社会情勢の移り変わりやデジタル技術の発達など、さまざまな要因により経営環境の変化が激しい昨今。持続的に会社を成長させていくために、既存の事業にとどまらず、異なる事業分野に挑戦する企業も少なくない。
山梨県甲府市で土木建築業を営み、創業50年を超える大新工業株式会社も、本業を補完する新規事業を検討するなかでオリックスに出会い、不動産活用支援サービス「+CoRE」によるサポートを受けながら不動産賃貸事業を立ち上げた。
新規事業の選択肢は数多くあるが、なぜ不動産賃貸を選んだのか。また、オリックスをパートナーに選んだ決め手はなんだったのか。新規事業立ち上げまでの過程と、それをサポートしたオリックスの存在について、代表取締役社長の大村 基一氏に聞いた。
「人手不足の社会で、右肩上がりの成長は難しい」という危機感
「明日の郷土造りに貢献する建設業」をスローガンに、1959(昭和34)年に創業した大新工業。
「創業者である私の祖父は、1959年に伊勢湾台風が襲来したタイミングで和歌山から山梨に仕事を求めやってきました。当時北杜市では台風の影響で河川が氾濫し、市内全域に甚大な被害を受けていました。台風による災害復旧に向けて、この会社を立ち上げたのがスタートです。高度経済成長期には、この地域一体のインフラ整備に大きく貢献するなど、現在に至るまで地域への貢献を中心に据えて事業活動を行ってきました」
代表取締役社長の大村 基一氏はこう語る。道路や河川、橋梁、上下水道などをはじめとする土木工事、また工場や学校ほか多くの大規模工事・公共工事を手掛け、地域に根ざした総合建設会社として成長を続けてきた。施工実績は幅広く、また狭小箇所での施工や河川の切り回し(災害対策などのため川の流れを変える工事)のような難易度の高い施工ノウハウを多く蓄積しており、技術力や対応力を武器に、顧客から高い信頼を獲得している。
このように安定した経営基盤を維持し続けてきた一方で、日本の未来を見据えると大きな危機感を持っていたと、大村氏は語る。
「これから日本社会が絶対に避けて通れないのが、少子高齢化です。すでにさまざまな業界で人手不足が叫ばれていますが、特に建設業は、人の経験値が技術力・対応力に直結する世界。いくら機械やテクノロジーを導入して工夫したとしても、今までどおりに売り上げが右肩上がりに成長するとは限らないと考えていました」
不動産賃貸なら、人手をほぼ必要とせず、安定した収入源を確保できる
そんな課題感を抱いていた同社は、将来に備えて本業以外で経営を支える柱を創出すべく、新規事業の立ち上げを模索していた。さまざまな選択肢を検討しているなかで、「一度会ってみると良いのでは」と紹介されたのがオリックスだった。
「お会いする前は、正直、プロ野球球団のイメージしかありませんでした。でも、お話を伺ってみると、実はさまざまな事業を手掛けており、いろんな側面から地域の企業を支援している会社だと知って興味が湧きました」
そうしてコミュニケーションを重ねていくなかで提案されたのが、オリックスが提供する不動産活用支援サービス「+CoRE」を利用した不動産賃貸事業への新規参入だった。大村氏は、経営を支える新たな柱のひとつとして不動産賃貸に惹かれた理由をこう振り返る。
「新規事業は本業を下支えするものとして考えており、多くのリソースをかけることはできないと考えていました。でも不動産賃貸なら、人手をほぼ必要とせずに安定した収入源を確保できます。そこが大きな魅力でした」
とはいえ、不動産への投資は決して安い金額ではないため、収益性の試算はもちろん、財務や会計の視点から見た導入メリットの検討を要した。そうした点もオリックスから丁寧に説明を受け、慎重に議論し、物件の検討を重ねた。実は並行して銀行や不動産会社からも同様の提案を受けていたが、最終的にオリックスをパートナーに決めることとした。
「投資物件には、一切妥協したくありませんでした。私たちは建設会社ですから、例えば水回りの快適性など、物件のカタログ上では掲載されていない、専門的な観点で重視したいポイントが多数あったのです。
それらの気になる点について質問した際、多くの会社さんは資料に掲載されている表面的な回答が多かったのですが、オリックスからはその場で的確な答えが返ってくるんです。すぐに答えられないことがあったとしても、一度持ち帰り、確実に調べて早急に回答してくれる。そうしたやりとりに誠実さを感じ、信頼できると考えました。
また、私たちが提示した数々の条件を踏まえたうえで、おすすめできる物件が見つかった際には、「すぐに見に行きましょう」と背中を押してくれる頼もしさもありました。自信を持ってすすめてくれたその物件を内見した帰りには、契約することを決めていました」
本業を支え、経営を安定させる有力な柱となる不動産賃貸
オリックスが大新工業に提供した不動産活用支援サービス「+CoRE」はどのように生まれたのか。オリックス ビジネスコンサルティング事業部 部長の平塚 浩一は、背景をこう語る。
「国内外で急速に進むインフレや人手不足などの影響もあり、業績悪化や後継者不足により廃業に追い込まれる事例が増えています。これは個々の企業の問題ではなく、日本全体の課題であると考えます。
日本全国の中小企業の皆さまと向き合ってきたオリックスとして、この課題解決に取り組み、地域の企業の存続と発展、ひいては日本の発展に貢献していきたいという思いがありました」
近年、安定した収益を上げるための手段として、ゼロから新規事業の立ち上げを検討するケースも増えている。しかし、そうした事業が軌道に乗るのはわずか7%という調査もあるほど、成果を生み出すのは簡単なことではない。そこで、本業を補完するための堅実かつ現実的な新規事業となりうるのが、不動産賃貸であるという。
「ゼロから立ち上げる新規事業は、アイデアを生み出す人材、それを形にして展開する人材が必要です。一方、不動産賃貸は人手をそれほどかけずに、継続した安定収益を確保できる可能性がある点がメリットです。企業の成長戦略には、自社単独で成長戦略を立案し実行する、M&Aなど外部リソースを活用する、収益事業への投資による本業補完に取り組むなど、いくつかのパターンがありますが、その中でも、相対的なコストやリスク、安定性を考えると、不動産賃貸は堅実な手法と言えます」
オリックスグループは、不動産投資・開発をはじめ、住宅関連事業、アセットマネジメントを展開するなかで、不動産に関する豊富な知見・ノウハウを蓄積してきた。加えて、金融や財務ほか多様な専門性を生かした包括的なサポートを得意とする。
全国各地に支店を配し、地域の中小企業の悩みや思いに寄り添って課題解決へ伴走する体制を有しているオリックスグループが、それらの強みを最大限に生かして立ち上げたサービスが「+CoRE」だと平塚はいう。
不動産賃貸事業により、グループ全体の売り上げ10%強を安定的に確保
こうして2021年に不動産賃貸事業を立ち上げた大新工業。現在、「+CoRE」を利用し、運用している物件は2件となっている。
「グループ全体の売り上げのうち10%強の収益を安定的に得られています。物件の管理もセットで提案いただいたため、大きな工数をかけることなく、ある程度お任せしていても利益を生み出してくれる柱ができたことは、非常に心強いです」と、大村氏は語る。
運用する物件は、条件とタイミングを計りつつ、機があれば増やしたいという。そうして本業と不動産賃貸事業で収益を安定させながら、さらに新たな収益の柱となる事業を発掘することも検討中だ。
「不動産賃貸事業の立ち上げで手応えを得て、会社を継続的・安定的に成長させていくためには、収益の柱を拡充させることが大切だと感じています。新たな柱の発掘においては、オリックスさんにも大きく期待しています。良きパートナーとして、今後とも、ぜひ相談相手になってほしいです」