社外取締役対談

新たな経営体制のもと
中長期の価値創造に向けて
次の成長ステージへ
渡辺 博史(写真左):指名委員、監査委員
1972年大蔵省(現財務省)に入省。国際局長、財務官を経て2007年に退官。以降、一橋大学大学院商学研究科(現一橋大学大学院経営管理研究科)教授、国際協力銀行代表取締役総裁、国際通貨研究所理事長などを歴任。2020年6月から当社取締役。
関 美和(写真右):指名委員、監査委員
1988年電通入社。スミス・バーニー、モルガン・スタンレーを経て、2003年クレイ・フィンレイ投資顧問東京支店長に就任。以降、MPower Partners Fundゼネラル・パートナーのほか、大和ハウス工業社外取締役などを務める。2025年6月から当社取締役。
バランスのとれた意思決定プロセスを評価
渡辺 今年1月、髙橋英丈社長がCEOに就任し、新たな経営体制が本格的にスタートしました。これまでの当社は、経営トップの求心力のもとで組織が動いていた面があったと思いますが、髙橋新CEOには、社内の多様な意見をまとめながら意思決定をしていくという志向を感じます。取締役会に関しても「議論の場」としての性格をより強めるため、グループ全体の経営戦略や目指す方向性を中心に活発な議論をしていこうという方針が打ち出されています。
関 昨年6月から社外取締役を務めていますが、おっしゃるように髙橋CEOはチームでの意思決定を大切にするタイプのリーダーという印象ですね。その一方で、この1年間には、銀行事業の売却やアセットマネジメントビジネスへのシフト、事業セグメントの再編、CxO制の導入など、大胆な戦略・施策を矢継ぎ早に打ち出されてきた。大きな方向性を決めた上で、各部門の意見に耳を傾けながらプランを具体化していくプロセスを見ると「自立性」と「スピード」と「規律」のバランスがよく保たれていると感じます。
事業ポートフォリオ改革に見る進化への意志
渡辺 この1年間、髙橋CEOが進めてきたのは、時代の流れの中でどんどん拡大してきた事業領域を持続的な成長に向けて整理・最適化する作業だと思います。投資銀行出身の山田氏をCFOに招聘したのも、これから資本を大きく動かすビジネスを本格的に進めるには財務戦略を全社横断的に見る専任者が必要、との判断に基づくものでしょう。事業ポートフォリオに関しても10分野に広がった事業セグメントを集約し、主要3セグメント(APAC、インフラ、欧米)にはそれぞれCOOを配置。「現状を変えていくんだ」というトップの意思が明確に伝わる改革になっていると思います。
関 オリックスという企業は、非常に多様なビジネスを展開していて、一般投資家などにはなかなか分かりにくい面がありましたが、今回の事業再編は、形式論ではなく事業の中身を見て、関連性の高いものを同一の枠組みで整理したので、外部からも分かりやすくなったのではないかと思います。ただ、再統合された主要セグメントはそれぞれを統括するCOO、つまり「人」にひも付いている面が大きいとも感じていて、「人」が変わったときにどうなるのかというリスクも潜んでいる気がします。
渡辺 確かに現状の体制は、各セグメントを率いる優秀なCOOの存在を前提としていますね。各分野を持続的に成長させていくには、次代を担う若手リーダーの育成も重要です。CEOも含め5年先、10年先を見据えた次世代の経営層の育成を進めるべきと、私も数年前から言い続けています。世界レベルからいえば35歳くらいから次世代リーダーの選抜・育成を始めるべきです。それによって若手のモチベーションもより高まっていくと思います。
新たな成長モデルに強みの「現場力」を活かす
関 これまで培ってきた強みが、これからの成長にどのようにつながるのかということがとても重要だと感じています。
渡辺 長期ビジョン2035の実現に向けて発表した2つのビジネスモデル、「事業価値創造モデル」と「顧客課題解決モデル」には、オリックスの目指す方向感がよく示されています。持続的成長には自社が「やりたいこと、できること」と社会から「求められること」の両者をうまくつなげることが重要です。市場や顧客の要求に応えることはもちろん大切ですが、新たな価値創造には「自分たちはこうなりたい!」という志も不可欠です。「オリックスがこれをやらねば」と思うのなら、市場や顧客の評価を確かめつつ、突き進んで良いと私は思っています。

関 オリックスの場合、この2つのビジネスモデルは並行して進められると思います。当社の大きな強みは顧客と深くつながる「現場力」です。全国に支店があり営業担当者がいて、どこにどんな顧客が存在し、どういう課題を抱えているかを熟知している。かつ顧客に密着して多様な課題を解決してきた蓄積がある。これは海外のPEファームにはない大きな競争優位性です。この強みを新分野の創出にも活かせれば、2つのビジネスモデルが相乗効果を発揮して大きな価値創造につながっていくと期待します。2026年5月に実施した「重要課題の見直し」も、この2つのビジネスモデルに沿った成長に資する重要課題を明確化するという意図を感じました。
渡辺 以前の「重要課題」は、どちらかというと「社会から求められる義務」のような感じで、GHGの削減目標など各項目の具体的目標まで細かく提示していましたが、更新された重要課題では「こういう方向をめざします」と大きく6項目にまとめ直されました。良い改革だと思います。新しい重要課題によって社員たちも「この課題に対して自分に何ができるか?」を考えやすくなったと思います。
「ROE15% & 純利益1兆円」への挑戦に注目
渡辺 長期ビジョンの経営指標に掲げた「ROE15%」「純利益1兆円」は、いずれも相当に高い目標です。しかも利益とROEは必ずしも同じ方向に動きません。どこに力点を置くのか、今後1、2年かけてプロジェクトごとに資本分配も含めて明確にしていくことで、各セグメントの位置付けや具体的な戦略も見えてくると思います。楽観はしていませんが、目標は高い方がいい。経営として力強く「目指すべき将来」を打ち出したことを評価したいと思います。
関 先日、社内のグローバル経営会議に参加しましたが、「ROE15%と純利益1兆円の両立は、ダイエットをしながら筋肉を3、4倍に増やすようなもの」という指摘がありましたが、まさにその通りだと思います。資本効率向上には事業ポートフォリオの最適化とバランスシートの整理が必要ですが、それだけではただのダイエットで、筋肉増強には既存ポートフォリオの延長線上にない高効率の新規事業を大きな規模で成功させる必要があります。もちろんアセットマネジメントはその一つですが、他にも例えばAI関連のインフラや、新エネルギーあるいはロジスティクス分野への投資など、まだまだ多くの可能性を拓くことができると思います。
渡辺 社会インフラという観点でいえば、推進中の「大阪IRプロジェクト」も、中長期視点で社会に貢献すると同時に、オリックスの社会的存在感を高めるという意味でも重要度の高い事業だと思います。資金計画も含めて当社史上最大級のプロジェクトですが、上手くやり遂げられれば当社の今後の発展にとって非常に大きな実績になるはずです。
アセットマネジメント型ビジネスを契機にさらなる進化を期待
渡辺 オリックスが進化を続けるには、グループ全体の組織風土の変革も重要な鍵だと思います。経営上層部が作ったプランに従って下が動くだけではなく、現場の若手の意見吸い上げも含め「社員全員で会社を変えていく」という意識を醸成してほしいですね。
関 その意味でアセットマネジメント型ビジネスへのシフトは大きな契機になるのではと思います。外部から優秀な人材の採用も当然必要ですが、当社がDNAとして培ってきた「暗黙知」、独自の事業ノウハウやチームでの意思決定の仕方などを言語化し、世代を超えて共有していくことも重要です。それによって事業プロセスの再現性も担保されるはずです。

渡辺 組織風土を変えるという観点でいえば、たとえば入社後10年ぐらいの間に複数のコア事業を経験させるなど、全社横断的な視点を備えた次世代リーダーへの潜在力を引き出す体制整備も必要だと思います。また今後の海外展開を見据えると、グローバル人材の確保・育成も大きな課題です。髙橋CEOは海外経験も長く多彩な人的ネットワークを持っていますが、各部門にも海外と日常的に接点を持つ人材は多くいます。そうした人々が経営層と一体になり、交渉相手のカウンターパートやライバル企業も視野に入れ、優秀人材を呼び込む活動を全社で進めてほしい。最終的に適材適所を判断できるのはやはり現場の人間ですから。
関 アセットマネジメント型ビジネスとは、要するに「預かった資産にバリューを付加する」ビジネスで、本質的にはオリックスが手がけてきた事業投資と変わりません。当社の各部門には多様な事業投資を通じて「目利き力」を磨いた経験者が大勢います。グローバルPEにはない現場目線の強みを外部のプロフェッショナルの知見・スキルと上手く融合させることで、オリックス独自のビジネスの創造ができると期待しています。
渡辺 掲げた目標はアスピレーショナルですが、オリックスが、今しっかりとした方向感を持ってグループ全体で大きく変わろうと動き出していることは間違いありません。社外取締役として、今後もこの大胆なチャレンジをバックアップしていきます。