小さな改善の積み重ねを大切に。個もチームも成長し続ける、学習する組織づくりの秘けつ

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[Publisher] MASHING UPより転載

働き方や働く環境が大きく変化する中で、個人も組織も、仕事やコミュニケーションを円滑にするための方法を模索している。

MASHING UPカンファレンスのセッションわたしのトリセツ キャリア編 新しい時代のキャリアづくりを発見では、登壇者が、横軸に年齢、縦軸にそのときのプラスマイナスを記したライフチャートを使って、自分らしい働き方とは何かをディスカッション。人生でマイナスからプラスに転じたときの行動を振り返る「解釈力」を持つことが重要という発見とともに、対話を通して個人の強みや弱みを知ること、気づきやアイデアを周りにシェアすることが、組織の活性化につながるのでは?というヒントが生まれた。

仕事でいいアイデアが生まれても、自分の中に押し込めてしまう人は多いのではないか。しかし、2017年にオリックス生命に中途入社し、コールセンターで働くメンバーの指導・育成を担当する瀨尾麻由(せお まゆ)さんは、そんな「アイデアの種」を育てる達人だ。メンバーのプラスもマイナスも見逃さず、お互いの成長を加速させるチームビルディングの秘けつを伺った。

受け身の朝会を変えた「ハドル」

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瀨尾麻由さん(オリックス生命 オムニチャネル営業本部 オムニチャネル業務部 オムニ業務チーム)

オリックス生命のオムニチャネル業務部で、コールセンターの品質管理や研修を行う瀨尾さん。保険加入を検討するお客さまの問い合わせ窓口の担当者である、CA(コンタクトセンターアテンダント)の品質向上という重責を担っている

「部署で今年チャレンジしたことの一つは、伝達事項の申し送りの場だった朝会を、参加型の“ハドル”に変えたこと。ハドルの時間は10分。2週間に1回のペースで全メンバーにファシリテーターの順番がまわってくるので、それぞれが業務改善につながるアイデアを提案し、それについて全員で議論しています」(瀨尾さん)

ハドルとは、アメリカンフットボールの試合中に行われる短い作戦会議のこと。小規模チームに最適なミーティング形態として注目され、導入する企業が増えているのだとか。

「長崎で視察した他社がハドルを行っていたんです。朝会というと受け身なイメージがありましたが、そこでは“今後チームをどう強くするか”を考える時間にしていて、とても刺激を受けました。視察に同行していたチーム長と『うちのチームでもぜひやりたい!』という話で盛り上がり、後日、3時間ほどで企画書を準備して、2週間後にはスタートしました」(瀨尾さん)

用語集に劇団四季……メンバーからアイデアが続出

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コールセンター業務の特徴であり難しいところは、お客さまの顔が見えない状況で、声だけでコミュニケーションを取らなければいけないこと。CAは20代から60代と年齢層も幅広く、電話口で保険用語の意味を尋ねられて、戸惑ってしまう新人も多いという。

「 メンバーの一人がハドルで『用語集をつくりたい』と提案してくれました。難しい保険用語を簡単に説明できるように、言い換え方を一覧にしたいと。ハドル中に全員で該当しそうなものを出し合ったら、10分間でもかなりの数を出せたんです」(瀨尾さん)

例えばお客さまの意向を確認する「意向確認書」という書類を説明するときも、「意向を確認させてください」と言うよりも、「お客さまのご希望に合った商品かどうかを確認させてください」のほうがスムーズ。ハドルのおかげで、できるだけ分かりやすい言葉で伝えたいというメンバーの想いを共有でき、改善につながったという。

「もっとお客さまに伝わりやすい発音で話したいと、劇団四季の“母音法”という発声法を調べてレクチャーしてくれた人もいました。視点が一人ひとり違うので、いつも驚きと発見があります。慣れるまで重荷に感じる人もいるかもしれませんが、きっと成長につながっていると思います」(瀨尾さん)

「花冷えの季節」に込められた想い

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季節ごとのテーマカラーが華やかなあいさつ集。

瀨尾さんは入社以来、これまでにも現場で培った感覚を生かして、顧客の声を仕事に反映させ、小さな改善を繰り返してきた

「コールセンターでは電話を切る前のタイミングで時候のあいさつをしています。現場に出向いたときにどこのブースからも『季節の変わり目ですので……』と聞こえてきて、とても違和感を抱きました。季節の変わり目でなくてもこの言葉を使っていたのです。まずは適切なあいさつを知ることから始めなければと思い、帰社後すぐに時候のあいさつ集をつくりました。若い人や新人は、ご年配の方の心に響く言葉を知りません。例えば『花冷えの季節ですので』と言ってみたら、『あら、すてきな言葉ね』『久々にその言葉を聞きました』と喜んでいただいて。予想以上に反響があったようです」(瀨尾さん)

春はピンク、2月はチョコレート色と、季節ごとのテーマカラーが華やかなあいさつ集。巻末にはご懐妊された方へのお祝いの言葉や、病気やケガ、ご不幸があったときにおかけしたい言葉も添えられて、言葉につまりがちな新人CAを支えている。

「マニュアルで終わらせず、常にお客さま目線で考える」という瀨尾さんのモットーが、こうした形で少しずつメンバーに浸透していったことが伺える。

「変える」と「変わる」を大切に

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瀨尾さんのお話を伺っていて驚くのは、アイデアの種を発見してからまくまでのスピード感だ。役員も含め「いいことはすぐに取り入れよう」という風土が根付いていることが、実行しやすさにつながっていると語る。

企画の段階でアイデアをつぶされるとか、忙しいからやめようと言われることがまずない。とりあえずやってみて、PDCAをまわすという文化があるんです」(瀨尾さん)

瀨尾さんが特に大切にしているのが“「変える」と「変わる」”という言葉だ。

「変化にはリスクがつきものですが、必ず進化が伴います。何事もトライしようという文化があることはありがたく、チャレンジすることができていますね」(瀨尾さん)

トライを繰り返し、小さな成功体験を積み重ねることで、メンバーそれぞれの自信につながっているという。

「加点主義」でチームを育てたい

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その言葉通り、いまオムニチャネル業務部では、「Everyday small Challenge」というキャンペーンを実施中だ。これもハドルがアイデアの発端となった取り組みで、チーム対抗でお客さまからの“ありがとう率”を競うチャレンジを行っている。

「お客さまが会話の中で言ってくださる『ありがとう』という言葉を人工知能(AI)が算出するシステムがあり、その数を指標として応対品質を上げていこうとしています」(瀨尾さん)

上から指示するのではなく、メンバーに寄り添うリーダーでありたい、と話す瀨尾さん。

「わたしの重要な仕事の一つは、CAの応対におけるマイナスの部分をチェックすることです。だからこそ“個”を見るときは、なるべく加点主義でいきたい。改善しながらも小さな変化に気づき、長所を最大限伸ばすことを心がけたいんです。そのためにも、メンバーとの対話を何よりも大切にしています」(瀨尾さん)

個人の長所を伸ばすことで、業務も効率的になる。足りない部分は、ほかの人が持つ長所で補う。そうやって互いに補い合うことで、「チームの強み」が出てくるのでは──と瀨尾さん。

組織が進化するためには、個の成長が欠かせない。自分の長所やアイデアの種が認められたという成功体験は、メンバーのやる気をさらに引き出すはずだ。効果的な目的達成を果たすために、チーム全体や個々の能力、考え方を常に伸ばし続ける「学習する組織」。それがオリックスで実践されている。

撮影/米山典子、取材・文/田邉愛理

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