コロナ禍を経て、働く環境におけるデジタル化がさらに加速している昨今。オリックスグループにおいても、さまざまな外部システムの導入が拡大しています。それらの外部システムを基幹システムとAPI連携(ソフトウェア同士をつなぐ仕組み)させるプロジェクトをご紹介します。

Profile

開発・保守統括部
SaaSサービスチーム

A.A

SIerにて金融系システムの開発・保守業務に従事した後、教育系財団法人に社内システムエンジニア(SE)として転職。複数のシステムに携わり、経験の幅をより広げたいという想いから、2015年にオリックス・システムへ入社。本プロジェクトにはプロジェクトマネジャーとして参加。

開発・保守統括部
SaaSサービスチーム

S.N

2012年に新卒でオリックス・システムへ入社し、インフラエンジニアとして6年、アプリエンジニアとして4年の経験を積む。大学は情報系学部ではなかったものの、ネットワーク改革プロジェクトにも参加するなどの活躍を見せ、本プロジェクトにはリーダーとして参加。

Story 01

外部システムと基幹システムを連携させ、大幅な工数削減へ

プロジェクトの概要を教えてください。

S.N オリックスグループ各社で使用されているPaaSやSaaS(外部システム)を、社内の基幹システムと連携させることが目的です。コロナ禍を経て、外部システムの導入が本格化したことをきっかけにプロジェクトが立ち上がりました。実際の外部システムとしては、例えば各社の営業部門にはSalesforceが導入されています。ですが、現在は顧客情報を基幹システムとSalesforceの両方に入力しており、結果的にデータベースが二つ存在している状況です。これを連携させ、外部システムから基幹システムのデータを参照・更新できるようになれば、大幅な工数削減につなげられます。大規模な営業組織を抱える、オリックスやオリックス・レンテック、オリックス自動車では特に外部システムを使いやすくするニーズが拡大しており、DX推進の一歩としても、連携基盤の整備には大きな期待がかかっていました。

A.A エンドユーザーである各グループ会社社員からの具体的な要望は、オリックスのテクノロジー統括部で取りまとめられ、オリックス・システムへ連携されます。私たちのミッションは、基幹システムアプリの一部をAPI 化して疎結合(連携しながらも独立性が高い状態)し、セキュアに基幹データを利用できるようにするための、APIゲートウェイ製品の調査と構築です。そのため今回は、SaaSの担当者、基幹システムの担当者、セキュリティの担当者など、多くの関係者とともにプロジェクトを進行させていきました。

S.N 外部システムとの連携については、営業組織以外からも要望があがっていましたが、何せオリックスグループ各社の社員数は1,000人単位。まずはSalesforceから試験的にスタートして、セキュリティ面や認証面などを整えていくことが当面の目標です。

Story 02

自分たちの手で改革する、「内製」への挑戦

課題や挑戦が求められた点について教えてください。

A.A グループのDXを推進していくという未来を見据えて、「自分たちの改革は自分たちの手で行おう」という想いがあったため、今回は「内製」がキーワードでした。外部のコンサルティング会社はほとんど使わず、APIゲートウェイの製品選定からオリックス・システムが担当した点が一番大きな挑戦だったと思います。どんな製品があり、それぞれにどんなメリットとデメリットがあるのかを調べた上で、その情報を集約して、関係各所へプレゼンテーションすることに苦労しました。ただS.Nさんはその点において非常に優秀で、トラブルが起きた際も、スムーズなコミュニケーションで上手にフォローしてくれました。

S.N 「API」という技術については、聞いたことがある程度の知識からスタートしたため、日々学びの連続でした。在宅勤務が基本なので、自力で調べても分からないことは、製品の担当者やアーキテクチャの方に質問をしてまわりました。もともと新卒で当社を選んだのも、自分にはコミュニケーションを取りながら働く方が向いていると考えていたからです。多くの方を巻き込みながらみんなで一つのことに取り組む作業ができることは心地よかったです。A.Aさんは技術調査の精度が高いだけでなく、ユーザーの理想を理解して技術に落とし込み、経営報告につなげていく力に長けているので、難しい社内説明も無事一発でクリアすることができました。

A.A 経営層などの上席に技術に詳しい人がいるのは当社の特長です。だからこそ、報告や説明の準備は大変でプレッシャーもありますが、日々コミュニケーションをとりながら意見を反映していくことでスムーズな承認がもらえました。資料のきれいさではなく、技術の内容で判断してくれるというのは心強いですよね。また、多様性を肯定する文化があるので、新卒・キャリアの垣根なく裁量を持つことができ、本プロジェクトでもおのおのが強みを生かしあって取り組めました。

Story 03

広い視野と深い知見が身につくチャンスに恵まれている

プロジェクトから得たものと、今後の目標について教えてください。

S.N 商品選定からスタートして、経営層向けの資料作成、ガバナンスチェックなど「内製」をテーマとした手触り感のある経験が積めたのは貴重でした。新しい技術を取り入れるには、スピード感を持って動くことが求められます。オリックスグループという大きな舞台で、市場価値の高い技術を身につけていくのは、エンジニアとしてのスキルアップになります。また、自社開発だからこそユーザーとワンチームになって取り組むことができ、集中して開発に取り組めました。

A.A 2021年のプロジェクトスタート時点から、すでに在宅勤務を基本とした組織体制になっていたので、オンライン環境下でのメンバー育成に関する指針を得ることが大きな成果でした。ミーティングの余った時間やチャットなどで雑談をしたり、新しいメンバーが増えたらカメラをオンにしてコミュニケーションを取ったりと、試行錯誤を重ねました。結果、リリース2週間前に私が体調を崩し休んでしまったものの、チームは円滑に運営され、遅延なくサービスイン。S.Nさんをはじめ、非常に頼もしいチームになりました。

S.N 今後は、さらに広い視野と知見、高い技術力を身につけて、活動の幅を広げていきたいと考えています。オリックスグループ各社が持つカルチャーはすべて毛色が異なるため、プロジェクトごとに新しい刺激を受けますし、一度は不採用になった技術を、別会社のシステムでリトライできることもあります。そうして知識に深みを出すことで、自分の中に勘所ができ、いろいろな方と協業しやすくなると思っています。

A.A 私は後進のための”道しるべ“になりたいと考えています。まだまだ世の中のシステムに対するニーズは抽象的です。それを後輩エンジニアが歩きやすいようしっかり道として切り開き、チャンスは若手に渡していきたいです。同時に、年齢を重ねても自分の成長の機会が無くならないよう、50代・60代のエンジニアのスペシャリストとして、モデルケースになれたらいいなと思っています。