自動運転トラックが物流の新時代をけん引!物流業界の自動運転の現在地とは

[取材先] 株式会社ロボトラック(東京都)
本記事は2025年11月時点の情報に基づいて作成しています。

日本の物流業界では、慢性的なドライバー不足や長時間労働など、さまざまな課題が顕在化しています。こうした状況の中で、次世代の物流インフラとして注目を集めているのが「自動運転トラック」です。本記事では、トラックの自動運転システムの研究・開発を手掛ける株式会社ロボトラック代表取締役CEO 羽賀 雄介氏に、物流業界が抱える課題や自動運転トラックが果たす役割、その先に待つ新たな社会についてお話を伺いました。

増える荷物、減るドライバー。転換点を迎えた日本の長距離物流

株式会社ロボトラック 代表取締役CEO 羽賀 雄介氏

──いま、日本の物流、特に長距離トラック輸送の現場では何が起きているのでしょうか。

羽賀氏:長距離輸送は、ドライバーの減少が深刻です。荷物は増えているのに走る人がいない。この数年で特に目立つのが、運送事業者の廃業の増加ですが、背景には慢性的な人手不足があります。

2024年からの時間外労働規制も、こうした構造的な問題をあぶり出しました。残業時間の上限によってドライバーが運転できる時間そのものが短くなれば、結果として走行可能時間が短くなり、輸送力は確実に低下します。

一方で、「人を増やせば解決する」という状況でもありません。賃金水準が決して高いとは言えない中、若い年代からは「参入しづらい仕事」と見られているのが現実です。

最大の課題は、「人が走る距離」に依存する物流モデルそのものにあります。荷物量は増え、人口は減少する。必要な走行距離が増える一方で、ドライバーは減っています。これまでは現場の改善や努力によって支えられてきましたが、そうした対応だけでは限界を迎えつつあります。

ただし、私たちはこの状況を悲観的には捉えていません。むしろ、「次の仕組みに移行するタイミングが早まった」と考えています。そして、その転換のカギを握るのが「自動運転トラック」です。

ドライバー不足をテクノロジーで乗り越える。自動運転トラックという選択肢

──「自動運転トラック」とはどのようなトラックなのでしょうか。

羽賀氏:AI(人工知能)などの先端技術を活用し、運転手の操作を必要とせずに走行するトラックです。

考え方自体はシンプルで、道路状況を認識し、判断し、ハンドルやアクセルを操作するという、従来人間が行っていたプロセスを、機械が正確に担うだけです。具体的には、カメラや各種センサーが「目」や「五感」の役割を果たし、ソフトウエアが「脳」として意思決定を行います。

私たちロボトラック社は、このAIアルゴリズムと自動運転システムの開発に取り組んでいます。

また自動運転は、システムがどこまで運転を担うかによって、「レベル0〜レベル5」の6段階に分類されています。当社は「特定条件下での完全自動運転」にあたるレベル4の自動運転トラックを、日本の長距離輸送の現場に実装したいと考えています。

──実用化すれば、日本の物流インフラに与える影響も大きそうですね。

羽賀氏:はい。特に日本は、海外に比べて自動運転の導入メリットが際立つ国だと考えています。

自動運転システムの中核を担うのはAIであり、技術面ではアメリカや中国が先行しています。ただし、両国と日本とでは、物流を取り巻く前提条件が大きく異なります。アメリカには移民労働者も含めてドライバー供給の余地があり、中国も深刻な人手不足には直面していません。

一方で、日本は大規模な移民受け入れを行っておらず、高齢化と人口減少が相当速いペースで進んでいます。結果として、トラックドライバー不足という課題が他国よりもずっと深刻です。

だからこそ、自動運転トラックの効果が海外より早く可視化されると考えていますし、期待できるマーケットの規模も大きいと捉えています。

2028年の無人走行を見据えて──レベル4自動運転トラック導入へのロードマップ

──ロボトラック社が目指す自動運転トラックの実用化に向けて、どのようなロードマップを描いていますか。

羽賀氏:日本政府は2025年6月、自動運転サービスの市場の拡大と、その実現に向けて必要なハード・ソフト・ルール整備に関する2040年までのロードマップ案を公開しました。

この中では、2030年ごろまでにレベル4の自動運転トラックの運用開始を目指すとされていますが、当社としては2028年度に、当社システムを搭載したトラックによるレベル4走行を実現したいと考えています。

(出典)経済産業省 第2回 自動運転サービス支援道普及戦略ワーキンググループ「資料3 自動運転サービス支援道ロードマップ 2025年6月(https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/digital_architecture/2_siryou3roadmap.pdf)(参照日:2025年12月16日)

自動運転は、実際に走行させてデータを蓄積するほどアルゴリズムが高度化し、安全性能も向上していきます。当社も創業から約1年半、毎日のように実証走行を重ね、天候や交通状況などさまざまな条件下でのデータを蓄積してきました。

具体的には、すでに新東名高速の約100km区間(駿河湾沼津SA〜浜松SA)において、有人でのレベル4相当の走行テストに成功しています。2026年度前半には東京〜名古屋間、さらに2026年度内には東京〜大阪間での長距離走行テストへと対象区間を順次拡大していく計画です。

──「技術面や制度面でのハードルが高いのでは」との印象もありますが、その点はいかがでしょうか。

羽賀氏:世界では自動運転トラックの商用化が進んでいることからもわかるように、自動運転トラックに必要な技術自体はすでに存在しています。また、自動運転車両の制度・認可を所管する国土交通省も、2023年には道路交通法の改正によりレベル4走行を可能とする制度を整備し、現在は高速道路におけるレベル4走行の実証実験を積極的に推進しています。こうした動きを踏まえると、日本の自動運転に関する政策は他国にも引けを取っておらず、技術面や制度面が社会実装のハードルになるとは考えていません。

むしろ喫緊の課題は自動運転トラックの実現に向けた「エコシステムづくり」です。自動運転トラックは、技術だけで成立するものではありません。完成車メーカー、物流事業者、倉庫・インフラ事業者、荷主など、物流に関わるさまざまなステークホルダーが連携して初めて、“社会の中で動く仕組み”になります。

だからこそ、多様なプレーヤーに参画してもらいながら、自動運転トラックの社会実装に必要なピースを一つずつそろえていくことを意識しています。

協業を通じて、「オペレーションがどう変わるのか」「コストや稼働率がどう改善するのか」といった具体的な検証結果を示し、エコシステム全体が「自分ごと」として動き出せる土台をつくっていきたいですね。

社会実装のハードルを越えていく。自動運転トラックが開く新しい物流の姿

──オリックスグループとロボトラック社の連携には、どのような狙いがありますか。

オリックス自動車株式会社 社長室 ゼネラルマネジャー 市川 大輝

市川(オリックス自働車):オリックスグループは2025年4月にグループの成長戦略として、「ORIX Group Growth Strategy 2035」を制定しました。その中の戦略的投資領域の1つとして「テクノロジーの進化」を掲げ、革新的な技術の活用によって社会にインパクトをもたらすことが期待される企業や技術への投資を進めています。自動運転トラックの研究開発を通じて物流業界の課題を解決しようというロボトラック社への出資は、この戦略に合致したものです。

また、羽賀CEOも言及されている通り、自動運転トラックの社会実装には、ステークホルダーの理解と賛同を得られる基盤づくりが肝要です。物流事業者向けにサービスを展開してきたオリックス自動車が培ってきた、事業ネットワークや事業開発の知見を、そこに生かせると考えました。

足元では、オリックス自動車とロボトラック社共同で、国土交通省の令和7年度「自動運転トラックによる幹線輸送の社会実装に向けた実証事業」にエントリーし、採択されています。本実証事業には大手物流事業者のセンコー株式会社にも参画していただいており、その仲間づくりの過程において、オリックス自動車の事業ネットワークが生かされています。

今後も、自動車関連サービスの提供で培ってきた当グループの経験を生かしながら、自動運転技術の普及を後押しし、物流業界の課題解決を目指します。

──私たちは、生活者として、そしてビジネスパーソンとして、この変化とどう向き合うべきだとお考えですか。

羽賀氏:自動運転は、スケールの大きさゆえに「遠い未来の話」だと思われがちですが、実際にはすでに現実味を帯びたテクノロジーになっています。

加えて強調しておきたいのは、自動運転トラックが一部の大企業だけのための技術ではないという点です。将来的には、中堅・中小の物流事業者にも手の届く価格帯での提供を目指していきたいと考えています。「新しい技術を活用してビジネスを広げたい」と考える事業者こそ、こうしたテクノロジーを味方につけてほしいと思っています。

おそらく自動運転トラックは、「気がついたら当たり前になっていたね」と言われるようなかたちで社会に溶け込んでいくはずです。その変化が訪れる瞬間を、ぜひ自分ごととして捉え、一緒に楽しんでいただけたらうれしいです。

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