
[取材先]中野製薬株式会社(京都府)
本記事は2026年2月時点の情報を基に作成しています。
1959年、京都で創業した中野製薬株式会社(以下、中野製薬)。全国で約38万施設(※)にのぼるサロン向けプロフェッショナル市場において、頭髪化粧品メーカーとして確固たる地位を築いています。
2020年に3代目として代表取締役社長に就任した中野 孝哉氏のもとブランドイメージを刷新。高品質・高付加価値な製品開発・製造体制を加速させ、さらなる変革を遂げています。
この勢いを次なる飛躍へどうつなげるのか。その成長戦略について、オリックス 京都支店 岸上 清香が伺いました。
- 厚生労働省ウェブサイト「令和6(2024)年度衛生行政報告例の概況」(2025年10月21日)
目次
祖業の壁を越え、ヘアワックスとヘアカラー事業で再成長

──貴社といえば「ナカノ スタイリング ワックス」を思い浮かべる方が多いと思いますが、この大ヒット製品が生まれるまでの歴史からお聞かせください。
中野氏:当社は1959年、シャンプーやトリートメントといったヘアケア製品の製造からスタートしました。現在は、プロフェッショナル事業(サロン専売品)を軸に、コンシューマー事業(一般リテール品)、ODM/OEM事業、グローバル事業、さらにはペット向けのビューティー事業まで展開し、美の価値をお届けしています。

創業以来、美しい毛髪づくりを追求した製品は美容師の皆さまに支持され、順調に成長してきました。しかし、1990年代のヘアカラーブームを機にトレンドは「染めた髪を美しく保ち、思い通りに仕上げる」ことへと広がります。当社は、退色や質感変化といったヘアカラー後のニーズに応えられず、事業を見直す転機となりました。

──ヘアケアでの苦境をどのように乗り越えたのでしょうか。
中野氏:改めてサロンさまの現場に目を向けました。当時、整髪料はジェルやポマードで毛束を作り固めるのが主流でしたが、ストリートファッションの流行などを背景に、「もっと自由に、軽やかに髪の動きを表現したい」というニーズが高まっていました。そこで、スタイリングしやすくキープ力が高い「ナカノ スタイリング ワックス」が誕生しました。
最大の特徴は、独自技術である「ナカノファイバー」です。糸をひくほどの伸びの良さによって、軽い仕上がりと自由な毛束の動きを可能にしました。当初は「車のワックス?」と不思議がられたものの(笑)、カリスマ美容師と呼ばれる方々が操作性や再現性を評価してくださったことで、爆発的なヒットにつながったのです。

美容師との二人三脚で実現する、高付加価値な製品開発

──「ナカノ スタイリング ワックス」のヒットによってどのような影響があったのでしょうか。
中野氏:販売は大きく伸長しました。従来、サロン専売品として、サロンさまの収益向上とブランドの価値維持を意図して商品を提供してまいりましたが、好調な売り上げの裏で、一部流通を管理しきれずサロンさまの信頼を損ねてしまったケースもあり、深く反省しました。そこで、サロンさまの価値を高めるメニュー開発に立ち返り、ヘアカラー製品の開発に本腰を入れました。現在では当社の主力カテゴリーのひとつとして成長しています。
──ヘアカラーは後発ながら、どのように売上を拡大されたのでしょうか。
中野氏:営業だけでなく研究開発のメンバーもサロンさまへ伺い、施術の実情やご要望を製品に反映しました。開発段階からプロの視点を取り入れることで、機能と品質を兼ね備えた製品を開発し、サロンさまから高い支持を得られるようになりました。
このプロセスには多くの時間とコストがかかります。工場とサロンさまを何度も往訪したり、長時間サロンさまに滞在して、実際の施術を観察させていただいたりすることもありますが、サロンさまと二人三脚で開発できることは当社の最大の強みです。
──まさにサロン起点の製品開発ですね。
中野氏:現在はヘアケア、スタイリング料、パーマ剤、ヘアカラー剤、育毛剤などで複数のブランドを展開していますが、根幹には「サロンさまの価値を高める」という考え方があります。サロンさまの価格競争は激化しており、メニュー単価を500円上げるだけでも相当なハードルがあります。当社が単価アップにつながる付加価値のある製品を提供することで、サロンさまの収益向上と、利用されるお客さまの満足度向上に貢献したいと考えています。

──製品開発の歴史や哲学について伺いましたが、それらを実行する組織については、どのようなお考えをお持ちですか。
中野氏:会社の未来をつくるのは、いつの時代も人です。経営陣の最も重要な役割は、社員が自ら手を挙げ、新しい価値を創造できる環境を整えることだと考えています。具体的な取り組みについて、採用担当からご紹介します。
挑戦が連鎖する組織へ。未来を創る「人」を育む、次世代戦略

──ここからは、採用を担当されている坂口 綾乃さんにお話を伺います。組織づくりについて、採用の観点からお聞かせください。
坂口氏:最も重視しているのは、「自ら率先して新しいモノ・コトを創り出せる」マインドです。当社が目指すのは、美容師の皆さまの視点に立ち、課題解決につながる新しい価値を生み出し続けることです。そのため、職種別採用を行い、早期に知識と経験を身につけ、挑戦できる環境を整えています。
──未来を担う人材を、どのように育成していくのでしょうか。

坂口氏:内定時から入社後1年間、年齢や社歴の近い先輩が伴走する「先輩相談員制度」を設け、安心して相談できる体制を構築しています。
また、入社後は約2カ月の共通研修後、配属先での約1カ月の研修を用意しています。特に美容師免許を持つ社員が多いサロンサポート部門と連携した実践型研修に力を入れています。
──なぜそこまで実践的な研修を重視するのでしょうか。
坂口氏:美容師の皆さまと信頼関係を構築するには「お客さまへどのように提案し、施術するか」まで理解する必要があるからです。幅広い知見を持つことで、サロンさま起点の発想力が養われると考えています。
見据えるさらなる飛躍。サロン起点の強みを磨き、グローバルでの地位確立を目指す

──再び中野社長にお話を伺います。2017年から中期経営方針を掲げ変革を本格化されていますが、どのようなステップで進めていらっしゃるのでしょうか。
中野氏:2017年から9カ年の中期経営方針を「ホップ・ステップ・ジャンプ」の3段階で推進してきました。
2017年から2019年の3年間は「ホップ期」として、ブランドイメージの刷新に着手しました。サロンさまへの調査を通じて、当社に「古い」「伝統的」というイメージがあることが分かったため、「センス・デザイン・トラスト」を掲げ、製品デザインを刷新しました。また、サロン専売品の不正流通を是正し、サロンさまとの信頼関係を再構築することにも尽力しました。
2020年に社長に就任し、コロナ禍に伴い1年間見直しを図り、2021年から2023年まで「ステップ期」として「4チャネルへの挑戦」「デジタル変革への挑戦」「サステイナビリティへの挑戦」を方針に掲げました。プロフェッショナル事業、コンシューマー事業、ODM/OEM事業、グローバル事業の4チャネルを強化しながら、コロナ禍を機にECやバックオフィスのデジタル化を加速させました。
2023年以降は、次の時代の成長に向けて培ってきた強みの研さんに努めています。製品開発においては、祖業のヘアケア製品に改めて注力しています。コロナ禍を機に通学や出社の形が変わったことでインナーカラーなどのデザインカラーが広がりましたが、その分ダメージや頭皮への関心も高まり、ケア需要が高まっています。美容師の皆さまのお話を伺いながら、嗜好の変化をいち早く捉えた開発に取り組んでいます。
さらに、2024年には滋賀県草津市に新たな草津工場を設立しました。化粧品の製造・品質管理に関する国際規格「ISO 22716」を取得し、世界基準の品質で自社開発・製造できることを武器にしています。

──最後に今後の目標についてお聞かせください。
中野氏:当社の強みであるプロフェッショナル事業をコアに据え続け、ODM/OEM事業やグローバル事業といった既存事業の伸長に注力し、総合力を高めます。
海外では東南アジアを中心にプロフェッショナル事業を強化し、サロン開発支援や人材育成支援、技術支援などのソフトサービスと高品質な製品を掛け合わせ、日本発のブランドとして地位を確立したいと考えています。一人ひとりが願う美しさを実現できる存在を目指し、美容産業の発展に貢献していきたいですね。
<取材を終えて>
オリックス 京都支店 岸上 清香

サロン起点で「ナカノ スタイリング ワックス」のような新しいカテゴリーの製品を生み出し、一人ひとりの美しさに寄り添ってこられた中野製薬さま。その根幹には、創業時から変わらない誠実なものづくりが受け継がれていると感じました。当社としても中野製薬さまのさらなる飛躍をお支えしていきたいと思います。
企業概要※ 公開日時点
| 社名 | 中野製薬株式会社 |
|---|---|
| 本社所在地 | 京都市山科区東野北井ノ上町6番地の20 |
| 設立 | 1959年9月 |
| 代表者名 | 代表取締役社長 中野 孝哉 |
| 事業概要 | シャンプー、リンス、トリートメントクリーム、スタイリング料、パーマ剤、ヘアカラー、育毛剤等の頭髪化粧品、医薬部外品の製造、販売 |
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