現場DXに取り組みやすくする、クラウド録画サービスが生まれるまで~社会実装とオリックス~

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[Publisher] ORIX Group

世界を変える革新的な技術の創出--それは大企業の特権ではない。企業規模によらず、こと日本においては中小企業やスタートアップ企業がその役割を担うケースも多く存在する。

技術とは、存在だけでは世界を変えることはできない。社会が抱える課題と結びつき、一つの解決からさらなる課題が生まれ、それをまた解決する。その積み重ねにより大きな変化へと変換されていく――つまり、ポテンシャルの発揮先とのマッチングが重要となる。

本シリーズでは、そうした“技術と課題のマッチング”を「社会実装」と称し、先進的な技術で今にも変革を起こそうという企業の取り組みを通じて、これからのビジネスのあり方を考える。第一弾では、クラウド録画サービス「Safie(セーフィー)」を提供するセーフィー株式会社に迫る。

2014年に創業したセーフィーは、オフィスや施設に設置したネットワークカメラの映像を、いつでもどこでも手軽に確認したい…そんなニーズに応えている。2017年からはオリックスと資本業務提携を結び、建設、不動産業界を中心にシェアを拡大。総課金カメラ台数12.9万台(2021年6月末時点。出典:セーフィー)、国内はシェア47.5%を誇る。

そんなセーフィーの代表取締役社長CEOの佐渡島 隆平氏と、オリックス事業法人営業第二部長の鈴木 富康に、セーフィーが急成長した背景や経営戦略、今後の目標などについて話をうかがった。

※株式会社テクノ・システム・リサーチ「ネットワークカメラのクラウド録画サービス市場調査」

クラウド録画サービスを一気に導入しやすくする3つのポイント

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株式会社セーフィー 代表取締役社長CEO 佐渡島 隆平氏

――はじめに、セーフィーがどのような会社なのか教えてください。

佐渡島 クラウド録画サービス「Safie」の開発と運営を行っている会社です。「Safie」は、クラウドに録画した映像をパソコンやスマートフォンでいつでも手軽に見られるというサービスです。現在、店舗・オフィス向けの「Safie PRO」、作業現場向けの「Safie GO」、携帯性にすぐれた「Safie Pocket2」をはじめ、さまざまなプロダクトを展開しています。

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Safieのクラウド録画サービスとは:カメラをインターネットにつなぐだけでかんたん。スマホ・パソコンから、いつでもどこでも確認できる。「見える」安心を手軽に運用できる。これがSafieです。(画像提供:セーフィー)

当社の強みとしては、「低価格」「高画質」「高セキュリティ」という3つのポイントがあると考えています。その中でも「高セキュリティ」が最大のポイントなのですが、カメラは外部から直接アクセスできない仕様で、クラウドにある録画データと、カメラと視聴に利用するデバイスの通信経路が最新の暗号技術で守られており、データ流出などの被害を防ぐ仕組みになっています。

特に「高セキュリティ」を評価いただき、小売や流通、ビル管理や建設現場などの現場管理に加えて、最近では自治体や行政機関でも利用いただくケースが増えてきています。交通量調査をはじめ、災害発生場所や避難所の状況をリアルタイムで確認するための実証実験などを進めているところです。

 

 

創業のきっかけと、シェア拡大の原動力となったオリックスとの協業

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――クラウド録画サービスへのフォーカスには、どのような理由があったのでしょうか。

佐渡島 私はセーフィーを立ち上げる前はソニーのグループ会社で、画像処理技術アルゴリズムの市場開拓などに携わっていました。そこで働く中で、特に2010年代に入ってからより強く感じるようになったのが、これからはAIを活用できないテクノロジー企業は生き残れない、という考えです。

より質の高いサービスを提供するためには、AIが必要になる。AIを活用するためには大量のデータが重要になる。つまり、ビッグデータを保有している企業が勝ち組になる。そう思ったんですね。それから、大量のデータを取得するには、何らかのプラットフォームサービスを構築するのが効率的だと考えていました。

そんな中、プライベートで自宅に防犯カメラを設置しようということになり、調べてみたところ、30万画素のアナログカメラがスタンダードな業界であることを知って驚きました。並行してネットワークカメラも調べていたのですが、こちらもセキュリティの問題で安心して使えるものではありませんでした。

そこで、先の考えと組み合わせて「誰もが安心して手軽につかえる“賢くなるカメラ”を画像処理技術を生かしてつくれないか」と思い至り、共同創業者のエンジニアである下崎、森本に相談したところ「楽勝ですね」というリアクションがありました。その後、3人で2014年に独立し、セーフィーを立ち上げました。

――オリックスとのパートナーシップのきっかけはどのようなものだったのでしょうか。

佐渡島 創業から1年ほど経った頃でしょうか。まだ8畳ほどのオフィスで、創業メンバー3人で机を並べていたときの話です。そこに鈴木さんが来てくれたんです。

鈴木 当時、知り合いの投資家から「将来有望なベンチャーがある」と紹介されたんですね。そのうちの1社がセーフィーでした。

映像を見せてもらって、あまりの画質の良さに驚いたことを覚えています。話を聞いてみると、「映像から未来をつくる」というビジョンを掲げ、将来のイメージも明確に持ちながら、確かな技術力と熱意が感じられて、近いうちに日本を代表する企業になると直感しました。

この会社を応援したいと思って、まずは全国でマンション管理を行う「大京アステージ」の管理物件にSafieを導入することを提案しました。大京アステージは50年以上の歴史のある会社です。2005年にオリックスグループに入り、2019年にはオリックスの完全子会社になりました。2021年3月末現在、全国で8,000棟ほどの物件を管理しています。

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オリックス株式会社 事業法人営業第二部長 鈴木 富康

佐渡島 最初、鈴木さんから「大京の5万台の防犯カメラを、Safieでクラウド化する」と聞いたとき、この人とんでもないこと言うなぁ、と思いましたね(笑)。いきなりそんな大規模案件を請け負えるのだろうかと。

それでも鈴木さんが「絶対できる」と背中を押してくれました。以来、全面的にサポートをしていただいています。福岡の展示会に出展した際にも部下の方を派遣してくれて、うちの社員よりも熱心にビラ配りをしてくれました(笑)。この人たちは本気で付きあってくれていると感じて、うれしかったですね。鈴木さんと仕事がしたいと思いました。

結局、2年がかりでマンション管理用のカメラを新規開発して、2017年から導入をスタートしました。その際に、光ファイバーの工事を請け負う通信会社や、マンションの警備を任されている防犯対策・セキュリティ企業ともつながりができました。それぞれの企業とは、現在、業務資本提携を結ぶまでの関係になっています。

振り返って見ても、この一件が大きな転機になりました。今後10年がかりで全5万台を入れ替える計画です。

――オリックスとの協業が成功体験となったんですね

佐渡島 そうですね。例えば建設業界では、工事の進捗(しんちょく)や災害発生時の状況を遠隔で確認したいというニーズがありつつも、導入時の煩雑さを理由に利用が進んでいないという状況がありましたし、飲食チェーンでは防犯やマネージャーの店舗への移動コストなど、Safieで解決できる課題をたくさん抱えていました。

鈴木さんには、このような課題を現場から引き出したり、解決までの道筋を一緒に考えてくれたりと、大いに助けていただいています。

鈴木 クライアントに話を聞いてもらえるきっかけさえつくれば、あとは佐渡島さんが高い技術レベルで課題解決の提案をしてくれるので、私としてもやりがいがありますね(笑)。佐渡島さん自身がトップセールスマンです。

佐渡島 いえ、営業は素人同然ですよ。そして、営業だけでなく、鈴木さんの上司の方から「オセロは四隅から押さえるものだ」というビジネスロジックを聞いたときは、目からウロコでした。そこから、デバイス(メーカー)、通信網(インフラ整備)、警備、リース(ファイナンス)の各分野の大企業と業務提携を結ぶという戦略をとることができました。

ほかにも、出荷台数を急速に伸ばさないといけない局面で、在庫リスクを軽減し資金調達をスムーズにするために、オリックスに機材を買い取っていただき、セーフィーが借り受けてお客さまに貸し出すという「セール・アンド・リースバック」というスキームもオリックスにつくっていただきました。当初はリースのスキームは自社で作るという議論もあったのですが、ソフトウエア企業としての強みに集中するために、オリックスとの協業に舵を切りました。

ビジネスの様々な側面で、多大なサポートをしていただいています。

――最後に、今後の目標について教えてください。

佐渡島 「映像プラットフォーム」を提供する世界一の企業になりたいという想いがあります。防犯カメラから始まった「映像プラットフォーム」はこれから、人の手間を省く役割を担い、「便利で快適な人の意思決定」をつくり出し、社会をより良く変えていきます。そしてその範囲を可能な限り広げていければと思います。

鈴木 例えば不動産の領域ですと、近い将来、建物がまるごとデジタル化するのではないかと言われています。セーフィーのカメラを「目」として、標準仕様として備えつけられるようになることも夢ではないと思っています。

大企業を飛び出して、新たな産業をつくろうと必死に頑張っている佐渡島さんを、これからも全力で支援していきます。一緒に大きなビジョンを実現させましょう。

佐渡島 ぜひ(笑)。まだまだ見たことのない景色が広がっているので、鈴木さんと一緒に冒険してみたいと思います。

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「Safie」のサービス内容や利用シーンのイメージについて、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。

 

サステナビリティ

事業を通じた社会課題への貢献

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