工作機械の世界的メーカーがカーボンニュートラルを目指す理由

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DMG森精機 カーボンニュートラル推進室室長の遊亀博氏。(東京グローバルヘッドクォータにて)

[Publisher] BUSINESS INSIDER JAPANより転載

工作機械メーカーのDMG森精機株式会社は2020年4月から、東京グローバルヘッドクォータの電力を、「カーボンフリー(CO2排出量ゼロ)」の電力に切り替えた。グローバルに展開する業界最大手が環境への取り組みを強化する背景には、どのような事情があるのだろうか。DMG森精機カーボンニュートラル推進室室長の遊亀博氏と、オリックスの電力事業第一部副部長の篠崎万里子氏に話を聞いた。

環境対応が取引先からの選別につながる時代が来た

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2015年9月に「国連持続可能な開発サミット」で「持続可能な開発目標(SDGs)」が採択されてから、世界中でさまざまな取り組みが行われている。2030年までの目標達成を目指して、近年、より多くの企業が、積極的に責任を果たす姿勢を見せている。

「持続可能な開発目標(SDGs)」の採択に続き、同年12月に開催されたCOP21(国連気候変動枠組条約第21回締約国会議)では「パリ協定」が締結され、温室効果ガスの排出削減目標がより厳格になった。それは、世界の平均気温上昇を産業革命前と比較して「2℃よりも低く抑え」、「1.5℃に抑える努力をする」というもの。ICPP(気候変動に関する政府間パネル)の1.5℃特別報告書では、そのためには2050年までに脱炭素化する必要があるとしている。

こうした世界の動きを受けて、グローバル企業はすでにカーボンニュートラルへの取り組みを進めている。GAFAM(Google、Apple、Facebook、Amazon、Microsoft)をはじめ世界を代表する企業が、カーボンニュートラルへの対応を強めていくと表明している。

例えばアップルは2020年7月、すでに企業運営を100%再生可能エネルギーで行っており、地球規模でカーボンニュートラルを達成していると報告。さらに企業活動のあらゆる面での省エネ化を進め、再生可能エネルギーの電力プロジェクトなどにも取り組むことで、2030年までには事業全体、製造サプライチェーン、製品ライフサイクルの全てで、気候への影響を実質ゼロにすることを目指すと表明している。

マイクロソフトは2020年1月、2030年までに「カーボンネガティブ」、つまり排出するCO2よりも吸収するCO2が多い状態にすると発表。2012年から取り組んできた「カーボンニュートラル」からさらに踏み込んだ方針を打ち出した。しかも2050年までには、1975年の創業以来、直接的あるいは電力消費によって間接的に排出してきたCO2の環境への影響を完全に排除するという。

「ヨーロッパなどではすでに、環境に対する取り組みをしているか否かが、企業に対する評価につながる時代となっています。お客さまが商品を選ぶ際の選択基準としても、投資家が投資先を選ぶ際や、銀行が融資先を決定するに当たっても、環境への取り組みの有無は評価基準として大きい。企業にとって、事業を継続していくうえで、環境への取り組みは重要なカギとなっているのです」(遊亀氏)

そうした世界的動向の中、DMG森精機でも、環境への取り組みを進めてきたという。

技術力で環境保護に貢献する

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1948年創業のDMG森精機は現在、世界43カ国に137の拠点を持ち、グループ全体で1万2000人の従業員を擁する世界的な工作機械メーカーである。同社の工作機械は自動車、航空機、インフラ、医療機器など幅広い分野で用いられており、その「5軸・複合加工機」のシェアは、世界トップクラスを誇る。

同社は以前から積極的に環境への取り組みを行ってきた。特にヨーロッパを拠点とするDMG MORI AGでは、製造拠点とグローバルのパーツセンターなど9拠点でグリーン電力を採用。持続可能な気候保護プロジェクトへの出資によってCO2排出量をオフセットし、2020年に日本やアメリカなど他の拠点に先駆けてカーボンニュートラルを達成している。

日本国内でも、三重県、奈良県、東京都内の3拠点に太陽光発電設備を導入しているほか、各事業所の照明をLEDにするなど、あらゆる面で環境、特にカーボンニュートラルに向けた活動に取り組んでいる。2020年4月には東京グローバルヘッドクォータでオリックスの環境対応型電力サービスを導入。年間約385.8t(2019年実績)のCO2排出量が削減可能になるという。

遊亀氏によれば同社は、製品の面でも積極的に環境への配慮に取り組んでいる。2001年に環境マネジメントシステムの国際認証「ISO14001」を取得。以降、工作機械メーカーとして、自社の技術による「環境配慮のある製品」をユーザーに届け続けている。

「弊社は製品の消費電力の削減、お客さまの作業環境の改善につながるような環境配慮技術によって、地球環境に貢献してきました」(遊亀氏)

同社の省電力を実現する技術「GREENmode(グリーンモード)」は、2017年9月以降の製品に標準搭載されており、この技術による加工時間の最短化、無駄の削減などによって、工作機械1台あたりのCO2排出量を年間2650㎏削減できるという。

「ESG経営も注目されていますし、日本でも環境に関心を持つ投資家が増えています。またお客さまにとっては、環境への取り組みをしている企業、製品を選ぶこと自体が、お客さまの環境への取り組みになる。結果的に、私たちが環境に取り組むことで自社の価値を高め、それがお客さまの企業価値をも高めることになるのです」(遊亀氏)

「環境への配慮」はビジネスに直結する重要課題に

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DMG森精機の工場内に設置された太陽光発電設備。
提供:DMG森精機

「われわれの技術は、風力・水力発電装置や新しい燃料電池、e-モビリティといった、グリーンテクノロジーの開発にも使われています。今後もさらなる技術やノウハウを蓄積することで、グリーンテクノロジーに貢献していきたいと考えています」(遊亀氏)

より優れたグリーンテクノロジーが生まれれば投資も増え、需要も増える。企業としての業績もアップし、また新たな製品の開発にもつながる。環境配慮とビジネスが、相乗効果を生む時代は、もう来ているのだ。

DMG森精機では2021年の目標として、全世界での事業活動および部品調達におけるカーボンニュートラルの達成を挙げている。

「最終的には、お客さまも含めたサプライチェーン全体のカーボンニュートラルを達成するのが、私たちの目標なのです」(遊亀氏)

オリックスの篠崎氏によれば、日本の製造業者はオイルショック後の1979年に省エネ法が制定されて以降、化石燃料によるエネルギーの使用削減、合理化を通じたCO2削減に取り組んできたという。

「お客さまからは、省エネに関してはやれることは全てやったうえで、さらに何をどうすればよいのかとご相談を受けることが増えました。次の一手として選ばれることが多いのが、使用する電力を通じてのCO2削減です」(篠崎氏)

オリックスは2009年から電力小売事業に参入し、太陽光発電を中心に、風力や地熱、バイオマス混焼発電所などに由来する電力を供給している。それらを通じて、企業のさらなるCO2削減対策についてさまざまなメニューで対応してきた。

●オリックスが提供する環境対応型電力供給サービスの電力メニュー

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今、多くの企業が検討しているのが、低CO2電力や再生可能エネルギー由来の電力の購入、自社発電設備の設置だ。電力購入については、企業の置かれている状況に応じて、5段階の低CO2排出係数メニューおよび3段階の非化石証書付き再生可能エネルギー由来の電力から組み合わせて選択することができる。非化石証書にはRE100イニシアチブが求める電源のトラッキング証明を付加することも可能だ。自社発電設備の設置については、オリックスが、お客さまの保有する施設に太陽光発電設備や蓄電設備などを設置し、同設備から発電される電力をお客さまに供給するPPAモデル(第三者所有モデル)も提供している。

「製造業に限らず、取引先からの要求や、企業イメージの向上といった目的で、さらなるCO2削減を迫られている企業は増えています。そこで求められるのは、いかにコストをかけずにCO2ゼロや再エネ化を進めるか。私たちがお手伝いできることは、まだまだあると考えています」(篠崎氏)

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