COOメッセージ

COOメッセージ

「事業価値創造」と「顧客課題解決」を通じて社会にインパクトをもたらします。

変わり続ける現場が、視野を広げてきた

 本年1月に代表執行役社長・グループCOOに就任しました髙橋 英丈でございます。1993年に入社してからの32年間、まず地方と首都圏の法人営業でキャリアをスタートし、不動産投資・ファイナンスやプライベート・エクイティ投資といった投資銀行業務に携わり、今は完全子会社である株式会社大京に出向して経営管理や事業再建の経験を積みました。その後、2024年末までは環境エネルギーセグメントで主に再生可能エネルギー事業の開発・投資・運営を手がけ、うち2年間は英国に駐在しました。2020年1月から執行役として、また2024年6月から取締役としてオリックスの経営に参画しました。今般、COOとしてあらためて皆さまにごあいさつ申し上げます。
 入社した1993年は、直前まで”Japan as No.1”と謳われたバブル経済が崩壊し、その後の10数年間は金融機関の破綻、また合併や再編が相次ぎ日本経済も長期低迷しました。一方、オリックスにとっては、銀行・生命保険の子会社化、不動産・事業再生投資、投資銀行業務の拡充といった「隣へ、そのまた隣へ」の多角化を進めながら、リース事業を起点とした「金融」から「事業・投資」の軸足を確立した時期であり、若手だった私は、営業に新規事業に日々奔走する充実した期間を過ごしました。2008年以降の数年はグローバル金融危機の影響を受け、オリックスは資金調達という課題に直面しました。資産売却、負債圧縮、資本政策などを総動員して危機を乗り越えましたが、私にとっては事業成長局面から一転して、財務や事業の急速な緊縮化に直面し、社会や経済に対する責任の重さを実感した時期でもありました。そして2011年から14年にわたり、環境エネルギーという創造的な領域をグローバルに展開する部門責任者として、事業の成長に取り組みました。

長期ビジョンの達成に向けて事業モデルを変えていく

 こうした経験を踏まえ、取締役に就任して以降、他の経営陣とともに2026年3月期からの中期経営計画の策定に臨みました。設立から60年間、良い時も悪い時も経験しながら成長してきた当社グループですが、現在は大きな転換点にあると考えました。特に約17兆円の総資産と約6兆円の有利子負債を増加させ続けながら事業規模を拡大するだけでは持続性はありません。むしろ、蓄積してきた約4兆円の株主資本の収益性を高める方針に変えていく必要を感じていました。オリックスの事業や投資の機会は非常に豊富で、常に約2兆円のパイプラインがありますが、ROEは伸び悩み、国際信用格付の維持にも工夫が必要な状況にあることを再認識した次第です。
 このような認識のもと策定した2028年3月期までの3か年計画は、「ROE11%以上」と「信用格付A格維持」を重要指標としました。ROE目標は、瞬間風速ではなく持続的に達成できる体質に転換することを意味します。具体的には、持続性が高い収益を生む事業を伸ばし、資本収益性が低い事業や資産はキャピタルリサイクリングにより回転を早めるポートフォリオ管理に集中し、信用格付の維持に配慮しつつ機動的な株主還元施策を実施して、資本水準を早期に適正化していくこと、そのためには、経営判断のスピードをさらに上げていくことが求められます。
 今後3か年の中期経営計画は、取締役会における討議を踏まえて、オリックスグループの長期的なビジョン実現へのマイルストーンと位置づけています。私の責務はオリックスグループが、将来に向けて持続的に企業価値を向上させていくことです。その実現に向けた長期ビジョンとして「『事業価値創造』と『顧客課題解決』を通じて、社会にインパクトをもたらす」ことを掲げ、また、2035年3月期までに「ROE15%、当期純利益1兆円」を財務目標とすることを、5月の決算発表や6月の株主総会の場でも公表いたしました。2025年3月期の実績ROE8.8%、当期純利益3,516億円を発射台とするとチャレンジングな目標ですが、その実現を目指して「ORIX Group Growth Strategy 2035」を制定しました。

世の中に価値を生み出し続けていくためのグループ戦略

 この成長戦略は、今後のオリックスグループの事業領域やビジネスモデルの範囲を限定するものではなく、2023年に策定した「ORIX Group Purpose & Culture」の実践を通じ、オリックスグループの強みである2つのビジネスモデルによって、社会の潮流でもある3つの戦略的投資領域『PATHWAYS』『GROWTH』『IMPACT』において、お客さまと社会に事業を通じた解決策をご提供していく方針を明確にするものです。

ORIX Group Growth Strategy 2035

『PATHWAYS』
 未来志向で新たな成長産業にフォーカスします。急拡大する情報化社会に対応するインフラ構築に資する企業および技術への投資、新しいテクノロジーを活用した、革新的なビジネスの創出に関連するAIインフラ事業や、DX・BPaaS、新たなモビリティサービス事業などが領域例です。
※ BPaaS:業務の効率化やコスト削減、人材不足の解消を目的に、特定の業務プロセスを外部の企業に委託するクラウドサービス。

『GROWTH』
 世界的に人口が増加し、金融資産も増えていく中で、新たな戦略的投資領域の獲得を目指しています。具体的には、オルタナティブ投資、ホスピタリティ&エンターテインメント、アジア・太平洋地域における投資・ファイナンス、ウェルスマネジメント事業などです。

『IMPACT』
 脱炭素社会や循環型経済の実現に貢献するため、再生可能エネルギー、新エネルギー、環境負荷低減型事業、サーキュラーエコノミーといった分野に注力し、「柔軟な発想」と「知の融合」を生かして、持続可能な成長サイクルの創出を目指します。

 例えば、『PATHWAYS』の一環としてオリックスではデータセンター事業も検討しています。不動産事業や環境エネルギー事業、ICT機器レンタル事業で培った知見や経験を活かせる領域です。こういった領域で新しい事業に次々と取り組んでいきたいと考えています。失敗を恐れず、将来は独立したセグメントを構成するような規模にまで事業を育てることに挑戦していきます。

強みである2つのビジネスモデルを進化させる

 これら3つの戦略的投資領域での成長には、オリックスの競争力の源泉である2つのビジネスモデルの活用が不可欠です。その1つ目は、「事業価値創造モデル -Alternative Investment & Operations」です。

事業価値創造モデル

 オリックスが自ら投資して管理・運営してきた資産を、第三者資金によってファンド化しつつ、引き続きその資産を管理・運営することで、資産価値向上とフィー収益獲得の両方を実現するモデルです。オリックスの営業資産の多くは、リース、レンタル、企業向け貸付、プライベート・エクイティ、不動産、航空機、船舶、再生可能エネルギーなどの金融資産や現物資産でいわゆるオルタナティブ資産に該当します。オリックスがリースを出発点に培ってきた「金融」と「モノ」に対する専門性は、今ではバリューアップモデルとして根づき、案件の創出、投融資の目利き、投融資後の価値向上、モニタリング、売却・継続保有判断、という一連のサイクルとして定着しています。今後は第三者の資金も活用し、フィー収益の拡大により持続性ある収益を積み上げる狙いです。全セグメントにおいて、広い意味でのアセットマネジメント事業を展開・強化していきたいと考えています。

 2つ目のビジネスモデルは、「顧客課題解決モデル -Business Solutions」です。

顧客課題解決モデル

 お客さまの課題に向き合い、オリックスグループ内外の人・情報・テクノロジーを活用して解決策を提供することで付加価値を創造するモデルです。オリックスは設立以来、お客さまのニーズに応える形で「隣へ、そのまた隣へ」と事業を多角化してきました。顧客ニーズに応えるために新しい専門性を身につけ、新しい市場を開拓してきたとも言えます。これまでの「遠心力」による拡大に加え、今後はセグメントや地域を超えた「求心力」による協働をより強化し、シナジーを追求することで新たなビジネス機会を創出し、グループ全体としてお客さまへの付加価値提供を高めていきます。

3つの重点施策で経営基盤を強化する

 これらのビジネスモデルを実践すると同時に、経営基盤にかかる3つの施策にも取り組みます。
 第一に、「ポートフォリオの最適化」は、ROE向上のため、事業や資産単位、投資案件ごとに、成長性、資本効率性、信用格付影響を定量化・可視化して、最適な資本配分を実現するポートフォリオへ再構築していきます。
 第二に、「リスクマネジメントの高度化」は、これまでCEO主導による取り組みにより、経営情報基盤としてリスク情報をダッシュボード化し、すべての役員がERM情報を随時把握できるデータベースが整っています。今後もリスク管理の高度化を継続し、定量化されたデータに基づき、迅速かつ的確な意思決定に活用していき、同時に属人化を排除していきます。
※ ERM:エンタープライズ・リスク・マネジメント(Enterprise Risk Management)の略で、企業全体のリスクを組織全体で包括的かつ戦略的に管理する手法。
 第三に「新規事業の創造」に重点を置くのは、競争環境を生き残る上で当然のことであり、オリックスの歴史そのものでもあります。持続的な成長を遂げ、純利益の目標1兆円を実現するために今後も新規事業創造に注力して参ります。今後より多く創造的なチャンスに挑めるよう、前述の「事業価値創造モデル-Alternative Investment & Operations」戦略に則って自己勘定中心から第三者資本活用に広げて、アセットマネジメントの受託資産残高(AUM)の内容も現状の上場株式・債券などパブリック・アセット中心の74兆円から、オルタナティブやリアルアセットを中心に100兆円まで早期に伸ばすことで、フィービジネスという収益体質を強化していくことも勿論、含まれます。

トップダウンでワクワクする仕事をつくり出していく

髙橋 英丈

 パーパスの実践、長期ビジョンの実現、中期計画の達成のために、もっとも重要なのは言うまでもなく人材です。社員のモチベーション向上と成長支援、また、外部人材の獲得力強化のため、常にワクワクする仕事、働きやすい職場環境、市場に見合った処遇を意識し続けています。私自身の国内外での経験は糧となっており、グローバルな競争力を持つ人材こそが、グループ全体の持続的成長への鍵と信じています。
 COOに就任以来、グループ役職員に3つのメッセージを繰り返し伝えています。
 1つめは「協業の推進」です。セグメントや地域の間にまだ手掛けられていない事業機会は多くあり、垣根を越えて協業する機会を通じて新たな価値を生み出すことを期待しています。
 2つめは「ビジネスモデルの深化と進化」です。「深化」は専門性を高めること、「進化」はビジネスを成長や、新しいステージへの展開を意味し、それらの両立を通じて事業価値を高めてほしいと考えています。
 3つめは、「グローバル人材になること」です。グローバルに協業する場では、共通の言語やコミュニケーションという土台と文化への理解が必要です。私自身、海外事業を通じて体験したさまざまな出来事や多くの人脈は、貴重な資本になっています。

 COOに就任してから7ヶ月が過ぎました。責任の重さを実感する日々ですが、覚悟をもってこの任に当たり、オリックスの未来を創っていきたいと考えております。株主はじめとするステークホルダーのみなさまにおかれましては、今後とも変わらぬご支援を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

2025年8月
取締役 兼 代表執行役社長・グループCOO

髙橋 英丈の署名

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