2026年に迫る手形・小切手のペーパーレス化にどう対応するか?手形削減システム「e-Cash discount」を活用した業務効率化のプロセスを聞く

2026年度末までの紙の約束手形・小切手の利用廃止、全面的な電子化に向け、企業は早期の対応を迫られている。主にマンションの設計から施工までを一手に手掛ける株式会社中村工業(以下、中村工業)は、1952年の創業以来、「至誠と創造」を社是として、東海地方のまちづくりを支えてきた総合建設業者。近年、ペーパーレス化による業務効率化に取り組み、2024年6月からは、「紙の手形」の発行を原則、廃止とした。その実現に一役買ったのが、オリックスが提供する手形削減システム「e-Cash discount」だ。

e-Cash discount導入の背景から、導入によるコスト削減効果、業務効率の変化まで、中村工業 代表取締役 中村 昌輝氏、常務取締役 伊藤 嘉朗氏、同様にe-Cash discountを導入した、同社の関連会社である株式会社カネショウ工務店(以下、カネショウ工務店) 専務取締役の中村 俊樹氏に話を聞いた。

手形削減のきっかけは人手不足による業務効率化

――はじめに、それぞれ会社の事業概要について教えてください。

中村 昌輝氏(中村工業):中村工業は、1952年にコンクリート建造物の型をつくる型枠工事の専門業者として創業しました。その後、事業の伸展にともない1969年に法人化、建設工事の設計および施工など建築業務全般を請け負う総合建設業者となりました。1973年には、祖業の型枠工事部門を分社化し、カネショウ工務店を設立しています。

現在は、名古屋、三重に支店を展開し、中~大規模のマンション、主に東海地方の商業施設や公共施設などの建築を幅広く手掛けています。鉄筋コンクリート造工事の中でもっとも工期の長い躯体工事(基礎や柱、壁、土台、床版など建築物の骨組みとなる主要構造部を作る工事)を、遅らせることなくできる納期管理力が当社の強みです。

中村工業 代表取締役 中村 昌輝氏

型枠工事イメージ

中村 俊樹氏(カネショウ工務店):中村社長から説明があったとおり、カネショウ工務店は型枠工事(コンクリートで建物を建造する際に必要となる型枠の組み立て〜解体までを手がける工事)の専門会社です。中村工業のほか、スーパーゼネコンを含む総合建設業約30社と直接の取引があり、全国の高層ビルや大型公共施設など、地域のランドマークとなるような建物の建設に数多く携わってきました。自社だけでも60人以上の現場作業員を抱え、協力会社も合わせると400人ほどの作業員を随時手配できる機動力が強みです。年商は40億円ほどで、型枠工事専門の会社としては全国有数の規模ではないかと自負しています。

カネショウ工務店 専務取締役 中村 俊樹氏

――「紙の手形」廃止を検討することになった経緯を教えてください。

伊藤 嘉朗氏(中村工業):将来的な建築業界の人手不足を見据え、もともと手形以外にも取引先情報の一元管理や見積書・請求書のペーパーレス化など総務・経理業務の効率化に取り組んできました。

総務・経理業務の中でも、手形の発行業務は大きな負担の一つです。当社では、毎月150社前後の協力会社に紙の手形を発行していましたが、その1枚1枚に必要事項を記載、間違いがないか確認、判を押して収入印紙を貼って封入、正しい宛名のラベルを張り付け、それを郵便局に持って行って…と、手形の発行業務のご担当者なら理解いただけると思うのですが、毎月の業務負担はかなりのものです。当社では、スタッフ2人が丸1日を作業に費やしていました。

最近は手形用紙そのものの価格が上がっていますし、印紙代や郵送費もかかります。印紙代だけでも毎月約10万円、年間だと120万円にもなる計算です。また、紛失や盗難のリスクもあります。こうした手形の発行にかかる人的・金銭的コスト・リスク削減を検討していたところ、オリックスの担当者から、手形削減システムの「e-Cash discount」をご提案いただいたのです。

中村工業 常務取締役 伊藤 嘉朗氏

支払企業・受取企業ともにネット環境があればすぐに導入できる「e-Cash discount」

――いくつかあるオンラインの支払いシステムの中で「e-Cash discount」を選ばれた理由は?

中村 昌輝氏(中村工業):一番の決め手となったのは、インターネット環境さえあればすぐに利用開始できるという手軽さです。実は当社では、以前から全銀電子債権ネットワークが提供する「でんさい(電子記録債権)」を受取で利用していたので、それを支払いに活用することも考えました。しかし、でんさいは、受取企業もネットバンキング契約などの事前準備をしなければ利用開始できないため、“一人親方”も多い協力会社の事務負担を考えると導入に踏み切れませんでした。

その点、「e-Cash discount」は手形の受取企業もインターネット環境さえあれば、すぐに利用開始できます。実際、紙の手形から「e-Cash discount」を利用した支払い方法の変更を各協力会社にお願いしたところ、9割以上が応諾してくれました。

また、「すべて現金払いに切り替えよう」という意見もあったのですが、切り替えのタイミングで億単位の現金をまとめて支払うことになるので、現実的ではないと判断しました。「e-Cash discount」なら、手形と同様の支払いサイトの「期日現金振込」ですから、キャッシュフローへの影響がほとんどない点も魅力でした。

e-Cash discountの仕組み

中村 俊樹氏(カネショウ工務店):当社も中村工業と同様に、毎月の手形の発行業務に負担を感じていたことも事実です。また、親会社の中村工業と基幹システムが同じですから支払いシステムも共通のものにしたい、と考えていました。
正直、これまで「e-Cash discount」というサービスは知らなかったのですが、中村工業から話を聞いて、これなら簡単に導入できそうだと感じました。いずれにせよ、2026年度末までに紙の手形が全面的に廃止されることが濃厚なわけですから、今のうちに電子に切り替えておけば、直前になって慌てることもありません。良いタイミングで導入できたと考えています。

「2人がかりで丸1日」が「1人で1時間」に。大幅な業務効率化を実現

――では、「e-Cash discount」導入による実際の成果についてお聞かせください。

伊藤 嘉朗氏(中村工業):各協力会社への支払い方法変更の通知、協力会社の基本情報入力など事前準備が一通り済んだあとは、これまで2人がかりで丸1日費やしていた手形発行業務を、1人で1時間程度でこなせるくらいの作業に効率化することができました。当社が目指している業務効率化に大きく寄与していますね。

中村 俊樹氏(カネショウ工務店):当社は中村工業から支払われる側としても「e-Cash discount」を利用しましたが、新たにソフトウエアを追加するなどの手間もありませんし、操作も簡単です。「e-Cash discount」での支払い手続きも行いましたが、特に混乱もなく、協力会社からの問い合わせもほとんどありません。何か疑問点が出てきたときも、コールセンターによる無料のサポートサービスがあるのはありがたいですね。せっかくシステムを導入しても協力会社が活用できなければ意味がないので、手続きや操作が簡単であることで応諾率が上がり、手形の削減につながっていると感じています。

――「e-Cash discount」で煩わしい手形発行業務から解放されたわけですね。業務効率化の観点で、今後の展望をお聞かせください。

中村 昌輝氏(中村工業):元請けから1次、2次と、複数の業者間で何度も見積もりや請求をやり取りする建設業界ではまだまだ“紙”が根強く残っています。しかし、今後、労働人口がさらに減少し、資材コストも高騰していくなかで、デジタル化を推進することで業務効率化・コスト管理を推進することは急務です。カネショウ工務店ともども、全社的にDXを進めていきます。「e-Cash discount」がこれからに向けた、いい成功体験となりました。

手形削減システム「e-Cash discount」

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