建設×製造の二刀流が競争力を生む。日本の社会インフラ課題に技術で答えを出す総合コンクリート企業

[取材先]昭和コンクリート工業株式会社(岐阜県)

高度経済成長期に集中的に整備された日本の社会インフラは、間もなく供用開始から60年を迎え、その維持管理が喫緊の社会課題となっています。加えて、少子高齢化の進行により、建設業界では深刻な人材不足が続いています。

この難局に対し、1956年設立の 昭和コンクリート工業株式会社は、全国の工事現場で高速道路や新幹線などの橋梁をつくる「建設業」と、擁壁や水路などに使われるコンクリート製品を工場にて生産する「製造業」という『二刀流』で、社会課題の解決に挑んでいます。オリックス 岐阜支店の杉田 晃基が、代表取締役社長 村瀬 大一郎氏と副社長 長沢 公彦氏の両名に、自社技術を時代の要請につなげるプロセスについて伺いました。

老朽化や人手不足を一手に解決。“2つのPC”技術とは?

昭和コンクリート工業株式会社 代表取締役社長 村瀬 大一郎氏

──まず、御社の創業の経緯についてお聞かせください。

村瀬氏:1956年、岐阜県岐阜市にて、当社は、「社会資本整備を通じて、社会に貢献する」という経営理念のもと、設立されました。戦後の復興期から高度経済成長、そして、成熟社会へと移り変わる日本の歩みとともに、インフラ整備の最前線を支え続けてきました。振り返ると、人々の暮らしを守り、安全安心な社会をつくり、その時代ごとに求められる役割を果たしてきたという歴史があります。そして、おかげさまで2026年にて、70周年を迎えることができました。ステークホルダーの方々には、感謝の気持ちでいっぱいです。今後とも、「信用・信頼」を積み重ねていきたいと思っています。

──御社の事業の概要について教えてください。

村瀬氏:当社はコンクリートを核に、建設業と製造業の2つの事業を展開している会社です。私たちはこの事業構造を、社内外で「二刀流」と呼んでいます。

建設業においては、コンクリート橋梁のパイオニア企業として、現在までに全国各地で約10,000橋の橋梁を手掛けてまいりました。地域の小さな橋から、島と島を結ぶような大きな橋まで建設実績があります。代表的なものですと、皆さまが普段利用している東海道新幹線や新東名高速道路の橋の工事にも携わらせていただきました。

一方、製造業においては、コンクリート製品業界のリーダー企業として、全国9工場で製造を行っています。橋梁や道路、擁壁、河川、農業、地下構造物などの分野で使われるコンクリート製品を年間約30万t生産しています。皆さまの身近なところに、当社の製品が活躍しております。

──御社の強みはどのような点にございますか?

村瀬氏:当社の最大の特長は、建設業と製造業という「二刀流」の事業が、それぞれ単独でも高い専門性と安定性を持ちながら、互いに補完し合い、そして融合している点にあります。

製造の現場で培われた品質管理や技術開発の力が、建設現場の安全性や施工性を高め、逆に建設現場で得られる実践的な知見が、製品製造や新技術の創出へとつながっていく。この双方向の循環こそが、私たちの競争力の源泉です。

──御社のコア技術「2つのPC」についても教えてください。

村瀬氏:プレキャストコンクリート(PCa:Precast Concrete)とプレストレストコンクリート(PC:Prestressed Concrete )の技術のことです。

「プレキャストコンクリート(PCa)」とは、工場で製造したコンクリート製品を、現場に運び、現場で組み立てる工法です。子どもが遊ぶブロックのように、それぞれパーツを組み立てて、一つの構造物にしていく、そんなイメージです。

「プレストレストコンクリート(PC)」とは、コンクリートは、圧縮に強く、引っ張りに弱いという特性があるので、コンクリートにあらかじめ圧縮力(プレストレスト)を与えることで、その引っ張り強度を大幅に高める技術です。

昭和コンクリート工業の「2つのPC」の役割と違い

──近年、日本ではインフラの老朽化が深刻な課題になっています。この点については、どのようにお考えでしょうか。

村瀬氏:日本のインフラは、高度経済成長期に集中的に整備されたものが多く、現在、その多くが更新時期を迎えています。橋梁やトンネル、道路、下水道、河川構造物など、目に見えにくい部分ほど老朽化が進んでおり、非常に大きな社会課題だと認識しています。

──御社の技術は、インフラ老朽化にどのように貢献できるのでしょうか。

村瀬氏:当社の「二刀流」と「2つのPC」は、老朽化対策においても大きな役割を果たします。

「プレストレストコンクリート(PC)」は、耐久性に優れ、長寿命化に適した技術なので、新設だけでなく、補修・補強においても、構造物の性能を引き上げる有効な手段になります。

また、「プレキャストコンクリート(PCa)」は、現地で短期間に施工できるため、交通規制や周辺環境への影響を最小限に抑えることができます。

プレストレストコンクリート(PC)橋 岐阜県揖斐川町 徳山ダム 徳之山八徳橋

プレキャストコンクリート(PCa)製品の施工状況 和歌山県にて

──具体的な事例はありますか。

村瀬氏:代表的な例の一つが、高速道路(橋梁)の車道の下にあるコンクリート版(床版)の取り換え・更新工事です。多くの橋は、その床版の老朽化が進んでいます。しかし、交通量の多い橋で工事を行う場合、従来の工法では施工期間が長くなり、利用者には不便をかけることになります。

そのため、こうした工事では、PCaPC(プレキャスト・プレストレストコンクリート)床版を活用した、工期の短縮をご提案しています。

当社のコア技術である「プレストレストコンクリート(PC)」と「プレキャストコンクリート(PCa)」の技術を組み合わせた技術によって、短期間で床版更新工事を行うことが可能です。それにより、交通規制期間の短縮、安全性の向上も実現できます。

プレキャスト・プレストレストコンクリート(PCaPC)床版の施工状況 愛知県名古屋市にて

──まさに「2つのPC」が生きる分野ですね。

村瀬氏:その通りです。構造的な信頼性の高い「プレストレストコンクリート(PC)」と、施工性・効率性の高い「プレキャストコンクリート(PCa)」、この2つのPCを、高いレベルで両立できるのは、日本でも限られた企業だけが持つ強みと考えています。

PC床版の更新工事を含め、昭和コンクリート工業の技術を通じて、今後も日本のインフラを長く、安全に使い続けられる社会の実現に貢献していきます。

──一方、少子高齢化が進む中で、建設業界では担い手不足が課題となっています。この状況をどのようにご覧になっていますか。

村瀬氏:現場を支えてきた熟練技術者が高齢化する一方で、若い世代は十分に増えていません。このままでは、社会インフラを維持していく力そのものが弱まってしまうという、強い危機感を持っています。

──そのような課題に、御社の技術はどのように貢献しているのでしょうか。

村瀬氏:私たちは、担い手不足を単なる「人が足りない問題」とは捉えていません。ポイントは「人の数」ではなく「人の負担」です。

当社の「プレキャストコンクリート(PCa)」を活用することで、省人化・省力化が可能です。人材が、長く、安心して働ける環境をつくることが何より重要だと考えています。

建設業は「きつい・汚い・危険」という、いわゆる3Kのイメージが根強く残っている面もありますが、実際には技術も働き方も大きく変わりつつあります。ただ、その変化が十分に伝わり切っていないことも、人材不足の一因だと感じています。

若い世代に対しては、「建設業は社会を支える誇りある仕事だ」ということを、もっと分かりやすく伝えていかなければなりません。インフラは目立たない存在ですが、無くなれば社会は成り立たない。その責任とやりがいを、しっかり言葉にして伝えていくことも、われわれの役割だと考えています。当社も、顧客からだけでなく、次世代を支える若者からも選ばれる「魅力ある会社」になることを目指していかなければならないと強く思っています。

昭和コンクリート工業株式会社 副社長 長沢 公彦氏

「One Team」で挑んだ、震災復興という現場

──御社の強みが、インフラ課題の解決に直結していることを実感した事例はありますか?

長沢氏:東日本大震災の際の対応が、まさにその一例です。コンクリートを打つ時間を待つ必要のない早期竣工の「プレキャストコンクリート(PCa)」の技術は、迅速な復旧が求められる現場のニーズに見事に合致しました。しかし、優れた技術や製品があるだけでは復旧は進みません。混乱する被災地においては、「必要な時に、必要なものを、必要なだけ」確実に届ける機動力も不可欠でした。

当社は、企画提案から、設計、製造、運送、施工までを一気通貫に行える強固なバリューチェーンができる体制があり、グループをあげて、まさに、「One Team」で、「One Stop」で対応することができました。当社も東北地区には多くの拠点をもち、営業所も、工場も、社員の自宅も被災しましたが、自分のことより、地域の復旧・復興のために「今こそ、コンクリートを通じて、社会に貢献しよう」という一心で、地元工場だけでなく、岐阜や滋賀、長野をはじめ全国の工場で製品を製造し、陸路や海路を使って被災地へコンクリート製品を送り続けました。

大きな震災からの復旧・復興の一助になれたことは、社員にとっても大きな誇りとなっています。

農業に酒造業も。多角的な事業展開の裏にある地域への思い

──御社はインフラ事業だけでなく、農業や酒造業など多角的な事業展開もされていると伺いました。

村瀬氏:はい、多角化は創業時からの伝統であり、現在はグループ全体で17社を展開しています。生コン、運送、商事、造園、エクステリア、設計、点検調査、建築金物、酒造、農業、不動産、アミューズメント、特許管理、トラベル、そして、海外にも2つ会社を保有し、昭和コンクリートグループを形成しています。何本もの柱をもつことによる経営的なリスクヘッジの側面もありますが、それ以上に「地域の中堅企業としての責任」を強く感じています。

各地域で、その土地の強みを生かした独自の事業を継続することで、雇用を守り、地域社会と共存し、地域貢献することができます。

──具体的にはどのような事業を展開しているのでしょうか?

村瀬氏:例えば、長野県松本市にある「亀田屋酒造店」を経営しています。150年以上続く老舗ですが、後継者不在で存続が危ぶまれていた際に相談を受け、私が7代目の蔵元として引き継ぐことになりました。引き続き、地域社会の皆さまに愛され、おかげさまで、代表銘柄の「アルプス正宗」は関東信越国税局酒類鑑評会で最優秀賞を受賞するなど、高い評価をいただいています。

亀田屋酒造店の代表銘柄「アルプス正宗」。北アルプスの伏流水が生む、キレのある爽やかな味わいが特徴。

また、「昭和ファーム」では、ほうれん草や柿の生産、また、当農園の知見を生かした液体肥料「コノカル」の製造・販売を行っています。コンクリート会社が農業を手掛けることに驚かれる方も多いのですが、私たちの考えは一貫しています。人間が生きていく上でのインフラといえば「衣食住」ですよね。これまではコンクリートで「住」を支えてきましたが、これからは「食」の分野でも貢献したいと考えているのです。

シャキシャキほうれん草を育てるカルシウム液肥「コノカル」。昭和ファームで生産、販売。

ヒトが最大かつ最高の資本。「人」を中心に置いた経営で未来を拓く!

──事業を多角化し、雇用を守り抜く。そうした「成長戦略」を支える基盤である人材について、注力していることはありますか?

長沢氏:当社では独自の人材育成機関「昭和アカデミア」を設けています。社内大学のような位置づけで、部署ごとの専門教育、会社全体での人間力教育、そして資格取得などの自己啓発支援という3本柱で、社員の成長を体系的に支援する仕組みです。私たちが扱うPC・PCa技術は専門性が高いため、未経験の若手は習得の難しさに不安を抱きがちです。だからこそ、1年目から徹底したフォローアップで技術の土台を固めることが必要でした。その結果、技術習得がやりがいや自信につながり、入社後の定着率は劇的に向上しました。

また、村瀬が社長に就任してからは中途採用にも力を入れています。実際に進めてみると、異なる経験を持つ人材が加わることで社内に新しい風が吹き、既存社員にとっても良い刺激になっています。この5年で社員は約100名増え、多様な人材が活躍する盤石な組織へと進化しています。

村瀬氏:社長就任から15年間の会社経営で学んだのは、最も大切なのは「人」だということです。当社の技術は一朝一夕で身につくものではなく、人材育成には時間もコストもかかります。しかし、人の創造性や行動力こそが企業を動かします。これからも「人」を中心に置いた経営を続けていきたいと考えています。

──今後のビジョンを教えてください。

村瀬氏:引き続き、当社ならではの提案で顧客に選ばれ、技術と人で、その時代の課題を解決していきます。

私たちの目標は、単に建物や構造物をつくることだけではありません。事業を通じて、人々に安心・安全を届け、街に笑顔を咲かせること──CONCRETE MAKES YOU SMILE。その思いを胸に、昭和コンクリート工業はこれからも、未来の100周年に向けて全力で歩みを進めてまいります。

<取材を終えて>
オリックス株式会社 岐阜支店 杉田 晃基

「コンクリートで皆さまに笑顔を届ける」──村瀬社長のこの言葉が、取材を通して強く心に残りました。当たり前のように存在するコンクリートに、これほどの技術と、社員や地域を守ろうとする温かい思いが込められていることに驚かされます。独自の技術で日本のインフラだけではなく、地域の発展をも支え続ける昭和コンクリート工業。その挑戦を、これからも応援させていただきます。

企業概要※ 公開日時点

社名 昭和コンクリート工業株式会社
本社所在地 岐阜県岐阜市香蘭1-1
設立 1956年2月11日
代表者名 代表取締役社長 村瀬 大一郎
従業員数 792名(グループ全体1011名)(※令和7年4月時点)
事業概要 ・プレストレストコンクリート橋梁・防災構造物の設計・製作・施工
・土木用コンクリート二次製品の設計・開発・製造・販売・施工
・建築用コンクリート部材の設計・製造・販売・施工
・コンクリート構造物の補修・補強・メンテナンス維持管理
・公共施設の運営・管理に関する受託業務
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