応募の傾向【働くパパママ川柳】


2017年にスタートし、毎年開催している「オリックス 働くパパママ川柳」。過去の受賞作品には、その時々の流行や社会的なできごとが色濃く反映されています。子育てとジェンダーの関係を専門に研究している大阪公立大学特任准教授の巽 真理子先生のコメントとともに、時流を反映した受賞作品の振り返りと、応募者層の分析をご紹介します。
時流を反映した
受賞作品の振り返り
2017年~2019年 「オリックス 働くパパママ川柳」
スタート!
「オリックス 働くパパママ川柳」がスタートした2017年は、「育児・介護休業法」が改正されるなど、仕事と子育ての両立に向けて国が本格的に支援に乗り出したタイミング。人口減少社会において、「就労」と「結婚・出産・子育て」の二者択一の構造を解消することが必要とされ、まずは働くママの労働環境を整えることが課題とされた時代でした。そうした中で、仕事と子育てに孤軍奮闘するママのがんばりを描写した句が多数寄せられました。


2020年~2022年 新型コロナウイルス感染症が流行し、
子育てと働き方が大きく変化
新型コロナウイルス感染症の流行が始まった2020年に行われた第4回以降、コロナ禍で需要が増えた「テレワーク」「リモート」「マスク」といった言葉を使った句が増加。また、テレワークの普及によりパパが家庭で過ごす時間が増え、男性の育児参加の機運が高まるとともに、働き方の変化に戸惑いながらも子育てに奮闘するパパの葛藤を表現した句が多数寄せられました。2022年に行われた第6回では、一般の方々からの投票で決定する「みんなで選ぶ共感賞」を発表し、36歳男性が「自身の子育てへの自戒の念を込めてよんだ」という1句が共感を集めました。


2023年~2024年 新たな働き方が定着し、
子育てのスタイルも多様化
新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行し、社会が活気を取り戻した2023年。コロナ禍で生まれた新たな働き方が日常生活に定着し、コロナ禍が明けても、自然に夫婦で協力し合いながら子育てに取り組む様子を描写した句が増加しました。ママが孤軍奮闘する様子を表現した句も引き続き寄せられる一方で、パパが主体的に育児に取り組む様子を表現した句、男性育休をテーマとした句、定年退職後に子育てを通して社会に参画する祖父母世代の句など、多様な視点から子育てを描写した句が寄せられています。


応募者層の分析
第8回は6万14作品をご応募いただき、2年連続で応募総数が6万作品を上回りました。世代別にみると、20代・30代・40代からの応募が過去最多となり、子育て世代のリアルな悩みや喜びを生き生きと描写した句を多数お寄せいただきました。また、男性からの応募も過去最多となり、男性の育児を「特別なこと」としてではなく、「日常の一コマ」としてよんだ句が多く寄せられたことも特徴です。


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大阪公立大学特任准教授
巽 真理子 先生 コメント
※掲載情報は、すべて取材当時のものです。
「子育ては楽しい」ということばかりが強調されがちですが、「オリックス 働くパパママ川柳」には子育ての現場の声がリアルに反映されていると感じました。コロナ禍の影響によるテレワークの日常化、男性の育児への参加、子育てと仕事の両立など、その時代に注目を集めたトピックスとともにパパママの奮闘が表れています。
子育てが大変な時期に、このような川柳を作ったり、見たりすることで、状況を客観的かつユーモラスに考えられるようになり、気持ちも楽になります。また、パパママだけではなく子ども目線やじぃじばぁば目線など、多様な視点で子育てを捉えた句があることも注目すべきポイントです。親が家事や育児を背負い込むのではなく、祖父母、保育園や幼稚園、学校、職場など社会全体で役割を分け合えば、子どもの居場所を増やすことにもつながります。
日本では働くことがまず先にあり、余った時間でどうやって子育てをするか考えるのが一般的ですが、ヨーロッパでは、自分の暮らしの中にある大事なものを守るためにどう働くかと発想します。子育てが社会に欠かせないものであることを、日本でもきちんと根付かせていく必要があると思います。それぞれの人にとって大切なものを守るための時間を確保できる働き方を企業も模索し、働く側も、自分を大切にしてくれる企業を選ぶという価値観を大事にしていきたいですね。
【プロフィール】巽真理子(たつみ・まりこ)/大阪公立大学ダイバーシティ研究環境研究所 特任准教授。神戸大学文学部(社会学専攻)卒業後、ケーブルテレビ局勤務後、専業主婦としてさまざまな市民活動に参加。2008年、子育てとジェンダーの問題を研究するため、大阪府立大学大学院人間社会学研究科に入学。2015年より、同大ダイバーシティ研究環境研究所 コーディネーターを経て、現職。保育士などの資格も持つ。著書に『イクメンじゃない「父親の子育て」』(晃洋書房)。
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