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2024/07/16
【column4】太陽光発電事業のリスクとは?リスクに備え損失を軽減させるための対策を徹底解説
カーボンニュートラル社会の実現にむけて、気候変動対策のひとつである再生可能エネルギーへの転換が進む中、太陽光発電の需要は年々高まっています。太陽光発電事業は、環境負荷の少ないクリーンなエネルギーを生み出すことができる点や、非再エネ電源と比較して安全に運営できる利点があります。発電事業者にとっては、FIT制度、FIP制度など、エネルギー自給率向上のため国を挙げた法改正や金融面での優遇措置を行っているため、一定の収益が担保できるのもメリットです。
一方で、メガソーラーはその規模から地域住民や設置環境への影響が懸念されています。具体的には景観や環境破壊、災害発生時の事故などです。これらのネガティブな要素から、太陽光発電所の安全性について社会的な関心が高まっています。また、天候に左右される発電量や、法改正による影響など事業運営におけるリスクがあるのも事実です。
本記事では太陽光発電事業における主なリスクと対策を解説していきます。発電事業に携わっている方や、発電事業を検討されている方は今後の参考に、一緒に確認していきましょう。
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太陽光発電事業におけるさまざまなリスク
太陽光発電事業を行うにはメリット・デメリットがあり、発電量や売電収益に影響を及ぼすさまざまなリスクが伴います。ここでは、太陽光発電所の開発、運用、事業終了で想定されるリスクをご紹介します。
L 太陽光電源特有のリスク
主に以下のようなリスクが挙げられます。・設置環境の選定を失敗するリスク
・土壌環境、土砂災害リスク
・鳥獣、盗難によるリスク
・近隣トラブル
〈有効なリスク対策とポイント〉
・日射量を担保できる環境を選定する(日影要因の障害物、樹木は避ける)
・メンテナンスの行き届きやすさを確認する(土地の高低差など)
・ハザードマップを確認する(洪水、土砂災害、高潮、津波などのリスクはないか)
・建設に適した用地を選定する(傾斜地や脆弱な地盤、海や川の近くは避ける)
・リスクアセスメントを行う
・地質調査、土質試験を行う
・排水計画を策定する(水の流れ方や流域を確認し水路を配置等)
・自ら現地へ視察に行き近隣環境も含めて確認する
・これまでの鳥獣害、盗難被害を確認する
・メンテナンスがどの程度必要な環境か確認する(除草剤が使えるかなど)
L 開発フェーズのリスクと対策
主に以下のようなリスクが挙げられます。・設備仕様上のトラブル
・部材の不具合や瑕疵などメーカーとのトラブル(初期不良など)
・施工会社の選定によるトラブル(手抜き工事など欠陥の原因となるリスク)
〈有効なリスク対策とポイント〉
・設計、施工の確認(規格に準拠した仕様になっているか)
・設置環境に適したパネルや架台などの部材、メーカーを選定する
・強度や費用対効果の高い部材を選定する(価格重視で部材を選定しない)
・パネルの間隔や架台の角度を日射条件や環境に応じて調整する
・設備の仕様や配線等に不具合がないか確認する
・信頼できる施工会社を選定する(適切な施工ができうるか)
・施工費用が相場と乖離しすぎていないか確認する
・保険への加入検討(適用範囲ごと、損害賠償や地震もカバーしておく)
・メーカー保証の確認(製品保証・出力保証の範囲は適切か)
・長期間委託できる実績のあるオペレーション&メンテナンス(以下、O&M)会社を選定する
L 期中管理フェーズのリスクと対策
主に以下のようなリスクが挙げられます。・自然災害によるさまざまな影響
・故障部材交換などによるコスト発生
・雑草や樹木など植生による影響
・鳥獣害による影響
・発電設備の故障など電気的なトラブル
・ケーブル盗難やいたずら
・出力抑制による影響
〈有効なリスク対策とポイント〉
・トラブル発生時の対応マニュアルの作成
・トラブル発生時の被害を抑える対策検討と体制構築
・加入している保険、メーカー保証の内容と精査
・予備品、消耗品等を確保する
・定期的なメンテナンスの実施
・パネル汚染を予防するため定期的に洗浄する
・パネルに影ができないよう定期的に除草する(環境に問題なければ除草剤散布)
・メンテナンス項目、頻度の見直し
・メンテナンスを委託しているO&M会社の見直し
・忌避剤を取り入れる
・防犯対策を施す(防犯カメラ、夜間照明機器、警報機器の設置、機械警備の導入等)
・ケーブル盗難対策として、アルミケーブルへ置き換える
・AIやIoTなど先進技術を用いたデジタルツールを導入する
L 買収フェーズのリスクと対策
主に以下のようなリスクが挙げられます。・建設時の瑕疵や施工不良など欠陥があった
・虚偽の発電量シミュレーションだった
・実態とは異なった(発電所の仕様、稼働状況、近隣情報など)
・損害賠償請求などのトラブルに発展した
〈有効なリスク対策とポイント〉
・設置環境に問題がないか現地視察する
・発電量データの数値や算出方法、信憑性を確認する
・発電所の劣化状態を正しく把握する
・これから起こりうる潜在的なリスクを把握する
・過去に発生したトラブルや風評被害の有無を確認する
・過去の運営状況を第三者視点から評価・分析する査定サービスなどを活用する
このように、長期にわたる太陽光発電所の運用にあたっては、経年劣化による発電量の低下だけではなく、事業フェーズごとにさまざまなリスクがあります。自然災害による停電など予期できない事象やトラブル発生は避けられませんが、適切なリスク対策と体制構築でリスクを軽減することは可能です。開発段階の発電所の場合、リスクに備えておくことが望ましく、運転を開始している既設発電所の場合、現状のオペレーションや各種契約内容の見直しが有効です。万が一、事故や火災などが発生すると、周辺環境にまで影響を及ぼす可能性や人的被害に発展する恐れもあります。太陽光発電事業を安全に運営していくためにも、リスクを未然に防ぐ対策を徹底しましょう。
太陽光発電事業における自然災害リスクと対策
日本は地形や気候の特徴から、梅雨や台風、集中豪雨など自然災害は避けられません。太陽光発電事業においても自然災害による影響が懸念されます。太陽光発電所は不動産と同じく実物資産です。そのため自然災害の被害に遭えば設備が破損し交換が必要となる事例が少なくありません。ここでは台風、水害、落雷、積雪など自然災害リスクと対策について解説します。
例年、日本は夏から秋にかけて台風が接近、上陸します。熱帯低気圧による影響で、南方の温暖な地域で台風が多く発生します。特に太平洋側は台風の上陸回数が多く、シーズン毎に暴風や豪雨にさらされます。太陽光発電設備に甚大な被害をもたらす可能性が高いため、予め備えておく必要があります。当然、開発時に台風等を想定し、強風に耐えられるように設計されています。しかし、強風で運ばれてきた砂や石、枝葉やゴミなどの飛来物によって太陽光パネルが傷つく被害が多く、場合によってはパネルや架台が飛散することもあります。太陽光パネルの表面が汚たりや破損したりすると、発電しなくなるので売電収益に影響を及ぼすリスクがあります。また、飛ばされた太陽光パネルや部材などが人や建物に直撃する、近隣の周辺環境に影響を与える、といったリスクも想定し対策しておく必要があります。そのほか、台風による強風や風圧で発電設備が被災すると、ケーブルなどの配線が断線する可能性があります。 断線を放置すると、漏電による出火や感電、火事といった二次災害の危険も伴います。
〈台風に特化したリスク対策〉
・台風接近時には気象情報を確認し、発電設備の現状を把握する
・発電所敷地内外に飛散が懸念される対象物がないか確認し対処する
・発電設備にゆるみや破損がないか確認し固定する
・暴風、強風に耐えられる部材の選定、見直しを行う
梅雨や台風、大雨、集中豪雨などによる河川の氾濫や洪水、津波などの水害も重大な事故を引き起こすリスクがあります。特に地上設置型の太陽光発電所では、地上から設備の高さが低く設計されているケースが多いです。そのため、雨水による洗掘や崩壊などの水害リスクが高いと言えます。具体的には、太陽光パネルやパワーコンディショナ(PV-PCS/PCS:Power Conditioning Subsystem)、接続箱といった発電設備が浸水によって損壊するリスクが挙げられます。通常、電気は絶縁処理された電路を通っています。しかし、本来流れる予定ではないところへ電気が流れてしまうと、短絡、地絡、漏電といった危険な状態になることがあります。発電設備は浸水してしまうと絶縁不良を起こし、直流回路が短絡状態、所謂ショートし発熱や感電の要因となる可能性があります。また、太陽光パネルは停電しても日光がある限り発電を続けるため、太陽光パネルが活線状態の際に水没、浸水した発電設備等に接近、接触すると感電の危険が伴います。発電設備の破損など一次被害が起きた後も、発電を続けて高電圧・高電流が発生している場合があり、感電など二次被害発生の恐れがあるため、水没、浸水した発電設備に触れたり、近寄ったりしないよう注意が必要です。なお、パワーコンディショナや接続箱は水害等によって湿気が発生し、ケーブルから漏電した際にも火災の要因となる可能性があります。
ほかにも発電所の周辺に山があるなど設置環境によっては、土砂災害にも注意が必要です。洪水などが発生し大量の水が流れ込むと、地盤変化によって土石流、地滑り、がけ崩れなどの土砂災害へ発展する可能性があります。土砂災害では発電設備の破損・倒壊に留まらず、周辺環境にまで被害を及ぼすリスクがあるため防災対策を講じておくことが重要です。また、破損した太陽光パネルから有害物質が流出するリスクも生じる可能性があります。よくある事例としては、水害の排水機能不全による濁水の流出、パネルの杭が浸食されて傾斜する、水の流れによって地表面が削られ地形形状に溝ができるガリ浸食が挙げられます。そのほか、崖・斜面や法面崩壊、水路側溝の越流による洗堀、桝の閉塞、暗渠管の土圧による閉塞、地盤沈下などが挙げられます。
〈水害・土砂災害に特化したリスク対策〉
・排水計画の再設計
・緑化などによる地盤の安定化
・土木補修、補修工事の実施
・排水機能の健全化(施工時に排水路、排水設備を形成する)
・防護壁の設置、土嚢の設置
・盛土、切土法面の保護(浸食防止機能を有した植生マットの活用等)
・発電設備を地上高のある場所などに固定、高台などへ移設する
・発電設備にゆるみや破損がないか確認し雨水浸入を避ける対処をする
・排水ルートを確保する
台風や大雨などの発生と併せて注意したいのが落雷です。落雷被害には「直撃雷」と「誘導雷」の2つがあり、太陽光発電設備はいずれの被害にも遭う可能性があります。「直撃雷」は太陽光発電設備や関連する建物に直接雷が落ちることです。発電設備を破壊したり、火災を引き起こしたりといった大きな影響を与えます。一方、「誘導雷」は太陽光発電設備の付近に雷が落ちた際に雷が大地との間で放電し、誘導電流という電気的エネルギーが発生する現象を指します。例えば、発電所の敷地外にある送電線や発電所内の機器接地線などに落雷の影響が伝わることで、発電設備に定格を大きく超える電圧がかかってしまい、発電設備が破損するなどの影響を与えます。また、誘導雷による故障では外観に損傷がなかった場合でも機器内部の部品が損傷していることがあり、故障個所の特定や修理が困難となります。落雷により太陽光パネルが損傷すると、発電量の低下だけではなく事故や火災に発展するリスクがあります。通常、地上高が低い太陽光パネルは、背の高い支柱や風車などで設計されている風力発電設備と比べると落雷被害はほとんど例がなく稀です。しかし、周囲に避雷針や高層建築物がない場合に落雷被害が及ぶ可能性があります。
〈落雷に特化したリスク対策〉
・直撃雷に関しては、開発段階で地上から設備の高さを低く設計する
・誘導雷に関しては、避雷器を搭載する
・山間部では避雷針や避雷導体を太陽光パネルの周囲に配置する
・屋外の通信回路の配線は誘導雷サージが混入しない光ケーブルにする
・避雷設備や過電圧保護装置を設置する
・太陽光パネルの回路に避雷素子(サージアブソーバ)を設置する
雪が多く降る地域でも太陽光発電の運用は可能ですが、北海道や東北地方、山間部などのエリアで懸念されるのが積雪の影響です。太陽光パネルに雪が積もると、発電量が大幅に低下します。また、一般的な太陽光パネルは1枚当たり15~20kgです。重いパネルの上にさらに大量の雪が積もるとパネルの設計耐荷重を超えてしまうケースがあります。雪の重さにより、発電設備の破損や事故などのリスクもあるため、豪雪地帯では除雪作業が欠かせません。例えば、パネルの上の堆雪と融雪に伴って地面に雪が垂れ下がります。この降雪量の多さから架台と地面の間に雪が垂れ下がって形成される雪庇の上に、さらに雪が積もってしまうとパネルの最下段に設計荷重以上の重みが加わり、パネルの脱落や架台の故障に繋がります。そのほか北海道では12月頃から霜柱が発生するため、除雪シーズン前に霜柱の処理を行う場合もあります。3月頃には雪が溶けて夜にかけて凍ってしまうため、受変電設備周辺の氷を定期的に取り除くなどの取り組みが必要です。
〈降雪に特化したリスク対策〉
・定期的な除雪作業を行う(パネル面の雪下ろし、雪庇の除去など)
・スペースを確保して金網型のフェンスを設置する
・降雪によるパネルや架台の損傷を遠隔監視等でタイムリーに把握する
・除雪作業時は作業効率向上のため工程ごとに複数の重機を使い分ける
・太陽光パネルに傾斜角をつけて雪が下にすべり落ちるようにする
・雪が降っても太陽光パネルが雪に埋もれないよう地上高を高くする(傾斜角をつけるほど太陽光が当たりにくくなり、地上高を高くするほど設置コストがかさむといった点には注意する。)
自然災害によるリスクに対してはさまざまな対策を講じる必要があります。特に、開発段階から留意することでリスクを軽減できるでしょう。太陽光パネルは、JIS基準により最低でも10年のメーカー保証が定められています。しかし、この保証はあくまで通常の使用における故障、破損、もしくはモジュールの出力低下を対象としており、自然災害による故障や破損は対象外となるケースがほとんどです。そのため、落雷や水害をはじめとする自然災害に備えるには、メーカー保証や保険の内容を見直す必要があります。メーカー側が自然災害に対する補償を無料で提供する例は稀であるため、有償で保険へ加入する、メーカー保証に日照補償制度や自然災害補償を付けるなどを検討しておくと良いでしょう。また、保証適用には条件があり、メーカーの施工規定に則った工事がなされていない場合は保証対象外となるため、施工会社も定評のある先を選定しましょう。
自然の脅威に逆うことはできません。だからこそ、運転を開始した既設発電所においてもリスクや被害を予め想定し、平時から被害を軽減するためのリスク対策を講じておくことが望ましいです。リスク対策によって、自然災害で起こりうる最悪の事態を免れることにつながるでしょう。なお、自然災害に関わらずトラブル発生時には感電の恐れがあるため、被害状況を確認する際には発電設備に安易に近付かず、対応時には耐電保護具を装着するなどの感電対策を徹底してください。基本的に復旧対応は電気主任技術者など有資格者に任せ、専門的な内容は知見や実績のあるO&M会社に委託することが望ましいでしょう。
L 台風
例年、日本は夏から秋にかけて台風が接近、上陸します。熱帯低気圧による影響で、南方の温暖な地域で台風が多く発生します。特に太平洋側は台風の上陸回数が多く、シーズン毎に暴風や豪雨にさらされます。太陽光発電設備に甚大な被害をもたらす可能性が高いため、予め備えておく必要があります。当然、開発時に台風等を想定し、強風に耐えられるように設計されています。しかし、強風で運ばれてきた砂や石、枝葉やゴミなどの飛来物によって太陽光パネルが傷つく被害が多く、場合によってはパネルや架台が飛散することもあります。太陽光パネルの表面が汚たりや破損したりすると、発電しなくなるので売電収益に影響を及ぼすリスクがあります。また、飛ばされた太陽光パネルや部材などが人や建物に直撃する、近隣の周辺環境に影響を与える、といったリスクも想定し対策しておく必要があります。そのほか、台風による強風や風圧で発電設備が被災すると、ケーブルなどの配線が断線する可能性があります。 断線を放置すると、漏電による出火や感電、火事といった二次災害の危険も伴います。
〈台風に特化したリスク対策〉
・台風接近時には気象情報を確認し、発電設備の現状を把握する
・発電所敷地内外に飛散が懸念される対象物がないか確認し対処する
・発電設備にゆるみや破損がないか確認し固定する
・暴風、強風に耐えられる部材の選定、見直しを行う
L 水害・土砂災害
梅雨や台風、大雨、集中豪雨などによる河川の氾濫や洪水、津波などの水害も重大な事故を引き起こすリスクがあります。特に地上設置型の太陽光発電所では、地上から設備の高さが低く設計されているケースが多いです。そのため、雨水による洗掘や崩壊などの水害リスクが高いと言えます。具体的には、太陽光パネルやパワーコンディショナ(PV-PCS/PCS:Power Conditioning Subsystem)、接続箱といった発電設備が浸水によって損壊するリスクが挙げられます。通常、電気は絶縁処理された電路を通っています。しかし、本来流れる予定ではないところへ電気が流れてしまうと、短絡、地絡、漏電といった危険な状態になることがあります。発電設備は浸水してしまうと絶縁不良を起こし、直流回路が短絡状態、所謂ショートし発熱や感電の要因となる可能性があります。また、太陽光パネルは停電しても日光がある限り発電を続けるため、太陽光パネルが活線状態の際に水没、浸水した発電設備等に接近、接触すると感電の危険が伴います。発電設備の破損など一次被害が起きた後も、発電を続けて高電圧・高電流が発生している場合があり、感電など二次被害発生の恐れがあるため、水没、浸水した発電設備に触れたり、近寄ったりしないよう注意が必要です。なお、パワーコンディショナや接続箱は水害等によって湿気が発生し、ケーブルから漏電した際にも火災の要因となる可能性があります。
ほかにも発電所の周辺に山があるなど設置環境によっては、土砂災害にも注意が必要です。洪水などが発生し大量の水が流れ込むと、地盤変化によって土石流、地滑り、がけ崩れなどの土砂災害へ発展する可能性があります。土砂災害では発電設備の破損・倒壊に留まらず、周辺環境にまで被害を及ぼすリスクがあるため防災対策を講じておくことが重要です。また、破損した太陽光パネルから有害物質が流出するリスクも生じる可能性があります。よくある事例としては、水害の排水機能不全による濁水の流出、パネルの杭が浸食されて傾斜する、水の流れによって地表面が削られ地形形状に溝ができるガリ浸食が挙げられます。そのほか、崖・斜面や法面崩壊、水路側溝の越流による洗堀、桝の閉塞、暗渠管の土圧による閉塞、地盤沈下などが挙げられます。
〈水害・土砂災害に特化したリスク対策〉
・排水計画の再設計
・緑化などによる地盤の安定化
・土木補修、補修工事の実施
・排水機能の健全化(施工時に排水路、排水設備を形成する)
・防護壁の設置、土嚢の設置
・盛土、切土法面の保護(浸食防止機能を有した植生マットの活用等)
・発電設備を地上高のある場所などに固定、高台などへ移設する
・発電設備にゆるみや破損がないか確認し雨水浸入を避ける対処をする
・排水ルートを確保する
L 落雷
台風や大雨などの発生と併せて注意したいのが落雷です。落雷被害には「直撃雷」と「誘導雷」の2つがあり、太陽光発電設備はいずれの被害にも遭う可能性があります。「直撃雷」は太陽光発電設備や関連する建物に直接雷が落ちることです。発電設備を破壊したり、火災を引き起こしたりといった大きな影響を与えます。一方、「誘導雷」は太陽光発電設備の付近に雷が落ちた際に雷が大地との間で放電し、誘導電流という電気的エネルギーが発生する現象を指します。例えば、発電所の敷地外にある送電線や発電所内の機器接地線などに落雷の影響が伝わることで、発電設備に定格を大きく超える電圧がかかってしまい、発電設備が破損するなどの影響を与えます。また、誘導雷による故障では外観に損傷がなかった場合でも機器内部の部品が損傷していることがあり、故障個所の特定や修理が困難となります。落雷により太陽光パネルが損傷すると、発電量の低下だけではなく事故や火災に発展するリスクがあります。通常、地上高が低い太陽光パネルは、背の高い支柱や風車などで設計されている風力発電設備と比べると落雷被害はほとんど例がなく稀です。しかし、周囲に避雷針や高層建築物がない場合に落雷被害が及ぶ可能性があります。
〈落雷に特化したリスク対策〉
・直撃雷に関しては、開発段階で地上から設備の高さを低く設計する
・誘導雷に関しては、避雷器を搭載する
・山間部では避雷針や避雷導体を太陽光パネルの周囲に配置する
・屋外の通信回路の配線は誘導雷サージが混入しない光ケーブルにする
・避雷設備や過電圧保護装置を設置する
・太陽光パネルの回路に避雷素子(サージアブソーバ)を設置する
L 降雪
雪が多く降る地域でも太陽光発電の運用は可能ですが、北海道や東北地方、山間部などのエリアで懸念されるのが積雪の影響です。太陽光パネルに雪が積もると、発電量が大幅に低下します。また、一般的な太陽光パネルは1枚当たり15~20kgです。重いパネルの上にさらに大量の雪が積もるとパネルの設計耐荷重を超えてしまうケースがあります。雪の重さにより、発電設備の破損や事故などのリスクもあるため、豪雪地帯では除雪作業が欠かせません。例えば、パネルの上の堆雪と融雪に伴って地面に雪が垂れ下がります。この降雪量の多さから架台と地面の間に雪が垂れ下がって形成される雪庇の上に、さらに雪が積もってしまうとパネルの最下段に設計荷重以上の重みが加わり、パネルの脱落や架台の故障に繋がります。そのほか北海道では12月頃から霜柱が発生するため、除雪シーズン前に霜柱の処理を行う場合もあります。3月頃には雪が溶けて夜にかけて凍ってしまうため、受変電設備周辺の氷を定期的に取り除くなどの取り組みが必要です。
〈降雪に特化したリスク対策〉
・定期的な除雪作業を行う(パネル面の雪下ろし、雪庇の除去など)
・スペースを確保して金網型のフェンスを設置する
・降雪によるパネルや架台の損傷を遠隔監視等でタイムリーに把握する
・除雪作業時は作業効率向上のため工程ごとに複数の重機を使い分ける
・太陽光パネルに傾斜角をつけて雪が下にすべり落ちるようにする
・雪が降っても太陽光パネルが雪に埋もれないよう地上高を高くする(傾斜角をつけるほど太陽光が当たりにくくなり、地上高を高くするほど設置コストがかさむといった点には注意する。)
L まとめ
自然災害によるリスクに対してはさまざまな対策を講じる必要があります。特に、開発段階から留意することでリスクを軽減できるでしょう。太陽光パネルは、JIS基準により最低でも10年のメーカー保証が定められています。しかし、この保証はあくまで通常の使用における故障、破損、もしくはモジュールの出力低下を対象としており、自然災害による故障や破損は対象外となるケースがほとんどです。そのため、落雷や水害をはじめとする自然災害に備えるには、メーカー保証や保険の内容を見直す必要があります。メーカー側が自然災害に対する補償を無料で提供する例は稀であるため、有償で保険へ加入する、メーカー保証に日照補償制度や自然災害補償を付けるなどを検討しておくと良いでしょう。また、保証適用には条件があり、メーカーの施工規定に則った工事がなされていない場合は保証対象外となるため、施工会社も定評のある先を選定しましょう。
自然の脅威に逆うことはできません。だからこそ、運転を開始した既設発電所においてもリスクや被害を予め想定し、平時から被害を軽減するためのリスク対策を講じておくことが望ましいです。リスク対策によって、自然災害で起こりうる最悪の事態を免れることにつながるでしょう。なお、自然災害に関わらずトラブル発生時には感電の恐れがあるため、被害状況を確認する際には発電設備に安易に近付かず、対応時には耐電保護具を装着するなどの感電対策を徹底してください。基本的に復旧対応は電気主任技術者など有資格者に任せ、専門的な内容は知見や実績のあるO&M会社に委託することが望ましいでしょう。
運転開始後の太陽光発電所運営におけるリスク
自然災害によるリスクのほかにも、運転を開始した太陽光発電所の運営期間中にはさまざまなリスクが伴います。ここからは代表的なリスクと対策についてご紹介します。
L シミュレーションとの差異
太陽光発電所を長期に渡って運営していくと、運転開始前にシミュレーションした数値と比較して、発電量や収益性が低下するケースがあります。発電量が予測を下回る主な理由としては、日射量の変動や日影の影響など発電損失となる要因を考慮していなかった、発電量の算出方法が不明瞭であった、現地確認が不十分であったなどが挙げられます。また、運転開始後に適切なメンテナンスを実施していなかった場合や、突発的な自然災害や発電設備の故障、環境の変化なども発電量が低下する要因として考えられます。シミュレーション時の要件と実態が異なれば、当然、シミュレーション時の理想値との差異によって年々損失額が膨らんでいきます。当初の事業計画では年間0.5%のパフォーマンス低下を想定した設備が、実際には1.6%の損失を生み出していた事例もあります。
このようなリスク対策として、太陽光発電所の運用に際しては、発電を阻害する要因の特定と対策が有効です。発電所の設置環境、稼働状況に応じた計画的なメンテナンスと部品交換などによって発電損失を抑制することは可能です。長期に渡って、発電量を維持、収益性を改善していくためにも、専門的な知見とテクニカルスキルを持ち合わせた実績のあるO&M会社に委託するなど、現行の管理状態を見直すことをおすすめします。
オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント【#1】Who We Are 私たちのミッション
L 盗難
近年は銅の価格上昇により、太陽光発電設備に使用する送電用の銅線ケーブルをはじめとする金属等が窃盗団の標的になるケースが報告されています。産業用の太陽光発電所は山間部など人目につきにくい場所に設置されていることも盗難が相次ぐ要因と考えられます。盗難事例の多くはフェンスの切断・破壊によって侵入され、ケーブルを番線カッターで切断してトラックで持ち出すといった被害です。窃盗事件のうち、被害額が数百万円単位、特定の地域全体で億単位にのぼるケースもあるため、盗難リスクを防ぐ対策は必要不可欠です。
盗難対策としては、侵入防止フェンスや監視カメラ、防犯ライトの設置する方法があります。窃盗団はトラックで侵入するため、フェンスやバリケードを設置することで物理的に侵入を難しくするのが有効です。また、侵入をセンサーで察知し警報音が鳴る装置やシステムの導入、警備会社・保険会社との契約も有効です。監視カメラは侵入者への警告や、後の犯人特定に役立ちます。AIによる不審者検知のシステムなどを活用すれば、警備会社、警察との連携もスムーズです。ほかにも、ケーブルを切断する際は一度ブレーカーを落とす必要があるため、幹線のブレーカーやその他重要な機器のある場所へ到達するまで時間がかかるようにする方法もあります。なお、盗難被害は保険でも補償されるケースがありますが、盗難被害が増加傾向にあることから盗難補償を外す保険会社も増えています。また、補償を受けると保険料が上がり発電事業者としてはコスト増となる可能性もあるため、あらゆる盗難対策を徹底しておきましょう。
L 雑草
運転を開始した太陽光発電所では、周辺環境(発電所外の樹木や草木など)を含めた植生管理が必須です。雑草を放置すると、発電量の低下や故障、害獣による被害などのほか、最悪の場合は火災など重大事故に発展するため侮れません。太陽光パネル周辺の雑草によりパネル上に日影が生じると、発電量が低下するだけではなく、パネル上の日陰を起因としたホットスポットの発生を誘発します。ホットスポットとは、パネルの影がかかった部分が発電できずに電気的抵抗が大きくなることで、パネルが局所的に高温になる現象を指します。ホットスポットの長期残置は故障要因、火災やパネルのクラックに発展しかねません。発電所周辺も含めた植生管理は、発電所の点検や巡視時の安全確保のためにも欠かせないメンテナンスです。
また、パネル面だけではなくパワーコンディショナに雑草が侵入し故障するケースもあります。そのほか、雑草が生い茂るとネズミなどの小動物が隠れ場所として棲みついたり、小動物を狙う蛇や害獣、鳥獣や害虫をも引き寄せたりします。小動物の侵入によりケーブルがかじられることもあり、故障や火災のリスクになり得ます。雑草対策としては、防草シートの設置や定期的な草刈り、除草剤(液体・粒剤)の散布が有効です。草刈りにも手法があり、人力や刈払機による刈払作業、乗用草刈機、無線操縦草刈機による除草作業などさまざまです。植生が伸びやすい梅雨など時期に合わせて計画的、予防的な植生管理を行うことが望ましいです。なお、周辺環境や地域によっては除草剤が使用できないこともあります。発電所の地形や設備構成などの特性、地域ごとの制約など条件に合わせて除草プランを比較検討し、選定しましょう。
撤去時に想定されるリスク
参照:e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律 」
参照:経済産業省「廃棄される太陽光発電設備の処理について」
ここでは太陽光パネルをはじめ発電所を構成する部材等を廃棄する際のポイントを紹介します。
L 交換
設備の寿命、不具合など故障が発生して発電設備を取り替えるケースが想定されます。これらの場合、設置した施工会社やメーカーなど販売会社が設備撤去を行います。製品の不良などが原因で撤去した場合の排出者はメーカーです。それ以外の原因で撤去した場合は、撤去を担当した施工会社もしくは販売会社が排出者となります。いずれにしろ、太陽光発電の所有者は施工会社か販売会社に連絡を取り、撤去を依頼することになります。L 廃棄
使えなくなった太陽光パネルにおいては、適切に処理する必要があるため専門知識、資格を持った専門業者へ解体撤去を委託することが一般的です。不要となった部材を処分する過程においては、高所作業や感電のリスクが伴うため危険です。電気の知見を持った電気主任技術者やO&M会社、専門業者に相談しましょう。また、意図せず誤った判断、対応をした場合に、産業廃棄物の放置・不法投棄が法に触れ罰金など処罰の対象となるリスクもあります。撤去の際には電気主任技術者や専門業者へ委託しましょう。なお、廃棄には処分する費用がかかりますが、前述のような不法投棄がなされないよう、資源エネルギー庁によって太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度が定められ、発電事業者には廃棄費用の積立が義務付けられています。【太陽光発電設備の廃棄等費用積立制度の概要】
対象:10kW以上すべての太陽光発電の認定案件(複数太陽光発電設備事業を含む)
金額:調達価/基準価格の算定において想定してきている廃棄等費用の水準
時期:調達期間/交付期間の終了前10年間
取戻し条件:廃棄処理が確実に見込まれる資料の提出
制度の全体像や詳細な積立金額、内訳などについては、以下の資源エネルギー庁の資料をご確認ください。
参照:資源エネルギー庁|太陽光発電設備の廃棄等費⽤積⽴制度について
L 廃棄する前のポイント
産業廃棄物を処理する専門業者は中間処理を行った後、リサイクル可能な材料と最終処分場へ埋めなければいけない廃棄物を分けます。ソーラーパネルに関してはリサイクルや、リユースするための研究が進められており、状態によっては再び活用されることがあります。リユースとは、まだ利用ができる太陽光パネルを国内外で再販する方法です。太陽光パネルをリユース品として取り扱うには条件を満たす必要があります。詳細については以下のガイドラインをご確認ください。参照:環境省環境再生・資源循環局 総務課リサイクル推進室「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」
また、シリコン系太陽光パネルには、シリコンのほかアルミニウム(フレーム)やガラス、EVAなどが使用されています。これらは、再利用可能な資源のため、リサイクル工場で分離、破砕して、有用な素材のみを選別してリサイクルします。
参照:環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」
このように、廃棄ではなく買い取ってもらえれば、多少なりとも現金化できます。太陽光パネルを売る際には、太陽光パネルの状態と処分したい期限を鑑みて、買取実績のある業者に買い取ってもらうなどをご検討ください。
L まとめ
発電設備や太陽光パネルは寿命や不具合、自然災害、事業の見直し、移設など想定外の事象で処分を行う必要性が生じます。太陽光発電事業を始める際、運用期間中の見直しの際に、廃棄や事業終了を見据え、正しい知識を身につけ計画しておきましょう。このように太陽光発電所の長期運用にあたっては、目先の利益のみにとらわれず長期的な視点で運用計画を立案する必要があります。設備の規模が大きくなるほど、得られる発電量や売電収益も多くなる一方で、維持管理コストも増加します。太陽光発電設備は定期的なメンテナンスが欠かせず、また経年劣化によってパフォーマンスが低下していきます。設備の規模、寿命、周辺環境、維持管理費などから、将来的に長期運用が可能かどうか判断しなくてはなりません。そのほか将来、太陽光発電設備が不要になった場合に備え、土地の再利用方法を検討しておく必要もあります。施設や設備の撤去、土地の再利用、再開発のコストまで含めて考慮しておけば、実際の手続きが円滑になるでしょう。
O&M で高効率な発電所運営を支援
産業用の大規模な太陽光発電設備を維持していくためには、専門的な知識やノウハウが求められることも多く、O&Mは欠かせません。太陽光発電設備には寿命があり経年劣化していくため、長期安定稼働、運用にはO&M会社などパートナー企業の協力が必須です。発電事業者は、発電事業者に代わって発電設備の運営・維持管理業務を担うO&M会社に委託することにより、日常点検から有事の緊急対応まで運用期間中の電気保安、保守管理を専門的にサポートしてもらえます。しかし、近年はコスト削減の観点からO&Mを軽視してしまう発電事業者も少なくありません。メンテナンスを怠った結果、かえって設備の劣化や故障によってコストが増加するケースも見られます。
太陽光発電事業は運転を開始してから長期間となりますので、期中管理のほか、売却・買収、事業終了を見据えた戦略的な事業計画の策定と運用体制の構築が必須です。最適なO&Mを実施していれば、設備の劣化や故障をいち早く発見し、発電量の維持が可能です。突発的なトラブルや自然災害が発生したとしても、体制が構築されていれば迅速な対応を実現でき、ダウンタイムの短縮と発電ロスの低減に寄与します。また売買の際には、発電所の劣化状態やこれまでの発電量のデータによって価値が決定されます。つまり、O&Mなどメンテナンスによって良好な状態を維持している太陽光発電所は、売却時の価格も高くなります。既設太陽光発電所においても、この機会に現行の各種契約内容やメンテナンス計画などを見直してみましょう。
オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社(以下、OREM)は、発電事業者出自のO&M会社で、日本全国に約190 カ所、700MW相当の発電所O&M 業務を受託しています。(2024 年7月時点)太陽光発電所では、AI などのデジタル技術を活用した予防保全型の O&M により、オリックスグループからの受託容量(約 400MW)に対し、開始後 1 年で PR 値(Performance Ratio:発電所の生産性を数値化する評価指標)を4%以上改善するなど、発電量の最大化に貢献してきました。各種詳細は以下リンク先よりご覧ください。
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L 発電所の売却や買収をお考えの方へ
太陽光発電所のリスクや運営状況を第三者の視点から評価・分析し、効果的なマネジメント方法を提案する「ターンアラウンドサポートサービス」を提供しています。本サービスは太陽光発電所の査定・発電量改善提案をレポートで提供します。従来の査定サービスとは異なり、現行の管理状態における資産価値算出に限らず、劣化要因を特定しお客さまの売電収入を良化させるアセットマネジメントプランまでトータルにレポートでご提案します。発電所の売却や買収などのイベント時はもちろんのこと、より効率的な運営を目的とした日常的なオペレーション改善にもご活用いただけます。【レポート内容の一例】
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