成果を出す組織の“土台”を築く。早大ラグビー部元監督に学ぶ「チームビルディング」入門

[監修]株式会社チームボックス代表取締役CEO/日本オリンピック委員会(JOC)サービスマネージャー 中竹 竜二
本記事は2026年1月時点の情報を基に作成しています。

多様な働き方や価値観が広がる中で、日常の業務は回っているにもかかわらず、「高い目標や難しい課題に挑むための組織力が弱まっている」と感じる企業が増えています。こうした状況を打開するアプローチとして、近年注目を集めているのが、組織を土台から強くする「チームビルディング」という考え方です。

今回は、株式会社チームボックス代表取締役CEOの中竹 竜二氏に、チームビルディングの本質と実践のポイントを伺いました。中竹氏は、早稲田大学ラグビー蹴球部監督としてフォロワーシップ(※)を導入し、自律型組織への変革で大学選手権二連覇を達成。その後も企業の組織開発や指導者育成を通じて、チームづくりの現場を見続けています。スポーツとビジネスの最前線で得られた実践的な知見から、チームワークとの違いを起点に、具体的な手法や成功事例を交えながら、組織力を高めるためのヒントを探ります。

  • リーダーを含む組織・チームのメンバーが、成果や成長を最大化するために、自主的・自律的にお互いをサポートすること

「チームビルディング」とは何か。その本質と、「チームワーク」との違い

——まずは「チームビルディング」とは何か、定義をご説明ください。

「チームビルディング」の定義について、まずは「チームワーク」との違いからお話しします。

簡単に言うと「チームをワーク(機能)させて成果を出す」のがチームワーク、「成果が出せる状態にチームをビルドする(つくり上げる)」のがチームビルディングです。つまり、チームビルディングが土台で、チームワークはその上で機能するということです。この2つは補完関係にあり、両立することでエンゲージメントが高い組織が生まれ、生産性が向上します。

これまで多くの企業は「チームワーク」のため、研修による人材育成や人材確保に注力し、個人のスキル向上を図ってきました。しかし、能力の高い人材を集めても、信頼関係がなければ困ったときに助け合いが起きません。会議は回っているように見えても、実は情報が上がらない、異論が出ない、決定に納得できない——そんな不具合の積み重ねが、やがて致命的な業務上のトラブルや業績不振を招いてしまう。こうした経験を通じて、「原因はスキル不足ではなく、土台となる関係性の弱さかもしれない」と気づく企業が増えてきました。

——チームビルディングが重要視されるようになった、大きな転機は何でしょうか。

背景にあるのはコロナ禍です。リモートワークが進み、雑談が減った結果、小さな違和感の共有や相談が起きにくくなりました。すると、認識のズレが放置されたり、問題が大きくなってから表面化したりします。

さらに、働き方改革、副業や転職の増加、育児・介護による休職など働き方が多様化し、帰属意識は薄れがちです。だからこそ今、意図的に関係性をつくり、チームの土台を整える「チームビルディング」が求められています。

——なるほど。中長期的に見れば、大きな効果が期待できるということですね。

はい。即効性があるタイプの施策ではありませんが、人間関係が円滑化することで将来的に圧倒的な成果を出すための強固な土台を築く、最も確実な方法といえるでしょう。

丁寧に段階を踏むプロセスが本質的な関係性をつくる

——では、具体的にはどのようなプロセスでチームビルディングに取り組んでいけばいいのでしょうか。

前提として、「一体感」「一枚岩」といった言葉のイメージをすり合わせておくことが重要です。人によって頭に浮かべているイメージが違うままだと、チームビルディングはうまくいきません。「自分たちが言う一体感とはどんな状態か」「どんな場面を指すのか」を具体的にすり合わせることが、チームビルディングの成否を分けます。

その上で、最初のフェーズは「コネクト」です。対面でもオンラインでも構いません。まずはきちんと向き合って話すこと。特に上司やリーダーは「聞く側」に回って、傾聴の姿勢を示すことが重要です。仕事の話だけでなく、過去の経験や最近心が動いた出来事など、その人にしか語れないパーソナルな話題を扱い、相互理解を進めます。

次のフェーズが「シェア」です。一人ひとりが持っている情報や経験、そして違和感・不安・期待といった感情も含めて、チームの中で話に出します。大切なのは「正しい意見」を言うことでも、「ロジックで競う」ことでもありません。評価や反論を気にせず、自分の価値観を言葉にすることです。

この2つが整って、ようやくチームは真の協働に向けたスタートラインに立てます。

——社内のつながりを強くする上で、効果的な取り組みのアイデアはありますか。

おすすめは「業務以外の無目的な時間を、あえて一緒に過ごすこと」です。かつては飲み会や社員旅行のような業務外の場が、人間関係の潤滑油として機能していました。効率化の流れで削られがちでしたが、最近では社内の運動会などのイベントを開催する企業も見られます。

「若い世代は飲み会が嫌い」と言われることもありますが、つながりを求めていないわけではありません。敬遠されるのは、上司の自慢話や説教が中心になってしまう場です。上司側が問いかけや傾聴によって安心して話せる空気をつくることで主体性を引き出し、つながりを生み出します。

私のクライアントには、社員同士でキャンプに出かけ、たき火を囲むイベントを行った企業もあります。自然の中だと特に肩書きや役割のよろいが外れやすく、本音や弱みも含めて語り合えるのでしょう。場の力を借りて、関係性の壁を崩していくのも有効な方法です。

チームビルディング成功の鍵は、経営者自身の実践にある

——企業の経営者は、自社のチームビルディングにどう関わっていけばよいのでしょうか。

多くの経営者は「新しい施策を入れなければ」と考えがちですが、最初にやるべきことは、制度を増やすことではありません。まずは人と人の関係づくりにきちんと時間をかけ、個人間での相互理解を深めることです。

もう一つ欠かせないのが、経営者自身が率先してチームビルディングに取り組むことです。私はよく「半径5メートルから始めてください」とお伝えしています。つまり、自分のすぐそばにいる2、3人と、本音で話せる関係になっているかを振り返るということです。ここができていないまま「チームビルディングをやろう」と号令をかけても、現場には響きません。

だからこそ、経営者が当事者として場に入りましょう。研修であれば、主催者ではなく参加者として出席する。迷いや弱さも含めて言葉にしてみる。幼少期の話や失敗談を語るだけでも、周囲の空気は驚くほどやわらぎ、対話の質が変わっていきます。

——最後に、チームビルディングに取り組む中堅・中小企業の経営者やリーダー層に向けて、メッセージをお願いします。

成果を出せるチームを構築するためには、良い伝統は大切にしつつも、時代の変化に即した取り組みを重ねていくことが必要です。チームビルディングは、即効性のある施策やツールではありません。うまく話せず気まずくなったり、声をかけても反応が薄かったりすることもあります。けれど、そうしたつまずきも含めてプロセスです。

チームづくりは、終わりのあるプロジェクトというより、長い旅に近いものです。短期の成果を焦るよりも、小さく始めて、続けること。その積み重ねが、組織の土台になる本質的な関係性を育てていきます。

中竹 竜二(なかたけ・りゅうじ)

株式会社チームボックス代表取締役CEO
日本オリンピック委員会(JOC)サービスマネージャー

1973年、福岡県生まれ。早稲田大学ラグビー蹴球部では主将として準優勝、監督就任後は「フォロワーシップ」論を用い大学選手権二連覇を達成。英国レスター大学大学院社会学修士。三菱総合研究所、日本ラグビーフットボール協会初代コーチングディレクターを経て、株式会社チームボックス設立。「成人発達理論」を基盤に経営層の「アンラーン」と本質的な「行動変容」を支援している。現在はJOCサービスマネージャーとして全競技の指導者育成を主導するほか、一般社団法人スポーツコーチングJapan代表理事も務める。著書に『ウィニングカルチャー』『アンラーン戦略』『「人の器」の磨き方』(共著)等。

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