
[取材先]
株式会社大京
人口減少による市場縮小に加え、顧客層やライフスタイルの変化により、新築マンション業界の競争は一段と激しさを増しています。トップシェア企業であっても、選ばれ続けるには、時代に即したブランド変革が欠かせません。
分譲マンションの累計供給戸数で国内最多※1を誇る株式会社大京も、こうした市場環境の変化を受け、ブランド刷新に踏み切りました。長年同社を支えてきた「ライオンズマンション」の圧倒的な認知度に甘んじることなく、業界内でのプレゼンスを高めるべく、2023年に「THE LIONS」へとブランドを刷新しました。
それは名称変更に留まらず、全社員を巻き込んだ「ボトムアップ型リブランド」でした。全社員が当事者として挑んだプロジェクトの全貌と、同社が切り拓く住まいの新常識について、常務執行役員の蔭平 良昭とブランド推進課の高橋 愛莉に伺いました。
- 2025年12月現在
目次
ファミリーからパワーカップルへ顧客層が変化。市場激変で大京が打った「次の一手」
──大京の沿革についてお聞かせください。

蔭平:大京の前身である大京商事は、1960年に設立されました。当初は主に別荘分譲を手がけていましたが、1968年に分譲マンション事業に参入し、シリーズ第1号となる「ライオンズマンション赤坂」を販売しました。名称は社内外から公募し、「家族愛が強いとされるライオンのように、このマンションで深い家族愛を育んでほしい」との願いが込められています。
それから10年後の1978年には、事業主別のマンション年間供給戸数で業界1位となり、以降、2006年まで29年連続で首位を維持しました。2025年12月時点での累計供給戸数は38万戸を超え、国内最多の実績を誇ります。
──歴史ある「ライオンズマンション」が、2023年に「THE LIONS」へと生まれ変わりました。なぜこのタイミングでリブランドを実施したのでしょうか?
蔭平:さまざまな要因がありますが、もっとも大きいのが顧客層の変化です。これまで「ライオンズマンション」は郊外のファミリー層をメインターゲットとしてきました。しかし、少子化が進む中で世帯人数は減り続け、今新築マンションの購買の中心となっているのは「世帯年収1200万円以上の共働き夫婦」、いわゆる「パワーカップル」です。
そもそも日本では建築費の高騰・用地取得の難化・人手不足などを背景に、新築マンションの供給戸数が急速に縮小しています。2000年のピーク時には、首都圏で年間約9万5000戸が供給されましたが、2025年には約4分の1となる約2万2000戸まで減少しています。さらに、こうした環境のもとでマンションを供給する企業も一部に集約されつつあり、都心を中心に価格が上昇する中で、顧客獲得競争は激しさを増しています。大京も新たな顧客層に向けてブランド価値を再定義するため、今回のリブランドに踏み切りました。
60年の歴史を継承しつつ、生まれ変わった「THE LIONS」
──「THE LIONS」のコンセプトを教えてください。
蔭平:「ライオンズマンション」が培ってきた「親しみ」「安心・安全」のイメージに、「上質・洗練」「一歩先の暮らし」を加え、現代の多様な価値観に応える住まいを追求しています。ブランドステートメントは「人生には価値がある」。その考えのもと、「人生を守りぬく強さ」「誇りを生むデザイン」「地域と地球の調和」「一歩先をゆく感性」の4つの観点から商品開発を進めています。
──イメージを大きく刷新するにあたり、社内で「新しいブランド名にする」という選択肢も上がったのでしょうか?
蔭平:ブランド名変更の議論もありましたが、最終的に「ライオンズ」の名は継承しました。社員アンケートでは9割が「ブランドに誇りがある」と回答するほど、名称への強い愛着があったからです。
その一方で、同じく9割の社員が「ブランドの立て直しが必要」とも回答しました。愛着があるからこそ、「このままではいけない」という強い危機感があったのです。この全社的な熱意を原動力にするため、今回のリブランドは全社員を巻き込んだボトムアップ型で進めることにしました。そのプロジェクトリーダーをつとめたのが、ここにいる高橋です。
全社員でブランドの価値を高めていく。「DAIKYO NEXT ONE PROJECT」
──今回のリブランドプロジェクトの概要を教えてください。

高橋:もっとも重視したのは、社員一人ひとりがブランドの本質を理解し、日々の業務で実践できる状態を作ることです。
そのため、2022年度の第一フェーズでは「NEXT LIONS PROJECT」を立ち上げ、インナーブランディングを実施しました。その取り組みの中で、新たなブランドステートメント「人生には価値がある」と、ブランドムービーを制作しました。1年かけて議論を重ねたことで、社員に当事者意識が芽生えました。
──では、次のフェーズは?
高橋:2023年4月には第一フェーズを踏まえてリブランドを発表し、続く第二フェーズでは「DAIKYO NEXT ONE PROJECT」を始動しました。本プロジェクトは大京がこれまで培ってきた知見や社員の挑戦をもとに、住まう人の次なるニーズを先読みし、新たな価値の創出を目指す取り組みです。「インプット・アウトプット・発信」という3つのサイクルを通じて、顧客理解を深めるとともに、社員一人ひとりの視座を高め、組織全体の変革につなげていきます。

2023年度は、シンボルアクションとして2050年の暮らしを表現したコンセプト物件「THE LIONS JOURNEY 未知をゆくレジデンス」を考案しました。このプロジェクトで私たちが形にしたのは、「移動し続けるマンション」をコンセプトに、不動産という枠組みを超えて、人生の可能性を拓き続ける住まいのあり方です。
2050年には、人口構造や暮らし方、テクノロジーが今とは大きく変化していると思います。あえてその遠い未来をテーマに据えることで、「THE LIONS」が夢のような未来の実現に向けて、着実に「人生の価値」を高めていく姿勢を示したいと考えました。
構想にあたっては、まず社員ワークショップでアイデアを出し合い、専門家の協力のもとCGパースや映像を制作しました。さらに、アートイベント「DESIGNART TOKYO 2023」に出展することで、私たちの目指す未来の住まいを広く社会へ発信しました。
──このサイクルを通じて、具体的にはどのようなアイデアが形になっていったのですか?
高橋:「間取りからの解放、脱LDK」という考え方から、可変式の壁「Relation Wall」というアイデアも生まれました。現在の住宅の多くは間取りを前提に設計されていますが、それは同時に、暮らし方が間取りに規定されているともいえます。そこで、そのときどきの暮らし方や気分に合わせて空間を自由にデザインできれば、住まいはもっと快適になると考えたのです。
「Relation Wall」であれば、平日はパーソナルスペースを重視した空間に、休日は壁を柱状に巻いて収納することで大きなワンルームにするなど、間取りを再構築することにより、人と人の関係性をデザインすることができます。「隔てる」と「つなぐ」その両立が家族と社会を緩やかに結びます。「Relation Wall」のアイデアはiF Design Award 2026※2を受賞。現在はまだ研究開発段階ですが、2030年ごろの実用化を目指しています。
- ドイツのiF International Forum Designが主催する国際的なデザイン賞。製品・建築・UX/UIなど幅広い分野を対象に毎年審査が行われる。Red Dot Design Award、IDEAと並び「世界三大デザイン賞」の一つ
──インプット・アウトプット・発信のサイクルが今も回り続け、「未来のマンション」の実現に着実に近づいているわけですね。
高橋:そうですね。今回、このボトムアップ形式でリブランドを実現したことで、「ブランドは、会社から与えられるものではなく、自分たちで育てていくもの」と捉える社員が増えたと感じています。
全社員参加型で取り組みを進めていく中で、例えば用地取得や建築企画、設計、販売、さらにはアフターサービスまで、それぞれの日々の仕事や行動そのものが、ブランドを形づくっていくという意識が社内に少しずつ根付いてきました。自分たちで作ったブランドだからこそ、大切に育て、広げていきたい。今後も「DAIKYO NEXT ONE PROJECT」を継続し、「THE LIONS」の価値を全社員で高めていきます。
社会課題の解決と上質な暮らし。それを両立するリーディングブランドへ
──最後に今後の展望についてお聞かせください。
蔭平:長期的には、高橋が言ったように「人生の価値を高める理想のマンション」の実現に向けて、全社員で「THE LIONS」を育てていきたいと思っています。そのためにも目下、一番力を入れているのが「サステナブルな住まいづくり」です。もともと当社ではZEH-M(ゼッチ・マンション)※3の開発に力を入れており、「THE LIONS」のフラッグシップ物件である「ザ・ライオンズ世田谷八幡山」は、全住戸で一次エネルギー消費量削減率100%を実現した日本初のレジデンス※4となっています。
- 断熱・省エネ性能を高め、太陽光発電などによる「創エネ」を組み合わせることで、年間の一次エネルギー消費量の収支ゼロを目指す集合住宅のこと(Net Zero Energy House Mansionの略)
- 一般社団法人住宅性能評価・表示協会公式Webサイトより算出。鉄筋コンクリート造の分譲マンションにおいて、本物件が最も早くBELS評価書を取得しているため

大京では昨年「住まいのサステナビリティ」に関する調査を行い、『住まいのサステナビリティ白書』として公開しました。「人生の価値」を高めるだけでなく、住まいづくりを通じて持続可能な社会にも貢献していきたい。「THE LIONS」を、社会課題の解決と上質な暮らしを両立するリーディングブランドへと育て、より多くの方に新しい住まいの価値を届けていきます。

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