社員の多様性、個性を最大限に生かし社会に価値をもたらす会社を目指して

[publisher] ORIX Group | 株主通信「悠」No.57より転載

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白河 桃子
相模女子大学客員教授
「働き方改革実現会議」有識者議員
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井上 亮
取締役 兼 代表執行役社長・グループCEO

労働生産性の向上や多様な働き方の実現が喫緊の社会課題となる中で、多くの企業が「働き方改革」の動きを加速させています。オリックスでは、世の中のニーズを察知し、新たな価値を社会にもたらすため、社会情勢に先駆けて多様な人材の活用に取り組んできました。そして2016年10月には、グループCEO直轄の「職場改革推進プロジェクト」を立ち上げ、新たな取り組みも進めています。
今号では、企業の成長に欠かせない「人材活用」をテーマに、相模女子大学客員教授で、「働き方改革実現会議」有識者議員を務めた白河桃子氏とグループCEOの井上亮が対談しました。

所定労働時間の短縮が、仕事効率化の意識を高める

白河:オリックスでは多様な人材が活躍されていますね。近年の「働き方改革」への取り組みが、それぞれの能力や専門性を生かした人材活用をさらに推し進めていると感じています。特に驚いたのは、2017年に実施された所定労働時間の短縮です。国内でこれを実施する企業は、ほとんどありません。

井上:所定労働時間の短縮は、2016年に開始した「職場改革推進プロジェクト」の一環として実施したものです。終業時刻を17時20分から17時に変更し、所定労働時間を20分短縮しました。給与変更を行わずに実施し、「働き方改革」の大きなテーマである生産性向上と長時間労働の是正につなげる目的でした。社内からは、職場の雰囲気が引き締まったという良い報告も受けています。業務効率を意識しながら、集中して仕事に取り組む文化が育ってきています。

白河:「たった20分」と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、この20分を縮めるだけで、時間に制約がある人たちの働きやすさは断然違います。17時に退社すれば保育園の迎えの時間に間に合うというワーキングマザーも多いと聞きます。「時短勤務」とせずに、終業時刻まで働けるようになった方も多いのではないでしょうか。

また、特に素晴らしいと考えるのは、「子育て中」などに限定するのではなく、社員全員を対象にしているということです。フェアな土壌が形成されます。経営者は、社員に少しでも長時間働いてもらって、より多くのアウトプットを出して欲しいと考えがちです。つまり、働くこと=アウトプットだと思っている経営者がいまだに多いと感じています。井上CEOは違うようですね。

井上:がんばることと成果を出すことは違いますし、長時間労働ががんばることでもありません。それに、がんばり続けてしまうと、あるとき「ポキン」と折れてしまう人材がいるのです。その損失の方が大きいと思っています。

毎日のように長時間仕事をして、あるとき急に体力や精神力の限界を迎えてしまう。そういう人をなくすためにも、職場の働き方を改善することが重要ですね。

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がんばる人材の“折れてしまう”をなくす

井上:白河さんは女性活躍の問題にも取り組まれているのでお話しますが、優秀な女性社員があるとき突然辞めてしまうということに悩んでいました。

白河:興味深いお話ですね。頑張りすぎて折れてしまう女性社員が多いのでしょうか。

井上:オリックスは男女雇用機会均等法の成立以前から、女性を一般職(現在の総合職全国型)として採用し、営業を含めたさまざまな部門に配属してきました。当時、そうした企業はほとんどなかったため、オリックスには多くの優秀な女性が入社してくれました。ところが、入社後10年くらいが経過した時期に、本来なら自身の裁量で仕事を進められるようになって面白くなってくるタイミングであるにもかかわらず、急に辞表を出されてしまうケースが見られました。まじめに働き過ぎて、折れてしまったと言うのです。優秀な社員でしたから、海外でMBAを取得されるなど、その後もビジネス界で一層活躍されています。オリックスとしては、とても残念なことです。

白河:オリックスは現在、女性管理職の比率が約20%*1ですね。これは日本企業の中ではとても優秀な数字ですが、そうなってしまった人がいなければもっと増えていたかもしれませんね。

井上:本当にそうです。女性比率という意味ではなく、純粋に優れた人材が会社を去ってしまうことは、大きな損失です。「職場改革推進プロジェクト」を含めた働き方改革には、すべての人材の能力を引き出し、フェアに評価したいという意思を込めています。優れた人材は性別などに関係なく評価し、さらにステップアップした仕事や役職を任せたいですから。

白河:女性社員の昇進と言えば、女性役員がいない会社に対して、議決権を行使するという海外の投資会社も出てきています。上場企業として、こうした動きについて何らかの対応を考えていますか。

井上:女性役員比率を高めることは簡単です。単純に増やせばいいわけですから。しかし、それでは何の意味もありません。役員には、経営責任があります。だれもが認める人材が務めるべきでしょう。

白河:確かに女性を「優遇」するのは本質を取り違えています。井上CEOにそう明言していただかないと、女性役員も居心地が悪くなってしまいそうです。オリックスの施策が素晴らしいと感じるのは、すべての社員に公平に機会を与えていることです。

井上:ありがとうございます。私たちが目指しているのは、性別、スキル、バックグラウンド、国籍、年齢など、多様性を生かし、だれもが活躍できる職場です。オリックスグループは、さまざまな領域で事業を展開しています。部門やグループ会社間で壁をつくらず、多様な社員が協業することで、新たな価値を世の中にもたらしていきたいと考えています。

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社員の能力を最大限に引き出し社会に価値をもたらす

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白河:働き方改革に取り組んでいて感じるのは、かつての「モノ中心、機械中心」から、「人中心」へ、という流れが起きていることです。人中心ということは、多様な人を受け入れ、だれもがその能力を存分に発揮できる文化が必要になるということと同義でしょう。先ほどの井上CEOのお話と重なるところがありますね。オリックスは、創業時から人中心の経営をされてきて、いまやグローバルに事業を展開されています。多様な人材の専門性や価値観を生かすことで、社会の変化を捉え、柔軟にビジネスを進化させてきたのですね。

井上:人材は私たちのビジネスにとって最も大切な構成要素です。昔は、新人を現場に出して、すべての業務プロセスを一人に一気通貫して担当させていました。そのため、実践を通して、金融をはじめとした専門知識を若手社員のころから習得してきたのです。ただ、組織が大きくなりましたから、いまは状況が違います。散見されるセクショナリズムは、これから打破していかなければならない課題として認識しています。

白河:オリックスは、2005年から「キャリアチャレンジ制度」(社員が異動を希望する部門と直接接点を持ち、双方で合意が成立した場合は異動が実現し、キャリアアップにつなげることができる制度)を導入されていますね。この制度を使えば、まるでプロ野球のFA宣言のように、部門や会社にかかわらず異動にチャレンジできます。とても面白い取り組みだなと感じます。人材の交流は、セクショナリズムを生みにくくする効果もあります。

井上:実は、部門や会社を越えた人事異動は、「キャリアチャレンジ制度」以外の通常の人事異動においても、他社と比べるとかなり多い方だと思います。「キャリアチャレンジ制度」は、組織の活性化のために導入した施策で、社員が自分の今後のキャリアを見つめ直すきっかけになることを期待しています。さらに2018年からは、「45歳からのキャリアチャレンジ制度」も導入し、45歳以上の社員がこれまで培ってきたスキルをさらに能動的に発揮することを目指しています。

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白河:いまは65歳まで働ける会社が多いです。45歳の人は、あと20年働くことになります。社会人人生の約半分の期間ですよね。高齢でも意欲があれば働ける社会が推進される中で、素晴らしい制度を整えられましたね。

井上:オリックスは、2014年に定年を65歳に引き上げました。定年まですべての社員がそれぞれの強みを生かして活躍できる職場環境をつくっていきます。

白河:これからも先進的な施策が生まれることが期待できそうですね。今日はありがとうございました。


職場改革推進プロジェクトとは?

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職場改革推進プロジェクトのメンバー

2016年10月、グループCEO直轄の「職場改革推進プロジェクト」が発足しました。生産性を向上させることで多様な人材が活躍できる職場を作り、多様な働き方を認め合う文化を醸成していくことをプロジェクトの目的としています。プロジェクトでは、主要グループ会社10社、200人以上の現場で働く社員で委員会を立ち上げ、約半年の期間をかけて課題・施策を検討し、約120の施策をCEOに提言しました。働き方改革の第1弾として、所定労働時間を短縮し、リフレッシュ休暇取得奨励金制度を導入しました。2017年には、プロジェクトで発案された社員からの提言をもとに、社内インターンシップ制度や育児特別休暇制度、スーパーフレックスタイム制度を新設し、2018年4月には、1時間単位で取得できる年次有給休暇制度を新たに導入しました。


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事業のみならず、働き方も時代に合わせて変化させている

オリックスと言えば、やはり私たちの世代にとっては昔の印象が強いのではないでしょうか。営業力があって、猛烈に働く人たちがいて「イケイケドンドン」の社風という印象で、私も過去にはそういうイメージを持っていました。

しかし、私自身が働き方改革推進に取り組むようになってから、企業活動の内容を知り、そのイメージは払拭されました。時代の流れに合わせ、とてもスピーディーに改革を進められていますね。今日は、時代の先を行くような取り組みについて、井上CEOから直接その思いを聞くことができ、とてもいい機会になりました。

社員の幸せと企業の利益を両立させる

「働き方改革」は、リーダーシップ、インフラ、マインドセットの3つを変えていくことで実現します。社員のマインドが変われば、企業競争力の強化につながります。ですから、社員を幸せにしながら企業が利益を向上させるという好循環を生む方法があるはずです。

一方、単純に労働時間が減ると捉えてしまう経営者が多いのも事実です。トップが危機感を持って改革に取り組むことが成功の鍵です。井上CEOのお話から、企業風土を動かそうとする強い決意を感じることができました。

中途入社が多く、多様性のある組織は強い

井上CEOの思いに加えて、オリックスは改革を実行しやすい土壌もありそうです。国内でキャリア入社比率が約4割*2という数字は、他社の文化を知る人材が約半数を占めることを意味します。グローバル企業として外国籍の方も積極的に採用されていて、女性も活躍しています。金融事業のみならず、環境エネルギー事業、不動産事業など、事業領域は幅広く、部門や会社を越えた人事異動も活発です。このように多様性のある人材が常に交流している組織は、いわゆる大企業病にかかりにくい傾向があります。そして、グローバル市場で戦って勝っていくために、多様性は不可欠です。

いまダイバーシティの重要性が叫ばれていますが、残念ながら、対外的なプロモーションのために形や数字を追うだけのケースも少なくありません。本質を理解し推進するオリックスの取り組みは、学ぶところが多いと感じました。

白河 桃子氏

相模女子大学客員教授
「働き方改革実現会議」有識者議員
慶應義塾大学文学部卒業後、総合商社などを経てジャーナ リスト、作家に。働き方改革、ダイバーシティなどをテーマに活動。

*1:オリックス単体。2018年3月時点。

*2:オリックス単体。2018年3月時点。

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