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2024/07/17
【column5】太陽光パネルの寿命は何年?寿命を延ばす方法や廃棄方法を紹介
環境への配慮などからカーボンニュートラル社会の実現に向けて、再生可能エネルギーへのシフトが進み、企業価値上昇の観点からも太陽光発電事業に注目が集まっています。しかし、屋外に設置される太陽光パネルには経年劣化がつきものです。太陽光パネルの寿命は、一般的には20年~30年と言われています。寿命を迎えた太陽光パネルは交換や廃棄が必要です。2012年のFIT 制度開始から、太陽光発電事業は急速に拡大しましたが、近年は大量の廃棄パネルが出てしまうことが問題となっています。
参照:経済産業省(資源エネルギー庁)「2040年、太陽光パネルのゴミが大量に出てくる?再エネの廃棄物問題」
太陽光パネルは再利用でき、パネルのリサイクル事業者も増えつつありますが、将来的に廃棄されるパネルの量が増え、処理が追いつかないことも現時点で懸念されています。
本記事では、太陽光パネルの長期運用方法や寿命を迎えた太陽光パネルの処理方法などについて分かりやすく解説します。
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太陽光パネルの寿命とは?
太陽光パネルの寿命は、20年から30年と言われています。とはいえ、実際の寿命は使用状況やメンテナンスによって異なるのが現状です。太陽光パネルが普及し始めたのは1990年代で、現在稼働中の太陽光パネルの中には30年以上経過したものも存在します。さらに今後、運用を開始してから40年、50年以上機能する太陽光パネルも出てくると見込まれています。太陽光パネルは比較的シンプルな構造で、可動する部分が少ないため、一般的な家電製品に比べると不具合が起こりにくく、長持ちしやすいと言われています。しかし、寿命が長いとはいえ屋外に設置されている環境下では経年劣化のほか自然災害などの影響もあり、想定より短い期間で寿命を迎えてしまうケースもあります。では、太陽光パネルはどのような理由で寿命を迎えるのでしょうか。
太陽光パネルが寿命を迎える3つの理由
太陽光パネルは丁寧に扱っていてもいずれ寿命を迎えます。寿命を迎える主な理由を3つに分けて解説します。
L 経年劣化
太陽光発電に関するあらゆる設備や部品は経年劣化を避けられません。部品によって劣化速度や寿命が異なるため、特定の部品の劣化によりパネル全体の交換が必要になるケースもあります。太陽光パネルが劣化する原因は、大きく分けて紫外線による変質、熱による温度変化、水分による腐食の進行、機械的ストレスによる破損などが関連していると考えられています。参考:令和3年度脱炭素型金属リサイクルシステムの早期社会実装化に向けた実証事業
また、国立研究開発法人産業技術総合研究所の調査でも、種類の異なるいずれの太陽光パネルにおいても、差異はあるものの経年劣化が近づくにつれて発電量が低下することが分かっています。劣化した状態で運用し続けると、発電量が想定よりも大幅に低下する可能性があり、売電収益の減少にもつながります。
太陽光パネルの種類 | 年劣化率 |
単結晶Si | 0.47~0.75% |
多結晶Si | 0.47~0.75% |
ヘテロ接合単結晶Si | 0.87% |
バックコンタクト単結晶Si | 0.75% |
出典:国立研究開発法人産業技術総合研究所産総研「各種太陽電池モジュールの屋外曝露による経年劣化」
L 汚れの放置
太陽光パネルの表面に付着した汚れも、太陽光パネルの寿命を縮める原因になります。例えば、雑草や枯れ葉、砂や土埃、虫の死骸、鳥や害獣の糞などによって太陽光パネルの一部が汚れ日光を遮ると、その部分の発電ができません。発電量が低下するだけでなく、発電できない部分が電気的抵抗を生み、かえって熱を持ちます。これを「ホットスポット」と呼びます。「ホットスポット」が発生すると、太陽光で発電する部分のセル(半導体の集合体)が焼けてしまい、正常な稼働ができなくなります。また最悪の場合は発火、火災につながります。修理するにしても、メンテナンスを怠っていたことが原因である場合、メーカー保証の対象外となる可能性があります。 L 自然災害による破損
台風や洪水、豪雨、地震や積雪など自然災害も太陽光パネルを破損させ、寿命を迎える原因になります。例えば、台風の強風により飛ばされた石や木の枝などが、太陽光パネルの表面の強化ガラスを損傷させることがあります。地震では設備そのものが倒壊し、パネルが飛散するリスクも考えられるでしょう。ほかにも洪水や豪雨といった水害では、太陽光パネルや設備内に水が侵入すると、湿気により機器が損傷する可能性があります。故障だけでなく、絶縁不良により感電事故が起こるケースもあるため注意が必要です。また、太陽光パネルは1枚の破損が大規模な故障につながるケースも多くあります。例えば、太陽光パネルが1枚故障すると、そのパネルと直列で接続している他のパネルも影響を受け、発電がストップします。大量の太陽光パネルを有する大型の発電所では、1枚の故障に気づけないケースも考えられます。対処が遅れると発電量や売電収益が大幅に低下したり、破損によるホットスポットが発生するリスクもあります。太陽光パネルの寿命を延ばす方法
太陽光パネルは時間の経過とともに劣化し、発電量が低下します。発電量が低下すれば売電収益が減少するほか、太陽光発電設備の売却時の査定額や、中古市場での再利用価値にも影響を及ぼします。つまり、発電事業者としては少しでも太陽光パネルの寿命を延ばし、売電収益を良化させることを考えなければなりません。メンテナンスや運用方法次第で、修理、交換にかかるコストを抑えることができ、太陽光パネルの寿命に大きな差が生まれます。ここからは、太陽光パネルの寿命を延ばすことに欠かせない施策を3つに分けて紹介します。
L 発電量をこまめにチェックする
経年劣化による性能低下を早期発見するために、発電量を定期的にモニタリングして確認しましょう。特に前年や先月比でデータを見ると変動が分かりやすくなります。しかし、発電量はそのときどきの天候や時期によっても変化するため、単純な比較だけでは異常を判断できません。10年、20年と運用していく中で蓄積したデータを参考にするか、もしくは著しく発電量が減少したときに異常を疑います。特に明らかな発電量の減少が起こっている場合、パネルの損傷やケーブルの断線、ホットスポットの発生などの可能性があるため早急なメンテナンスが重要です。これらの異常は火災や事故にもつながるため、発電量のこまめな確認により早期の対策が可能となります。 L メーカーの保証を活用する
メーカー保証を活用して、早期に不具合部分を修理、交換しましょう。太陽光パネルにはJIS基準において最低でも10年のメーカー保証が付いています。この保証には、太陽光パネル本体の不具合を保証する「システム保証」と、一定以上の出力での運用を保証する「出力保証」が含まれています。メーカーによって保証期間が異なるため、確認しておきましょう。メーカー保証では、メーカー側が想定した条件で適切に運用している場合の故障や破損に限り、メーカー負担での修理、交換が可能です。もし、一部の部品に何らかの異常や不具合があった場合、その箇所に対して保証を適用した結果、太陽光パネル全体を延命できる可能性もあります。一方、保証の対象範囲や保証期間を予め把握していないと、異常や不具合があった場合に自己負担で修理、交換することになりかねません。太陽光パネルは修理・交換の規模が大きくなるほどコストも莫大になります。保証期間内であれば、メーカー保証を活用することが、手元に残るキャッシュの最大化とコスト削減の近道です。L 定期的にメンテナンスを行う
太陽光パネルの寿命を延ばすのに欠かせないのが定期的なメンテナンスです。パネルの点検や清掃をして早期に問題箇所の把握や改善に努めることで、発電量を維持できます。また、太陽光パネルのメンテナンスは改正FIT法や電気事業法により義務化されています。規模や専門性の観点から、自社でのメンテナンスは難しいことが多いため、運営・保守管理の専門サービスを提供するO&M(オペレーション&メンテナンス)会社へ委託するのが一般的です。O&M会社ではO&M契約に則り、電気事業法に基づいた保安監督業務や遠隔監視、各種点検などを行ないます。また、定期的な点検だけではなく、パネルが持つ本来の発電量を取り戻すための予防的なメンテナンス、清掃などもO&M会社の役目です。点検、修理、清掃により故障や経年劣化を効率的に抑制できます。メーカーの推奨するメンテナンス頻度を確認した上で、発電所の稼働年月や設置環境に応じたO&Mメニュー、頻度を検討し、発電設備の保守・維持に努めましょう。太陽光パネルの再利用・廃棄方法
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の試算によると、太陽光パネルの年間排出量のピークは2035~2037年頃で、年間約17~28万トンに達する見込みです。これは産業廃棄物の最終処分量の約1.7~2.7%に相当します。
出典:国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「太陽光発電開発戦略2020」
今後は、限りある資源を効率的に循環させながら利用する環境に優しい社会、つまり循環型社会の実現が求められています。環境省が策定した「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」でも、使用済みの太陽光パネルは第1にリユース、第2にリサイクル、第3に埋め立ての順番で取り組むことが重要だと明記されています。ここからは、それぞれの処理方法の特徴を解説します。
L リユース
リユースは、まだ利用可能な使用済みの太陽光パネルを、国内での再販もしくは海外へ輸出する方法です。しかし、リユースとして輸出されるべきではないものが不適正に輸出されたり、リユース可能なものが処分されたりするケースが存在しました。そこで環境省は2021年5月に「太陽電池モジュールの適切なリユース促進ガイドライン」を公表し、リユースの条件を明記しています。太陽光パネルをリユース品として取り扱うには「製品情報・外観」「正常作動性」「梱包・積載状態」「中古取引の事実関係及び中古市場 」といった観点に関する条件を満たさなければなりません。ガイドラインでは、これらの条件のほか、リユース可能な例も掲載されています。参照:環境省「太陽電池モジュールの適正なリユース促進ガイドライン」
出典:環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン(第二版)」P.22
使用済みの太陽光パネルがリユース可能かどうかについては、中古の太陽電池モジュールを取り扱う業者に売却を依頼することが一般的です。また、売却する際は不適正な売買を未然に防止する観点からも、中古品を扱うリユースショップ(リサイクルショップ)など、古物商の許可を有し、信用できる事業者に依頼することが望まれます。
出典:環境省 環境再生・資源循環局 総務課 リサイクル推進室「太陽光発電設備のリサイクル等の推進に向けた ガイドライン(第二版)」P.28
リユース(リサイクル)事業者の中には、必要な許可を得ずに営業しているケースや、産業廃棄物の不法投棄、不正な輸出などを行う悪質なケースもあります。違法な事業に関与しないためにも、リサイクル・リユース事業者の選定は慎重に行ないましょう。
L リサイクル
不具合や損傷などにより再販が難しい場合は、太陽光パネルに使われている素材を分別しリサイクルする方法が推奨されています。リサイクルは、使用済みの太陽光パネルの処理方法として一般的な方法です。環境省が事業者(中間処理事業者、埋立処分事業者)に実施したアンケート調査でも、回収したパネルの68.3%(2021年度実績)がリサイクルされていることがわかっています。出典:環境省「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について」P.9
一般的なシリコン系太陽光パネルには、シリコンのほかアルミニウム(フレーム)やガラス、EVAなど多数の再生可能な資源が使われており、これらをリサイクル工場で分離、破砕して、有用な素材のみを選別して再利用します。現在、実用化されている太陽光パネルのリサイクル技術には、アルミフレームを取り外したあとにガラスを破砕・除去する方法や、破砕してから資源を分別する方法があります。また、このほかにもさまざまなリサイクル技術が実用化に至っています。
出典:環境省 環境再生・資源循環局 総務課リサイクル推進室「使用済太陽光パネルのリユース、リサイクルについて」P.9
リサイクルする場合は、産業廃棄物中間処理業の許可を得たリサイクル・リユース事業者に依頼し、処理してもらいます。なお、産業廃棄物処理にあたっては排出事業者が産業廃棄物処理業者(リサイクル・リユース業者)へ産業廃棄物管理票(以下、マニフェスト)を交付し、後にマニフェストによって処理終了の報告を受ける必要があります。マニフェストとは、産業廃棄物が適切に処理されていることを管理、確認するための書類です。マニフェストの交付は義務であり、違反すれば罰則もあります。必ず交付し、産業廃棄物の処理が適切に行われるのを確認しましょう。
L 埋め立て
リユースもリサイクルもできない太陽光パネルおよびその素材は、最終手段として埋め立て処分されます。また、リサイクルで発生した残渣(ざんさ)も、埋め立て処分の対象となります。
出典:環境省「再生可能エネルギー発電設備の廃棄・リサイクルに係る現状及び課題について」P.10
太陽光パネルは電気機械器具に該当するため、廃棄物処理法に基づき、太陽光パネルの破砕に伴って生じた廃プラスチック類は、最大15cm以下に破砕等を行った上で、浸出液の処理設備を備えた管理型最終処分場に埋め立てなければなりません。太陽光パネルの廃棄処理を行う際は、廃棄物処理法に基づき排出事業者に次のような義務が発生します。
● 適切な処理業者への委託(もしくは排出事業者自らによる処理)
● 委託契約書や産業廃棄物管理票に太陽電池モジュールの詳細を明記
● 廃棄物の適正な処理の方法についての情報提供
● 産業廃棄物管理票(マニフェスト)の提出 など
出典:環境省「太陽光発電設備のリサイクル等に向けたガイドライン(第二版)」P.45
L まとめ
太陽光発電は1973年頃から国内で注目を集め、1990年代から産業分野で普及が進みました。太陽光パネルの寿命は20~30年と言われるため、2030年代後半には廃棄される太陽光パネルが増えると予想されています。大量廃棄に備え、経済産業省の資源エネルギー庁でも、できるだけ有用な金属、資源を選別し、資源を循環させていく対応を求めています。埋め立ては可能な限り避け、リユースやリサイクルができるように定期的なメンテナンスを行って状態を保ちましょう。O&Mで高効率な発電所運営を支援
太陽光パネルの寿命は20~30年と言われています。経年劣化だけではなく、汚れの放置や自然災害の影響も寿命を縮める要因です。定期的なメンテナンスにより、太陽光パネルの健全性を保ち、延命を図ることができます。20~30年と長期にわたって高い発電量を維持、向上させるためには、専門的な知見や実績を有するO&M会社への業務委託が必要不可欠です。
オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社(以下、OREM)は、日本全国に約190カ所、700MW相当の発電所O&M業務を受託しています。(2024年7月時点)太陽光発電所では、AI などのデジタル技術を活用した予防保全型の O&M により、オリックスグループからの受託容量(約 400MW)に対し、開始後 1 年で PR 値(performance ratio:発電所の生産性を数値化する評価指標)を4%以上改善するなど、発電量の最大化に貢献してきました。各種詳細は以下リンク先よりご覧ください。
〈O&Mサービス〉
O&M受託サービスのご案内|オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社
〈太陽光パネルの洗浄〉
パネル洗浄サービス|オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社
また、太陽光発電所の O&M で培ったノウハウと技術力、人材力などを生かし、2024年4月より資源の循環利用で環境負荷低減に貢献する「使用済み太陽光パネルの国内販売・再利用」を新たに開始しました。
〈使用済み太陽光パネルの国内販売・再利用に関するサービス〉
お知らせ|オリックス・リニューアブルエナジー・マネジメント株式会社
太陽光パネルのメンテナンスをはじめ、稼働済の太陽光発電所に関するO&MはぜひOREMにご相談ください。