5Gの真の価値とは? 「情報通信のカスタマイズ」がかなえる社会課題解決

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[Publisher] ORIX Group

メディアなどで毎日のように目や耳にする「5G」。ワードとしてはすっかり浸透しており、既に「5Gの携帯通信サービスを利用している」という人もいるだろう。高速・大容量の通信によって動画視聴を快適にするなどのメリットがうたわれている。しかし、5Gが持つ価値はそれだけにとどまらないことをご存じだろうか。

今、社会や地域の課題解決、ビジネス変革を支える切り札として、5Gは官民問わず大きな注目を集めている。特に、誰もが自前の5G通信網を構築して運用できる「ローカル5G」は、これまでにない情報通信の形を実現するものとして、大きな期待が寄せられている。

5Gの本質的な価値やローカル5Gがもたらすメリット、そしてその普及に必要なことは何か。通信技術の研究や5Gの普及に取り組む、東京大学大学院工学系研究科システム創成学専攻 教授 中尾 彰宏氏に話を聞いた。

10年に1度の通信革新、その5回目にあたる5G

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「5Gは、5th Generationの略で、その名の通り5世代目のモバイルネットワーク技術という意味です。約40年前に始まった第1世代と比較しますと、最大通信速度は100万倍以上となっています」(中尾氏)

それぞれの世代をおさらいすると、第1世代はアナログ携帯電話で使われた技術。1979年に登場した自動車電話が国内初の民間利用となり、1980年代中盤に見られたショルダー型の大きな携帯電話も、この技術を利用したものだ。第1世代は息が長く、端末が小型化されても、ネットワーク技術としては同じものが20年ほど使われてきた。
その後、1990年代終わりに第2世代のデジタル対応技術が登場。以降およそ10年周期で、技術進化が起こっている。続く第3世代で初めて世界標準が定められ、通信速度は20Mbpsクラスへと高速化した。第4世代は、さらに高速化したものとなり、まだ多くの方が利用しているLTEに該当する。

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令和元年6月27日 総務省「第5世代移動通信システム(5G)の今と将来展望」を参考に図版化

そして、さらなる高速化と安定性を得て、10Gbpsクラスの通信を可能にするのが最新の5Gだ。4Gより10~100倍速く、第1世代に比べると100万倍以上。「高速」「大容量」「低遅延」が大きな特色であり、一般消費者には、ストレスなくどこでも高画質の動画を見られるなどのメリットが知られている。

5Gの真の価値は、利用者が設定をカスタマイズできることから生まれる

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「ただ、スマートフォンの小さな画面で動画を再生する程度であれば、4Gでも十分に対応可能です。ですから、そのような使い方のみでは5Gの本質的な価値を体感しづらいかもしれません」と中尾氏は話す。

実は、5Gの最大の魅力は、さまざまな主体が個別のニーズに応じて、ネットワークを柔軟に構築できるようになったことにあるという。いわゆる「ローカル5G」と呼ばれる政策で、地域の企業や自治体などが、自らの建物・敷地内でスポット的に5Gの基地局を運営できる。従来のようにキャリア(通信事業者)のネットワークを利用すると、通信環境はキャリア任せになってしまうが、自前のネットワークであれば自由に設定が可能だ。

「例えば、一般的にキャリアの通信は、ダウンリンクに多くを割くために、アップリンクの通信量を絞っています。ダウンリンクとは、ユーザーが端末にデータをダウンロードする方向の通信、アップリンクは端末からデータをアップロードする方向の通信です。普段のスマートフォンの利用を思い返していただくとわかりやすいですが、一般的に通信を利用する際は、ホームページを閲覧したり動画を見たりなど、ダウンリンクの方向で利用することが大半です。そのため、キャリアは大半のユーザー需要を満たすために、ダウンリンクを優先しています」(中尾氏)

しかし世の中には、アップリンクに対するニーズももちろんある。特にビジネスなどにおいては、アップリンクを活用することによる新たな課題解決の可能性が期待されている。通信基地局を各組織で運用できれば、それぞれの組織にとって最適な通信環境を設定できるため、アップリンクに多くを割くような運用も可能になる。

「実際に、私が実地検証で使用している基地局では、ダウンリンクとアップリンクにほぼ同じ容量を割り当てています。5Gと水中ドローンを活用した漁場の遠隔監視の取り組みです。 水中ドローンで撮影された4Kの鮮明な映像を、遅延なく5Gで送信することで、遠隔でドローンをリアルタイムに操縦しながら、養殖カキの生育状況を確認することができます」(中尾氏)

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広島県江田島市で行われている実証実験。 遠隔で水中ドローンを操作し、養殖カキの生育・海中状況をリアルタイムで把握することにより、水質を悪化させる堆積物の除去など対策につなげることができる。

従来は、海の中で生育するカキの成長を確認するために、ボートで養殖場に赴く必要があったが、この作業は、高齢化・労働者不足が進む漁業の現場で大きな負担となっていた。5G・ローカル5Gを活用することで、このような課題を解決することが可能となる。

「ローカル5G」の普及を促進するには?

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総務省 NS/IN研究ワークショップ「ニューノーマルから始まるBeyond5G」より抜粋

ほかにも、スマート工場の実現や、建設現場はじめ危険な作業環境での活用など、ローカル5Gに期待する声は大きい。しかし、現時点ではその導入に高いハードルがある。基地局の設置にかなりのコストがかかるのだ。

「安くても数千万単位。1億円を超えると見積もられるケースも多く、普及にはイニシャルコストを大きく下げる必要があります」(中尾氏)

設計、設置と測定、運用に至るプロセスのすべてにコストがかかる上に、情報技術に対する知見も必要だ。このため、複数のスペシャリストと契約してサポートを受ける必要が出てくることが多く、かなりの手間もかかる。

中尾氏は、ローカル5Gがまず効果を発揮するのは一次産業とみている。実地検証で成果を上げたカキの養殖場の例のように、4K映像の活用による課題解決が期待される分野だ。現場では高齢化・労働力不足も深刻であり、その解決が急務となっている。
ただ、一次産業は人口密度の低い地域で行われていることが多く、キャリアの5G展開が都市部に比べ遅くなることが予想される。いち早く5Gを活用するためにも、迅速にローカル5G普及に立ちはだかる課題をクリアすることが望まれる。

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「限られたキャリアだけではなく、すべての人が主体となって情報通信の基本的なサービスが行えることを、私は『情報通信の民主化』と捉えています。導入のハードルを下げることでローカル5Gが普及し、情報の民主化が進めば、多くの企業、多くの人が通信の新しい使い方を考えることができるでしょう。これまでキャリアや研究者だけでは想像もできなかった新たなサービスや課題解決の方法が生まれてくるはずです」(中尾氏)

ローカル5G普及に立ちはだかる課題解決に取り組む、オリックス・レンテック

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ローカル5G普及が期待されるなか、その壁となっているのがコストと手間という課題だ。それを解決するために、オリックスグループは新たなサービスを開始している。電子計測器などのレンタルサービスを提供しているオリックス・レンテックが、設計、設置と測定、運用におけるすべてのサポートをワンストップで請け負う。最適な機器を提案し、レンタル契約によるイニシャルコスト削減に寄与することで、自治体や団体、企業がすぐにでもローカル5Gを低コストにスタートすることを支援する取り組みだ。また、基地局の整備に必要なネットワーク機器を開発するメーカーであるAPRESIA Systemsにオリックスが出資している。

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オリックス・レンテックはローカル5Gに取り組もうとする企業をトータルにサポートする

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「私たちオリックス・レンテックは、これまで40年以上にわたり機器レンタルを通じて通信業界に携わり、さまざまなノウハウを培ってきました。経営層・現場の方、それぞれの声を聞きながら、お客さまの課題を解決する最適な方法を提案しています。

昨今、ローカル5Gを導入したいというお客さまは急速に増えているものの、コスト面はもちろん、申請に必要な書面作成などの負担を危惧するお客さまが多くいらっしゃいます。そのような課題に対し、マルチベンダーとして培ってきたリレーションを生かし、専門知識を持つパートナー企業を結集させることで、お客さまのローカル5Gの導入に関するすべての課題を解決したいと考えています」。
オリックス・レンテック営業推進第一部 副部長 峰 一生は、このように話す。

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同第一チーム 北上 潤は、ローカル5G導入を検討しているお客さまと、映像を活用した建設現場の課題解決について取り組んでいる最中だという。
「実現すれば、これまでにないソリューションが生まれることになるでしょう。個人的にもビジネスや社会を大きく変えるローカル5Gの可能性を強く感じています」(北上)。

ローカル5G導入のハードルを下げる、オリックス・レンテックのワンストップの導入支援により、さまざまな課題解決の可能性が生まれようとしている。

サステナビリティ

事業を通じた社会課題への貢献

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