CEOメッセージ

CEOメッセージ
グループCEOとして初めてメッセージをお届けする本統合報告書では、オリックスが持続的な利益成長と資本効率の向上をどのように両立し、企業価値を高めていくのかを、私自身の言葉でお伝えします。
当社は、2023年11月、設立60周年を迎える節目に、ORIX Group Purpose & Cultureを制定しました。当社グループの存在意義を「変化に挑み、柔軟な発想と知の融合で、未来をひらくインパクトを。」、また、大切にしたい価値観を「多様性を力に変える。」「挑戦をおもしろがる。」「変化にチャンスを見出す。」としました。経営トップとして、全グループ役職員とこの価値観を共有し、パーパスの実現を企業価値向上につなげるべく、オリックスをリードしてまいります。
2025年1月に社長兼グループCOOに就任後、2035年に向けた長期ビジョン並びにORIX Group Growth Strategy 2035を策定し、公表しました。2026年3月期は、事業ポートフォリオの最適化などの施策に着手し、実行フェーズへ移行した1年でした。長期ビジョンの実現には、事業ポートフォリオと資本配分の最適化、経営の実行力強化を同時に進めることが不可欠です。私はこれらを一過性の施策に終わらせず、持続的に企業価値を高める経営の仕組みとして根付かせていきます。
そのために、グループCEO就任以降、組織再編、CxO体制の導入、ビジネスモデル変革を進めています。私たちを取り巻く環境は大きく変化しています。地政学リスクの常態化、インフレや金利環境の変化、テクノロジーの進化、エネルギー転換などにより、事業機会とリスクの両方がこれまで以上のスピードで生まれています。このような環境下では、変化を待つのではなく、自ら変化を捉え、迅速に意思決定し、実行することが求められます。私は、長期ビジョンの実現に向けて、環境変化を成長機会へ転換できる経営体制へと、着実に移行を進めています。
CxO体制への移行とその狙い
オリックスは、事業領域も地域も大きく広がり、多様な専門性と現場知を備えたグローバルな企業グループへと成長してきました。この規模と複雑性を前向きな力に変えていくためには、CEO一人がすべてを把握し判断する経営から、経営陣がそれぞれの専門性を発揮し、グループ全体の視点で意思決定する経営へと進化する必要があります。
狙いは明確です。経営資源を収益性と成長性の高い領域へ配分し、事業に近い場所で迅速に意思決定する。同時に、財務規律、リスク管理、グループ横断の統制を強化する。これにより、成長スピードと経営規律を両立できる体制を目指します。投資家の皆さまが重視されるのは、戦略の妥当性だけではなく、その実効性です。私は、権限委譲とガバナンス、挑戦とリスク管理を両立させ、責任の所在を明確にすることで、オリックスの成長を次の段階へとつなげていきます。
この考えに基づき、CEO就任と同時に組織再編を実施し、その後CxO体制を導入しました。各事業部門にはCOOを、管理部門にはCFO兼CSOやCROを任命し、それぞれが担当領域に責任を持つと同時に、グループ全体の経営を担うトップマネジメントとしての役割を果たします。私が経営陣に求めるのは、担当領域の管理にとどまらず、各自が利益成長、資本効率、リスク管理に責任を持ち、グループ全体の企業価値向上に主体的にコミットすることです。
そのため、5月に世界各国より社内主要リーダー156名が東京に集結して開催したグローバル経営会議、並びに、7月に開催したORIX Investor Dayでは、私に加え、各COOおよびCFO兼CSOが、それぞれの担当領域におけるグループ戦略の実行計画と具体的施策を説明しました。CEO一人が語るのではなく、経営陣自らが自分の言葉で戦略と実行を語る。これは、経営の透明性を高めるだけでなく、組織全体にオーナーシップを広げていくうえでも重要です。長期ビジョンの実現には、各事業・機能を担う経営陣が責任を持ち、利益成長、資本効率、リスク管理の成果を積み上げていくことが不可欠です。
本統合報告書では、私のメッセージに加え、各COO、CFO兼CSO、オリックス生命の片岡社長にも、それぞれの戦略、資本配分、実行課題を自らの言葉で語ってもらいました。多様な事業を持つオリックスが、グループとしてどのように成長を実現していくのかを具体的にお伝えします。
ビジネスモデルの変革
オリックスは創業以来、時代の変化を捉えながら事業領域を広げ、国内外で多様な事業を展開する企業グループへと成長してきました。外から見ると、この多様性は複雑に映ることもあります。しかし、この多様性こそが、変化する市場環境の中で成長機会を見出し、リスクを分散しながら収益を積み上げる競争力の源泉です。多様な事業基盤、金融と事業の双方に対する知見、現場で培ったネットワーク、そして人材の厚み。これらを組み合わせることで、オリックスは事業機会の創出から投資、開発、運営、資本回収までを一貫して担い、収益力と競争力を高めることができます。
私は、この強みを「事業価値創造モデル」と「顧客課題解決モデル」という二つのビジネスモデルとして整理しています。「事業価値創造モデル」は、投資・開発・運営を通じて事業価値を高め、その成果を次の成長につなげていく仕組みです。魅力的な投資機会を見出し、規律をもって投資することは重要です。しかし、オリックスらしさは、その後の関与と実行にこそ発揮されます。「顧客課題解決モデル」は、お客さまや社会が抱える課題を起点に、新たな事業機会を見出す仕組みです。オリックスはこれまでも、お客さまとの対話や現場の気づきから、新しい事業やサービスを生み出してきました。新しい事業の種は、机上の議論だけから生まれるものではありません。多くの場合、お客さまの近くで課題に向き合い続ける中にあります。
事業にどのように関わり、収益力や競争力をどう高め、どのタイミングで保有を継続するのか、あるいは資本を回収して次の成長領域へ振り向けるのか。この一連のサイクルを、金融の知見、事業運営力、リスク管理を組み合わせて実行できることが、オリックスの大きな強みです。一方で、事業環境や資本市場が変化する中で、これまで培ってきた強みを維持するだけでは十分ではありません。次の成長に向けては、二つのビジネスモデルをさらに進化・深化させ、より高い資本効率と継続性のある収益構造へと高めていきます。
「事業価値創造モデル」では、自ら収益力や競争力を高められる代替資産への投資を加速します。さらに、これらの資産をベースに外部投資家を迎えたファンドを設立し、アセットマネジメント収益やフィー収益を拡大することで、資本負荷を抑えながら成長するモデルへ進化させます。「顧客課題解決モデル」では、お客さまとの接点を深め、提供サービスと運営受託資産を拡充します。これにより、安定的かつ継続性の高いフィー収益を伸ばし、日本で培った知見を海外にも展開します。
私は、この二つのビジネスモデルを、相互に補完し合う成長の循環として捉えています。お客さまや社会の課題から新たな事業機会を見出し、その事業価値を高める。そして、事業運営を通じて得られた知見やネットワークを次の顧客課題解決につなげる。この循環を継続的に生み出せることが、オリックスの競争優位性であり、持続的な利益成長の源泉です。
企業価値向上への挑戦
オリックスグループは、2035年に向けた長期ビジョンを掲げています。そのありたい姿は、「『事業価値創造』と『顧客課題解決』を通じて、社会にインパクトをもたらす。」ことです。また、経営指標として、2035年3月期までにROE 15%、当期純利益1兆円を目指しています。この目標は容易なものではありません。投資家の皆さまからも、実現可能性、時間軸、資本配分の考え方について多くの質問をいただいてきました。長期ビジョンは、現状の延長線上に置く単なる努力目標ではありません。経営資源の配分、組織の意思決定、役職員一人ひとりの行動を変えるための経営目標です。

私は、財務健全性を維持しながら、利益成長と資本効率の向上を同時に追求することを、経営の最重要課題に据えています。成長に向けて重要なのは、単に投資を拡大することではありません。私は、成長性、収益性、資本効率、リスクのバランスを重視しながら、経営資源をより効果的に配分していきます。魅力的な成長領域には積極的に投資を行う一方で、資本効率や将来性の観点から事業ポートフォリオを継続的に見直します。規律ある資本配分と健全な財務基盤を維持することが、持続的な利益成長と企業価値向上の前提であると考えています。
ROEだけを高めるのであれば、資本効率の低い事業を切り離し、高い事業だけを残す、あるいはレバレッジを引き上げるという選択肢もあります。しかし、私が目指しているのは、縮小均衡や目標達成のために過度に財務リスクをとることではありません。一方で、利益成長だけを追求することも十分ではありません。企業価値を持続的に高めるためには、利益成長、資本効率、財務健全性を同時に追求しなければなりません。この三つのバランスを取り続けることこそ、経営の本質です。
私たちが目指すのは、利益規模の拡大や短期的な資本効率の改善にとどまりません。事業価値の向上、資本の入れ替え、フィー収益の拡大を通じて、成長性と資本効率を同時に高めることです。社長就任以降、私は国内外の投資家の皆さまと対話を重ねてきました。そこで繰り返し問われるのは、「オリックスはこれからどのように成長するのか」「ROE 15%、当期純利益1兆円をどう実現するのか」という問いです。この問いに対して、私は数字だけで答えるつもりはありません。目標数値の背後にある収益構造、資本配分、実行体制を示し、実績を通じて信頼を積み上げていきます。お客さまや社会の課題を事業機会に変えること。投資先の収益力や競争力を高めること。資本を規律ある形で回転させ、次の成長領域へ振り向けること。そして、人と組織の力を高め、実行力を引き上げること。これらを継続し、利益成長と資本効率の向上につなげていきます。
現在のオリックスは、資産価値を基準として評価されることが少なくありません。しかし、私たちが目指すのは、その評価軸を超え、成長力と資本効率そのものを評価される会社へ進化することです。そのために、資産や事業の価値を高め、資本を循環させることで、継続的な利益成長につなげていきます。それが、私が実現したいオリックスの姿です。
人と組織の力を高める
オリックスにとって、人材は企業価値向上の基盤です。戦略やビジネスモデルを成果に変えるのは、人と組織の力です。オリックスは、国内外で多様な事業を展開しています。そのため、それぞれの事業や地域を深く理解した専門人材は欠かせません。同時に、グループ全体を見渡し、将来の方向性を考えながら経営できる人材も必要です。
私自身、これまでさまざまな事業や地域で経験を積んできました。その中で実感しているのは、人は新しい環境や困難な経験を通じて大きく成長するということです。私は2011年に再生可能エネルギー事業を担当し、国内に加えて海外での事業展開にも向き合うことになりました。また、2018年にはロンドンに赴任し、50歳を目前に初めての海外勤務を経験しました。いずれも未知の領域への挑戦でしたが、振り返れば、こうした経験が私自身の視野を大きく広げ、成長につながったと感じています。だからこそ、人材育成においても、研修や制度を整えるだけでは十分ではないと考えています。異なる事業への挑戦、海外での経験、営業と管理部門の双方の経験、大型案件や新規事業への参画。こうしたタフアサインメントを通じて、一人ひとりの可能性を引き出し、次代の経営を担う人材を育てていくことが重要です。

これからの時代に求められる力も変化しています。一つは、国や地域、事業領域を越えて協働し、価値を創出する力です。オリックスは日本国内だけでなく、世界各地で多様な事業を展開しています。これからの成長を加速するためには、語学力にとどまらず、異なる文化や価値観を理解し、社内外のパートナーと信頼関係を築きながら、グループ全体の力を引き出すことが求められます。もう一つは、デジタルを活用する力です。AIをはじめとするテクノロジーの進化は、あらゆる産業やビジネスモデルに影響を与えています。デジタル技術そのものが目的ではありませんが、より良い意思決定を行い、お客さまに高い価値を提供し、新しいビジネスを創出するためには、データやテクノロジーを経営と現場の双方で使いこなす力が不可欠です。
そして何より大切なのは、自ら学び、挑戦し続ける姿勢です。会社は学ぶ機会や挑戦する場を提供することができます。しかし、本当の成長は、一人ひとりが主体的に学び、必要なスキルやマインドセットを自ら身につけようとするときに生まれます。長期ビジョンは、経営陣だけで実現できるものではありません。世界中で働くグループ社員一人ひとりが、それぞれの持ち場で挑戦し、新しい価値を生み出していくことで初めて実現できます。私は、人への投資を惜しまず、多様な経験を通じて成長できる環境をつくり、次代のオリックスを担う人材の育成に力を注いでいきます。あわせて、後継者育成、外部人材の獲得、デジタルを活用した業務改革・経営管理改革を進め、人と組織の力を企業価値向上につなげていきます。
オリックスが大切にしていきたい価値観である「多様性を力に変える。」「挑戦をおもしろがる。」「変化にチャンスを見出す。」を、世界中の現場で一人ひとりが体現し、実践していくこと。その積み重ねこそが、次代のオリックスの成長につながると考えています。オリックスは、これからも変化を前向きに捉え、多様な事業と人材の力を結集しながら、持続的な成長を目指します。長期ビジョンの実現に向けて、規律ある資本配分、実効性あるガバナンス、人と組織の力の強化を着実に進め、企業価値の向上につなげてまいります。株主・投資家の皆さまをはじめ、すべてのステークホルダーの皆さまに対し、実行と成果をもってお応えしていくことが、私の責任です。今後とも、オリックスグループの進化にご期待ください。
