すべては最高のエンタメ体験を届けるために。舞台制作の常識を更新する、セカンドステージの「ワンストップ体制」とは

[取材先]セカンドステージ株式会社(大阪府)
本記事は2026年3月時点の情報を基に作成しています。

イベントやライブの舞台制作の現場では、音響・照明・映像といった各分野の技術が高度化するに伴い、制作工程は複雑化しています。さらに人材不足やコスト上昇も重なり、公演の主催者や演者にとっては、「イベントの体験品質を高めようとすると、調整負荷やコストが増大し、それらのバランスを取ることが難しくなる」という課題が顕在化しています。

こうした課題に対し、制作工程を一括で担うことで、品質とコストの最適化を同時に実現しているのが、大阪にあるセカンドステージ株式会社です。

1989年の創業以来、音響を起点に照明・映像へと事業領域を拡大し、現在では企画から会場・キャスト手配、PR、当日運営までをワンストップで提供。大規模興行から企業案件まで、幅広い現場を支えています。

なぜ同社は、このような体制を実現できたのでしょうか。そして、これからのエンターテインメント(エンタメ)業界をどのように見据えているのでしょうか。オリックス 京都支店の漆山 直樹が、代表取締役の若松 吉己氏にお話を伺いました。

より良い現場支援を突き詰めた先にあった「ワンストップ」という答え

代表取締役 若松 吉己氏

──まず、貴社の事業内容についてお聞かせください。

若松氏:分かりやすく言えば「音響・照明・映像のレンタル業」ですが、私自身は「エンターテインメントを実現したい人の思いを形にする会社」だと捉えています。

具体的には、企画立案から会場・キャストの手配、制作、さらにはPRや当日運営に至るまで、イベント/ステージに関わる業務を一括して担っています。

また音楽ライブに限らず、地域活性化イベントやeスポーツイベントなどにも対応しています。LEDを用いた撮影手法で、さまざまなテレビドラマの撮影にも携わっており、例えば2022年には「In Camera VFX(LEDにCG背景を映して撮影時に背景込みの画を作る手法)」を使用し、時代劇の合戦シーンなどの臨場感が求められる場面の背景表現を支援しました。

「In Camera VFX」と呼ばれる撮影手法。LEDに映したCG背景の光が演者に直接当たることで自然に顔や体に反映されるなど、環境との一体感が生まれる。

──エンターテインメントの総合プロデュースということですね。創業当初から現在の形だったのでしょうか。

若松氏:1989年に大阪で個人事業として立ち上げた当初は、音響に特化していました。ところが音響エンジニアとして現場を重ねるうちに、自分の担当する「音」には納得できても、「照明」や「映像」とかみ合わず、最終的なアウトプットの品質が伸び切らない場面にたびたび遭遇しました。一方で、当時の分業体制では他領域に踏み込んだ調整・提案が難しい。そんなもどかしさが、「個別最適ではなく、最初から全体を一体で設計すべきではないか」という考えにつながりました。そこから必要に迫られる形で、少しずつ照明や映像へと領域を広げ、現在のワンストップ体制へとつながっていきました。

──ワンストップ体制について、特に評価されているのはどのような点ですか。

若松氏:最も評価いただいているのは、「クオリティー向上」と「コスト最適化」を同時に実現できる点です。

近年はリアル回帰と体験価値志向の高まりにより、「コト消費」が拡大しています。実際、一般社団法人日本イベント産業振興協会の調査によると、2024年のイベント産業全体の産業規模は2兆8535億円(前年比108.3%)、コロナ禍前の2019年比でも約1割増と回復を超えた成長を見せています。ライブ・エンターテインメント市場に限っても、ぴあ総研の調査では2024年に7605億円(前年比10.9%増)と、2年連続で過去最高を更新しています。

一方で、需要の拡大に対して人材の供給が追いついておらず、人手不足とコスト上昇が同時に進んでいます。加えて映像の大型化などの演出の高度化により、制作工程はどんどん複雑化しています。その結果、公演主催者や演者にとっては「品質とコストの両立」が一層難しいテーマになっています。

そんな中、当社では、窓口と設計を一本化し、企画から運営までを統合管理しています。公演主催者や演者などの発注者は初期要件を一度共有すれば、その後の調整負荷を大きく減らせます。

加えて、現場で急な変更が出ても社内の各部門がその場で連携し、即座に解決策を出せる。結果として手戻りや遅延が減り、そこで生まれた時間的・金銭的な余裕を品質向上に再投資できるため、品質を上げながらコストも最適化できるのです。

音響・照明・映像などの舞台演出から企画・PRまでを一括で手配、管理することができるワンストップ体制

部署横断のチームワークと未来起点の先行投資で体制を強化

──ワンストップ体制は非常に合理的な仕組みですが、ここまで整えるのには相当なご苦労があったのでは。

若松氏:時間をかけて少しずつ整え、ようやく形になってきた状況です。領域を広げる際には、まず自分自身が現場に入って理解を深め、その上で専門性の高い人材を外部から招くようにしてきました。

労力はかかりましたが、各領域で何が起きているのかを自分の中で解像度高く捉えられるようになり、社内でどのような相談が上がってきても判断できるようになりました。

一気につくれる仕組みではないので、腰を据えてやり切らないと同じレベルにはならない。そういう意味では、参入障壁になっているのかもしれません。

──体制を拡大するほど運用は難しくなると思いますが、どんな工夫で品質を保っていますか。

若松氏:大きく分けると、「組織づくり」と「設備投資」に注力しています。

まず組織面では、部署間の連携を重視しています。現場では複数の専門領域を一体で動かす必要があるため、日常的に部署をまたいだ作業を行い、関係性を築くことを意識しています。現場に入る前からコミュニケーションの土台をつくっておくことで、本番での連携がスムーズになるからです。例えば、機材の積み込みを全員で行うといった取り組みも、その一つです。

そして設備投資について、「導入すれば売り上げが上がるか」ではなく、「導入しなければ2〜3年後に困るか」という未来からの視点で判断しています。

変化の速いエンターテインメント業界において、現状維持は衰退を意味し、“止まって見える”こと自体が最大のリスクです。だからこそ、常に未来のスタンダードを見据え、先行して投資することが不可欠だと考えています。エンターテインメントの分野では海外が先行しているケースが多いため、海外の展示会にも継続的に足を運び、新しい技術の潮流を肌で感じ、次の一手を考えるようにしています。

直近では、LEDスクリーンや音響システムなどの設備を拡充しています。また2017年に立ち上げた自社ブランド「BRAX」では、現場のニーズを反映した映像演出機器やスモークマシンを開発・販売し、プロの現場で採用実績を重ねています。

さらに、専門性の高い領域としてワイヤレスマイクの運用も内製化しています。音楽フェスなどでは200〜300本規模で使用されることもあり、周波数管理の精度がそのまま現場の安定性に直結します。干渉が発生すると音が途切れたり出なくなったりするため、現場全体に大きな影響を及ぼすからです。加えて法律制度変更などで運用条件が変わることもあるため、事前設計から当日の監視・調整まで一貫して担える体制が欠かせません。

当社ではこうした変化を見据えて専門部署を立ち上げ、設計から運用までを一体で担う体制を整えました。立ち上げ当初は需要が大きくなかったものの、海外動向も踏まえて先行して取り組み続けた結果、現在では大規模案件において欠かせない機能の一つとなり、現場の安定運用を支えています。

エンタメの最先端潮流を捉え、進化し続ける組織へ

──エンターテインメント業界を支える現場において、今後重要になると感じている課題やテーマは何だとお考えですか。

若松氏:技術者の地位向上と、それに伴う報酬体系の整備です。現状、技術者のスキルを評価する明確な基準が業界全体で確立されておらず、報酬も曖昧になりがちです。これが、現場の安全性や品質のばらつきを生む一因にもなっています。

例えば、大規模ホールでの音響運用に公的な資格制度を設け、技術レベルに応じた報酬体系を整備するなど、業界全体の質を底上げしていく仕組みづくりが急務だと考えています。

──事業面では、どのような未来を見据えていますか。

若松氏:体験価値を軸としたエンターテインメント市場は、今後さらに拡大していくと確信しています。

2025年1月にラスベガスの球体型アリーナ「Sphere(スフィア)」を視察しましたが、その体験は衝撃的でした。会場全体が巨大なLEDスクリーンで覆われ、圧倒的な没入感の中でライブが行われる。あれこそが、技術とクリエイティビティが融合した未来のエンターテインメントの一つの形です。

当社としても、そうした新しい表現や体験価値の創造を、総合プロデュース力で力強く支えていきたいと考えています。

──最後に、貴社が目指すこれからの姿を教えてください。

若松氏:社名に込めた2つの意味が、私たちの姿勢そのものです。1つは、演者が輝く舞台を「ファーストステージ」とするならば、われわれ裏方はそれを支える「セカンドステージ」に立つプロフェッショナルであるという気概。そしてもう1つは、常に現状に満足せず、挑戦者である「二番手」の気持ちを忘れないという決意です。

エンターテインメントの世界に完成形はありません。だからこそ当社は、先進技術への先行投資と、それを最大限に生かす組織力という両輪を力強く駆動させ続けます。そうしてエンターテインメントの表現の可能性を拡張し、市場に新たな価値を提示していくことが、自分たちの使命だと考えています。

<取材を終えて>
オリックス京都支店 漆山 直樹

若松社長の経営者でありながらも非常に身近で、率直に話してくださるお人柄を改めて感じることができました。また、社員の方々との対話を通じて築かれた信頼関係こそが、同社のワンストップ体制を支え、その強みにつながっているのだと実感しました。加えて、未来を見据えた投資判断についても、本質的なお話を伺うことができました。

エンターテインメントの進化を支える同社の取り組みを、今後もオリックスとしてしっかり伴走していきたいと考えています。

企業概要※ 公開日時点

社名 セカンドステージ株式会社
本社所在地 大阪府吹田市西の庄町9-18
設立 1991(平成3)年1月28日
代表者名 代表取締役 若松 吉己
従業員数 35名
事業概要 舞台業務(音響 照明 映像 舞台操作)
販売業務(音響機器 照明機器 映像機器 舞台装置)
レンタル業務(音響機材 照明機材 映像機器)
オペレータ派遣(音響 照明 映像オペレータ)
人材派遣(司会者 タレント 他)
企画制作(イベント企画・制作)
設備(設計 工事 施工 保守点検)
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