海外から見た日本各地のイノベーション・エコシステム動向とは

[Publisher] IntelligentHQ

この記事はIntelligentHQのPallavi Singalが執筆し、Industry DiveのDiveMarketplaceを通じてライセンスされたものです。ライセンスに関するお問い合わせはlegal@industrydive.comにお願いいたします。

日本のビジネスエコシステムは、伝統と先端技術が結びついた革新的な力の源泉となっています。エコノミスト誌によれば、日本には360万社以上の中小企業が存在し、政府による研究開発への年間投資額は約1500億ドル(約22兆3400億円)に上ります。日本のイノベーション・エコシステムの主な特徴を見ていきましょう。

豊かな文化遺産と技術進歩で名高い日本は、イノベーションの最前線に立ち続けてきました。日本政府はイノベーションを促進するために、さまざまな戦略、構想、制度を導入しており、その熱意は本物です。近年、日本企業は積極的にオープンイノベーションを進めており、国境を越えて新たなソリューションを模索する企業が増えています。そのため、国外企業にも大きな機会が広がっています。

岩盤規制改革や国家戦略特区の活用により、企業のイノベーションが加速し、さまざまな分野で外国人投資家が参入しやすくなっています。これらの施策は、多様な分野で外国人投資家の関与を促し、日本を世界的なイノベーションと投資の拠点として、効果的に位置づけることを目指しています。

日本政府のイノベーション戦略

日本政府は産業界全体でイノベーションを促進するため、いくつかの戦略を展開しています。その鍵を握るのが、「Society 5.0」構想です。これは、サイバー空間とフィジカル空間を結ぶネットワークが高度につながり、技術的に進歩した社会を目指すものです。AI、IoT、ロボットといった先端技術を融合させ、経済発展と社会的課題の解決を同時に進めることが期待されています。

日本は研究開発を優先し、科学の進歩に多大なリソースを割り当ててきました。政府は統合イノベーション戦略2022のような取り組みを通じて、世界の舞台でインパクトを与える可能性がある研究プロジェクトやイノベーションを積極的に支援しています。

日本政府のイノベーション戦略は、以下の3本柱で成り立っています:

1本目の柱は、研究能力の強化と人材育成です。将来のイノベーションに不可欠な知識を継続的に生み出すため、研究大学、STEAM教育、ハイレベルな学習機会に多額の投資を行っています。

2本目の柱は、野心的な目標と実用化を念頭に置き、AIや量子技術のような変革力のある技術の戦略的な推進を優先することです。これは、強力な協力支援体制のもとで進められます。

3本目の柱は、ベンチャーキャピタル市場を強化し、スタートアップを支援し、官民の研究開発への投資を促すことで、イノベーション・エコシステムを構築し、公平な配分を重視しながら、社会的課題の解決と経済発展を両立させることです。

イノベーションによって持続的な経済成長を促進し、地球規模の問題に取り組むというSociety 5.0のビジョンを実現するため、これらの3本柱を集結させます。この戦略では、研究、先端技術、包括的なイノベーション・エコシステムを活用し、成長と配分の好循環を生み出すことで、日本が新時代の科学技術分野のリーダーになることを目指しています。

日本のイノベーション拠点

日本には、創造性と技術進歩の基盤となるイノベーション拠点のネットワークがあります。スタートアップ、既存企業、研究員、投資家を、協力関係が生まれやすい環境に集めています。特に東京には、六本木ヒルズ森タワーや虎ノ門ヒルズなど、有名なイノベーション拠点がいくつもあります。

京都にある国際電気通信基礎技術研究所(ATR)は、高度な電気通信とロボット工学に焦点を当てた有名な研究機関です。ATRは、AIやロボット工学研究の拠点として研究員、技術者、起業家が一堂に会し画期的な技術を開発しています。

さらに、京都リサーチパークはスタートアップやハイテク企業の活気あるエコシステムで知られています。コワーキングスペース、メンターシッププログラム、資金調達機会を提供し、起業家を育成する環境を整えています。これにより、数多くの技術系スタートアップの成長に貢献してきました。

Fukuoka Growth Next(フクオカグロースネクスト:FGN)では、スタートアップ育成と起業促進に取り組んでおり、コワーキングスペース、交流イベント、メンターや投資家へのアクセスを提供しています。福岡を活気あるスタートアップエコシステムとして確立するうえで重要な役割を果たしてきました。

理化学研究所(理研)は、日本最大の総合研究機関で、幅広い科学分野に注力しています。学際的研究の拠点として機能し、分野の垣根を越えた科学者の協力、画期的な発見を可能にしています。

東京にある品川シーズンテラスでは、スタートアップ、テクノロジー企業、研究機関という多様性のあるコミュニティーが形成されています。共同作業スペースがあり、知識の共有や交流を促進するイベントや会議が開催されています。

大阪イノベーションハブ(OIH)は、地元のスタートアップや起業家の支援を目的としており、インキュベーションプログラム、資金調達機会、業界ネットワークへのアクセスといったリソースを提供しています。

これらの拠点には、最先端の施設だけでなく、志を同じくする個人や組織の活気あるコミュニティーがあります。イベント、ワークショップ、交流会を主催し、意見交換やイノベーションを促進しています。

日本のイノベーション都市

日本のスタートアップ・データベース、アントレペディア(entrepedia)の国内スタートアップ資金調達動向によれば、日本のスタートアップが2018年に調達した金額は3878億円でした。内訳を見ると、東京のスタートアップが全体の77.4%にあたる3003億円を調達しており、二位以下は大都市を抱える神奈川、大阪、愛知が続きました。

日本の首都である東京はイノベーションの中心地でもあり、数多くの研究機関、テクノロジー企業、スタートアップが存在しています。例えば、お台場エリアには2022年8月まで、テクノロジーと創造性を融合した没入型のデジタルアートが体験できる森ビル デジタルアート ミュージアム:チームラボボーダレスがありました(2024年1月に移転オープン予定)。また、渋谷や六本木といったエリアは活気あるイノベーションシーンで知られ、コワーキングスペースやインキュベーターがイノベーションを促進しています。

大阪は、特にライフサイエンスとバイオテクノロジーの分野で重要なイノベーション都市としての地位を確立しています。最先端の製薬会社やバイオテクノロジー企業があり、医療の進歩に貢献しているのです。さらに、先述したように、大阪市にあるOIH(大阪イノベーションハブ)が起業を促進し、地元のスタートアップを支援しています。

京都は、豊かな歴史と伝統が根付いた場所でありながら、イノベーションと融合しています。例えば、卓越したロボット工学とAI研究でよく知られています。京都リサーチパークにはスタートアップの成長を促す環境があり、プリファードネットワークス(PFN)社のような企業が、ディープラーニングとAIの限界を押し広げています。

九州の福岡は、スタートアップや起業の促進に焦点を当てたイノベーション都市として台頭しつつあります。FGN(Fukuoka Growth Next)のようなスタートアップインキュベーターがあり、アーリーステージの企業を支援するエコシステムで知られます。

神戸は、ヘルスケア、医療技術のイノベーション促進に投資してきました。神戸医療産業都市(KBIC)はその好例で、研究機関、製薬会社、スタートアップが医学発展のために連携しています。

東京近郊にある横浜は、持続可能性とスマートシティへの取り組みが評価されています。横浜スマートシティプロジェクト(YSCP)では、エネルギー効率の高い交通機関や環境モニタリングシステムなどのイノベーションにより、都市生活を向上させる技術を活用しています。

日本のスタートアッププログラム

日本のスタートアップエコシステムを活性化するうえで、スタートアッププログラムは極めて重要な役割を果たしています。日本貿易振興機構(ジェトロ)や、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)が、国内外を問わずスタートアップに不可欠な支援を提供しています。

NEDOはスタートアップ支援事業において、革新的な技術に取り組むスタートアップを支援しています。福岡市を拠点とするPJP Eye社が開発したデュアルカーボンバッテリーはその一例です。プラス極とマイナス極の両方に植物由来のカーボンを使用するこの電池技術は、エネルギー貯蔵に革命を起こす可能性があるとして注目を浴びています。

日本政府が立ち上げたJ-Startupは、スタートアップの成長加速を目的とした包括的なプログラムです。例えば、モバイルマーケットプレイスアプリのメルカリ社は、瞬く間にユニコーン企業となり、そのサービスを世界に拡大しました。

経済産業省の公的団体としてスタートした高度技術社会推進協会(TEPIA)は、テクノロジーとイノベーションに関わるスタートアップを支援しています。TEPIAの支援を受けたスタートアップには、例えば、ディスプレイや医療機器に応用される量子ドットレーザー技術を専門とするQDレーザ社があります。

また、日本にはインキュベーターやアクセラレーターも数多く存在します。東京の企業リバネス社が運営するシード・アクセラレーションプログラム・テックプランターや、東京に本拠を置くサムライインキュベートといったこれらのプログラムは、スタートアップを対象に、メンターシップやワークスペース、資金調達機会を提供しています。こうしたプログラムに参加するスタートアップには、例えば、クモの糸を人工合成するバイオテクノロジー企業スパイバー社や、パーソナルファイナンスアプリを開発するマネーツリー社などがあります。

さらに、多くの地方自治体が起業を積極的に促進しています。例えば、福岡市のスタートアップカフェは、スタートアップや起業家の支援体制を整えています。J-Startup KYUSHUも、九州の起業を促進する取り組みです。

日本企業は、ベンチャー部門を通じてスタートアップとの関係を強化しています。ソニー社パナソニック社トヨタ社といった企業が、有望なスタートアップに投資するベンチャーキャピタルを立ち上げています。ディープラーニング技術を専門とするプリファードネットワークス(PFN)社、ロボットソリューションに注力するコネクテッドロボティクス社などが、こうした企業の支援を受けています。

日本は、コーポレートベンチャーキャピタル(CVC)活動でも注目を集めており、多くの既存企業がスタートアップに投資しています。スタートアップエコシステムに資金を投入するだけでなく、業界の知見やメンターシップをスタートアップに提供しています。

日本のイノベーション・エコシステムの展望

日本のイノベーション・エコシステムは強力でありながらも、世界の変化に合わせて進化し適応を続けています。世界をリードする研究開発力と、質の高い知的財産で知られる日本は、国外企業に新たな価値創造の機会をもたらしています。世界知的所有権機関(WIPO)の2020年版データベースによれば、日本の特許現存権利件数は世界第二位です。2021年のデータによれば、日本は強力な特許システムを誇り、年間30万件以上の特許出願が行われています。

また、日本はR&D、中でも特に環境技術へ多額の投資を行っており、そのために1500億ドルが確保されています。R&Dに重点を置き、スタートアップ文化の醸成にも力を入れている日本は、世界的なイノベーションの原動力として将来を有望視されています。

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