黒字で廃業が42%── 中小企業の課題にオリックスはどう向き合うか

[publisher] BUSINESS INSIDER JAPANより転載

日本企業全体の99.7%を占める中小企業。その経営者が高齢化し、後継者不足による廃業が相次いでいる。そこで起きるのはこれまで培った独自の技術や技、イノベーションの源泉の分断── 。世界における日本のプレゼンスを落とさないためにも、事業承継は社会全体の課題だ。事業承継の現状とその背景、今後の展望について、名古屋商科大学大学院教授・栗本博行氏に聞いた。

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名古屋商科大学大学院教授の栗本博行氏。神戸大学経営学部卒業後、大阪大学経済学研究科にて修士(経済学)および博士(経済学)を取得。製品開発戦略を主な研究対象とし、製品アーキテクチャおよび製品ライフサイクルを中心概念とした規格競争分析に関する論文を多領域に亘って執筆。近年は事業継承、長寿企業に関する研究に取り組む。現在、ビジネススクールではMBAプログラムの立ち上げからカリキュラム運営まで幅広く携わる。

「誰にも相談できない」中小企業の廃業が続く日本の“闇”

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廃業に際して相談する相手は「家族」に次いで「いない」。提供:名古屋商科大学ビジネススクール

中小企業庁の資料(2016年「事業承継に関する現状と課題について」)によると、2020年ごろには数十万人の団塊経営者が引退時期にさしかかり、60歳以上の経営者のうち、50%超が廃業を予定。特に個人事業者においては、約7割が「自分の代で事業をやめるつもりである」と回答しているという。

廃業の理由は、「当初から自分の代でやめようと思っていた」が最も多く38.2%、「事業に将来性がない」が27.9%、「子供に継ぐ意思がない」「子供がいない」「適当な後継者が見つからない」との後継者不足を理由とする廃業が合計28.6%を占めている。

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「事業承継について、ミレニアル(1980年生まれ以降の世代)の親世代にあたる50代、60代はいま真剣に悩んでいます。赤字で廃業するならまだやむなしと思いますが、『中小企業白書(2014年)』によると、廃業した企業のうち42%は黒字です。もう一つショッキングなデータがあります。廃業に際して相談した相手は『いない』と回答した経営者が約3割もいました。経営について膝を突き合わせて話す相手がいない、孤独であるというのは日本の中小零細企業が陥りがちな闇です。経営者自身がそのことを自覚し、『いずれなんとかなる』と思うのではなく積極的に準備しなければなりません」と名古屋商科大学ビジネススクールの栗本教授は話す。

同ビジネススクールが社会人向けに開講している「事業承継科目」の受講者は40代半ばの人が多いという。経営者、後継者、継ぐべきかどうか悩んでいる人、ファミリー企業に勤めているノンファミリーの立場の人など属性はさまざまだ。

世代間ギャップを埋めるには……事業承継のポイント

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廃業企業の42%が黒字だったという。提供:名古屋商科大学ビジネススクール

なぜ後継者不足に陥るのか。自社で後継者を育てることはできないのだろうか。栗本氏は「欧米では事業承継があるなしに関わらずリーダーを育成するプログラムが豊富だが、日本ではリーダー育成のトレーニングがあまり行われてきていないことが理由」と分析した上で、「それは我々にとって反省点。ビジネススクールとして支援、貢献していきたい」と語る。

実は、栗本氏自身も事業承継の経験者だ。現在、大学院教授と並行して、学校法人栗本学園(1935年創立)の理事長を務めている。20代から父と並走して修行を積み、30歳ごろから本格的に事業に関わり始めた。それまで家業に関心がなかったわけではないが、積極的に継ぐつもりはなかったという。考えが変わったきっかけは、大学進学時に母親が何気なく言った「大学経営もおもしろそうよ」という一言。 父親が「お前が継げ」と命じるよりも、母親の「手伝ってあげたら」という助言に心を動かされるケースは少なくないという。そういう意味では、栗本氏は「承継にあたって家族内の感情はよく理解している」と語る。

「父は先代の創立者と中学時代から行動を共にして、その姿を見てきたので自然な流れで後を継ぎ、『ここは譲ってはならない』というところも肌感覚で知っている。しかし、私を含め戦後世代の3世代目以降は起業の苦労をまったく見ていない。なぜこの場所で、この名前で、この事業を行っているのか、自社の過去をきちんと振り返らないと、変えていいポイントといけないポイントを踏みはずすことになってしまいます」

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名古屋商科大学では、いち早く2013年から事業承継の講座を行っている。ご自身も80年続く企業の3代目として事業承継を経験されたという栗本氏。

事業承継は30〜40年に一度にあるかないかのできごとだ。ファミリー企業と一口に言っても、株式を持ちかつ経営にも参画している人と、株式を持っているだけの人では目指すところは異なる。長男か次男か、あるいは長女かでも考えは違ってくる。

それぞれが何に関心を持っているのか。資産、商品、企業理念、屋号……どの部分を守り、どこを変革すればいいのか。理解が不十分なまま承継し、「そんなつもりじゃなかった」と後からトラブルが発生する例は数多くあるという。家族だからこそ感情をむき出しでぶつけ合ってしまうという問題点もある。

100社あれば100通りの考え方がある

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事業承継にあたって大事な要素は株式だけではない。この6つをどう受け継ぐかがポイント。提供:名古屋商科大学ビジネススクール

「100社あれば100通りの考え方があり、ふたつとして同じ道筋はありません。そこがファミリービジネスの怖いところ。子、孫、ひ孫、世代が変わるにつれてどんどん多様化し、世代間のギャップは大きくなる。そこに向き合っていかないと、前向きな事業承継は難しい。知識を高めるよりも事例を追体験して経験値を高めることが成功のポイントになるのではないかと考え、ビジネススクールではケーススタディに重きを置いています。大切なのは、さまざまな業界、業種、世代の人が集まること。同じ業種、業界、世代だけで集まるとギャップが生まれず学ぶところがない。明確な解は存在しません。さまざまな視点を知ることで『そういう考え方があるのか』とわかり、いざ自分ごとになったときに生かしていけるでしょう」

納得がいくまで、十分準備に時間をかける

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とはいえ、やはり家族間の話し合いだけではまとまらず、結局後継者が確保できないため廃業を選択するケースはある。そのときは、第三者へ事業を承継することも一つの手だ。

第三者として投資ファンドの存在があるが、一般的に投資ファンドは効率的な資金運用を考えて投資回収期間を3〜5年と定めていることが多い。しかし、事業承継に悩む経営者は、株式の承継をはじめ、後継者の確保・育成はもちろん、顧客基盤や人脈の承継などさまざまな課題を抱えており、これらの解決には充分な時間が必要となる。そこで、中小企業の事業承継を支援するオリックスは、自らの資金で株式を譲り受け、期間を限定せず、経営者に時間的な猶予を提供しているという。

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オリックス 法人営業本部国内事業推進部 エクイティソリューション第一チーム長の丸山大輔氏はこう話す。

「弊社では経営者の希望に寄り添い、伝統や理念など守るべきところは守りながら、事業承継をサポートします。その際、経営者と弊社が納得のいく着地点を見出す必要があるため、安易に株式を譲り受けるのではなく、その前に時間をかけてしっかりと議論します。また、後継者問題だけでなく、自社の成長面に課題を抱える経営者もいらっしゃいます。その場合は、全国でさまざまな事業を展開するオリックスグループのネットワークを活用し、営業面でもサポートしていきます。それらによって、大事に会社を育ててきた経営者の思いを引き継ぎ、事業承継を円滑に進めることができると考えています。

全国の中小企業は私たちの大切なお客さまですが、日々のやり取りの中で事業承継に関するご相談をすでに1000社以上からいただいており、大きな社会課題だと捉えています」

親族内で承継するだけが正解ではないということ、そして承継には充分な時間が必要であるということは、栗本氏も強調する。

「継ぎたくない人に無理に継がせる必要はないと思います。欧米の流れを見ても、今後は第三者に承継するケースが増えてくるでしょう。ただ、次の経営者が理念や価値観をしっかり理解することは簡単ではありませんし、従業員も前任の経営者に雇用されて一緒に育ってきたわけですから、経営者が変われば戸惑いもある。経営層だけでなく従業員も含めて合意形成を取るためには時間が必要です。そして、株式、資産だけでなく、伝統や取引会社とのネットワークなどソフト面の承継を、現在の経営者と次の経営者が互いに理解するためにも充分な時間をかける必要があります。それが結果的に幸せにつながります」

創業者がゼロから起こし培ってきた商品、技術、従業員。絶やさず存続させていくには何がベストな方法なのか。日本経済全体の課題として考えていく必要がある。


イノベーションの源泉でもある日本の中小企業の技術が途絶えることは、日本全体にとって大きな損失── 。オリックスは、M&Aや金融サービス事業の経験を活かし、事業承継を通して、日本の社会課題に取り組んでいる。グループの総合力を活用し、顧客基盤や人脈などの無形資産の承継も重視するオリックスの取り組みについて、詳しくはこちらから。

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