人口増加を逆手に取った脱炭素戦略~生物由来建材が、都市のネットゼロ目標を後押しする理由~

[Publisher] World Economic Forum

この記事はWorld Economic ForumのAmanda Sturgeonが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

  • 2050年までに、都市部に住む人口は世界人口の約70%に拡大すると予想され、新たな住居への需要が高まると予測されています。
  • この予測は、建設業界だけでなく、地球環境にとっても朗報となる可能性があります。
  • 都市部で新たに建てられる建物のごく一部にでも、サステナブルなバイオベース(生物由来)建材が利用されるだけで、炭素排出量の大幅な削減と炭素貯蔵が促進され、ネットゼロ目標の達成への大きな助けとなります。

現在、世界人口の半分以上は都市部に住んでいますが、2050年までにこの割合は約70%まで増加すると見込まれています。これは将来、都市人口が増えた分だけ、住む場所と働く場所、それらを支えるインフラが必要になることを意味します。

これは、建設業界にとってだけでなく、地球環境にとっても良い影響をもたらすでしょう。都市部で新たに建てられる建物のごく一部であっても、サステナブルなバイオベース(生物由来)建材が利用されるだけで、炭素排出量の大幅な削減と炭素貯蔵が促進され、ネットゼロ目標の達成に貢献する可能性があるからです。バイオベース建材とは、生物由来の物質から製造された材料のことであり、木材はその一例です。

人気が高まるバイオベース建築

偉大なる自然の力を借りた都市の再生は、すでに始まっています。バイオベース建築は、建物の環境負荷を最小限に抑えたいと考える最新動向に敏感な人たちの間で広まりつつあります。実証実験として建てられた建物がきっかけとなり、バイオベース建材が本格的に導入されることが期待されています。

タンザニアでは、アフリカで最も高い木造建築となる高さ96メートルの「ブルジュ・ザンジバル」が計画されています。これは、ザンジバルシティ近郊で開発中の都市フンバ・タウンの中心部に計画されており、間もなく着工されます。都市に森を運び込むこのビルは、柱には地元で調達されたグルーラムと呼ばれる構造用集成材、スラブにはクロスラミネート木材(CLT)が使われる予定で、現地の農村部と都市部で雇用を生み出すことが期待されています。また、ブルジュ・ザンジバルの高級分譲住宅の売り上げを元手として、周辺のフンバ・タウンに安価な低層住宅を整備する計画となっており、こちらでもサステナブルな材木が利用されます。建物内部の空気を冷却するデザインが取り入れられているため、電力消費量の多いエアコンの使用が抑えられるはずです。

サステナブルなマス・ティンバー(複数の木材を組み合わせて、圧縮強度と張力強度を向上させた集成材)工法は、先進国でも進んでいます。最近、世界最大の木造都市になると見込まれるある計画が発表されました。スウェーデン首都南部にあるシクラ地区に建設される予定の「ストックホルム・ウッドシティー」です。25万平方メートルに及ぶ開発計画は2025年に着工予定で、完成すれば2000棟の住宅と7000カ所のオフィスに加え、レストランや店舗が立ち並ぶ都市となるでしょう。この木造都市のデザインには、屋上緑化などその他の自然要素も取り入れられる予定です。

自然の力を解き放つ

気候変動対応型林業(Climate-smart forestry)は、都市の拡大という課題にすばらしいソリューションを提示します。木材供給は、植林によって継続的に補充され、樹木が成長するにつれて、大気中から炭素を貯蔵または吸収します。吸収された炭素は、木材、森林の植物、土壌の内部に貯蔵され、巨大なカーボンシンク(炭素吸収源)が形成されます。森林由来の素材は、建物の骨組みや戸棚といった製品に加工された後も炭素を貯蔵し続けます。また、循環経済の一環として、その建物や戸棚が使われなくなった後も、例えば柵などに再利用された場合にも内部に炭素を保ち続けます。

現在、世界のエネルギー・素材加工に由来するCO2排出量の39%を建設部門が占めています。もし都市の新しい地区が、炭素を排出する代わりに貯蔵できるとしたら、気候変動を抑制し、洪水などの気候災害を食い止めることに貢献できるでしょう。鋼鉄とコンクリートからなる典型的な建物が、推定2000トンのCO2を排出するのに対し、同規模の木造ビルは、逆に2000トンの炭素を貯蔵することができるのです。

木材は、以前からサステナブルな炭素貯蔵素材の主力ですが、木材以外の新素材も出てきています。藻類を利用した藻類建築技術(ABT)が用いられた革新的な外観の建物は、屋内を暖める効果があります。また、菌類は、持続可能な断熱材やパネル、床材、家具用に菌糸体複合建材として利用されます。さらに、はレンガに姿を変えることができます。こうした新素材がマス市場に出回るようになるためには、さらなる研究開発が必要ですが、その潜在能力は非常に大きいです。

ネットゼロを超える利点を持つバイオベース建材

バイオベース建材の利用を拡大することは、環境保全に役立つだけでなく、地域経済を活性化し、雇用を創出し、生物多様性保全や森林再生にも貢献します。気候変動対応型森林経済プログラム(Climate Smart Forest Economy Program:CSFEP)は、森林と林産物が気候変動対策に貢献し、地域共同体の経済的・社会的ニーズを支えることに関して、知見を蓄積し広めるための世界的取り組みです。CSFEPが支援する多くのプロジェクトの一つが、アフリカで進んでいます。建築・エンジニアリング・建設企業のビルドX社は、CSFEPと提携し、ケニア、タンザニア、ウガンダにおいて、地元で持続可能なかたちで生産されたマス・ティンバーの使用を推進し、地域的バリューチェーンの開発、サステナブルな森林管理の普及に取り組んでいます。ビルドX社の脱炭素都市生活モデル(MODUL)は、クロスラミネート木材を利用したフラットパック都市住宅システムであり、低・中所得層向けに手頃な価格でサステナブルな住宅を提供することを目指しています。

マス市場でのバイオベース建築への転換

バイオベース建材は大きな可能性を秘めていますが、一方で、その全面的な普及にはいくつかの障壁が立ちはだかっています。大きな課題は、デベロッパー、建築家、エンジニア、投資家、保険会社、政府、政策立案者などのステークホルダーを説得し、建設に自然素材を取り入れることの価値を理解してもらうことです。消費者側には、自然素材に関する多くの誤解がはびこっています。建築物が自然と調和して機能する未来を創造するために連携された、助成財団のビルト・バイ・ネイチャー(BbN)は、「木材への誤解を解く(Debunking Timber Myths)」と題した冊子を発行し、こうした誤解の解消に努めています。BbNは、マス・ティンバーとバイオベース建材に関して、大規模な活用に向けた障壁を取り除き、その市場需要を拡大することを目標としています。建設におけるバイオベース建材の利用については、すでに多くの研究がありますが、BbNはこうした知見を蓄積し、普及させることで、地域の状況に応じて活用を加速させるという重要な役割を担っています。

必要なのは、需要の喚起だけではありません。業界の変化を推進するうえで、政策や規制が重要な役割を果たすことは、歴史を振り返っても明らかです。すでにいくつかの政府や自治体は、こうした取り組みに着手しています。例えばフランス政府は、国が資金提供する公共建造物の建設計画において、少なくとも50%のバイオベース建材を使用することを義務付けています。アムステルダム市は2025年以降、市営住宅プロジェクトの建築資材の少なくとも20%をバイオベースにすると発表しました。

またバイオベース建材の価格が普及を足踏みさせることも多いですが、製品への需要がある場所の近くで生まれつつある持続可能な森林経済は、スケールメリットを働かせ、生産・輸送コストを引き下げる可能性を秘めています。すでに、材木の価格は予測を下回っています。これは、マス・ティンバー工法の木造建築において、プレハブ工法が採用され、大部分が建設現場の外で製造されるために、化石燃料主体の従来工法よりも短期間で完成するためです。フィンランドのストラ・エンソ社の本社ビルは、マス・ティンバー工法を使用して建設中であり、鉄鋼を利用した同規模の建物に比べて2795トンのCO2排出削減が見込まれています。さらに、資材の大部分が建設現場の外で製造されるため、工期が短縮され、作業騒音、汚染、事故リスクも低減可能です。

建設業界はしばしば、ESG(環境・社会・ガバナンス)に関連するさまざまな目標へのコミットメントを掲げ、またカーボンフットプリントの削減をうたいます。けれども、他の多くの業界と同様に、組織の硬直化や分断、リスク回避、自然の潜在力を最大限に引き出すための資金不足といった課題に直面しています。今こそ、計画を実行に移し、データに裏打ちされ効果が実証されたソリューションを、サプライチェーン全体で活用することで、脱炭素化を確実に実現していく必要があります。

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