自動化への課題を“楽しんで解く”富山の技術者集団。彼らが追及する「飽くなき探究心」とは

[取材先]株式会社ライズ(富山)

現在、国内の製造業では人手不足への対応や生産性向上を目的に、組立・運搬・検査・管理といった工程を機械によって自動化するシステム「ファクトリーオートメーション(FA)」の導入が急務となっています。
そうしたなか、ときに曖昧ともいえる顧客の要望を、既存技術と柔軟な発想の組み合わせで叶える自動化技術の専門家がいます。それが富山県魚津市の株式会社ライズです。今回、経営の中核を担う経営管理部部長の野村 忠義氏と事業本部部長の紙屋 隆志氏に、同社の成長を支える原動力と独自の人材育成法についてオリックス 富山支店の吉田 智が伺いました。

逆境を乗り越え、一歩ずつ築き上げた顧客との関係性

株式会社ライズ 経営管理部部長 野村 忠義氏 

――はじめに、会社の設立経緯と事業概要について改めて教えてください。

野村氏:創業は2006年です。もともと同じ業界で働いていた若者たちが「より顧客一人ひとりの課題に合わせたものづくりがしたい」という思いから、当時数十人ほどで会社をスタートさせました。事業内容については、創業時から一貫してオーダーメイドの自動省力化機械の製造に取り組んでいます。

──創業から、どのように事業を軌道に乗せていったのでしょうか。

野村氏:もちろん、すぐに大きな仕事が舞い込んでくるわけではありません。最初は他社での対応が難しかった既存設備のアップデートを中心に、一つひとつ丁寧に実績を積み上げていきました。こうした経験が我々の強みである「探究心と柔軟な発想力」につながっています。

株式会社ライズ 事業本部部長 紙屋 隆志氏 

──紙屋部長は、会社設立から少し経ったころに入社されたと伺いました。

紙屋氏:私が入社したのは11期目か12期目あたりです。前職も同業ではあったのですが、父がこの会社の社長を務めていた縁もあり、合流することになりました。ライズに移って感じたのは、扱う製品の「幅広さ」です。前職は特定の業界に特化していましたが、ライズは多種多様な業界に設備を供給している。設備を作る技術者としては、さまざまな知識が身に付くので、おもしろい環境だと感じました。

同社の技術と設備によって、電池から車載用コネクタといったものまで多彩な製品が生み出されている

「答えのない問い」に挑む。技術者集団の探究心

──自動省力設備を製作する際に、強みとしている点について教えてください。

野村氏:私たちの仕事は、図面どおりの設備を作ることだけにとどまりません。「こんな作業を自動化したい」「こういうものを作れないか」といった、言語化しきれていない要望からスタートすることも多々あります。材料をどう運び、加工し、検査して、次の工程に繋げるか。顧客が手作業で実現している工程をどう自動化して流れをつなぐか。そこを一緒に議論をしながら考えていきます。

また、弊社は特殊技術をゼロから開発するのではなく、既存の汎用機器を巧みに組み合わせて顧客の課題を解決することを得意としています。知恵と工夫を積み重ねることで顧客のやりたい事を最適な形で具現化します。

工場内での自動省力化実施前後のイメージ。各工程を機械に置き換えることで、省人化・省力化を実現する

──他社との一番の違いは何だと思われますか。

紙屋氏:難しいオーダーにも前向きに挑む柔軟性だと思います。顧客からの要望で、開発途中に大幅な軌道修正が発生することもありますが、社員は「どうすれば実現できるか」を考えること自体を楽しんでいます。それは、根本に「ものづくりが好き」という想いを持つ技術者が集まっているからかもしれません。

過去には、「新しく設備を置くスペースが限られている」「顕微鏡を覗き込みながら行う非常に細かい作業工程を自動化したい」といった容易には解決できない厳しい制約があるご相談もありました。それでも、他社ではやらないような設計を提案し、顧客と何度も技術的な議論を重ねることで、最終的に設備を完成させることができました。そこには、マニュアル化できない技術者たちの経験と知恵が詰まっています。この「答えのない問い」に挑める探求心こそが、私たちの競争力の源泉なのだと思います。

部署の垣根を越え、視座の高い人材を育てたい

──「答えのない問い」に挑む技術者は、どのように育成されているのでしょうか。

野村氏:昔ながらの徒弟制度だと、教える側の都合で育成が後回しになることや、視野が狭くなるということが起こりがちです。そこで新入社員の方にはまず、技術サポートを担当する部署を経験してもらいます。さまざまなプロジェクトに応援という形で参加することができるので、早い段階から幅広い経験を積めます。この背景には、プロジェクト全体の最適解を導き出せるマルチな人材を育てたいという想いがあります。視座の高い仕事をすることで、結果的に物事への探究心と発想力を培うことにもつながります。

──採用は文系・理系を問わないそうですが、専門知識がなくても可能なものなのでしょうか。

野村氏:もちろん、論理的にものごとを考える思考は必要です。しかし、それ以上に大切なのは「ものづくりへの関心」です。私たちの仕事はマニュアルどおりに作業するのではなく、常に考え、悩みながら答えを見つけていくことです。そのプロセスを楽しめるかどうかが重要で、それは文系・理系といった出身背景とは関係ありません。また、技術は常に進化しますから、一人前になったからといって満足せずに10年、20年経っても学び続ける姿勢が大切です。

当たり前に「やるべきこと」をやり抜くのが一流

──貴社の今後の展望についてお聞かせください。現在、会社として抱えている一番の課題は何でしょうか。

野村氏:今後の課題は、強みである「個々の柔軟な発想や考え方」といった良い部分は残しつつ、いかに業務の作業効率を上げて、生産性を高めていけるかです。昨今、働き方改革が各所で叫ばれているなか、かつてのようなハードワークを前提としたものづくりは時代遅れです。限られた時間のなかで、より高い付加価値を生み出す仕組みが必要で、そのためにも部分的な業務プロセスの標準化を少しずつ進めています。生産性を高めることで、社員たちの給与にもしっかりと還元していきたいと思っています。

──最後に、技術者あるいは経営者として、これから挑戦してみたいことはありますか。

紙屋氏:既存の協働ロボットではなく、汎用的な人型ロボットを使って、現在でも人が行っているさまざまな作業をこなせるようになれば、既存設備の完全自動化をより容易に実現できると考えています。単純作業はロボットに任せ、人間はよりクリエイティブな仕事に集中する。そんな未来が訪れれば、ものづくりの可能性はさらに広がると思います。その実現に向けて今後も最新技術を積極的にキャッチアップし、未来の工場を形づくる一翼を担っていきたいと思います。

野村氏:私は、AIの活用に可能性を感じています。設計の最適解はAIが見つけ出し、人間はAIへの質問の前提となる、より根源的な問いを考える。新しい技術をうまく活用すれば、きっとこの業界はさらに可能性が広がるはずです。

ただ、未来の技術を追い求める前に、やるべきこともあります。私たちのような中小企業が目指すべきは誰にもできない「すごいこと」ではありません。考えたら理解できることを指示通りに取り組むことや、日頃から丁寧なコミュニケーションをするといった当たり前に「やるべきこと」に対して手を抜かず、しっかりとやり抜くこと。そのことが結果的に顧客からの信頼にもつながりますし、一流の仕事だと思っています。この基本姿勢を心に留めながら、これからも社員みんなでクリエイティブなものづくりに邁進していきたいですね。

<取材を終えて>
オリックス株式会社 富山支店 吉田 智

今回の取材を通じて、改めて会社の歴史や特徴を知り、ライズさんをより深く理解することができました。さまざまなクライアントの課題について、一緒に考えながら唯一無二のオーダーメイド機器を納品するプロセスは、私たちが法人営業で実践していることに通じるものがあり非常に親しみを感じました。FA市場は少子高齢化に伴う労働人口の減少により今後も伸びしろの大きい分野です。ライズさんのさらなる成長をご支援したいと考えています。

企業概要※ 公開日時点

社名 株式会社ライズ
本社所在地 富山県魚津市住吉3956-11
設立 2006年11月
代表者名 紙屋 幸夫
従業員数 42名
事業概要 自動省力設備製作、ファクトリーオートメーション設備製作
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