オリックス・システムでは、オリックスグループ各社のシステムを一手に引き受け開発・運用を行っています。そのため、担当する会社やプロジェクトごとに運用業務が立ち上がり、それぞれのやり方で運用されています。今後もさらに増えていくシステムを効率的で安定的に運用するため、立ち上げられたプロジェクトにおいて、その指針となる枠組みを構築した二人に話を聞きました。

Profile

運用企画管理部 部長

K.Y

車載電装部品の機械設計職から、当時目新しい職種であったシステムエンジニア(SE)に興味を持ち、1997年にキャリア採用にてオリックス・システムへ入社。グループウェア運用を経験した後、人事システムの刷新プロジェクトに参画。アプリケーションの開発、運用保守設計など幅広い経験を経て、管理部門でシステム監査にも従事。その後、基幹システム構築プロジェクトに参画し、認証システム開発のほかクラウド環境の監視やキャパシティプランニングなどを経験し、本プロジェクトの立ち上げを担う。

基盤運用部 部長

Y.T

1999年に新卒でオリックス・システムへ入社し、運用業務に従事。Web系システムの開発チーム立ち上げに伴い、アプリケーション開発を経験した後、基幹システムの構築プロジェクトへ参画。リリース後の保守業務までを担当した後、デバイス運用にも従事。現在はサーバを含む運用部門の管理業務を担う。

Story 01

運用業務を標準化し、運用業務の継続的改善を目指す

プロジェクトの概要をお教えください。

K.Y 本プロジェクトは、属人化している現行のシステム運用を改革し、運用の品質を一定に保つことを目的としています。私たち二人は2022年3月からの約3カ月間で、ITIL(※)と呼ばれる運用のグローバル標準をベースに必要な業務を整理し、標準的な業務の枠組みを作りました。現在は、実際の業務を棚卸しして、作った枠組みと照らし合わせながら、改革すべきポイントを精査している段階です。
※ITIL Information Technology Infrastructure Libraryの略。ITサービスマネジメントにおけるベストプラクティス(成功事例)をまとめたガイドライン。

Y.T きっかけは、K.Yさんが運用の在り方に声をあげたことでした。現在のオリックス・システムには、オリックスグループ各社の要望に応じて開発した分だけ、運用しているシステムがあります。その数は100、200といったレベルであり、その一つ一つが異なる業務で運用されている状況です。そのため運用業務に対する評価や工数の把握、適正な要員配置を行うことができず、障害発生時の影響調査や原因究明に長時間を要しているという問題があります。

K.Y 私自身が運用を中心にシステムの監査なども経験していたため、グローバルスタンダードに準拠した運用業務の大切さを身をもって感じていたんです。運用に関する資格を取得したことをきっかけに、今回のプロジェクトの立ち上げを任せてもらいました。当初から描いていたゴールは、“コストダウン”ではなく“運用業務の自律的改善”です。第一の目標を「3年後に運用実績が可視化されている状態」とし、まずは今後膨らんでいくシステム運用を標準的な運用プロセスでどのシステムでも同じやり方で回せるようにした上で、運用実績を把握していきます。その後、可視化された情報を元に課題を把握し改善へのアクションプランを立て、自律的な継続的改善に繋げたい考えです。この取り組みによって、障害対応のスピードアップはもちろん、これまでに想像しえなかった問題やシステム環境の変化にも柔軟に対応できるようにしたいと考えています。

Story 02

運用業務の重要性を高め、開発全体を底上げする

課題や、挑戦が求められた点について教えてください。

Y.T プロジェクトの立ち上げにあたり、どんな成果が期待できるのか定量的に算出できないことが一番の課題でした。運用を担う部署ごとに抱える多数のシステム、800台を超えるサーバ、多品種のデバイス…といった状況で、どこから何を変えていけば良いかわからなかったのです。パッチを一つ当てるにも、おのおのの設定がバラバラのため、正常に動くシステムと動かないシステムが出てきてしまう状況でした。加えて運用の属人化が進んでいるため、ExcelやNotesといった管理ツールも複数あり、各システムに共通して解消できるポイントを見いだすのは現実的ではありませんでした。

K.Y そこで私たちは、「定量的な成果が見いだせない=解決すべき課題が見えていない」こと自体が課題だとして、運用業務そのものの見直しの必要性を訴え、プロジェクトをスタートしました。運用は開発における最終段階で検討する傾向が長く続いており、業界全体として軽視されがちですが、実はシステムの品質に直結する部分であり、コストの大部分を占めています。運用品質を向上させることが、転じて開発全体の足腰を強くすることにつながると考えています。

Y.T K.Yさんは、古いシステムを刷新するさまざまなプロジェクトに携わってきた経験があるので、思いの強さはもちろん、視野が広くさまざまな角度から考える力を持っていますよね。私が見えていない部分にも目を向けてカバーしてもらいました。

K.Y その分、私は言いたいことを率直に伝えてしまうところがあるので、物腰の柔らかいY.Tさんに助けられました。相談しやすい空気を作っていただき、不安に感じた点もしっかり共有しながら取り組めたと感じています。お互い足りていないところを補い合いながらアウトプットしてきました。

Story 03

心理的安全性の高い組織にこそ、改革は生まれる

今後の目標について教えてください。

K.Y 今後は、指針となる運用の枠組みを実際の現場におろしていくフェーズに突入します。当たり前になっているものを変えるには多大な労力を要しますから、メンバーに「なぜ変えるのか」をしっかり理解してもらえるように、丁寧な説明が必要です。新たな業務が増える可能性もありますが、ITILに準拠した管理ツールを同時に導入する利点は大きく、運用負荷を軽減しながら業務を広げていくことができます。また、将来的にアウトソースもできることや、自動化につなげられるなど、しっかりメリットを感じてもらえるようワークショップも準備しています。

Y.T 私たちが入社した頃と比べて、最近はキャリア入社の社員が増えてきたので、さまざまなバックグラウンドや考え方を持った人たちがお互いを尊重しながら働いています。日常的に誰にでも安心して発言できる心理的安全性が感じられる環境づくりを意識しているので、今後も活発なコミュニケーションをとっていきたいですね。

K.Y コロナ禍になる前は、メンバーはもちろん協力会社のご家族も一緒にBBQを開催するなど、業務外での関係構築を大切にしてきました。
プロジェクトの計画としては、3年後に運用実績の可視化を実現した上で、さらなる継続的改善につなげていきたいと考えています。理想は、各チームのリーダーレベルで運用業務をマネジメントでき、自立的に改善が行える状態です。オリックス・システムは経営層との距離が近く、自分の意見を伝えやすい環境にあるので、各チームのメンバーにもそれを存分に生かしてもらいたいですね。今は外部ベンダ―に任せきりで見えていない部分も多いので、しっかり全体像を把握して、自分たちの手で改革を行えるようにしていきたいです。