
[取材先]株式会社リーフワークス(滋賀県)
滋賀県大津市に本社を構え、ビジネス向けクラウドサービスやEC事業を手掛ける株式会社リーフワークス(以下、リーフワークス)。2010年、当時23歳の澤 健太氏がたった一人で創業した同社は、累計1500社以上に導入されているアフィリエイト広告管理システム「Affilicode」など革新的なサービスを開発・提供する成長企業です。
同社が掲げるミッションは「最高の学び場を創り人と社会をアップデートする」。エンジニアとして独立した澤氏が、なぜ会社を「学び場」と捉えるようになったのか。その背景には、創業期の苦悩と仲間との出会いによる意識の転換がありました。ユニークな経営哲学を実践する代表取締役の澤 健太氏に、同社の成長の軌跡と今後の企業経営について、オリックス 滋賀支店の森田 学が伺いました。
「なんでもできる」が原点。一人で駆け抜けた創業期

──まず、澤社長がWeb業界に足を踏み入れたきっかけを教えてください。
澤氏:中学生の頃、自作ゲームを公開するためにホームページを作ったのがきっかけです。コードをいじったら、自分の思い通りに世界が作れる。「なんでもできる!」と強く感動しました。
その後、コンピュータ系の専門学校に進学し、Webシステムを開発する会社でアルバイトをしていたのですが、言われたものを作るだけでは物足りなくて。自主的に新しいシステムを開発し、売れたことで「自分のアイデアを形にして売るまでがワンセット」というビジネス感覚を持つようになりました。この経験は今の自分の原点です。
──その後、23歳で独立されていますね。
澤氏:独立時はノープランでした。結婚して子どもが生まれたばかりで、ローンを抱え、資金は2カ月で底をつく状況でした。必死で営業の電話をかけて、受託開発で食いつなぎながら、並行して自社製品の開発を進めました。
最初に開発したメールフォームシステムの価格は5000円ほどでしたが、値上げをしても、販売数は落ちませんでした。最終的には5万円以上に引き上げても売上だけは伸び続け、この経験から、「自分たちの技術の価値を信じ、適正な値付けをすること」の大切さを学びました。
──その後、社員を採用するようになってから変化はありましたか。
澤氏:創業3年ほど経った頃、専門学校の同級生(現 執行役員 兼 EC事業部 部長 服部 了典氏)が合流し、EC事業を立ち上げることになりました。彼が家族を連れて縁もゆかりもない滋賀に引っ越してきてくれたことで、仲間とその家族を支える責任を強く意識するようになりました。

──経営者として、壁を乗り越えたのもその頃でしょうか?
澤氏:徐々に採用を増やしましたが、最初のうちは開発から経理、お客さまのメールチェックまで「自分でやった方が早いし、クオリティも高い」と何でも一人で抱え込んでいました。
転機は、企画段階のシステムを無理に受注した案件です。開発が遅れ、納期前日でも完成度は8割程度。諦めかけたところ、社員全員が残業してなんとか納品にこぎつけることができ、一緒に働く仲間の大切さを実感しました。経営者として彼らになにができるのか自問自答した結果、働く意義を見直し、社員の幸せと成長を支える経営を志すことを決意しました。

──その経験から、社員との関係性や経営スタイルはどのように変わりましたか。
澤氏:社員に意識して仕事を任せるようになりました。万が一社員が失敗しても、失敗は成長の糧になり、結果的にお客さまに提供できる価値になる。会社としての投資だと捉え、社員を信じたことで会社の雰囲気が劇的に変わりました。
また、給与や評価制度を見直し、360°評価やコンピテンシー制度を導入。当時の行動指針「関わる人全てに敬意を払い、共に成長する気持ちを大事にする」を評価項目に組み込み、数値だけではなく定性的な評価で一人ひとりの成長にフォーカスしました。役職や職種を問わず、互いを尊重し共に成長する姿勢を重視するこの方針が、現在のリーフワークスの基盤になっています。
時を同じくして売り切り型からサブスクリプションモデルへ舵を切ったことも転機でした。毎月の売上が安定したことで積極的に人材採用に取り組めるようになりました。また、お客さまとの長期的な関係を築くことが重要なサブスクリプションモデルによって、社員がお客さまに寄り添う意識が高まり、社員も事業も成長する好循環が生まれました。
事業も制度もすべては「人」のため。企業文化は最強の武器になる

──2023年には、新たにミッション・ビジョン・バリューを制定されましたね。
澤氏:人を経営の主軸に据えるため、ミッションを「最高の学び場を創り、人と社会をアップデートする」、ビジョンを「価値あるブランドを創造し、エンゲージメントを高める」、バリューを「関わる人すべてに敬意を払い、共に成長する気持ちを大切に」としました。会社は社員の学び場であり、事業は社員が社会を良くしていくための手段と定義しています。

このミッション・ビジョン・バリューは、社員一人ひとりに浸透していて、当社の各事業にも大きく影響を与えています。
例えば、主力の広告効果測定サービス「Affilicode」は、Apple社のトラッキング規制にいち早く対応し、業界トップシェアを獲得していますが、売上の半分近くはお客さまからのリファラルによるものです。機能面だけではなく、「関わる人すべてに敬意を払い、共に成長する気持ちを大切に」というバリューを社員が実践し、提案から導入、保守までお客さまに親身に寄り添ったことが成果につながったと考えています。

CMSサービスの「Palette CMS」は、もともと求人や不動産などの業界を特化して提供していた複数のシステムを、汎用化して一つの製品に統合したものです。「価値あるブランドを創造し、エンゲージメントを高める」というビジョンの下に、社員同士がお客さまのニーズを追求して技術開発を進めたからこそ進化遂げることができました。

さらに、天然石アクセサリーのECサイト「Pascle」では、サイトの構築からマーケティング、販売までワンストップで展開。2023年にはジュエリー・アクセサリーのECモールを運営するジェイウェル株式会社から、ジュエリー・アクセサリーのECモール事業を譲受しました。当社にとって初のM&Aでしたが、仲間が増えたことで「学び場」がより充実しました。M&Aは、ミッションである「最高の学び場を創り、人と社会をアップデートする」を実現できる仕組みであり、2024年から4件のM&A(2025年9月時点)を実行しました。

──2023年から3年連続で健康経営優良法人に認定されていますが、どのような企業文化が評価されたのでしょうか。
澤氏:2023年の初回申請から3年連続で健康経営優良法人として認定され、2023年と2025年には中小規模法人部門で全国上位500法人に与えられる「ブライト500」にも選出されました。
認定の背景には、社員発案による施策が評価されたことがあります。例えば、サラダやサラダチキン、フルーツを社内の冷蔵庫に常備して、健康的な食事をサポートしたり、作業環境の改善にモニターを3台支給したりする取り組みなどです。
その他にも社員のアイデアで「びわ湖マラソン」への参加やオープン社内報「Growing+」を発行しています。制度を会社が一方的に用意するというより、社員が主体的に「学び場」を良くするためにつながりを生み出しており、人を中心とした企業文化が醸成されていると実感しています。

滋賀から世界へ。社員と地域の選択肢を増やす挑戦

──最後に、今後のビジョンをお聞かせください。
澤氏:会社を大きくしたい理由は、突き詰めれば社員の人生の選択肢を増やしたいからです。社員には、新しい事業に挑戦したい、新たなスキルを身につけたいと思ったときに、会社を辞めるのではなくリーフワークスグループの中で実現できる環境を用意したい。
その一環として、2026年に現在の本社をインキュベーションオフィスとして開放する計画です。社内外の挑戦したい人が集うことで、滋賀から世界に通用する事業を創出できると考えています。
会社や事業の拡大は、目的ではなく手段です。経営者として、社員一人ひとりが成長し続けられる「最高の学び場」を創り続けることこそ、人や社会をアップデートする原動力だと信じています。僕自身も、これからも一番の学び手として変化を楽しんでいきたいですね。
<取材を終えて>
オリックス株式会社 滋賀支店 森田 学

ビジネスの原点から社員の皆さまの自主性を尊重する経営スタイルなどのお話を伺い、滋賀の近江商人に伝わる「三方良し」を実践されていると改めて感じました。社員の増加に伴い、2026年1月にはさらに大きな社屋を竣工予定とのこと。成長を続けるリーフワークスさまの挑戦を、オリックスとしても今後ますますサポートさせていただきたいと感じる取材でした。
企業概要※ 公開日時点
| 社名 | 株式会社リーフワークス |
|---|---|
| 本社所在地 | 滋賀県大津市今堅田2丁目10-4 |
| 設立 | 2010年7月 |
| 代表者名 | 澤 健太 |
| 従業員数 | 68名(グループ会社・外部スタッフを除く) |
| 事業概要 | ビジネス向けクラウドサービスの提供、Webサービス開発、ECサイト運営、ITコンサルティング業務 |
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