いまさら聞けない「フィンテック」。背景から最新事例まで徹底解説

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[監修] 一般社団法人Fintech協会
本記事は2021年3月時点の情報を元に作成しています。

2000年代前半から世界で使われ始め、徐々に日本でも聞かれるようになった「FinTech(フィンテック)」。近年ではキャッシュレス決済に注目が集まったこともあり、多くの方にその存在が認知されています。とはいえ、「フィンテック」という言葉そのものは知っていても、その内容について、実はしっかり理解できていないという方も多いのではないでしょうか。

フィンテックとはどのような技術で、どんな領域で活用されているのかをひもときつつ、日本の企業や個人が抱える課題解決のためにフィンテックが注目される理由をご紹介します。

そもそもフィンテックとは?

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「フィンテック(Fintech)」とは、「金融=ファイナンス(Finance)」と「技術=テクノロジー(Technology)」を組み合わせた造語です。つまり「金融とICT(情報技術)を組み合わせた新しいサービスや金融商品、そしてそれらを提供する企業」などを総称する言葉と言えます。

そんなフィンテックの起源は、1998年米国で設立・事業化されたインターネット決済サービス「ペイパル(PayPal)」にあると言われていますが、本格的にわれわれの暮らしの中に浸透し始めたのは、00年代後半以降のスマートフォンの普及が大きな要因の一つであるとされています。

フィンテックに分類されるサービスの数々

フィンテックが用いられている代表的なサービスの例として、以下のようなものがあります。

  • インターネットバンキング
    パソコンやスマートフォンから、インターネットを介して銀行口座の残高確認や振り込みなどができるサービス。
  • キャッシュレス決済/スマートペイメント
    QRコードやバーコード、NFC(近距離無線通信)を介して、現金を用いず支払いを完了する仕組み。
  • 仮想通貨/暗号資産
    インターネットを通じて、人や企業の間でモノやサービスの対価として使用でき、また専門の取引所を通じて法定通貨と交換することもできます。暗号技術による安全性の確保や、ブロックチェーンによる取引データの共有など、多くの最新技術が用いられます。
  • クラウドファンディング
    インターネットを介して不特定多数のユーザーから資金調達を行う仕組み。個人から企業まで、あらゆる規模のプロジェクトが存在します。
  • クラウド会計ソフト
    従来の買い切り型の会計ソフトとは異なり、サービス利用料を支払いインターネット上で会計システムを利用するサービス。
  • 個人家計簿・資産管理
    銀行口座やクレジットカードなど、自身が利用する金融サービスと連携することで、個人の資産管理を行うサービス
  • ロボアドバイザー
    株式投資などにおいて、人工知能(AI)を活用してポートフォリオのアドバイスや実際の運用を行うサービス。
  • ソーシャルレンディング
    インターネットを介して、お金を借りたい人と貸したい人を結びつける仲介サービス。
  • トランザクションレンディング
    クラウド会計サービスを導入している企業などにおいて、オンライン上の取引履歴(トランザクション)から融資の可否を判断し、柔軟かつスピーディーに対応するサービス。
  • インシュアテック
    保険(Insurance)とテクノロジー(Technology)を組み合わせた新たな保険サービスやその取り組みの総称。フィンテックの保険版とも言われます。

フィンテックが成長した背景にある“二つの要因”

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フィンテックの成長の背景には、さまざまな要因が考えられますが、ここでは「テクノロジーの進歩」「顧客層の価値観の変化」という二つ点にフォーカスしてご紹介します。

テクノロジーの進歩

金融とICTとの組み合わせによって成り立っている「フィンテック」において、テクノロジーは欠かせない要素です。2007年のiPhone発売以降に訪れたスマートフォンの爆発的な普及は、多くの人々が、インターネットにつながった高性能コンピューターを持つという社会的状況を実現しました。

これにより、それまで金融サービスの提供に不可欠だったATMや支店窓口などの、高コストかつ物理的な大規模ネットワークを介さず利用できる金融商品やサービスが入り込む余地が増え、小規模な新興企業を含む数々のIT企業が参入できるようになりました。

リーマンショックの影響と、ミレニアル世代の台頭

また、フィンテックの成長に大きな影響を与えた出来事の一つとして2008年のリーマンショックも挙げられます。リーマンショックで損害を受けた銀行が融資の引き締めを行ったことにより、市民や中小企業の間には銀行の代替サービスへの期待感に繋がったのではないかと考えられています。加えて金融機関の一部で大規模な解雇が発生し、流出した人材の一部がIT業界に流入したことで ICTを活用した新しい金融サービスの開発が加速した一面もあったようです。

加えて、2025年には全世界の労働人口のうち75%を占めるようになるとも言われる「ミレニアル世代」(1980年代から2000年代に生まれた世代)が成人し、金融サービスを利用するだけでなく、それらのサービスを作る側になりつつあることも見逃せません。彼らの多くは早いうちからスマートフォンを使いこなし、電話や対面での直接的コミュニケーションを求めず、Webやアプリ上で完結する体験を好む傾向にあるため、フィンテックとの親和性が高いと考えられています。

フィンテック導入の影響、そのメリット/デメリット

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既存の金融業界が実現できなかったさまざまなサービスを生んでいるフィンテックですが、今後さらなる効果や影響が期待されると同時に、新しいテクノロジーならではのリスクも考えられます。ここではその一部を紹介します。

今後期待される効果

  • 新たな発想によるサービス創出

    フィンテック以前の金融サービスは、銀行や証券会社、クレジットカードなど、大規模な金融機関によって提供されるものがほとんどでした。しかし、ICTを活用することにより他業種やベンチャー企業の参入が容易になりました。これによって既存の金融業界の常識にとらわれないサービスや、デジタルネイティブな新たな価値観を持つ世代にフィットしたサービスや商品の開発が盛んに行われるようになっています。

  • 低コスト化

    フィンテックの特徴の一つとして、テクノロジーを駆使したサービスの自動化や効率化が挙げられます。例えばネット銀行は、従来の銀行が膨大な人員や資源を投入し、全国または特定の地域に広がる支店ネットワークと窓口でこなしていた業務を、実店舗ゼロで行っています。こうした自動化や効率化に伴い、フィンテックをベースとしたサービスの多くは、従来型の金融サービスと比較して消費者が負担する利用料や手数料を抑えることに成功しています。

  • 消費者の選択肢が広がる

    スタートアップ企業を筆頭にIT業界が本格的に金融業界へ参入し始めたことにより、新たな金融商品やサービスが誕生しました。以降さらなる競争が生まれ、日々サービス改善などの切磋琢磨(せっさたくま)が行われています。消費者はそうした豊富な選択肢から、自らの価値観や目的に合わせて利用するサービスを選べるようになりました。これまで証券窓口を通してしか扱えなかった株を、誰もがネット経由で売買できるようにした「ネット証券」はその代表例と言えます。

  • 安全性

    テクノロジーによる資産管理では、安全性が低いのではないかと心配される方もいるかもしれません。しかし、それは日本のように治安が良く、銀行口座の開設や維持が低コストで行える国ならではの視点と言うこともできます。

    例えば、アフリカなどの発展途上国の一部では、電気設備や移動手段が完備されていない、また、金融機関の支店インフラも行き届いていないなどの状況から現金を肌身離さず身につけたり、地面に埋めて隠したりしている現実があります。そして、それらの国では、電話線で全国を網羅するよりもモバイル通信の基地局を設置する方が、コストを低くできることから、先進国に近い水準でスマートフォンが普及しているという状況があります。その場合、現金を遠くの銀行まで持ち歩いて送金するよりも、フィンテックを活用したモバイル送金などの手段の方がはるかに安全であると言えるのです。

リスクや留意点

不正ログイン

とはいえ、上記のような安全面でのメリットは、正しく活用した場合に初めて発揮されるものです。強固なセキュリティーとなるパスワードや二段階認証も、正しく設定・管理しなければ、不正ログインされてしまう可能性は高まります。このように、フィンテックを便利で安全に活用するには、利用者のデジタルリテラシーが必須になってきます。

その一方で、利用者側の過失がなくとも、システム自体にセキュリティー上の欠陥がある危険性も無視できません。近年ではキャッシュレスサービスの不正利用や、インターネットバンキングを悪用した事件などが話題となりました。

またフィンテックはインターネットがなければ機能しません。そのためなんらかの事故や天災、サイバー攻撃などによりインターネットが不通となった場合、安全にサービスが利用できなくなってしまうリスクも存在しています。とはいえ、現金でも盗難のほか、火事・災害等による焼失・紛失のリスクがあるのは同様です。日々の技術進歩などによりこうしたリスクへの対応も着実に進んでおり、技術の導入で私たちがより安心して利用できる環境が拡大しているという見方もあります。

フィンテックに見る、これからのビジネス

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インターネットバンキングやクラウド会計ソフトなど、フィンテックはわれわれの暮らしだけでなく、ビジネスにおいても大きな影響を与えていますが、今後その影響力をさらに増していくことが予想されます。IT業界のみならず既存の金融機関もフィンテックに本腰を入れている今、ビジネスはどのように変わっていくのでしょうか。

コロナの影響で資金調達手段としてフォーカスされている

2020年、新型コロナウイルスの感染拡大に伴い資金難に陥った飲食店やライブハウスを救済する措置として、クラウドファンディングが注目を集めました。これまでスタートアップの新製品開発などの資金調達の手法としてのイメージが強かったクラウドファンディングが、モノやサービスの創出だけでなく、企業の経営という領域でも活用されうるということを示す動きであったと言えるでしょう。

また売掛金である入金待ちの請求書を介して資金調達を行う「ファクタリング」も、近年注目を集めているフィンテックの一つです。クラウドファンディングやSNSでの話題などで急速に知名度を集めた中小企業が、キャッシュフローの遅延によって追加投資や仕入れの拡大などのビジネスチャンスを逃さないための手段になりえると考えられます。

さらには、ネットワーク経由でソフトウエアを利用する「クラウドコンピューティング」を活用した企業間決済サービスも登場しています。インターネット環境さえあれば導入可能なため、初期導入費用や月々の固定費がかからないだけでなく、利用契約の締結をはじめ、全ての手続きをインターネット上で行うため、手形発行に必要な印紙代も不要となり、事務手続きコストが削減されます。

このように、フィンテックは送金や資産管理だけでなく、新たな資金調達手段としても有効です。多くの中小企業はこれまで資金調達を信用金庫や地銀からの融資、経営者の個人資産からの拠出、知人からの借り入れに頼っていましたが、フィンテックによって新たな経路を得たばかりか、さらにその速度を速め、規模を拡大することもできるようになりました。

2021年も継続する可能性のあるコロナ禍の不安定な情勢において、フィンテックによる資金調達はさらに需要が高まるとも予想されます。

フィンテックが目指すゴールは企業のデジタル変革

企業活動においては、多くの取引によって頻繁にお金が動きますが、例えば「クラウド会計」などのフィンテックを導入しデジタル化することで一元管理できるようになります。企業のお金の動きが見える化されることで、経営者も経営状況を明確に把握でき、より合理的なビジネス判断につなげられることが期待されます。

つまり、フィンテックの導入は、資金調達や決済といった特定のプロセスの利便性の向上にとどまらず、企業全体のデジタル変革をもたらし、新たな競争力の獲得につながる可能性があるということです。今後のフィンテックの普及により、われわれの暮らしとビジネスがどのように変化をしていくか、注目していきたいですね。

photo:Getty Images

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