まずは自分をリードして、自分らしく自立せよ。多様性を面白がり、尊重する、これからのリーダー像

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[Publisher] MASHING UPより転載

いまだ、組織に同質性を求める傾向にある日本。

多様性のある組織を築くために、リーダー層はどのように変わるべきなのでしょうか?

2019年11月7日・8日に行われたビジネスカンファレンス「MASHING UP vol.3」では、個を生かす組織づくりに邁進するオリックスグループの協力のもと、「“上”よ変われ、“個”を生かせ。多様性を生かす組織づくり」をテーマにトークセッションが行われました。

登壇したのは、カナダ出身で名古屋大学大学院法学研究科特任准教授であり、en-joi 多様性&インクルージョン コンサルティングのファウンダーでもあるスティール若希さん、大学院大学至善館の創設者で理事長を務め、アイ・エス・エルのファウンダーでもある野田智義さん。モデレーターはパナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務の山口有希子さんが務めました。

リーダーはまず「自分を引っ張る力」をつけることから

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パナソニック コネクティッドソリューションズ社 常務の山口有希子さん。

「多様性を生かす組織をどうつくるかは私自身のテーマでもあります。お二人はこの課題、日本のリーダーシップについてどう考えますか?

セッションは、10社のグローバル企業と日本企業で働いた経験を持つ山口さんの、そんな問いかけからスタート。

欧米で長く暮らし、イギリスやフランスのビジネススクールで教鞭を取っていた野田さんは、「自立することが全ての原点」だと言います。

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大学院大学至善館 理事長、アイ・エス・エルの野田さん。

「リーダーシップとは“個のリーダーシップ”、つまり、人を引っ張るのではなく自分をリードすることから始まります。でも、年齢や男女の別を問わず、日本の環境で生きてきた人は自分へのリーダーシップが弱い傾向にある。

まずは多様性やインクルージョンと言うまえに、自分が自分らしく生きているというしなやかさ、たしかさがあることが重要であり、自立することが全ての原点です。その自立があって初めて、他者を認めたり、尊重ができるようになって、多様性が生まれるのだと思います」(野田さん)

資本主義だけでなく、民主主義の考え方を今一度

一方、日本在住20年のスティールさんは、政治学者の観点から「民主主義思想で考えてみてほしい」と話します。

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名古屋大学大学院 特任准教授のスティールさん。

民主的社会で個の平等、個の尊重は基本的なことですが、今の社会は資本主義を中心に回っており、特に今の若い世代はこの民主的価値観にあまり接する機会がないのではないでしょうか? つまり、バランスが良くない資本主義社会と民主主義社会の両方の継続力がないと、個が尊重されて人材が育ったり、イノベーションが生まれたりする可能性が低くなります。

企業においても、ポリシーの部分からして、『個の尊重』や『個性を生かすことのできるような、機会の平等な用意』がまだ足りていないと感じます」(スティールさん)

背景にあるのは「いい子ちゃん教育」?

これを受けて、「民主主義が民主主義であるためには、個の意見、考えを持たないとだめですよね。では、日本のリーダーシップで個が立たないのはなぜでしょうか」と山口さん。

野田さんは「いい子ちゃん教育、進学、就職にある」と回答。

いわゆるエリートと呼ばれる人のなかには、自分で行きたい学校や会社を選んだのではなく、小さいときは親の勧めで、大人になってからは周囲から評判のいい就職先を選ぶ人も多いのではないか、と。そして、そのような人を、ミヒャエル・エンデ作の小説『モモ』に出てくる灰色のスーツを着て時間泥棒にあってしまった人たちのようだと評します。

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「気づかないうちに自分の意思や哲学ではなく、他人からの期待や周囲の目線にあわせている。そのような生き方は、自立とか、自分らしさは出にくいです。真面目に生きようとするとそうなってしまうのが日本だと思います」(野田さん)

男性の多様性を認めないカルチャーも課題のひとつ

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そして、日本の多様性について、「男性の多様性を認めること」が大切だと話すのはスティールさん。

現在、女性は男性の働くスタイルを真似しているけれど、男性で女性の生き方を真似している人はまだまだ少ない。その背景には、たとえば男性が育児休暇を取ることを理解してくれる人が少ないといった、男性の多様化を認めないカルチャーがあるのではと指摘しました。

山口さんは、男性の生き方の多様性を阻む一例として、「ひとつの同じ価値観の中でやりたいと思っているミドルマネジメント層と、若い層で意識ギャップが生まれてきている」と言います。

野田さんは「危機感を持って変わらなければいけないと思っている企業のトップも、社会の流れに敏感な若者も関心が高いのですが、実務に追われてなかなか変わらないのがミドルマネジメント層」とこれに賛成。「若者が下剋上を起こしたほうが社会が変わるのでは、と思ったりもするのですが、でも、そういうミドルマネジメント層も、懸命に生きている生き方のひとつ、多様性のひとつなんですよね」と多様性のあり方にも触れました。

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若者よ、同化圧力に抗え

また、野田さんは「この会場にいる若い人たちも、10年、20年経つと頭の固い人になる可能性がありますよ」と警告し、組織の持つ同化圧力の強さを説明。

最初は個性やクリエイティビティがあると良いとされても、入社すると、人事教育、トレーニングなどでひたすら同化することをやり続ける。その中で根本的にどう抗うのか。どのように個が軸になって人間関係を作っていくかが課題だと話しました。

大切なのは「多様性があることは楽しい」という意識!

「同質社会に慣れている人には、 “多様性はuncomfortable(心地よくない)、同一性はcomfortable(心地いい)”と言われていますよね」という山口さんの言葉に、スティールさんは日本の友人たちに「なぜまだ日本にいるの?」と聞かれることを例に答えます。

「確かにカナダでは同じ価値観で楽ですが、日本で少数派の視点でいることは自分の成長の鍵になっていて、面白いし、苦労も楽しいんです。それに、多様性があってもcomfortableにはなれます」とスティールさん。

スティールさんが設立した「en-joi 多様性&インクルージョン コンサルティング」はあえて「enjoy」ではなく「en-joi」とし、「i」を使っているそう。これは、「差異」や「異議」の「異(=i)」を楽しむ、という意味でつけたと言います。

「相手が違っても、生き方が違っても、異議があっても、信頼関係は作れます。共通の価値観や目標を持てば、“異”を楽しみながら、共にすばらしいことを創出していくことができる。それは今後、どんな国でも必要であり、それができないと発展は望めません。みんなが理解しあい、認めあい“en-joi”できたら、すばらしい未来が待っています」 (スティールさん)

山口さんからは、個性を出す楽しさの身近な例として、2年前に会社で服装を自由にした話が。

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「最初は日曜のゴルフに行くような格好をしていた人たちが、時間が経つにつれて服装に個性が表れてきて。何色が好きとか、それぞれのちょっとしたことが分かるって楽しいことです」(山口さん)

これには「周りの自由を奨励すると、自分の自由も得られる。みんな、趣味を楽しむときの顔、親として子どもに接するときの顔など、色々な面を持っているのに、お互いの複雑な部分を見せずに仕事の顔だけを見せ続けるというのは、逆にとてもハードです」とスティールさんも深く同意。

野田さんも、多様性、すなわちダイバーシティについて、あれもこれも認めなきゃという北風政策ではなく、「楽しいもの」だと捉えることが大切だと語りました。

一生懸命に英語を勉強した結果、世界が広がったという実体験を例に、ダイバーシティの良さは、語学ができると良いのと同じこと新宿のゴールデン街で飲むと色々な人がいて楽しいですが、ダイバーシティはそれが日常で体験できるようなもの。そして、その多様な人がいる中で胸を張って生きることが大事だと話しました。

「人生は1度しかないし、その人それぞれの才能や素晴らしさを世界は待っている」というスティールさんの言葉に、「違いを知ることが人生を豊かにします。それをダイバーシティの中で生かしてほしいです」と山口さんは締めくくりセッションは終了。

多様性を生かすことができる組織であるために、リーダー層は、個は、どうあるべきなのか。改めて考えさせてくれたセッションでした。

協賛のオリックスグループの取り組みは、こちら。 自分の家庭も仕事も守るために、自ら率先して制度を導入し、より生産性の高い組織づくりに立ち向かったある社員の事例を取り上げています。

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MASHING UP vol.3

“上”よ変われ、“個”を活かせ。多様性を活かす組織づくり

  • スティール 若希(名古屋大学大学院法学研究科 特任准教授/en-joi 多様性&インクルージョン コンサルティング ファウンダー)
  • 野田 智義(大学院大学至善館 創設者・理事長/元ロンドン大学経営大学院・インシアード経営大学院助教授)
  • 山口 有希子(パナソニック コネクティッドソリューションズ社)

撮影/今村拓馬、取材/土田ゆかり


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