
[取材先]
株式会社クリエイトホールディングス
代表取締役 林 健太郎氏
顧問 大石 成人氏(創業者)
オリックス株式会社
事業承継ソリューション部 第一チーム 大田垣 拓実
長野支店 支店長 石栗 健一
経営者の高齢化や後継者不足が年々深刻化する昨今。M&Aによる第三者承継は、中堅・中小企業にとって重要な選択肢の一つとなっています。しかし、単なる会社の売却ではなく、自社の歴史や顧客への思いを託し、事業をさらに成長させてくれる理想的な譲渡先と巡り合うことは、決して容易ではありません。
軽井沢で30年以上別荘事業を手がけるクリエイトホールディングス(以下、クリエイト)も、後継者不在からM&Aを決断した一社です。創業者の大石 成人氏が譲渡先に求めたのは、「顧客への責任を果たし、事業をさらに飛躍させてくれること」。この思いに寄り添い伴走したのが、オリックスの事業承継ソリューション部でした。譲渡先に選ばれたのは、「区分所有オフィス(R)」を主軸に不動産事業を展開する株式会社ボルテックスです。
本記事では、両社の戦略的なマッチングの軌跡を通じ、後継者問題の解決と事業成長の両立を目指したM&A仲介の舞台裏に迫ります。
目次
「顧客への責任」と「成長への期待」を込めて事業譲渡を決断

──はじめに、クリエイトホールディングスについて教えてください。
大石氏:当社グループは1994年以来、軽井沢エリアに特化して別荘事業を展開してきました。最大の強みは、不動産・建設・別荘管理の3社が連携し、グループ内で完結できる体制をもっていることです。
不動産会社でありながら本格的な設計・建築機能をもつ業者はこの辺りでは珍しく、用地の仕入れから建築、アフターサービスまでをワンストップで行えるからこそ、軽井沢にふさわしい上質な別荘を提供できると自負しています。


(下)イメージパース内装
──2026年1月にはM&Aにより、首都圏で不動産開発事業を手がける株式会社ボルテックスへのグループ入りを果たしました。いつから第三者承継を検討されたのでしょうか?
大石氏:75歳を迎えた2024年頃からですね。年齢的にいよいよ引退を考えたのですが、娘たちはすでにそれぞれの道を歩んでおり、社内にもすぐトップを任せられる人材は不在でした。無理に会社を継がせて負担をかけるよりは、資本力や新しいネットワークをもつ第三者に事業を譲渡したほうが、会社の将来にとってプラスになると決断したのです。
譲渡先について、退いたあとも30年来のお客さまに変わらぬサービスを提供できることと、会社のさらなる成長を何より重視したかったのですが、納得できる出会いには至っていませんでした。そんな折、以前から取引のあったオリックスに相談したところ、M&A仲介をやっていると教えてもらい、具体的なご提案をお願いすることにしました。
既存事業×クリエイトの大きなシナジーに期待
──その後、オリックスの事業承継ソリューション部から有力な譲渡先候補として紹介されたのがボルテックスでした。ボルテックス側としては、なぜクリエイトの買い手として名乗りを上げたのでしょうか?
林氏:2024年に開始した高級共同所有別荘事業「Seren Collective(R)」をさらに拡大していくうえで、軽井沢という特別な地を知り尽くしたクリエイトが、最高のパートナーだと考えたからです。軽井沢は、大手不動産会社も新規参入が難しいエリアです。地域と長年にわたり信頼関係を構築しなければ情報をいただくことはできません。加えて、厳しい自然保護条例などの建築規制にも対応する必要があります。

ボルテックスは1999年の創業以来、「区分所有オフィス(R)」事業などを通じ、資産価値の高い不動産ソリューションを提供してきました。この「数十億円の都心オフィスビルを小口化し、複数名で共同所有していただく」というコアビジネスのノウハウを、高級別荘の領域へと昇華させたのが「Seren Collective(R)」です。1棟十数億円の別荘を扱う本事業の展開には、情報収集から用地の仕入れ、さらにはコストを抑えた自社での建築までを一貫して任せられる、地域を知り尽くした地場の不動産会社と組むことが最適解だと考えていました。
大石氏:ここ10年、インバウンドの増加やテレワークの定着などを背景にリゾート需要が拡大し、軽井沢の不動産価格は上昇を続けています。現在、新築高級別荘には、数億円を超える価格帯の物件もみられます。そうした背景を考えると、複数名で共同所有する「Seren Collective(R)」は、まさに今の時代のニーズを的確に捉えたすばらしいサービスだと思います。

林氏:まさにそうした状況が続く軽井沢において、クリエイトのように自社で設計・建築まで完結できるスピード感をもった企業は非常に魅力的でした。そこへ、日頃から取引のあるオリックスからM&Aのお話をいただき、「これほど条件に合致するお相手はいない」と思いました。
私としてはぜひ一緒にやりたいと強く思いましたが、ボルテックスにとって初のM&Aということもあり、社内にはM&A後の組織統合や経営体制の維持を不安視する意見もありました。そこでオリックスにも協力いただきながら、M&A後の情報管理や決裁体制を構築するための実践的なノウハウや、両社が組むことで生み出せるシナジーについて、詳細なデータに基づく分析結果などを、社内プレゼンで共有しました。その結果、無事に社内合意を得ることができ、正式に動き出すことになったのです。
──オリックスとしては、どのような考えでこの2社をマッチングしたのでしょうか?

大田垣:ご相談を受けた当初は、事業の引き継ぎやすさを考慮し、軽井沢の地場企業が最適だと考えていました。しかしヒアリングを重ねるなかで、クリエイトの顧客層が「首都圏の富裕層」に集中していることに気づいたのです。であれば、同じく富裕層向けの不動産サービスを展開している企業にお任せするほうが、結果的にお客さまへのスムーズなサービス継続につながると考えを改めました。
オリックスの不動産仲介部門でもボルテックスとは取引があり、この事業領域のさらなる拡大・深化を見据えていたボルテックスにとっても喜ばれる話ではないかと考えました。2社で大きなシナジーが生まれると確信し、大石さまにボルテックスを紹介したところ、前向きに検討していただけることになりました。

M&A成立のポイントは綿密なコミュニケーション
──では、実際にM&Aを進めていくにあたって、オリックスの伴走支援で印象に残っていることはありますか。
大石氏:もっとも心に響いたのは、大田垣さんをはじめとする担当チームの誠実な対応です。もちろん、事業売却には膨大な情報整理と資料作成が必要となりますから、そうした実務の代行・サポートにも感謝しています。しかしやはり、それ以上に密にコミュニケーションを取ってくれて、終始丁寧に対応してもらえたことが私はとてもうれしかったですね。
大田垣:対面でお話ししないと伝わらないことも多いですから、一時期は週3日ほど東京から軽井沢まで通っていましたね。私が別件で訪問できない日も、別の担当者が代わりにお伺いするなど、チーム全体でサポートさせていただきました。こうしたチーム連携によるきめ細かい伴走体制は、オリックスのM&A仲介の強みだと思っています。
林氏:ボルテックスのオフィスにも頻繁に足を運んでいただきました。今の時代、オンラインだけで完結させることも可能ですが、対面で話したほうがやはり安心感がありますよね。何度も顔を合わせていると、次第に仲間意識が芽生えてきました。

石栗:そうした密なコミュニケーションによって信頼関係が築けていたからこそ、難しい調整も乗り越えられたのだと感じています。今回は私がクリエイト側の担当として大石さまのご要望を伺い、別の担当者がボルテックスと連携するという体制で進めさせていただきました。
M&Aは両社の未来を決める決断ですから、より良い条件を追求するなかで、数字面や利益率の評価などを巡るシビアな綱引きや、細かな情報開示の過程で意見がぶつかるタフな局面もありました。しかし、双方の担当者が間に入って互いの真意を丁寧に翻訳し、両社でとことん話し合えたことが、今回の納得感のあるクロージングにつながったのだと思います。
──話し合いを重ねるなかで、両社の信頼関係もより確かなものになっていったのですね。
林氏:おっしゃるとおりです。さまざまな条件を交渉するなかで大石社長(当時)の温厚で懐の深いお人柄に触れ、私たちの信頼は深まっていきました。特に大きかったのは、ボルテックス代表の宮沢と大石社長がクリエイトの別荘を見ながら直接お話しできたことです。現場で質の高い建物を拝見したことで、長年培われてきた技術力の高さやお客さまに支持される理由が肌で分かり、確かな信頼へとつながったと聞いております。
大石氏:私も宮沢代表と直接お話しし、大きな安心感を得られました。非常に落ち着いた誠実な方で、当社の事業やお客さまに対する思いもしっかりと受け止めてくださり、本当に良いご縁をいただいたと感じましたね。

石栗:両社の結びつきをさらに強固にするため、クロージングに先立ち、林さんとクリエイトのキーマン10名以上をお引き合わせしました。クリエイトの強みである優秀な従業員の皆さんとお会いいただくことで、お互いの不安を拭い去り、両社のベクトルを合わせられると考えたからです。大石さまにもご快諾いただいて、感謝しています。
林氏:こうしたトップ同士、そして現場を含めた相互理解を深めるための重要な段取りを完璧に整えてくれたのがオリックスでした。おかげで両社の距離がぐっと縮まり、M&Aの成立に向けて大きく前進することができました。
グループの総合力と細やかな伴走で導く、納得のクロージング
──M&Aの成立から約半年がたちました。両社が一緒になったことで、現場ではどのような変化やシナジーが生まれ始めているのでしょうか。
林氏:目に見える成果として表れるのはこれからですが、現在は人材交流などを活発に行い、今後の飛躍に向けた基盤づくりを着実に進めているところです。ゆくゆくは軽井沢以外の別荘地にも「Seren Collective(R)」を広げたいという思いもあります。そのための第一歩として、まずはこの軽井沢エリアにおいて、富裕層顧客への提供価値の拡張、高級別荘領域におけるバリューチェーンの強化、そして事業基盤の確立を進めていきたいと考えています。
──最後にオリックスから第三者承継型M&Aを検討している経営者の方にメッセージをお願いします。
大田垣:オリックスのM&A仲介の強みは、不動産・金融・リースなどのグループの事業基盤と、全国の営業拠点と専門チームのネットワークにより、企業ごとの課題に合わせて支援できることです。そして何より大切にしているのは、経営者の思いに寄り添い、会社や社員、地域への思いも含めて継承を支えることです。
個人的には、M&Aに関わるすべての人が納得感をもった状態でクロージングを迎えられるよう導きたいと思っています。今回も、クリエイトとボルテックスの双方に多大なお力を借りながら、最終的に全員に納得してもらえたのではないかと思っています。事業承継でお悩みの方は、ぜひお気軽にご相談ください。全力でサポートさせていただきます。

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