。ユーザーたちが、ますます個別化され充実したオンライン体験を求めるなか、Web3.0は、ビジネスにおけるメタバースの急速な普及を推進するでしょう。
メタバース、仮想現実(VR)、拡張現実(AR)といったデジタルフロンティアは、2024年に画期的な進展を迎えるはずです。安価で高性能なヘッドセットの登場により、VR/ARセクターが拡大し、共有された仮想空間の集合体であるメタバースは、デジタル空間における相互作用を再定義すると予想されます。
教育からエンターテインメントまで、没入体験によって学習やゲームプレイに革命が起こるでしょう。加えてARは、精密診断を通じて医療に、仮想ショールームを通じて小売りにといった形で、他のセクターにも革新をもたらします。生成AIはこうした領域でのカスタマイズされたコンテンツ制作に活用されると考えられます。VRやARのほかメタバース、そして生成AIの融合により、デジタルと実世界の境界は曖昧となり、私たちは想像の赴くままに未来をつくりだすようになるでしょう。
トレンド7:自律走行車
自律走行車は、現在最も注目される新興技術の一つであり、2024年にはますます交通の大転換をもたらすことでしょう。自律走行車によって人間のドライバーが不要になれば、安全性の向上、渋滞の抑制、多数の人々のモビリティの向上がもたらされる可能性があります。
2024年、自律走行車のさらなる革新は、センサー技術、機械学習、コネクティビティといった分野で進むと筆者は考えています。これにより自律走行車は、複雑な環境のなかを移動しつつ、他の車や建造物などとリアルタイムで相互作用するようになり、人の運転がもはや当たり前ではなくなる未来への道筋が示されるでしょう。
自律走行車の応用が最も有望な分野の一つは、モビリティサービスです。安全で効率的で費用対効果の高いオンデマンドの交通手段を提供し、従来の交通システムにおいて不利益を被っている人々に、利便性やモビリティの向上をもたらす可能性があります。
世界で自律走行技術をけん引する企業には、テスラ社、リヴィアン社、アマゾン社傘下のズークス社、メイ・モビリティ社、モメンタ社、Pony.ai社、ゼネラルモーターズ(GM)社、エヌビディア社、グーグル社傘下のウェイモ社などがあります。グローバルデータ社の最新予測によれば、この業界が完全な自律走行技術を誕生させるのは、早くても2035年になるとされています。一方、ゼネラルモーターズ社が支援するクルーズ社と、グーグル社傘下のウェイモ社は、すでにサンフランシスコやアメリカのその他の州で、完全自律走行のロボットタクシーを展開しています。2024年は、この分野の進展を注視すべき年になるでしょう。
トレンド8:5G・6G回線技術の発展
2024年には、5G・6G回線技術の進化がビジネス環境に変化をもたらすと筆者は予想します。とりわけ重要な要素は、2024年5月に予定されている、IEEE標準規格修正版の発表です。これによりデバイスメーカーは、相互運用性と性能を規定する設計仕様を理解することができます。ただし留意すべきは、6Gはまだ実用化された技術ではないということです。一部のベンダーは次世代ワイヤレス標準規格に投資していますが、6G対応製品の業界基準の詳細が確定するのは何年も先になるでしょう。
一方、5G技術は、今まさに高速で信頼性の高い接続を推進しています。ワイヤレス技術の最新版である5Gは、過去の技術と比較して、高速、低遅延、高信頼の接続を実現しています。膨大なデータを超高速で処理できる5G回線は、私たちの技術利用に革命をもたらす可能性を持っています。
2024年には、5G回線がますます普及するとともに、エッジコンピューティング、IOT、VR/ARなどの分野が発展するでしょう。これにより、ますますスマートで高性能になり、高速で応答性の高いサービスをユーザーに提供できるようになります。
特に、VR/ARは5G回線の高速接続により、ユーザーは没入的で双方向的なVR/AR環境を気軽に体験できるようになるでしょう。
トレンド9:バイオテクノロジー
バイオテクノロジーは、生物学とテクノロジーを組み合わせ、新しい製品やプロセスを生み出し、私たちの生活を改善する新興分野です。ヘルスケアから農業まで、バイオテクノロジーはさまざまな業界に革命をもたらし、世界が抱える最重要課題を解決する可能性を秘めています。2024年、バイオテクノロジーは遺伝子編集や合成生物学のほか個人化医療といった分野においてますます進歩するでしょう。
成長が期待されるバイオテクノロジーの分野には、個人化医療、遺伝子編集とCRISPR診断、機械学習とAI、幹細胞技術、組織エンジニアリング、バイオプリンティング、ビッグデータ、創薬研究などが挙げられます。
注目のスタートアップには、プログラミング可能で長期的作用をもち、薬効成分を患部に届けることができる治療用mRNAを生成する史上初のプラットフォームを開発するストランド・セラピューティクス社。DNA解析を、誰にでも結果がわかりやすい形で提供する23andMe社や、がん予防やスクリーニングといった医療サービスを提供するプラットフォームであるカラー社などがあります。
バイオテクノロジーは、医療に加え、農業やエネルギーといった業界においても、効率的で持続可能な新品種や新燃料の開発を通じて大転換をもたらす可能性があります。バイオテクノロジーが技術トレンドとしてますます重要になることは間違いなく、世界が抱える最重要課題のいくつかに新たなソリューションをもたらすことが期待されます。
トレンド10:ヒューマン・マシン・インターフェース
ヒューマン・マシン・インターフェース(HMI)は、人とテクノロジーの関係を再定義し、より直感的で自然な相互作用を開発する新興分野です。
AI、機械学習、ロボティクスの発展とともに、HMIは、私たちがテクノロジーを利用する方法に転換をもたらし、日常生活を改善する可能性を秘めています。HMIは2024年、自然言語処理、ジェスチャー認識、脳・コンピューター・インターフェース(BCI)といった分野でますます進歩することが期待されます。HMIは、ますます自然でシームレスなものとなり、ユーザーに直感的で即応的な体験をもたらすでしょう。
ビジネストレンドに注目することの重要性
スタートアップ、企業、投資家には、2024年の新興トレンドに注目し続けることをおすすめします。次に何が台頭し、そうしたトレンドが、短期的・長期的なビジネスの意思決定にどんな影響を与えるか考えることは有意義です。これらのトレンドを理解することにより、それぞれのビジネスでこれまで以上の成果を達成できれば理想的といえるでしょう。