今改めて注目されるBCP(事業継続計画)って?必要とされる背景から目的まで徹底解説

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[監修] BCP/BCM策定・構築支援アドバイザー 昆正和
本記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています。

今、世界はこれまでにないスピードで変化し続けています。そうした中、多くの企業の間で、有事における事業継続の方法、手段などを取り決めた計画である「BCP(事業継続計画)」が改めて注目されています。

国内においては、新型コロナウイルスの感染拡大だけでなく、自然災害もこれまで以上に猛威を振るっており、そうした変化に柔軟に対応するための意識変革が求められる中で、どのような対策が必要になるのでしょうか。「BCP」の詳細な内容と策定方法に加え、運用のために必須とされる考え方「BCM(事業継続管理)」にも触れながら解説します。

BCPが求められる、日本企業のビジネスの現状

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急激な環境の変化に多くの企業が対応に迫られている

経営の安定性は企業の競争力に直結します。もし現在の業績が安定していたとしても、自然災害、大火災、テロなどによって社会状況が混乱した場合、どのような影響を受けるでしょうか?

2011年に起こった東日本大震災の影響による企業の倒産は2020年までに全国で2021件(帝国データバンク調べ))にのぼり、2020年の新型コロナウイルスの影響による倒産件数は2021年1月時点で792件(東京商工リサーチ調べ)となっています。現在もコロナ禍は続いており、その収束に向けてさまざまな取り組みが進められています。

自然災害や感染症など、人の動きが制限される緊急事態下においては、企業の操業率が大きく下落してしまいます。速やかに事業復旧ができなければ、事業縮小にとどまらず上記のように廃業を余儀なくされるケースもありえます。2020年は、世界中の企業が状況の変化への対応力と、それをもたらす備えの必要性に気付かされた年となりました。

今再度注目されるBCPとは

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自然災害などの不測の事態を完璧に防ぐことはできませんが、自社の事業領域において起こりうる事態を想定し、備えておくことは可能です。事前の準備や計画により、ダメージを最小限に抑え、早期復旧を目指すための指針として、今改めて注目されているのが「BCP」です。

BCPは経営的視点による戦略的な復旧計画

BCPとは「Business Continuity Plan」(事業継続計画)の略称ですが、よく混同される"防災マニュアル"と異なる点は、経営的視点が盛り込まれている点です。

中小企業庁によると、BCPには以下の内容や準備が求められます。

  1. 優先して継続・復旧すべき中核事業を特定する
  2. 緊急時における中核事業の目標復旧時間を定めておく
  3. 緊急時に提供できるサービスのレベルについて顧客とあらかじめ協議しておく
  4. 事業拠点や生産設備、仕入品調達等の代替策を用意しておく
  5. 全ての従業員と事業継続についてコミュニケーションを図っておく

多くの場合、企業は利益を出し続けることが求められています。それはたとえ自然災害や人災が起こった場合も同様で、利害関係者からは重要業務の継続が望まれます。そうしたことから、不測の事態に際しても事業を継続あるいは迅速に再開できれば、企業評価の向上につながることに加え、自社の属する業界において競合他社に先んじて事業を復旧することは大きな競争力になりえると言えます。

作って終わりにしない「BCM」の重要性

BCPと合わせて確認しておきたい概念が「BCM」です。

BCMは「Business Continuity Management」(事業継続管理)の略称であり、BCPを平時に有効活用するための継続的、反復的な活動を指します。

BCMに取り組むにあたっては、BCPの記載内容や担当社員の異動状況などを確認する「定期的なメンテナンス」、自社の事業におけるさまざまなリスクを想定した議論や有事の際の安否確認などの「訓練」、そして外部の専門家に自社の取り組みを評価してもらうなどの「監査とレビュー」という三つの考え方が重要になります。

例えば「メンテナンス」はなぜ必要なのでしょうか。BCPを策定したとしても、すぐに活用の機会が訪れるとは限りません。そもそも活用される機会がないことの方が望ましいものです。そのため、BCPが長期間放置されてしまうというケースも少なくありません。その間に起こる組織や事業者、ひいては社会環境の変化によって、BCPの内容が古くなってしまい、いざ必要となった際に役に立たないどころか、せっかくのBCPが逆にリスクとなってしまう危険性すらあります。こうしたリスクを避けるべく、BCPを常に最新の状況に即した内容にし、間違いなく機能するようにするためには、BCMを日頃の業務に意識して取り入れていく必要があります。

BCPの策定方法と注意点

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BCPの策定にあたり、事前に確認しておくべきこと、そして実際の策定方法を中小企業庁の「中小企業BCP策定運用指針」にのっとってご紹介します。

確認しておくべき四つの項目

  1. 経営者がリーダーシップをとる

    先述の通り、BCPには経営者の視点が不可欠です。そのため経営者のリーダーシップがなくてはBCPの正しい策定と運用は不可能です。

  2. 企業の規模に応じて人選する

    家族経営のような企業でない場合、経営者以外にも総務、財務、労務、技術、営業などの責任者を主要な会議メンバーとして参画させます。

  3. 取引先やパートナー企業との意見交換を行う

    大規模災害などの社会混乱時には、自社だけが緊急事態に陥るわけではありません。そうした状況下で事業を継続するためには、主要な取引先やパートナー企業との連携が不可欠となります。

  4. BCPを全従業員に周知する

    BCPの策定には経営者の視点が必要となりますが、運用には全ての従業員の行動が不可欠です。そのため平時からBCPを全従業員に周知しなければなりません。

BCPを策定するための5ステップ

  1. ‘基本方針の立案’

    まずはBCPの基本方針を決定します。この基本方針は何のためにBCPを策定・運用するのかを示すものであり、会社の経営方針の延長に位置する内容にする必要があります。

  2. ‘重要商品の検討’

    大規模災害などの有事の際は、人材や資源など平時ほどのリソースを活用できないことが予想されます。そのため、自社にとって優先的に取り扱うべき商品やサービスを事前に決定しておくことが重要です。

  3. ‘被害状況の想定’

    例えば大震災と新型コロナウイルスとでは、同じ災害としても企業が被る被害は大きく異なります。どのような事象が起こると、自社はどのような影響を受けるのかを、幅広くかつ細かく想定しておきましょう。

  4. ‘事前対策の実施’あらゆる災害が自社にどのような影響を与えるのかを想定したら、それらの状況下で自社にとっての重要な商品・サービスの供給を極力途絶えさせないための方法を検討しましょう。そこからおのずと対応策は定まっていくはずです。
  5. ‘緊急時の体制整備’

    実際に有事となった際、どのような対応を行うのか、そしてその責任者を決定します。組織が大きくなるほど意思決定や指揮系統のプロセスが重要となるほか、責任者が被災したり留守にしていたりするケースも想定し、しっかりとBCPのための体制を整備しておかなければなりません。

BCP・BCM〜今後のビジネスにおいて必要な考え方

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「万が一」の備えを平時の業務で常に意識する

今もなおコロナ禍の影響は続き、今後ますます世界は複雑化していくことが予想されます。そんな中、有事への備えはもちろんですが、それをいかなる時でも間違いなく実行できるようにしておくことが重要です。

緊急時のために平時から備えることは、少なからずコストがかかります。しかし、その備えによって、かけたコスト以上に有事の際のダメージを減らすことできるかもしれません。加えて前述の通り、迅速な事業の復旧は競争力の向上にもつながる可能性があります。これからのビジネスには、いついかなる変化も柔軟に乗り越える「対応力」が求められるようになるでしょう。

その対応力として求められるのが、BCP・BCMです。ぜひ平時のうちからBCPの策定を進め、運用のためのBCMにも取り組んでおきましょう。

事業を通じた社会課題への貢献

サステナビリティ

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