プチプチ®だけじゃない!気泡緩衝材の枠を超える川上産業の事業展開に迫る

[取材先]株式会社川上産業株式会社(東京都)

指先でつぶすと“プチッ”とはじける、あの心地よい感覚。誰もが一度は遊んだことがあるであろう「プチプチ®」。大切な荷物を衝撃から守る気泡緩衝材として欠かせない存在です。それを日本で初めて製造・販売したのが、川上産業株式会社。業界シェア約60%を誇り、気泡緩衝材という枠を超え、農業資材や建築資材をはじめ、社会や人・暮らしを守る多様な製品を展開。環境課題の解決にも尽力し、「まもるを、つくる。」(あらゆる大切なものを守るために製品を作る)企業として歩みを着実に進めています。

「プチプチ®」の技術を軸に、多岐にわたる製品展開を実現する開発力と、未来を「まもる」メーカーとしての挑戦について、同社代表取締役 社長 安永 圭佑氏に、オリックス 新宿支店 南平 拓郎が伺いました。

「プチプチ®」はいかにして愛され続ける存在になったのか

川上産業株式会社 代表取締役 安永 圭佑氏

──はじめに、貴社の創業と「プチプチ®」開発の経緯を教えてください。

安永氏:当時アメリカで公開されていた気泡シートの特許技術に、創業者が日本国内での需要を見出したことから始まりました。1963年に研究所を立ち上げ、日本で量産できるよう独自の製造方法を確立。1968年に川上産業を創業し、気泡緩衝材「エア・バッグ」として発売を開始しました。

──そこから、どのように「プチプチ®」として広く知られるようになったのでしょうか。

安永氏:「プチプチ®」として商標登録をしたのは1994年ですが、それ以前より、子どもから大人まで多くの方に自然と「プチプチ」と呼ばれていました。つぶすと軽やかな音とともに小さな気泡がはじける、「ついプチッとしたくなる」感覚が親しまれたのが大きな理由だと思います。「エア・バッグ」として商品説明をしてもなかなか伝わらないのに、「プチプチ」と言えば、誰にでも一瞬で理解していただける。それならば最初から「プチプチを作っています」と言ったほうが早いと判断し、正式な商品名として採用しました。この名前のおかげで、より親しまれる存在になったと感じています。

誰からも親しまれる「プチプチ®」

ニーズに応え続け、気泡緩衝材の枠を超えた1000種類以上の製品を展開

──現在は製品の種類も多岐にわたると伺いました。

安永氏:「プチプチ®」関連製品は、現在1000種類以上にのぼります。

標準タイプでも、気泡のサイズや強度が異なるものなど20種類以上展開しています。また、袋状にしたもの、手で裁断できるものなど、お客さまの作業効率を向上させる加工のバリエーションも豊富です。

さらに静電気やさびを防ぐもの、保温・断熱効果を高めたものなど、さまざまな機能を持たせたラインアップがあり、例えばビニールハウスの保温やコンクリートの養生など、農業、建築、土木ほか幅広い分野で活用されています。

「プチプチ®」の技術を応用した「プラパール®」という板材もあり、ウェブ会議などで活用される防音ブースなどの製品も開発しています。

豊富なラインアップで、農業(右上)や建築(左下)など、さまざまな分野で活用される「プチプチ®」関連製品。防音ブース(右下)などの製品にも、その技術が生かされている。

──なぜ、気泡緩衝材の用途にとどまらず、幅広く展開できたのでしょうか。

安永氏:常にお客さまに寄り添い、「こんなことができたらいいのに」というニーズにお応えし開発体制を整えてきた結果です。

そもそも製品の大部分が「空気」のため体積が大きく、保管や運搬に多くのスペースを必要とします。輸送コストを抑えるため工場からお客さままでの輸送距離を最小化し、工場と物流拠点を全国に分散させています。それが各地域への密着につながり、現在では全国7カ所の生産工場それぞれに開発権限を持たせ、地域の営業担当と連携しながら、お客さまの細かな要望にスピーディーに対応しています。

こうした体制のなかで生まれた製品の一つが、災害用の簡易ベッド「PLA-BED(プラベッド)」です。ちょうどコロナ禍、「アルコール消毒しても劣化しない避難所用ベッドがほしい。無くて困っている」という課題を聞き、水や薬品に強い「プラパール®」を用いて開発。素材は軽いのに約400kgもの耐荷重を実現し、保管しやすく断熱効果もあるなど、現場の要望にお応えする製品を1カ月という短期間で完成させました。その後、さまざまな自治体などに導入いただいています。

「プチプチ®」の技術で、人・環境・地球を「まもる」存在へ

──今後の展望をお聞かせください。

安永氏:現在、お客さまから使用済みプラスチック包材を回収し再び自社製品へと再生する「ループリサイクル」に取り組んでおり、2024年8月には自社での自主的な回収・再資源化が可能となる「プラスチック資源循環促進法」の認定を取得しました。それまでは専門業者に回収を依頼していたため、対応できるエリアが限られたり、自治体によっては回収自体が認められなかったりするケースがありました。しかしこの認定により、回収できる自治体と回収量が大幅に拡大し、より効率的な回収体制が整いました。今後は、プラスチック業界全体で資源循環をスタンダードにするための取り組みを強化したいと考えています。

また、「プチプチ®」の技術のさらなる可能性を追求していきます。例えば近年、アルミを貼り合わせ保温・断熱効果を高めた「アルミプチ®」という製品の引き合いが高まっています。地球温暖化により猛暑などの異常気象が激化するなか、冷暖房の効率を上げる後付け可能な断熱・遮熱材として、体育館や公共施設などを中心に活用されるケースが増えているのです。これも、日々変化する社会課題に対して私たちがご提案できる一つの具体的なソリューションです。

「プチプチ®」の可能性を広げ続けて社会課題を解決し、「まもるを、つくる。」という企業スローガンのもと、人や環境、そして地球を守る存在でありたいと考えています。

<取材を終えて>
オリックス 新宿支店 南平 拓郎

誰もが知り、触ったことがある「プチプチ®」ですが、これを製造する川上産業という企業名を知っていらっしゃる一般の方は、決して多くないかと思います。こうした隠れた優良企業に光を当て、多くの方々に知っていただくことも、私たちオリックスが担える大切な役割の一つです。

同社のループリサイクルの取り組みにおいては、オリックス・レンテック(株)の技術センターから排出される「プチプチ®」を含む梱包材(廃棄プラスチック)の回収に向けたトライアルを開始しています。これからも同社の挑戦を、多方面から継続的に支援してまいります。

企業概要※ 公開日時点

社名 川上産業株式会社
本社所在地 【東京本社】
東京都千代田区五番町6-2 ホーマットホライゾンビル5F
【名古屋本社】
愛知県名古屋市中区丸の内1-9-16 丸の内Oneビルディング5F
設立 1968年
代表者名 安永 圭佑
従業員数 528人(2024年9月現在)
事業概要 ・「くうき」を使ったプラスチック資材の開発、製造、加工、卸し、販売
・緩衝材製造機の開発、製造、レンタル
・緩衝材、包装資材、物流資材、物流機器の仕入販売
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