特集

2024/10/29

【column7】電気事業法とは?概要や改正などの情報を紹介


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発電所運営に関わる法律のひとつに電気事業法があります。1964年の制定以降、幾度も法改正が行われてきましたが、20233月の改正では、太陽光発電システムに関する保安・管理、届出制度など手続きに関する規定が変更されました。 

本記事では、電気事業法について、概要やこれまで改正されてきた沿革、20233月に施行された電気事業法改正の変更点など、太陽光発電事業者が知っておきたい情報について詳しく解説します。


INDEX



電気事業法とは?

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電気事業法とは、電気事業の運営を適正化・合理化するため、電気工作物の工事、維持、運用に関する規制を定めた法律です。この法律の目的は、電気の使用者の利益を保護し電気事業の健全な発達を図ること、公共の安全を確保し環境の保全を図ることとされています。電気事業法は経済産業省の資源エネルギー庁が所管し、日本では電気事業法によって電気事業の運営が規制され、事業者の種類も規定されています。つまり、大手電力会社や小売電気事業者、発電事業者など電気事業に関わる者は電気事業法に則って事業を行う必要があります。
出典:経済産業省資源エネルギー庁「関係法令・ガイドライン等 > 各種法令等 > 電気事業法」

【電気事業者の種類】
・小売電気事業者
・一般送配電事業者
・送電事業者
・配電事業者
・特定送配電事業者
・発電事業者
・特定卸供給事業者

電気事業法は1964年に公布されて以来、都度改正により段階的に電力システム改革が行われてきました。例えば、1995年の改正においては電力自由化の第一歩として、発電部門への参入が可能となったことで、さまざまな事業者が参入し、太陽光発電の普及を後押ししました。また、近年の改正により、電力事業のうち発電と小売の自由化が進められています。
参考:経済産業省資源エネルギー庁「2020年度版 電気事業法の解説」について

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*事業者数は2023年末時点
出典:経済産業省資源エネルギー庁「電力システムを取り巻く現状」P7

具体的には、2016年4月以降は電力システム改革における小売の全面自由化により、電気事業者の類型が見直され、発電事業者、送配電事業者、小売電気事業者の大きく3つに分けられました。このように、電気事業法は必要に応じて改正されているため、電気事業に携わる方は今後の改正にも注視しましょう。


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*事業者数は2017年3月時点
出典:経済産業省資源エネルギー庁「電気事業制度について」 電力供給の仕組み





電気事業法改正の沿革


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電気は重要なライフラインのひとつであり、取り扱いを間違えると重大な事故や人災につながる可能性があります。また、時代の移り変わりに伴い電気の需要や用途も多様化し、電気事業法も変化に適応すべく、繰り返し改正が行われてきました。公布以来、初めて行われた1995年の改正では、電力会社以外の事業者に対して電気の卸供給や小売参入が認められました。また、1995年の改正以降、2003年まで電力構造改革が行われ、段階的に電力に関する規制が緩和されます。

特に1999年の改正では、工場やビルなど特別高圧を契約する顧客に対する「特定規模電気事業者」の自由化が行われ、併せてルール整備や料金制度の緩和、見直しもされました。続いて2003年の改正では、さらに小売り自由化が進みます。特別高圧だけではなく高圧も対象となり、国内で使用される電気の約6割が自由化されました。電気を直接取引する日本卸電力取引所(JEPX)が創設され、さらに電気の販売や供給がしやすくなったのも2003年のことです。そして、2011年3月11日に発生した東日本大震災と福島第一原子力発電所事故を受け、2013年からは電気の安定供給や電気料金などに関する改革が始まりました。


なお、1964年の電気事業法公布から2024年現在までに行われた改正は以下の通りです。


1964年 電気事業法公布
1995年 第1次電力構造改革(発電部門への新規参入拡大、特定の供給地点における電力小売事業の制度化、料金規制の改善など)
1999年 第2次電力構造改革(特別高圧の小売自由化、小売託送ルールの整備、料金見直しなど
2003年
第3次電力構造改革(高圧の小売自由化、送配電の調整機能確保、日本卸電力取引所の設立など)
2011年 簡易料金改定、託送制度整備、送配電ネットワーク利用ルール整備など
2013年 電力システム改革第1段階(電力広域的運営推進機関設置)
2014年 電力システム改革第2段階(小売全面自由化)
2015年 電力システム改革第3段階(送配電法的分離)
2020年 災害時連携強化、送配電網強靭化、分散型電力システム整備
2023年 小規模な太陽電池発電設備と風力発電設備に係る保安規制が義務化


参照:経済産業省 資源エネルギー庁電力・ガス事業部 産業保安グループ 編「2020年度版電気事業法の解説」


 L 2013年(平成25年):電力システム改革第1段階改正 

2013年4月には「電力システムに関する改革方針」が閣議決定され、電力システム改革の段階的な改正に向け、検討が始まりました。これは、東日本大震災や福島第一原子力発電所事故により電力需給がひっ迫した経験を踏まえてのものです。この改正では、電気の安定供給と電気料金高騰の抑制、また利用者側のニーズに応える事業者の参入と競争の活性化などが目的とされました。

また、地域ごとに電力を供給するのではなく、全国的に電気の需要と供給を調整できる仕組みの整備が重視された結果、電力広域的運営推進機関も設立されました。この広域機関によって万が一、災害が発生した場合でも、全国的に電力を融通し合い、安定的に電力が供給できる体制が整えられました。



 L 2014年(平成26年):電力システム改革第2段階改正 

電力システム改革の第2段階として、電力小売全面自由化が行われました。電力の小売や発電事業に関する全面自由化は、第1段階の改正でもすでに盛り込まれていましたが、2段階目では実施時期なども具体的に定められ、2016年4月1日より自由化が開始されました。全面自由化により、ガス事業者、通信事業者、鉄道会社、商社、ハウスメーカーなど、さまざまな事業者が電気事業者として参入しています。

また、「一般電気事業」や「特定規模電気事業」といった区分がなくなることから、電気事業類型の見直しがされたのも、電力システム改革第2段階改正の時です。発電事業者、送配電事業者、小売電気事業発電事業者と新たな区分が設けられ、発電事業者は届出制、一般送配電事業・送電事業は許可制、小売電気事業は登録制が採用されました。


 L 2015年(平成27年):電力システム改革第3段階改正 

電力システム改革の第3段階改正では、送配電部門の法的分離が盛り込まれました。送配電部門の法的分離は、電力会社が運用している送配電網を取り扱う部門を、新規参入した事業者も公平に使えるように別会社化(分社化)するものです。これにより、送配電事業者は発電や小売事業を営めなくなり、より中立な立場に近づきました。別会社化の手段としては、持ち株会社化や、送配電部門の子会社化などが想定されています。

発電事業や小売事業は自由化が進んだものの、送配電部門だけは2024年現在も自由化されていません。送配電網を新規事業者がそれぞれ管理するよりも、一社が管理したほうが効率的なためです。法的分離により、事業者間の公平性を確保しつつ安定した送配電が可能となっています。

 L 2020年(令和2年) 

2020年の電気事業法改正では、主に次の3点が実施されました。

・災害時の連携強化
・分散型電力システムの導入
・送配電網の強靭化

災害時に備え、送配電事業者には災害時の連携計画の作成が義務付けられました。また、被災した事業者を同業者が支援するための制度も設立。ほかにも、電力供給に関する自治体への情報提供が義務化され、スマートメーターなどからわかる電力使用データの活用も期待されています。分散型電力システムの導入も災害対策の一環です。例えば配電事業について、通常時は分散小型の電源等を含む配電網を運営し、災害時には独立運用可能な仕組みが整備されました。送電がストップしても迅速に復旧できる体制が整えられました。

また、再エネを普及させるために不可欠な送配電網の整備が国内では遅れ気味でしたが、2020年の法改正によって、従来の方法に比べて送配電網の効率的な構築が可能となりました。このように、2020年の改正では全体的に災害対策の強化が図られ、緊急時も安定した電力供給ができることが期待されています。



電気工作物、電気主任技術者とは

電気工作物とは発電、蓄電、変電、送電、配電または電気の使用のために設置する工作物(機械、器具、ダム、水路、貯水池、電線路等)を指します。電気工作物は大きく分けて、一般用電気工作物と事業用電気工作物の2つに分類されています。なお、電気工作物の種類ごとに規制や手続きなどが異なります。


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出典:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課「電気主任技術者制度について」P.8

また、電気事業法では、電気保安の観点から、事業用電気工作物(電気事業用及び自家用電気工作物)の設置者(所有者)には、電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、電気主任技術者を選任することが義務付けられています。そのため、発電所や変電所、工場、ビルなどに電気設備を設置する事業者は、事業用電気工作物の保安監督者として電気主任技術者を選任しなければなりません。電気主任技術者は国家資格で、電気設備の保安や監督を行う独占業務を担います。無資格者はこれらの業務を担うことはできません。

電気主任技術者については、電気事業法で下記のように定められています。

(主任技術者)
第四十三条 事業用電気工作物を設置する者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督をさせるため、主務省令で定めるところにより、主任技術者免状の交付を受けている者のうちから、主任技術者を選任しなければならない。

2 自家用電気工作物(小規模事業用電気工作物を除く。)を設置する者は、前項の規定にかかわらず、主務大臣の許可を受けて、主任技術者免状の交付を受けていない者を主任技術者として選任することができる。

3 事業用電気工作物を設置する者は、主任技術者を選任したとき(前項の許可を受けて選任した場合を除く。)は、遅滞なく、その旨を主務大臣に届け出なければならない。これを解任したときも、同様とする。

4 主任技術者は、事業用電気工作物の工事、維持及び運用に関する保安の監督の職務を誠実に行わなければならない。

5 事業用電気工作物の工事、維持又は運用に従事する者は、主任技術者がその保安のためにする指示に従わなければならない。

出典:e-Gov 法令検索「電気事業法」 


なお、電気主任技術者の資格は、第一種から第三種までの3種類あります。電気工作物の電圧や種類等によって、その電気工作物の保安監督または電気工事を行うために必要な資格が決められています。

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出典:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課「電気主任技術者制度について」P.9




電気事業法改正(2023年3月)に伴う変更点

ここからは2023年3月に改正された電気事業法の変更点について解説します。2023年3月の改正では、以下3制度の導入が決まりました。

(1)認定高度保安実施設置者に係る認定制度
(2)小規模事業用電気工作物に係る届出制度等
(3)登録適合性確認機関による事前確認制度
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出典:経済産業省 産業保安グループ 電力安全課「電気事業法の改正について」P.2

このうち(2)小規模事業用電気工作物に係る届出制度等について詳しく見ていきましょう。改正前の電気事業法においては小出力発電設備(太陽電池発電設備:10kW以上50kW 未満/風力発電設備:20kW 未満)が一般用電気工作物として扱われており、保安規制も一部対象外でした。

しかし、2023年3月の電気事業法改正により、これまで一般用電気工作物として区分されていた太陽電池発電設備(10kW以上50kW未満)と風力発電設備(20kW未満)は、事業用電気工作物の新たな類型、名称で「小規模事業用電気工作物」として位置付けられ、事業者に以下の義務が課されました。

 L 技術基準適合維持義務の対象拡大 

太陽電池発電設備で10kW以上50kW未満の小規模事業用電気工作物は、技術基準適合維持義務の対象になっています。改正前は「技術基準に適合させる義務」のみでしたが、改正後は「技術基準への適合状態を維持する義務」も課せられ、50kW以上の事業用電気工作物と同様の扱いが求められます。設置時点だけでなく、継続的に技術基準に適合していることを確認するため、次に解説する基礎情報の届出が義務化されました。

 L 基礎情報の届出の義務化 

2023年3月の改正により、太陽電池発電設備のうち10kW以上50kW未満の小規模事業用電気工作物は、各地域を管轄する産業保安監督部に対し、基礎情報の届出が義務付けられました。50kW以上の事業用電気工作物では、電気主任技術者の専任や保安規程の届出が必要ですが、小規模事業用電気工作物には必要ありません。代わりに、基礎情報の届出を行います。基礎情報の届出書(小規模事業用電気工作物設置届出書)とは、設備の所有者情報や設備情報、保安管理の体制などを届け出るものです。基礎情報の届出は、既設の設備(FIT認定を受けた設備を除く)も対象となり、施行から6ヵ月以内に届出を提出する必要があります。

詳細は経済産業省の特設サイトをご確認ください。
出典:経済産業省 小規模発電設備等保安力向上総合支援事業「2つの保安規制が義務化されます」

 L 使用前自己確認義務の対象拡大 

太陽電池発電設備のうち10kW以上50kW未満の小規模事業用電気工作物と、50kW以上500kW未満の事業用電気工作物には、使用前自己確認の義務が新たに課されました。従来は、使用前自己確認義務は太陽電池発電設備で500kW以上2,000kW未満の事業用電気工作物が対象でした。しかし2023年3月の改正により、10kW以上2,000kW未満の太陽電池発電設備は、すべて使用前自己確認の対象となりました。
出典:経済産業省 産業保安グループ電力安全課「電気事業法の改正について」p.10

使用前自己確認では、設備を使用する前に技術基準へ適合しているかどうか、国が定めたルールに則り確認します。設置者は、発電設備を使用する前に電気主任技術者の監督のもとで検査を行い、その結果を主務大臣(電気工作物を管轄する産業保安監督部長)に届け出なければなりません。検査には電気的リスクだけでなく、基礎や地盤など構造的リスクの確認も含まれます。既設の設備は原則として使用前自己確認の対象外ですが、パネルの増設など既存の設備に一定の変更工事を行った場合は、使用前自己確認を行い、その結果を届け出ることが求められます。


 L 電気事業法に違反するとどうなる? 


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電気事業法の改正は発電事業運営にどのような影響があるのでしょうか。また、電気事業法に違反した場合、どのようなペナルティが科されるのでしょうか。電気事業法に違反した場合は技術基準適合命令、登録・許可取り消し、刑事罰という3つのペナルティが科される恐れがあります。技術基準適合命令は、各種の電気工作物が技術基準を満たしていない場合に修理や改造、移転、使用の一時停止、もしくは使用の制限を経済産業大臣から命じられるものです。

登録・許可取り消しは、電気事業法の違反により公共の利益を侵害した場合に適用されます。一般送配電事業や送電事業は許可が取り消され、小売電気事業は登録が取り消される可能性があります。この行政処分により、事業の継続が不可能になることがあります。また、命令や許可・登録の取り消しに従わなかったなど、悪質と判断された場合には刑事罰が適用されます。例えば、届出義務違反(特定自家用電気工作物の設置)では10万円以下の過料が課されます。もっとも罰則の重いケースでは、一般送配電業事業、送電事業、配電事業における無許可営業では3年以下の懲役または300万円以下の罰金(併科および法人の両罰規定あり)が課せられます。
出典:e-Gov 法令検索「電気事業法」 第九章

 L まとめ 

2023年3月の改正では、10kW以上50kW未満の太陽電池発電設備が、事業用電気工作物の新たな類型「小規模事業用電気工作物」に位置付けられました。これにより技術基準適合維持、基礎情報の届出、使用前自己確認が義務化されました。このように、太陽光発電設備に関する保安規制は対象範囲や内容が今後も変更となる可能性があるため、経済産業省の発令を確認するなど、法改正などには注意しましょう。

また、使用前自己確認については、既設設備に一定の変更工事を行った場合にも結果の届出が必要です。使用前自己確認では、電気的リスクだけでなく、例えば設計荷重や支持物構造、土砂の流出及び崩壊の防止に係る確認など、構造的リスクの確認も求められます。なかには、構造計算書等の設計図書を用いたり、架構図をもとに不静定次数を計算したりする作業もあり、運用の負担になっている発電事業者も少なくありません。

そこで、頼りになるのがオペレーション&メンテナンス(以下、O&M)会社です。O&M会社は発電設備の運営・維持管理などO&M業務を請け負い、使用前自己確認、電気主任技術者の選任、保安規程届出業務などを一手に引き受け、事業運営のパートナー企業として発電事業者を支援します。



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オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社(以下、OREM)は、日本全国に約200カ所、700MW相当の発電所O&M業務を受託しています。(2024年10月時点)太陽光発電所では、AI などのデジタル技術を活用した予防保全型の O&M により、オリックスグループからの受託容量(約 400MW)に対し、開始後1年で PR 値(performance ratio:発電所の生産性を数値化する評価指標)を4%以上改善するなど、発電量の最大化に貢献してきました。各種詳細は以下リンク先よりご覧ください。
サービス一覧|オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社

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  → 部品交換 / 小修繕 / 予備品管理
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【リソース】
電気主任技術者をはじめとする有資格者が多数在籍し、主要拠点を電気保安法人として登録しています。通常、発電所ごとに電気主任技術者を選任することが定められていますが、電気保安法人化により、1人で複数の発電所を担当できるようになり、人材不足の解消と業務効率化を実現しています。

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会社案内 | 企業情報 | オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社


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