働くパパママ川柳の10年が映す 日本の働き方・価値観の大転換

『オリックス 働くパパママ川柳』10周年トークイベント

働くパパママ川柳の10年が映す 日本の働き方・価値観の大転換

2026-08-31
[Publisher] 朝日新聞のデジタル版より転載
※掲載情報は、すべて取材当時のものです。

左から、ジャーナリスト 浜田敬子さん、オリックス株式会社 若菜亮さん、リベラグループ株式会社 濱田章裕さん、株式会社ドウシシャ 青木響さん

『オリックス 働くパパママ川柳』は、「仕事」と「子育て」をテーマにした公募川柳で、2017年の募集開始から今年で第10回を迎えました。

10周年を記念したトークイベントが大阪市のグラングリーン大阪「JAM BASE」で開催され、主催社のオリックス株式会社グループ人事部部長の若菜亮さんと協賛社の株式会社ドウシシャ第2広報部の青木響さん、リベラグループ株式会社農業事業本部本部長の濱田章裕さん、第1回から審査を担当するジャーナリストの浜田敬子さんが登壇し、川柳を通して見えてくる働き方や価値観の変化について語り合いました。

※JAM BASE:オリックスグループが開発事業者の1社として参画するグラングリーン大阪にあるイノベーション創出拠点。

すべての人が生き生きと
働き続けられる社会のために

──『オリックス 働くパパママ川柳』を実施している理由について教えてください。

若菜:オリックスでは、男女雇用機会均等法が施行される前から積極的に女性の総合職の採用に取り組むなど、多様な人材の活躍を重要視してきました。そうした背景のもと、すべての人が生き生きと働き続けられる社会づくりに貢献していきたいという思いから実施してきました。

──協賛いただいたドウシシャ様、リベラグループ様の会社紹介をお願いします。

青木:ドウシシャでは「あっ、ここにもドウシシャ!」をコンセプトに衣食住に関わるさまざまな商品を展開しています。第10回の賞品として提供させていただいた「evercook」というフライパンも人気商品です。メーカーでありながら商社の機能も持つ会社です。

濱田:リベラグループは外航および内航海運業を主業とし、その他フェリー・物流事業、不動産事業など多角的に展開しています。2008年からは新規事業として農業事業を展開しており、今回の賞品として提供させていただいたオリーブオイルなども作っています。

──本イベントでは、働くパパママを取り巻く環境の変化についてお話しいただきますが、まずは皆さんの仕事と子育てにまつわるご経験についてお聞かせください。

青木:入社してからの20年ほどで、長時間労働が当たり前だった過去から、現在は男性の育休取得が推進されるなど、働き方は大きく変化したと実感しています。私も現在父親として、子どものお迎えのために定時退社することもありますが、職場にはそれを当たり前として受け入れる雰囲気があり、子育てに対する周囲の理解やサポートをありがたく感じています。

濱田:25歳から約30年間、家族の温かい支えによって大変だった共働きでの子育てを乗り切ることができたと感謝しています。当時の苦労も、子どもが成長した今となってはかけがえのない思い出です。

この10年で大きく変化した
「パパの育児参加」

──『働くパパママ川柳』は、働く世代の子育てへの向き合い方を映し出す「時代の鏡」のような存在です。この10年で子育てを取り巻く環境は大きく変わりました。「パパの育児参加」や「社会の壁」「テクノロジー」「働き方」「夫婦関係」などの切り口で世の中の変化が言語化される川柳には社会的意義も感じます。第1回から選考に参加されている浜田さんはどのような変化を感じていますか。

川柳が映す世相について解説するジャーナリストの浜田敬子さん

浜田:この10年の一番の変化は、パパの変化だと思います。「パパの育児参加」という観点から見ると、こちらの2つの川柳はその変化を色濃く反映しています。

「育休を とれば不倫を 疑われ」
56歳・男性(2017年)


「育休は 『取るの?』じゃなくて 『取らないの?』」
29歳・女性(2025年)

浜田:2017年当時、育休を取ることがいかに珍しかったかということ、また、8年間で育休に対する社会の認識が大きく変化したことが伺えますよね。

オリックス株式会社 グループ人事部部長 若菜亮さん

若菜:オリックスでは、2026年3月期の男性育休取得率は98.4%でした。新入社員に「育休を取りますか」と聞くとほぼ全員が「取得します」と答えますし、育休を取ることが当たり前になっていると実感しています。研修の際などにも、男性の育休取得は今後の夫婦双方のキャリアにとってもプラスになることを伝えています。

※オリックス株式会社の2026年3月期における男性の育児休職および育児特別休暇取得率

過去の分析レポートから読み解く
3つの進化フェーズとは

──ここからは過去9回の分析レポートから具体的にどのような変化が読み取れるのか、3つの進化フェーズに沿ってひもといていきます。浜田さん、解説をお願いします。

浜田:2017年~2018年には、下記の句が象徴するように、保育園への入園ハードルが高く、「待機育児」や「ワンオペ育児」といった働きながらの子育てに関する課題が浮き彫りになりました。

「カバンには パソコンスマホ 紙おむつ」
42歳・女性(2017年)


「目の前に あるのに遠い 保育園」
40歳・女性(2017年)


「公園は ライバルばかり 保活中」
35歳・女性(2018年)

浜田:この時期は、女性に偏りがちな育児負担への疑問が顕在化した「負担の気づき期」だったと思います。

若菜:私も上の子が幼稚園に入るのがまさにこの時期で、前日の夕方から徹夜で並んだことを思い出します。保育園に入れるかどうかで本人のキャリアにも影響が生じることがあるので、社員一人一人の状況に合わせて、希望するキャリアに寄り添える体制が必要だと感じています。

浜田:続いては2020年からの新型コロナウイルス感染症の流行により、「テレワーク」や「フードデリバリーサービス」などの新たな生活様式が急速に浸透し、家事・育児の分担の見直しが進んだ「家庭内シェア再構築期」と言える時期の句です。

「イクメンは 名もなき家事が できてから」
36歳・女性(2020年)


「聖火より 我が家は育児 リレーをし」
48歳・男性(2021年)


「手は出さず 口出す夫 うっせぇわ」
36歳・男性(2022年)

株式会社ドウシシャ 第2広報部 青木響さん

青木:コロナ禍は、社会的にも大変で大きな変化でしたが、あの時のリモートワークを機に家事や育児に深く関われたことで、今の共働きにおけるお互いの理解につながっていると感じています。

浜田:次のフェーズは「パパ育休」への注目が高まり、厚生労働省の雇用均等基本調査によると取得率は2017年度の5.14%から2024年度には40.5%まで上昇するなど社会全体として変化を感じられるようになった「チーム育児期」です。

「パパ育休 リスキリングは 家事スキル」
30歳・男性(2023年)


「家事仕事 二刀流だし 二倍速」
42歳・男性(2023年)

浜田:上記のような句からは、取得率を上げること自体が目的化した消極的な育休取得の時代とは異なり、主体的に子育てを楽しむパパの姿が感じられます。

リベラグループ株式会社 農業事業本部本部長 濱田章裕さん

濱田:昔とは異なり、男性の意識の変化や企業の支援が進んだことで、父親が積極的に育児に参加し、楽しめるようになったと感じます。私は家事や育児を妻に頼りきりでしたが、孫育てには積極的に関わり、できる限りサポートしたいと思っています。

浜田:「ママへの負担の偏り」への気づきを経て、現在はパパママ・祖父母世代、地域の人々などがチームを組んで育児に向き合うスタイルが広がりつつあることが川柳を通しても見て取れます。

「協賛社特別賞」を振り返って

──第10回「働くパパママ川柳」では、ドウシシャ様とリベラグループ様に「協賛社特別賞」をそれぞれ選定していただきました。選定理由とともにご紹介いただけますか。

選定した川柳について解説する青木さん(右から3人目)

「背中見て 育つ我が子に 背筋伸び」
57歳・女性

青木:「子は親の背中を見て育つ」とよく言われますが、子どもが見ていると思うと、親自身も自然と背筋が伸びる様子が描かれていて、自分自身の経験も重なり、共感しました。子育ての中で親もまた子どもに育てられているという気づきを与えてくれる、温かくて前向きな句だと感じて選ばせていただきました。

選定した川柳について解説する濱田さん(右から2人目)

「ヘイGemini 兄妹げんかを 止めてみて」
36歳・男性

濱田:仕事に欠かせなくなったAIですが、一方でその限界を風刺しているような点が秀逸だと感じました。実際の風景を思い浮かべて、思わず笑みがこぼれるような共感性の高い一句だと思います。

──ドウシシャ様、リベラグループ様ではユニークなDE&I(多様性、公平性、包括性)施策を行っているそうですね。それぞれ教えていただけますか。

青木:ドウシシャでは「休みやすく、復帰しやすい組織づくり」を目指しています。もともと事業部ごとに縦割りだった営業事務を「セールスサポートセンター」として1カ所に集約し、全部門を横断的に補佐する体制へと変更しました。発足当初は反発もありましたが、現在は毎年社内表彰されるほど頼られる組織として定着し、産休・育休はもちろん、日常的な休みも取りやすくなっています。

浜田:育休取得率があがっている中で、多くの企業において人手不足や、独身・子どものいない社員への負担偏重などが課題となっているので、そこを解決できる体制構築ということで面白いですね。

濱田:リベラグループでは、全社員を対象に個々の性格や行動タイプを明文化して相互理解を深める「DiSC研修」を導入しています。その結果、社内共通言語が増え、お互いの性格や行動タイプを踏まえてコミュニケーションを取ることで、すれ違いや摩擦が減り、組織運営がスムーズになりました。

浜田:例えば、復職した社員とのコミュニケーションが不足していると、上司からの過剰な配慮により本人の意に反した働き方になってしまうこともありますが、フラットな関係で腹を割って話せる環境の構築につながるDiSC研修は、こうした認識の齟齬を解決する一つの手助けになるのではないでしょうか。どちらもとてもユニークな取り組みですね。ニーズを捉え、社員に寄り添った施策を推進することで、企業の成長や事業運営にもプラスになっているのだと思います。

働きやすさのために企業は何を目指すべきか

──それでは最後に皆さまに伺います。今後、企業のDE&Iはどのようなことを実現していくべきでしょうか。

オリックスグループの取り組みについて話す若菜さん(右)

青木:当社には、近江商人の「三方よし」(売り手よし、買い手よし、世間よし)に、働き手(会社・社員・家族)よしを加えた「四方よし」という独自の行動規範があります。この「働き手よし」を起点に、一人一人の違いを尊重し、その違いをドウシシャらしいロマンある商品やサービスの提供につなげて社会に貢献できたらと考えています。

濱田:会社が一方的に制度を作るのではなく、双方向であることが大切です。会社と社員が真剣に議論を重ね、信頼を築くことが一つの突破口になるはずです。社員一人一人が違うということを前提にさまざまな施策を打っていけたらと考えています。

若菜:DE&Iをさらに進めていくためには、例えば新しく入社した社員を含め、一人一人の状況に応じた施策や育成体制を整えていくことが必要になると考えています。

浜田:それぞれの考え方、目指すものが実現していくと、また働き方に新たな可能性も生まれてくると思います。働く世代が生き生きと活躍できる社会を実現できたら素敵ですね。

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